RSIの逆張りは「2日」がベストなのか? ― 読者の疑問を、全米株36年で検証する

こんにちは、サンチャゴです。

僕はいま「検証トレード」という取り組みを始めています。世の中に出回っているトレード手法を、感覚や体験談ではなく、実際のデータで淡々と確かめていくプロジェクトです。先日出したKindle第1巻は、その第一歩でした。

その本に、さっそくうれしいレビューをいただきました。今日は、この一言に本気で答えます。

「2日のRSIの検証、とても参考になりました。ただ、2日だと値が0になることも多く、3日で自分の監視銘柄に当ててみたところ、かなり期待値ありそうに思えました。(長期上昇トレンド+75日線上のみ検証対象)RSI3や、他の値での検証も試して下さると、非常に今後の参考になります。」

ご自分の監視銘柄で手を動かし、そこから疑問を投げてくださる。これこそ、この企画が一番ほしかった反応です。ありがとうございます。さっそく検証してみました。

 

まず、いただいた疑問を2つに分ける

このレビューには、実は2つの問いが入っています。

  • 問い①:RSIは2日が最適なのか? 3日や他の値の方が良いのでは?(期間の問題)
  • 問い②:2日だと値が0に張り付きやすい(極端に短い期間の弱点)

この2つに、順番に答えていきます。

検証の設計 ―「1つだけ」動かすのがルール

ここで、僕が検証で一番大事にしていることを一つだけ。

レビューをくださった方は、RSIを3日にすると同時に「長期上昇トレンド」「75日線より上」という条件も足して試していました。実践としてはまったく正しいのですが、「RSIの期間そのものの効果」を知りたいときは、動かす条件を1つに絞らないといけません。期間もフィルターも同時に変えると、良くなった理由がどちらなのか分からなくなるからです。

そこで今回はまず、RSIの期間だけを2・3・4・5と動かし、それ以外は第1巻と同じにしました。

▼ 検証条件
項目 内容
対象銘柄 Russell1000(上場廃止銘柄も含む=生存者バイアスなし)
期間 1990年1月〜2026年7月(約36年)
売買 RSIが指定ゾーンに入ったら買い、5日後に手仕舞い
1銘柄の資金 0.3%(シグナルが出た銘柄すべてに機械的に)
動かした条件 RSIの期間(2/3/4/5)と、RSIの水準ゾーンだけ
フィルター 3段階(①なし ②75日線+地合い ③200日線+地合い)で比較

RSIの値は「0〜20(売られすぎ)」から「80〜100(買われすぎ)」まで20刻みのゾーンに分け、ゾーンごとの成績を集計しました。第1巻でお見せした「期待値カーブ」を、期間ごとに描き直すイメージです。

結果①:DNAは、期間を変えても崩れなかった

まず、一番大事な結果です。フィルターなしで、各RSIゾーンの期待値(1トレードあたり平均で何%取れたか)を並べます。

▼ 期待値(%)/フィルターなし・保有5日
RSIゾーン RSI(2) RSI(3) RSI(4) RSI(5)
0〜20(売られすぎ) 0.39 0.44 0.47 0.50
20〜40 0.30 0.32 0.32 0.33
40〜60 0.25 0.26 0.27 0.27
60〜80 0.23 0.20 0.19 0.19
80〜100(買われすぎ) 0.15 0.10 0.07 0.03

どの列を見ても、上から下へきれいに数字が下がっています。「RSIが低い(売られすぎ)ほど、その後の期待値が高い」という第1巻のDNAは、RSIを2日にしても5日にしても、そのまま生きていました。

もしRSI2だけで見えた現象なら、「たまたま2日が良かっただけ」かもしれません。でも2〜5すべてで同じ傾きが出るなら、これは期間の設定に左右されない、市場そのものの性質だと僕は見ています。DNAは、やっぱりDNAでした。(問い①への最初の答え——はい、他の値でもエッジは残ります)

結果②:レビュアー様の直感は、正しかった

次に、「3日の方が期待値ありそう」という感覚について。上の表の一番上の行(売られすぎゾーン)だけを、横に見てください。

RSI2=0.39% → RSI3=0.44% → RSI4=0.47% → RSI5=0.50%

期間を長くするほど、1回あたりの期待値は上がっています。ご指摘の通りでした。理由はシンプルで、期間を長くすると「本当に売られすぎている場面」と「そうでもない場面」を、くっきり見分けられるようになるからです。だから1回の精度が上がる。監視銘柄で手応えを感じられたのは、この鋭さを肌で捉えていたんだと思います。

