僕が一番引っかかったのは、通期の予想が1セントも動かなかったことでした【アンジオダイナミクス(ANGO)2026年6〜8月期決算】

四半期の数字は、前年より良く出ました。それなのに、会社は年間の予想を1セントも上げませんでした。

血管の詰まりを取るカテーテルと、電気で前立腺がんの組織を壊す装置を売っている、アメリカの中堅の医療機器メーカーの話です。古い定番品(点滴用のポートやカテーテル)から、伸びている新しい3製品へ、売上の中身を少しずつ入れ替えている途中の会社です。

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※この記事で扱うのは、2026年10月8日に行われた、2026年6月〜8月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「本体を売って、使い捨てで稼ぐ」商売

この会社の決算を読むには、ひとつだけ先に知っておくことがあります。機械本体の売上と、使い捨て部品の売上は、意味がまったく違うということです。

家庭用のプリンターを思い出してください。本体は一度買えば終わりです。でもインクは、使うたびに買い足します。メーカーが本当に当てにしているのは、本体を置いたあとに何年も続くインクの売上のほうです。

この会社の看板製品のひとつ、NanoKnife(ナノナイフ)も同じ形をしています。病院に置く発電装置(ジェネレータ)が本体で、手術のたびに使い捨てる針状のプローブがインクにあたります。

💡NanoKnife=不可逆電気穿孔(IRE)という方法で組織を壊す装置。強い電気パルスで細胞の膜に元に戻らない穴を開ける、という仕組みです。この会社はいま、中間リスクの前立腺がんを治療する泌尿器科の医師向けに力を入れています。

ここで大事になるのは、本体が売れた四半期は数字が跳ねるけれど、それは繰り返さない、という点です。会社の財務責任者も、毎回のようにこう言います。

「機器本体の売上は、四半期ごとに常にばらつきます。なので、この伸び率が今後も続くとは見ていません。引き続き、使い捨て品をこの事業の指標と見てください」

つまり、この会社の将来を決めるのは「本体がいくつ置かれたか」より、「置かれた本体が、どれだけ使われ始めたか」です。今回の決算説明会で、いちばん大事な質問はそこに向かいました。そして、答えはそこだけ出てきませんでした。

四半期の数字は、確かに良くなっていました

まず実績です。

  • 売上 8,090万ドル(前年同期比 +6.9%。1ドル150円で約121億円)
  • 調整後EBITDA 500万ドル(前年同期は220万ドル)
  • 調整後の一株損益 −0.04ドル(前年同期は −0.10ドル)
  • 粗利率 59.4%(前年同期比 +4.1ポイント)

💡調整後=会社が「一時的だと考える項目」を除いた数字(non-GAAP)。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。この会社はまだ赤字で、その赤字が1株あたり0.10ドルから0.04ドルまで縮んだ、という意味です。
💡EBITDA=利払い・税金・設備の減価償却を引く前の利益。本業でどれだけ現金を生む力があるかを、ざっくり見るための数字です。

中身も具体的でした。伸びている新しい製品群(会社は「MedTech」と呼んでいます)は3,990万ドルで+13.2%。売上全体に占める割合は、前年同期の47%、前の四半期の48%から、49%まで上がりました。

その中で、血管の詰まりを内側から削り取るカテーテルAuryonは1,890万ドル(+14.7%)。これで21四半期連続の2桁成長です。血栓を吸い出す器具AlphaVacは450万ドル(+37.4%)で、前の四半期(+38.4%)とほぼ同じ高い伸びが続いています。

一方で、古い定番品の部門は4,100万ドル(+1.4%)で、ほぼ横ばいでした。新しいほうが伸び、古いほうが止まっている。売上の入れ替えは、数字の上では確かに進んでいます。

通期の予想は、前回と1セントも変わりませんでした

ところが、年間の見通しは動きませんでした。

財務責任者が読み上げた2027年度の予想は、売上3億3,600万〜3億4,100万ドル(前年度比+5〜6.5%)、新しい製品群が+12〜15%、古い定番品はほぼ横ばい、粗利率54〜55%、調整後EBITDA 1,300万〜1,600万ドル、調整後の一株損益 −0.29〜−0.24ドル。

3ヶ月前の決算説明会で、同じ人が読み上げた予想と並べました。数字も、幅も、まったく同じでした。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

市場の予想(一株損益の平均 −0.27ドル)も、会社の予想の真ん中とほぼ同じ場所にあります。上にも下にも、ずれていません。ただ、この会社の年間予想を出しているアナリストは最大でも3人で、平均といっても薄い数字です。

四半期では調整後の赤字が前年の半分以下に縮んだのに、その上振れを年間の予想に1セントも足していない。会社は「今回は達成した。でも年間の見方は変えない」と言っていることになります。

