移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスはFXで勝てるのでしょうか?FXの全通貨ペアで過去20年間のデータを使い徹底的にバックテストして「驚きの答え」が分かりました。
もくじ
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスとは
移動平均線の売買シグナルとしてよく使われるのが、このゴールデンクロスとデッドクロスです。ゴールデンクロスやデッドクロスのドテンシステムは勝率が低く、コツコツ負けながら大きく取れる時にしっかり取る損小利大の手法と言われています。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスは買いシグナルです。短期の移動平均線(速く動く線)が長期の移動平均線(遅く動く線)を下から上に突き抜けたタイミングで買います。
ゴールデンクロスで買って、デッドクロスでドテンする、もしくは利食いするといった戦略が一般的です。
デッドクロス
デッドクロスは売りシグナルで、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けたタイミングで売ります。
デッドクロスで空売りし、ゴールデンクロスでドテンするか利食いするといった戦略が一般的です。
ゴールデンクロスとデッドクロスの難しいところ
例に挙げた画像のように緩やかなトレンドを持った素直な値動きだと完璧に勝てていますが、現実はそんなに甘くありません。
レンジ相場では何度も何度もロスカットにかかってしまいます。
また、ゴールデンクロスやデッドクロスはかなり遅れて売買シグナルが出ますので、急激な値動きにはついていけません。
①のゴールデンクロスから②のデッドクロスまでの上昇はうまく取れています。しかし②のデッドクロスがダマしになりすぐに③のゴールデンクロスが起きて小さな損失になります。
さらに③のゴールデンクロスから④のデッドクロスまで大きな損失が発生します。④のデッドクロスがかなり遅れて発生していることに注意しましょう。④で移動平均線のデッドクロスが起きた時には、価格はすでにはるか下まで落ちています。激しい値動きには全くついていけていません。
そう甘くはないということが、チャートを目視で検証しただけでよくわかります。
それでも、徹底的なバックテストをすることなしにこの有名なドテンシステムを「勝てない」と結論付けるのは、この手法を開発した先輩方に対してあまりにも失礼だと思いました。
だからFXの主要な全通貨ペアで過去20年のデータを使い、徹底的にバックテストしてみることにしました。
FXデイトレードの時間足で移動平均線をバックテストする
このセクションでは、デイトレードで移動平均線を使ってトレードした場合のバックテスト結果を解説します。
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスのシグナルを使った手法をバックテストをしました。主要な28の通貨ペアでテストしています。
時間足は、5分足と1時間足です。
5分足の移動平均線をバックテスト
まずは5分足の結果です。5本移動平均線と25本移動平均線のクロスでドテン売買というシステムのバックテスト結果です。
ご覧の通り、資産曲線は綺麗な一直線の右肩下がりとなりました。
ちなみにスプレッドはMT4の標準的なスプレッドでテストしています。
このような悪い結果になっている一番の理由は、取引コストに勝つだけの優位性が無いということです。
5分足の移動平均線を使って売買する場合、どうしても取引回数が多くなってしまいます。利食い値幅に対して、取引コストが相対的に高くなってしまいます。
あと、イントラデイの値動きは雑音が多いので、移動平均線のシグナルが機能しにくいというのもあると思います。移動平均線がどうなっていても、指標発表直後の値動きで全部キャンセルされるということがしょっちゅう起きますから。
1時間足の移動平均線
では1時間足ではどうでしょうか?
同じく、5本移動平均線と25本移動平均線のクロスでドテン売買というシステムのバックテスト結果です。
このように、5分足よりはちょっとギザギザしていますが、綺麗なほぼ一直線な右肩下がりの資産曲線になります。これでは全く勝てません。酷い結果です。
ではこの結果は改善できるでしょうか?
もちろん、これはシンプルな売買シグナルをそのままバックテストしただけですので、裁量でフィルターを追加することで改善できます。
例えば、プライスアクションであったり、他のインジケーターを組み合わせることで、売買ルールを厳しくして取引回数を減らせば、パフォーマンスを劇的に改善することはできると思います。
ただ、ここまで綺麗な一直線の右肩下がりになっている資産曲線を、綺麗な右肩上がりの資産曲線になるまで改善するのはかなり難易度が高いと思います。
ではどうすればよいでしょうか?
イントラデイの時間足を使った移動平均線の手法は捨て、追求しないことです。時間を無駄にしてはいけません。
解決策は簡単です。
時間軸を上げることです。
ですので、このあと、まだまだ移動平均線の検証は続くのですが、デイトレードの時間足を使った検証はここで打ち切り、次のレクチャーからは日足を使った売買シグナルをテストしていきます。
FXのデイトレーダーの方はがっかりしないでください。
デイトレード向けの方法もあって、それはまた後のセクションで解説します。(デイトレードでエントリーして利益を伸ばす方法です)
以上でFXデイトレードにおける移動平均線のバックテスト結果の解説を終わります。
日足を使って移動平均線のバックテストをする理由
前のセクションで、イントラデイの移動平均線のクロスの手法は手数料負けしてしまって全く機能しないと結論付けました。
ということで、ここからは日足を使って検証していくことにしました。
日足を使う意味は、取引回数が少なくなって取引コストが安くなるというのがあります。
しかしそれだけではありません。
もう一つの理由は、日足をみんなが見ているということです。
数週間~数カ月ポジションを保持するようなスイングトレーダーや長期トレーダーは日足をメインに使っています。
デイトレーダーでも、ほとんどの人は上位足として日足を見ているはずです。
ですから、日足は時間足やトレードスタイルに関わらず、みんなが見ていると言えます。
そして移動平均線は最もポピュラーなインジケーターです。ほとんどのチャートに標準装備されていますから。
ですので、日足に表示された、ごく一般的な本数設定の移動平均線は、多くのトレーダーに意識されている。だから、それを使ったトレード手法には優位性があるのではないか?ということです。
では、一般的な移動平均線の本数設定はどんな設定でしょうか?