結果③:じゃあ、なぜ第1巻は「2日」を選んだのか

「なら5日が一番いいじゃないか」と言いたくなりますよね。でも、話はもう一段あります。売られすぎゾーンだけを取り出した比較表です。

▼ 売られすぎゾーン(RSI 0〜20)/フィルターなし・保有5日
RSI期間 期待値/回 勝率 PF トレード数 年率(ROR) 最大DD Sharpe
2 0.39% 53.1% 1.18 827,463 22.1% -76% 0.72
3 0.44% 53.5% 1.20 516,155 16.2% -68% 0.66
4 0.47% 53.6% 1.19 338,975 11.5% -64% 0.57
5 0.50% 53.7% 1.17 230,629 8.3% -59% 0.50

期間を長くすると1回の質は上がるのですが、代わりにトレード数がガクッと減ります(82万回→23万回)。RSIを厳しくするほど、「本物の売られすぎ」が滅多に出なくなるからです。その結果、全銘柄を機械的に拾うやり方では、回数で稼ぐRSI2が、総合リターンもSharpe(リスクに対する効率。1前後で優秀)も最良になります。第1巻がRSI2を選んだのは、この「全部拾う」前提では正解だったわけです。

これで問い②にも答えが見えてきます。「2日は0が多い」というのは、裏を返せばそれだけシグナルが頻繁に出るということ。頻度が武器になる使い方(全部拾う)ならRSI2、1回の質を求める使い方(絞って狙う)ならRSI3〜5。そういう住み分けです。

結果④:フィルターを足すと、景色が一変する

ここまではフィルターなしの「素のDNA」でした。最大ドローダウン(資産が山から谷までどれだけ落ちたか)が-59〜-76%と大きいのは、そのためです。ここに、第1巻の第2〜3章で使った2つのフィルターを足します。

  • トレンドフィルター:その銘柄の株価が移動平均線より上(=上昇基調)のときだけ買う
  • 地合いフィルター:S&P500が同じ移動平均線より上(=相場全体が健全)のときだけ買う

ここで一つ、先にお断りしておきます。下の表の「75日線」「200日線」は、どちらもトレンドと地合いの両方に、同じ長さの移動平均を使っています。つまり2つの列は「フィルターの数」が違うのではなく、「移動平均の長さ(75日か200日か)」だけが違う、という比較です。

▼ 売られすぎゾーン・RSI2 / フィルターの違いで比較
指標 フィルターなし 75日線+地合い 200日線+地合い
期待値/回 0.39% 0.40% 0.41%
PF(総利益÷総損失) 1.18 1.23 1.23
最大DD -76% -17% -18%
Sharpe 0.72 0.96 1.03
MAR 0.29 0.58 0.67
▼ 売られすぎゾーン・RSI3 / フィルターの違いで比較
指標 フィルターなし 75日線+地合い 200日線+地合い
期待値/回 0.44% 0.51% 0.52%
PF 1.20 1.33 1.31
最大DD -68% -10% -14%
Sharpe 0.66 1.02 1.07
MAR 0.24 0.56 0.64

ここでMARという言葉が出てきました。年率リターンを最大ドローダウンで割った値で、ざっくり「味わった痛みの割に、どれだけ増やせたか」を表します。大きいほど、少ない痛みで増やせているということです。

さて、表を見て一番驚くのはドローダウンの激減です。RSI2で-76%→-18%、RSI3で-68%→-14%。100万円が24万円まで溶ける世界から、100万円が82〜86万円で踏みとどまる世界へ。フィルターは優位性そのものを生み出しているのではなく、優位性を使える形に整えている——つまり守りを固めている。この役割分担が、数字ではっきり出ました。

移動平均は「75日」と「200日」どちらが良いか ― 本の選択が正しかった

レビュアーはトレンド判定に75日線を、第1巻は200日線を使っていました。どちらが良いのか、正面からぶつけてみます。

くり返しになりますが、下の表はどちらも個別銘柄のトレンドとS&P500の地合いの両方にフィルターを掛けた状態で、移動平均の長さ(75日 vs 200日)だけを変えています。条件の数は揃っているので、純粋に「MAの長さ」の勝負です。

▼ 売られすぎゾーン/移動平均75日 と 200日 の比較(いずれも地合いフィルターあり・保有5日)
RSI期間 Sharpe(75日) Sharpe(200日) MAR(75日) MAR(200日) 平均露出(75日) 平均露出(200日)
2 0.96 1.03 0.58 0.67 49% 61%
3 1.02 1.07 0.56 0.64 23% 33%
4 0.97 1.03 0.48 0.54 10% 19%
5 0.87 0.94 0.41 0.48 4% 11%

(表の「平均露出」は、資金のうち実際に株へ投じていた割合です。低いほど、お金が現金のまま寝ている状態を意味します。)

結果は、すべての期間で200日線が75日線を上回りました(Sharpeも、MARも)。理由は、意外とシンプルです。200日線は75日線より緩い。押し目で75日線を割っても、200日線はまだ上、というケースが多いんですね。だから良い銘柄を途中で振り落とさず、資金を投じ続けられる。実際、投じていた資金(平均露出)は200日線の方が多いのに、ドローダウンはほぼ同じでした。「守りは同じくらい効かせつつ、もう少し攻められる」というわけです。