ひとつだけ前向きな新しい言い方がありました。「今年度中に、新しい製品群が売上の過半を占める見通しは変わっていない」。ただ、これは+12〜15%と横ばいという予想をそのまま計算すれば出てくる答えで、見通しを上げたという話ではありません。

3ヶ月前より、言い方が一段下がった製品がありました

言葉の変化は、全体としては小さいものでした。前回の決め台詞が、ほぼそのまま繰り返されています。その中で、はっきり向きが変わった製品が1つあります。血栓を吸い出すもう一つの装置、AngioVacです。

3ヶ月前:「AlphaVacは力強い成長を続け、AngioVacは、より普通の比較対象に対して成長に戻ると見ています」
今回:「AngioVacは、いまは少しニッチだと考えています。1桁台の成長くらいを見込んでいます」

「成長に戻る」から「少しニッチ」「1桁台くらい」へ。今四半期の売上は750万ドルで、前年同期比−5.9%。前の四半期(−15.8%)よりは下げ幅が縮み、前の四半期比では+9.1%でしたが、前年を下回るのは2四半期続いています。

前立腺がんにも使うNanoKnifeは830万ドル(+29%)。こちらは伸びていますが、前の四半期の+64.5%から半分以下に減速しました。しかも+29%の中身は、使い捨てプローブが+24.1%、本体が+53.5%です。さきほどの「繰り返さない」と会社自身が言っている側が、数字を押し上げています。

逆に、前に進んだ言葉も2つありました。1つは社長の後任です。3ヶ月前は「外部の人材会社と探している」でしたが、今回は11月2日付で新しい社長兼CEOが就くと名前つきで発表されました。もう1つは、前立腺肥大症(BPH)への応用です。3ヶ月前は「まだ市場の大きさを見積もっていない」と言っていたのが、今回は「約19億ドル(1ドル150円で約2,850億円)の市場機会と見ている」と数字が出ました。ただ、財務責任者は同じ回で「まだ初期段階」で、効果がどれだけ長持ちするかは「パイロット試験では答えが出ないと思う」とも言っています。売上につながるのは、ずっと先の話です。

3ヶ月前に並べていた臨床の話が、4つ消えていました

前の四半期、財務責任者は臨床面の厚みとして、こう並べていました。

「現在実施中のAlpha ReturnとPAVEの試験に加え、臨床戦略と製品戦略を導くために、主要な医師による世界的な循環器の医学諮問委員会を立ち上げました。そして、Ambition BTK試験を海外にも広げています」

今回、このうちPAVE試験も、医学諮問委員会も、一度も出てきません。Ambition BTK試験は「登録を進めている」とだけ言われ、「海外に」の部分が落ちました。

4つ目は、前の四半期にいちばん大きく取り上げていた外部の研究です。コーネル大学の医師による、放射線治療とNanoKnifeを組み合わせた前立腺がんの研究で、会社は前回「42人が登録」「12ヶ月時点の生検で陽性ゼロ」という数字まで読み上げていました。今回、この研究には一言も触れていません。

消えたからといって、試験が止まったとは限りません。言わなかっただけかもしれません。ただ、3ヶ月前に自分から並べた材料を、今回は並べなかった。その事実は残ります。

保険の話も、言い方が入れ替わっただけでした。前回は「他の地域の保険審査機関とも話をして、全国で一貫した償還を得る作業を仕上げる」。今回は「追加の地域と取り組んでいる。目標は全国で一貫した保険適用」。この3ヶ月で、新しい地域の決定は1つも出ていません。

💡保険の償還=アメリカの公的医療保険(メディケア)が、その治療の費用を払ってくれるかどうか。地域ごとの審査機関(MAC)が判断します。いまは1つの地域で前向きな判断が出た段階です。

「置いた本体は、いつ使われ始めるのか」に数字は返らず、粗利の上振れには繰り返さない分が混ざっていました

質疑応答の最初の質問が、この会社の核心そのものでした。

「本体を置いたあと、稼働率が上がるまでの時間軸をどう考えればいいか。置いた装置が、いつ使い捨て品の売上に本格的に効いてくるのか」

財務責任者の答えは、見る場所を変えるものでした。

「本体の設置はNanoKnifeを伸ばす一つの考え方ですが、より良い考え方は、使い捨て品の成長だと思います」
「稼働率は、どこに置くかによって装置ごとにばらつきます」

時期も、稼働率も、何台置いたかも出てきません。

同じ論点は、別のアナリストからも続けて出ました。1人目の質問者に続いて、2人目は「使い捨て品の売上が前の四半期から約20%減っている(質問者側の計算)。季節要因か、前の四半期に在庫の積み増しがあったのか、社内計画と比べてどうだったか」と聞きました。答えは「前の四半期(3〜5月期)は、いつも一年で一番大きい」という季節の説明で、在庫の質問には「重要な問いだとは思わない」と返しています。社内計画と比べてどうだったかには、触れていません。

