こんにちは、サンチャゴです。
僕はいま「検証トレード」という取り組みを始めています。世の中に出回っているトレード手法を、感覚や体験談ではなく、実際のデータで淡々と確かめていくプロジェクトです。先日出したKindle第1巻は、その第一歩でした。
その本に、さっそくうれしいレビューをいただきました。今日は、この一言に本気で答えます。
「2日のRSIの検証、とても参考になりました。ただ、2日だと値が0になることも多く、3日で自分の監視銘柄に当ててみたところ、かなり期待値ありそうに思えました。(長期上昇トレンド+75日線上のみ検証対象)RSI3や、他の値での検証も試して下さると、非常に今後の参考になります。」
ご自分の監視銘柄で手を動かし、そこから疑問を投げてくださる。これこそ、この企画が一番ほしかった反応です。ありがとうございます。さっそく検証してみました。
まず、いただいた疑問を2つに分ける
このレビューには、実は2つの問いが入っています。
- 問い①:RSIは2日が最適なのか? 3日や他の値の方が良いのでは?(期間の問題)
- 問い②:2日だと値が0に張り付きやすい(極端に短い期間の弱点)
この2つに、順番に答えていきます。
検証の設計 ―「1つだけ」動かすのがルール
ここで、僕が検証で一番大事にしていることを一つだけ。
レビューをくださった方は、RSIを3日にすると同時に「長期上昇トレンド」「75日線より上」という条件も足して試していました。実践としてはまったく正しいのですが、「RSIの期間そのものの効果」を知りたいときは、動かす条件を1つに絞らないといけません。期間もフィルターも同時に変えると、良くなった理由がどちらなのか分からなくなるからです。
そこで今回はまず、RSIの期間だけを2・3・4・5と動かし、それ以外は第1巻と同じにしました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象銘柄 | Russell1000(上場廃止銘柄も含む=生存者バイアスなし) |
| 期間 | 1990年1月〜2026年7月(約36年) |
| 売買 | RSIが指定ゾーンに入ったら買い、5日後に手仕舞い |
| 1銘柄の資金 | 0.3%(シグナルが出た銘柄すべてに機械的に) |
| 動かした条件 | RSIの期間(2/3/4/5)と、RSIの水準ゾーンだけ |
| フィルター | 3段階(①なし ②75日線+地合い ③200日線+地合い)で比較 |
RSIの値は「0〜20(売られすぎ)」から「80〜100(買われすぎ)」まで20刻みのゾーンに分け、ゾーンごとの成績を集計しました。第1巻でお見せした「期待値カーブ」を、期間ごとに描き直すイメージです。
結果①:DNAは、期間を変えても崩れなかった
まず、一番大事な結果です。フィルターなしで、各RSIゾーンの期待値(1トレードあたり平均で何%取れたか)を並べます。
| RSIゾーン | RSI(2) | RSI(3) | RSI(4) | RSI(5) |
|---|---|---|---|---|
| 0〜20(売られすぎ) | 0.39 | 0.44 | 0.47 | 0.50 |
| 20〜40 | 0.30 | 0.32 | 0.32 | 0.33 |
| 40〜60 | 0.25 | 0.26 | 0.27 | 0.27 |
| 60〜80 | 0.23 | 0.20 | 0.19 | 0.19 |
| 80〜100(買われすぎ) | 0.15 | 0.10 | 0.07 | 0.03 |
どの列を見ても、上から下へきれいに数字が下がっています。「RSIが低い(売られすぎ)ほど、その後の期待値が高い」という第1巻のDNAは、RSIを2日にしても5日にしても、そのまま生きていました。
もしRSI2だけで見えた現象なら、「たまたま2日が良かっただけ」かもしれません。でも2〜5すべてで同じ傾きが出るなら、これは期間の設定に左右されない、市場そのものの性質だと僕は見ています。DNAは、やっぱりDNAでした。(問い①への最初の答え——はい、他の値でもエッジは残ります)
結果②:レビュアー様の直感は、正しかった
次に、「3日の方が期待値ありそう」という感覚について。上の表の一番上の行(売られすぎゾーン)だけを、横に見てください。
RSI2=0.39% → RSI3=0.44% → RSI4=0.47% → RSI5=0.50%
期間を長くするほど、1回あたりの期待値は上がっています。ご指摘の通りでした。理由はシンプルで、期間を長くすると「本当に売られすぎている場面」と「そうでもない場面」を、くっきり見分けられるようになるからです。だから1回の精度が上がる。監視銘柄で手応えを感じられたのは、この鋭さを肌で捉えていたんだと思います。
結果③:じゃあ、なぜ第1巻は「2日」を選んだのか
「なら5日が一番いいじゃないか」と言いたくなりますよね。でも、話はもう一段あります。売られすぎゾーンだけを取り出した比較表です。
| RSI期間 | 期待値/回 | 勝率 | PF | トレード数 | 年率(ROR) | 最大DD | Sharpe |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 0.39% | 53.1% | 1.18 | 827,463 | 22.1% | -76% | 0.72 |
