AIが仕事を速くするほど、仕事を請け負う側の売上は減るのか、増えるのか。
この問いに、いちばん大きな規模で答えを出し続けなければならない会社があります。世界中の大企業や政府から、システムづくりと業務の改革を請け負っている、従業員81万4,000人超のコンサルティング会社です。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年10月1日に行われた、2026年6〜8月期(同社の会計年度では2026年度の第4四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——コンサル会社は、何を売っているのでしょう
「コンサル」と聞くと、助言をして報告書を書く仕事を思い浮かべるかもしれません。アクセンチュアの中身は、それよりずっと現場寄りです。顧客企業のシステムを作り、動かし、業務そのものを代わりに回す。助言だけでなく、人の手を動かす仕事が大半です。
こうした仕事の値段は、昔から「何人が、何ヶ月かかるか」で決まってきました。日本のシステム会社でも、見積もりは「人月(にんげつ)」で出てきます。1人が1ヶ月働いていくら、の掛け算です。
ここにAIが入ってくると、どうなるか。仮に同じ仕事が半分の時間で終わるようになれば、人月で値段をつけている限り、請求額も半分になります。 顧客にとっては良い話で、請け負う側にとっては売上が縮む話です。
だから、この会社が逃げ道として進めているのが「固定価格」と「成果に応じた値段」です。かかった時間ではなく、出来上がったものに値段をつける。今回、この形の契約は受注の65%超まで増えたと会社は言いました(3ヶ月前は「60%超」)。
この記事の結論は、ここにつながっています。AIで仕事が速くなった分を、新しい仕事の量で埋められているのか。 それが、今回の決算で初めて少し揺らぎました。
売上は見通しの上限を超えて、+7%でした
まず実績です。
- 売上 187億ドル(現地通貨ベースで前年同期比 +7%)。1ドル150円で約2.8兆円
- 一株利益 3.29ドル(前年同期比 +9%)
- 新規受注 222億ドル、受注対出荷比率 1.2
- 通期の売上は 742億ドル(現地通貨で+5%、買収を除いた伸びは約3%)、調整後の一株利益は 13.97ドル(+8%)
💡現地通貨ベース=為替の動きを除いた伸び。円安・円高で数字が膨らんだり縮んだりしないように、各国の通貨のままで比べた数字です。
💡受注対出荷比率(book-to-bill)=この四半期に取った新しい仕事の金額を、この四半期に売上にした金額で割ったもの。1を超えていれば、こなした分より多くの仕事を取ってきた、という意味です。
3ヶ月前、会社はこの四半期の売上を「現地通貨で1〜5%の成長」と見積もり、さらに「マクロの不確実性を考えると、レンジのより広い範囲が射程に入る」と言っていました。下振れもあり得る、という言い方です。
着地は+7%。経営陣は今回、「ガイダンスの上限を上回った」と言いました。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。
受注の中身も厚いです。運用を丸ごと引き受ける「マネージドサービス」の受注は128億ドルで過去最高、受注対出荷比率は1.4。この四半期に1億ドルを超える受注をくれた顧客は37社、通期では1億ドル超の受注が141件で前年より12件多い。会社が最大級の取引関係と位置づける顧客は、年度末で317社です。
AIの数字は、自分で掲げた目標を上回りました
3ヶ月前、AIとデータの分野で新しく組んでいる提携先について、会社はこう言っていました。
3ヶ月前:「新興のAI・データ分野の主要な提携先からの受注を、2025年度比で2倍超にする軌道に乗っています」
今回:「8社の新興AI・データ提携先について、受注は2025年度比で3倍超、売上は2倍超になりました」
「2倍にする途中」から「3倍になった」へ。言っていたことを、言っていた以上の形で着地させています。
この四半期に初めて本格的なAIの仕事を始めた顧客は100社近く、年度の合計で400社超。AIとデータの専門人材は11万人近くまで増えました。
そして、3ヶ月前には無かった言葉が3つ出てきました
ここからが、僕がこの決算でいちばん長く読んだ部分です。
1つ目は、値段です。 価格の競争について質問されて、社長はこう答えました。
「2026年度の価格は、全体としては安定していました。同時に、第4四半期には、事業の多くの領域で価格が下がりました」