日足の移動平均線の本数設定として最も一般的なのは以下の4つです。
5本、25本、(75本)、200本。
75本は微妙ですが、Yahooに採用されているので一応入れました。
これらの設定本数がよく使われるということは、様々なトレード関係の文献を見てもそうですし、Googleサーチエンジンの月間検索件数を見てもわかります。移動平均線の設定として、5本、25本、200本というキーワードが最も多く検索されているようなのです。
日足移動平均線を使う理由をまとめると
・取引回数が減って取引コストが安くなる
・多くのトレーダーが日足を見ている
・移動平均線で最も一般的な本数設定は5本、25本、75本、200本である
ということです。
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロス(日足)
このセクションでは、移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスの検証結果について解説します。
イントラデイでは散々だった移動平均のクロスオーバーですが、日足ではどうでしょうか。
<検証方法>
- 検証はMT4を使って実施しています
- 移動平均線のクロスが確定して次の足の始値で仕掛け/手仕舞いを行います
- 対象通貨ペアはAUD/CAD/CHF/EUR/GBP/NZD/USD/JPYの組み合わせの計28通貨ペアです
- 対象の時間軸は日足です
- 検証期間は1999年1月~2019年5月です ※通貨ペアによってばらつきあり
- スプレッドはMT4のデフォルト(現在の値)に設定しています
短期5本-長期25本設定の移動平均線ゴールデンクロスとデッドクロス
5本移動平均線が25本移動平均線を下から上に交差したら次の日の始値でエントリー。逆に上から下に交差しあたらドテンで空売りするという売買システムです。
結果はご覧の通り、右肩下がりに負ける結果になりました。
ただ、5分足や1時間足のようにスプレッド負けしているわけではないので、一直線に負け続けるのではなく、ギザギザした資産曲線にはなっています。
右肩下がりの負けに変わりはないですから、優位性は無いですね。
短期25本-長期75本設定の移動平均線ゴールデンクロスとデッドクロス
次に25本と75本のクロスです。
これもダメですね。ただ、先ほどの5本-25本と比較すると、多少はマシですね。本数設定が大きくなったので取引回数が減ったことでダマしに引っかかりにくくなったと思われます。
それでも優位性が無いことに変わりはありません。
本数設定を大きくするとダマしが減るようなので、本数をもっと大きくしてみます。
短期75本-長期200本設定の移動平均線ゴールデンクロスとデッドクロス
取引回数は減りましたが、パフォーマンスは改善しませんでした。
短期1本-長期200本設定の移動平均線ゴールデンクロスとデッドクロス
最後に極端な組み合わせとして、1本移動平均線と200本移動平均線のクロスです。1本移動平均線とはつまり日足の終値なので、日足と200本移動平均線のクロスということです。
これも全然ダメでした。短期の線の設定が短すぎるとダマしが多すぎでダメなようです。
日足の移動平均線ゴールデンクロスとデッドクロス まとめ
ということで、移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスでドテンする手法のまとめです。
移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスの手法は日足でも、FX市場においては優位性が無いことが分かりました。
5分足や1時間足のように1直線に負けるわけではないですが、右肩下がりであることに変わりはありません。
5-25ような一般的な組み合わせを使った場合、勝率は30%強(1/3)程度に落ち着き、1-200のような極端な組み合わせの場合、だましが多くなり勝率が下がる傾向にあるようです。
取引の性質としては、大きく勝って小さく負けるいわゆる損小利大な取引になりますが、コツコツ負ける回数が大きすぎるので、じりじりと負けながらたまに大きく取り返すといったことを繰り返し、スプレッドの影響で少しずつマイナスになってしまいます。
ここまで成績が悪いと、むしろ逆シグナルに優位性があるのでは?というレベルです。
移動平均線の手法はゴールデンクロスとデッドクロスだけではありません。今後も気を取り直して様々な移動平均線の手法をバックテストしてみたいと思います。
移動平均線のゴールデンクロス/デッドクロス 追加テスト
「移動平均線クロスはエントリータイミングとして適切なのか?」
という事を確認するため、「同じ条件エントリーした後、1日で決済する」
という検証を実施してみます。
つまり、サインが発生してエントリーした際、そのローソク足が陽線になるか、陰線になるかを確認することになります。
エントリータイミングとして適切な場合は、エントリーした直後に利益方向に動く傾向が高くなるはずです。
日足を使ったスクリーニングでゴールデンクロスのシグナルが発生したのを検出した人が、シグナル発生後1日目に買いを入れてくるなら、少なくとも1日ぐらいは上がるだろうという仮説です。
今回はサンプル数の多くなる5-25で検証しました。
移動平均線クロスの手法について追加検証してみました。
結果は、ご覧の通りFX市場全体としては全く優位性が無いことが分かりました。移動平均線のゴールデンクロスやデッドクロスの売買シグナルはほとんど意識されていないと思われます。
もっと詳しく分析すれば有効な使い方が見えてくるのかもしれませんが、少なくともゴールデンクロスが発生したから何も考えずに買いを入れるといった使い方では全く勝てないことは確かなようです。