| 3 | 0.44% | 53.5% | 1.20 | 516,155 | 16.2% | -68% | 0.66 |
| 4 | 0.47% | 53.6% | 1.19 | 338,975 | 11.5% | -64% | 0.57 |
| 5 | 0.50% | 53.7% | 1.17 | 230,629 | 8.3% | -59% | 0.50 |
期間を長くすると1回の質は上がるのですが、代わりにトレード数がガクッと減ります(82万回→23万回)。RSIを厳しくするほど、「本物の売られすぎ」が滅多に出なくなるからです。その結果、全銘柄を機械的に拾うやり方では、回数で稼ぐRSI2が、総合リターンもSharpe(リスクに対する効率。1前後で優秀)も最良になります。第1巻がRSI2を選んだのは、この「全部拾う」前提では正解だったわけです。
これで問い②にも答えが見えてきます。「2日は0が多い」というのは、裏を返せばそれだけシグナルが頻繁に出るということ。頻度が武器になる使い方(全部拾う)ならRSI2、1回の質を求める使い方(絞って狙う)ならRSI3〜5。そういう住み分けです。
結果④:フィルターを足すと、景色が一変する
ここまではフィルターなしの「素のDNA」でした。最大ドローダウン(資産が山から谷までどれだけ落ちたか)が-59〜-76%と大きいのは、そのためです。ここに、第1巻の第2〜3章で使った2つのフィルターを足します。
- トレンドフィルター:その銘柄の株価が移動平均線より上(=上昇基調)のときだけ買う
- 地合いフィルター:S&P500が同じ移動平均線より上(=相場全体が健全)のときだけ買う
ここで一つ、先にお断りしておきます。下の表の「75日線」「200日線」は、どちらもトレンドと地合いの両方に、同じ長さの移動平均を使っています。つまり2つの列は「フィルターの数」が違うのではなく、「移動平均の長さ(75日か200日か)」だけが違う、という比較です。
| 指標 | フィルターなし | 75日線+地合い | 200日線+地合い |
|---|---|---|---|
| 期待値/回 | 0.39% | 0.40% | 0.41% |
| PF(総利益÷総損失) | 1.18 | 1.23 | 1.23 |
| 最大DD | -76% | -17% | -18% |
| Sharpe | 0.72 | 0.96 | 1.03 |
| MAR | 0.29 | 0.58 | 0.67 |
| 指標 | フィルターなし | 75日線+地合い | 200日線+地合い |
|---|---|---|---|
| 期待値/回 | 0.44% | 0.51% | 0.52% |
| PF | 1.20 | 1.33 | 1.31 |
| 最大DD | -68% | -10% | -14% |
| Sharpe | 0.66 | 1.02 | 1.07 |
| MAR | 0.24 | 0.56 | 0.64 |
ここでMARという言葉が出てきました。年率リターンを最大ドローダウンで割った値で、ざっくり「味わった痛みの割に、どれだけ増やせたか」を表します。大きいほど、少ない痛みで増やせているということです。
さて、表を見て一番驚くのはドローダウンの激減です。RSI2で-76%→-18%、RSI3で-68%→-14%。100万円が24万円まで溶ける世界から、100万円が82〜86万円で踏みとどまる世界へ。フィルターは優位性そのものを生み出しているのではなく、優位性を使える形に整えている——つまり守りを固めている。この役割分担が、数字ではっきり出ました。
移動平均は「75日」と「200日」どちらが良いか ― 本の選択が正しかった
レビュアーはトレンド判定に75日線を、第1巻は200日線を使っていました。どちらが良いのか、正面からぶつけてみます。
くり返しになりますが、下の表はどちらも個別銘柄のトレンドとS&P500の地合いの両方にフィルターを掛けた状態で、移動平均の長さ(75日 vs 200日)だけを変えています。条件の数は揃っているので、純粋に「MAの長さ」の勝負です。
| RSI期間 | Sharpe(75日) | Sharpe(200日) | MAR(75日) | MAR(200日) | 平均露出(75日) | 平均露出(200日) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 0.96 | 1.03 | 0.58 | 0.67 | 49% | 61% |
| 3 | 1.02 | 1.07 | 0.56 | 0.64 | 23% | 33% |
| 4 | 0.97 | 1.03 | 0.48 | 0.54 | 10% | 19% |
| 5 | 0.87 | 0.94 | 0.41 | 0.48 | 4% | 11% |
(表の「平均露出」は、資金のうち実際に株へ投じていた割合です。低いほど、お金が現金のまま寝ている状態を意味します。)