3人目は「病院が装置を買っても、手術件数が安定するまで時間がかかるのは、何が引っかかっているのか」。答えは「個々の医師によって少しずつ違う」でした。

1つだけ、具体的な事実が出ています。「今四半期の手術件数は、前の四半期より多かった」。方向としては前を向いています。ただ、設置台数・設置済みの台数・1台あたりの手術件数は、この回では1つも開示されていません。3人が同じ場所を聞いて、3回とも数字が出なかった。 ここが未解決のまま残った点です。

もう1つ、粗利率59.4%は、見た目ほどきれいな数字ではありません。

この四半期、会社は関税の還付を120万ドル受け取っています。その分を差し引いた正味の効果が約40万ドルで、粗利率を1.6ポイント押し上げました。会社自身が「還付が無ければ57.8%だった」と言い、質疑応答でも「57.8%を基準として見るのが正しい」と答えています。

しかも、今年度の粗利は上半期のほうが高く、下半期は下がる、と会社は最初から言っています。年間で54〜55%に収まるという予想は変えていません。59.4%は、年間の平均より高い場所にある数字だと会社自身が説明しているわけです。

細かいけれど、気になった点もあります。同じ財務責任者が、質疑応答では年間の粗利率を「55〜56%」と言っていました。冒頭の説明は「54〜55%」です。言い間違いなのか、どちらかが本当なのかは、この回の中では確かめられません。

ほかにも、繰り返さない要因はいくつかあります。

  • NanoKnife本体の+53.5%は、会社が「この伸びは続かない」と明言している
  • コスタリカ拠点でのコスト削減は、ここ6四半期ほどで前倒しして効かせてきた分が入っている
  • AngioVacの落ち込みは、会社の説明では「前年の比較対象が強かった」ため。なら今後の戻りも、需要が増えたからではなく比較対象が普通に戻るから、かもしれません

現金も減っています。期末の手元現金は3,400万ドルで、前の四半期末の5,390万ドルから約2,000万ドル減りました。営業で出ていった現金が1,530万ドル。会社は、賞与や販売報奨の支払いが重なる「一年で一番現金を使う四半期」だと説明していて、年間では営業の現金収支はプラスになると見ています。借金はありません。

Auryonは21四半期連続、AngioVacは前年割れ

この会社の物語は、1つの四半期より長い時間で見たほうが分かりやすいかもしれません。

前の四半期の説明会で社長は、新しい製品群の売上比率が2020年度末の約22%から47%まで上がり、この6年間、年率約24%で伸びてきたと話していました。Auryonは21四半期、つまり5年以上、毎回2桁で伸びています。この入れ替えは、何年もかけて実際に進んできたものです。

ただ、いま伸びの3本柱のうち、AuryonとAlphaVacは前を向き、NanoKnifeは減速、AngioVacは前年割れが続いています。積み上がりは本物ですが、全部の柱が同じ向きを向いているわけではありません。

日付のついた次の節目は1つだけです。社長は、血液を体に戻す使い方を確かめる試験(Alpha Return)について、来年の早い時期にラベル(承認された使い方)に載ることを「望んでいる」と言いました。「望んでいる(hope)」という言い方で、約束ではありません。NanoKnifeの保険適用がいつ全国に広がるのかには、日付がありません。

次の決算で、NanoKnifeのプローブを見ます

今回の僕の読みは、「入れ替えは進んでいる。ただ、それを加速させる話には、まだ数字も日付も付いていない」です。

これが外れたと分かる形を書いておきます。

  1. NanoKnifeの使い捨てプローブの売上が、2四半期続けて伸びない
  2. 年間の売上予想、または新しい製品群の+12〜15%が下方修正される
  3. 今年度(2027年5月まで)のうちに、2つ目の地域の保険審査機関からの前向きな判断が1つも出ない

反対に、僕の読みより良い方へ外れる形もあります。会社が初めて、設置済みの台数や1台あたりの手術件数を数字で出してきたときです。今回3回聞かれて出さなかった数字なので、出てくれば、それ自体が会社の自信の変化になります。


ここに書いたのは、2026年10月8日の説明会で分かったことだけです。年間の予想は据え置かれ、本体が使われ始める速さは、まだ会社の口から数字で出ていません。

四半期の数字が良かったことと、会社が年間の見方を変えたかどうかは、別の問いでした。この会社は次の回で、その2つの間にある数字を出してくるかもしれないし、出さないかもしれない。僕は次の説明会でも、最初の質問がまた同じ場所に向かうかを見ています。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。医療機器・治療法の有効性や安全性を保証するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。