結論:唯一の「ベスト」はない ― 狙いによって最適が動く

200日線フィルター(トレンド+地合い)をかけた、売られすぎゾーンの全体像です。

▼ 売られすぎゾーン(RSI 0〜20)/200日線+地合い・保有5日
RSI期間 期待値/回 勝率 PF 最大DD Sharpe MAR トレード数 平均露出
2 0.41% 54.1% 1.23 -18.4% 1.03 0.67 362,317 61%
3 0.52% 55.2% 1.31 -13.7% 1.07 0.64 197,720 33%
4 0.60% 55.7% 1.38 -10.4% 1.03 0.54 110,943 19%
5 0.64% 56.1% 1.41 -7.1% 0.94 0.48 62,973 11%

正直に言うと、「これが唯一のベスト」という数字は、実はありません。何を大事にするかで、最適なRSIの期間は変わります。上の表を、目的別に読み替えてみます。

▼ 目的別に見た最適なRSI期間(200日線+地合い・売られすぎゾーン)
あなたが大事にする軸 最適なRSI期間 該当する数値
リスク効率(Sharpe) RSI3 Sharpe 1.07(最高)
痛みに対する効率(MAR) RSI2 MAR 0.67(最高)
1回の質(PF・期待値・勝率) RSI5 PF1.41/0.64%/勝率56.1%(最高)
資金を回し続ける(露出・回数) RSI2 露出61%/約36万回(最多)

つまり——回数で稼ぐならRSI2、1回の質を突き詰めるならRSI5、その中間でリスク効率が一番高いのがRSI3。狙いが変われば、答えも変わる。「とにかくこれ一つ」という万能解は、残念ながらありません。

そのうえで、僕は、多くの個人投資家にとって一番しっくりくる物差しは「振れ幅に対して、どれだけ効率よく増やせるか」=Sharpeだと思っています。そのSharpeの頂点が、RSI3(1.07)でした。

「RSI3が良さそう」というレビュアーの直感と、「200日線で守る」という第1巻の骨格。この2つを合わせた“RSI3×200日線”は、少なくともリスク効率という軸では最適点だった。あなたの手応えは、データでも裏づけられました。おまけに「75日線を、もう少し緩い200日線に変えると、さらに良くなる」というお土産までついてきた、というわけです。

読むときの注意点(ここは正直に)

  • 「年率リターン(ROR)」で順位をつけてはいけません。今回は1銘柄0.3%固定でシグナルを全部拾う設計なので、シグナルが少ない設定ほど資金が現金のまま眠り、リターンが低く出ます(RSI5は露出11%=資金の9割が待機)。手法の地力は、露出に左右されない「期待値/回」「PF」「勝率」で見てください。
  • データは生存者バイアスを取り除いていますが、手数料やスリッページは入れていません。現実ではもう少し目減りします。ここは正直にお伝えしておきます。

で、ここからが本当の勝負どころ

ここまでは「どこに優位性があるか」の話でした。でも、実際に自分のお金で回すとなると、まだ大きな問いが残っています。

売られすぎのシグナルは、相場が調整すると一度に何十個も同時に出ます。その中から、どの銘柄を選ぶのか。1銘柄にどれだけの大きさで、何回に分けて入るのか。そして——相場全体が本当に崩れ始めたとき、この逆張りをどこで止め、資産をどう守るのか。

実は、勝ち負けを最後に分けるのは、この「選び方」と「守り方」です。優位性の地図があっても、そこをどう歩くかは別の問題なんですね。この続きは、また別の検証で掘っていきます。

レビューをくださった方へ、そして読者のみなさんへ

改めて、きっかけをくれた方に感謝します。あなたの「2日設定は0に張り付くことが多い」「3の方が良さそう」という感覚は、36年・全米大型株のデータで両方とも正しいことが確認できました。しかもそこに200日線を重ねると、あなたの手法はもう一段強くなります。

今回の検証を一言でまとめると、こうなります。

「売られすぎを買う」優位性は、RSIの期間を変えても崩れない。ただし唯一のベストはなく、回数で稼ぐならRSI2、1回の質ならRSI5、リスク効率の頂点はRSI3。トレンドと地合いの判定は、75日線より200日線が優秀。リスク効率で選ぶなら“RSI3×200日線”が、今回の最適解だった。

「本に書いてあったけど、本当かな?」「自分で少し試したら、こう感じた」——その一言が、次の検証になります。検証してほしい手法があれば、ぜひレビューやメールで教えてください。反応の多いものから、順番に確かめていきます。

それでは、また。

サンチャゴ

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。