結果は、すべての期間で200日線が75日線を上回りました(Sharpeも、MARも)。理由は、意外とシンプルです。200日線は75日線より緩い。押し目で75日線を割っても、200日線はまだ上、というケースが多いんですね。だから良い銘柄を途中で振り落とさず、資金を投じ続けられる。実際、投じていた資金(平均露出)は200日線の方が多いのに、ドローダウンはほぼ同じでした。「守りは同じくらい効かせつつ、もう少し攻められる」というわけです。
結論:唯一の「ベスト」はない ― 狙いによって最適が動く
200日線フィルター(トレンド+地合い)をかけた、売られすぎゾーンの全体像です。
| RSI期間 | 期待値/回 | 勝率 | PF | 最大DD | Sharpe | MAR | トレード数 | 平均露出 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 0.41% | 54.1% | 1.23 | -18.4% | 1.03 | 0.67 | 362,317 | 61% |
| 3 | 0.52% | 55.2% | 1.31 | -13.7% | 1.07 | 0.64 | 197,720 | 33% |
| 4 | 0.60% | 55.7% | 1.38 | -10.4% | 1.03 | 0.54 | 110,943 | 19% |
| 5 | 0.64% | 56.1% | 1.41 | -7.1% | 0.94 | 0.48 | 62,973 | 11% |
正直に言うと、「これが唯一のベスト」という数字は、実はありません。何を大事にするかで、最適なRSIの期間は変わります。上の表を、目的別に読み替えてみます。
| あなたが大事にする軸 | 最適なRSI期間 | 該当する数値 |
|---|---|---|
| リスク効率(Sharpe) | RSI3 | Sharpe 1.07(最高) |
| 痛みに対する効率(MAR) | RSI2 | MAR 0.67(最高) |
| 1回の質(PF・期待値・勝率) | RSI5 | PF1.41/0.64%/勝率56.1%(最高) |
| 資金を回し続ける(露出・回数) | RSI2 | 露出61%/約36万回(最多) |
つまり——回数で稼ぐならRSI2、1回の質を突き詰めるならRSI5、その中間でリスク効率が一番高いのがRSI3。狙いが変われば、答えも変わる。「とにかくこれ一つ」という万能解は、残念ながらありません。
そのうえで、僕は、多くの個人投資家にとって一番しっくりくる物差しは「振れ幅に対して、どれだけ効率よく増やせるか」=Sharpeだと思っています。そのSharpeの頂点が、RSI3(1.07)でした。
「RSI3が良さそう」というレビュアーの直感と、「200日線で守る」という第1巻の骨格。この2つを合わせた“RSI3×200日線”は、少なくともリスク効率という軸では最適点だった。あなたの手応えは、データでも裏づけられました。おまけに「75日線を、もう少し緩い200日線に変えると、さらに良くなる」というお土産までついてきた、というわけです。
読むときの注意点(ここは正直に)
- 「年率リターン(ROR)」で順位をつけてはいけません。今回は1銘柄0.3%固定でシグナルを全部拾う設計なので、シグナルが少ない設定ほど資金が現金のまま眠り、リターンが低く出ます(RSI5は露出11%=資金の9割が待機)。手法の地力は、露出に左右されない「期待値/回」「PF」「勝率」で見てください。
- データは生存者バイアスを取り除いていますが、手数料やスリッページは入れていません。現実ではもう少し目減りします。ここは正直にお伝えしておきます。
で、ここからが本当の勝負どころ
ここまでは「どこに優位性があるか」の話でした。でも、実際に自分のお金で回すとなると、まだ大きな問いが残っています。
売られすぎのシグナルは、相場が調整すると一度に何十個も同時に出ます。その中から、どの銘柄を選ぶのか。1銘柄にどれだけの大きさで、何回に分けて入るのか。そして——相場全体が本当に崩れ始めたとき、この逆張りをどこで止め、資産をどう守るのか。
実は、勝ち負けを最後に分けるのは、この「選び方」と「守り方」です。優位性の地図があっても、そこをどう歩くかは別の問題なんですね。この続きは、また別の検証で掘っていきます。
レビューをくださった方へ、そして読者のみなさんへ
改めて、きっかけをくれた方に感謝します。あなたの「2日設定は0に張り付くことが多い」「3の方が良さそう」という感覚は、36年・全米大型株のデータで両方とも正しいことが確認できました。しかもそこに200日線を重ねると、あなたの手法はもう一段強くなります。
今回の検証を一言でまとめると、こうなります。
「売られすぎを買う」優位性は、RSIの期間を変えても崩れない。ただし唯一のベストはなく、回数で稼ぐならRSI2、1回の質ならRSI5、リスク効率の頂点はRSI3。トレンドと地合いの判定は、75日線より200日線が優秀。リスク効率で選ぶなら“RSI3×200日線”が、今回の最適解だった。
「本に書いてあったけど、本当かな?」「自分で少し試したら、こう感じた」——その一言が、次の検証になります。検証してほしい手法があれば、ぜひレビューやメールで教えてください。反応の多いものから、順番に確かめていきます。
それでは、また。
サンチャゴ