3ヶ月前の説明会では、価格が下がったという言葉は出ていません。今回が初めてです。しかも「一部で」ではなく「多くの領域で」。売上が上限を超えた同じ四半期に、です。
2つ目は、採用です。 来年度について、社長はこう言いました。
「来年度も採用はします。ただし、ペースは落ちます。その理由の一部はAIです」
3ヶ月前の説明会では、この年度に昇進した約12万4,000人を、前年より30%多いと祝っていました。人を増やし、上げていく話から、増やすペースを落とす話へ。理由にAIを自分で挙げています。
3つ目は、中東です。
「中東の直接的な影響は引き続き逆風で、実際には第4四半期に悪化しました。ただ、製品・資源業界の顧客の裁量的な支出への間接的な影響は、落ち着きました」
3ヶ月前は「第4四半期にはもっと影響が出ると考えている」と言っていました。その予告どおり、直接の影響は悪化しました。落ち着いたのは間接の影響だけです。財務責任者は、中東の影響の規模を年率でおよそ10億ドルと示しています。
一方で、AIそのものについての言い方は、ほとんど変わっていません。3ヶ月前は「AIは、規模が広がるにつれて当社と業界の追い風になると考えています」。今回は「AIを引き続き追い風と見ています」。良くなった話と悪くなった話が同時に出て、軸になる主張は据え置き。これが今回の言葉の全体像です。
3ヶ月前に大きく語っていたことが、今回は出てきません
変わったのは、出てきた言葉だけではありません。前の四半期に具体的に語っていたことが、今回は消えています。
3ヶ月前、この会社は新しい事業の立ち上げを発表していました。
「だからこそ、来週『Accenture Edge』という新しい事業を立ち上げます」
同じ説明会で、売上3億〜30億ドルの中堅企業の市場を「当社にとって2,400億ドル規模で、1桁台後半の成長をしている」と見積もっていました。
工場や発電所などの制御システムを守る、OTセキュリティについてもこう言っていました。
「この投資で、OTセキュリティで当社が狙える市場の規模は3倍超になります。この市場は2桁成長しています」
そして買収する会社について「年間の経常収益2億800万ドル、48%成長」という数字まで出していました。
今回の説明会では、Accenture Edgeの名前も、2,400億ドルの市場の話も、OTセキュリティの市場が3倍になる話も、2億800万ドルの数字も、一度も出てきません。OTセキュリティの買収については「9月にクローズし、規制の関係で約30億ドルの資金の支出が第4四半期から翌年度の第1四半期にずれた」という、お金の出入りの話だけが残りました。
もう1つ、気になる開示の変更があります。
「この1年で状況が変わったことを踏まえ、今後は上位10社の提携先と、新興のAI・データ提携先をひとつのグループとしてまとめて報告します。2027年度からは、この更新は年1回とします」
さっきの「受注3倍超・売上2倍超」は、まさにこの新興AI・データ提携先の数字です。この決算でいちばん良く見えた数字が、次からは別建てで見えなくなり、頻度も四半期から年1回に下がります。会社は理由を述べていますし、隠そうとしているとまでは言えません。ただ、AIの伸びを外から追う手がかりが1本減るのは事実です。
経営陣が答えなかったことと、上振れを支えたもの
質疑応答で、いちばん多くの人が聞いたのは「AIで仕事の単価が下がっていないか」でした。
聞き方は毎回違いました。価格の競争はあるか。契約を更新するときに、AIで効率化した分をどれだけ値引きしているか。顧客のIT予算が、AIの利用料に食われてサービスに回らなくならないか。エージェント型のAIが進むはずなのに、なぜ人員が増えているのか。角度を変えて、4人が同じ核心を突きました。
回答は最後まで定性的でした。財務責任者は「全体としての影響は、本当に安定しています」。社長は「AIによる生産性の向上を、確かに以前より多く顧客に提供しています。それでも全体の影響は安定していて、これまでと同じように、新しい種類の仕事や仕事の範囲の拡大で埋め合わせています」。
💡生産性を顧客に提供する=AIで速く終わった分を、値下げや同じ値段での作業量の上乗せという形で、顧客側の得にすること。
値下がりの率や、更新時にどれくらい単価が下がる前提なのかは、一つも数字で出てきませんでした。そして同じ説明会の中で、社長自身が「多くの領域で価格が下がった」と言っています。「影響は安定している」と「価格が下がった」が、同じ1時間の中に並んでいる。4人が聞いて数字が出なかったのは、まだ答えが無いという意味だと僕は読みます。
上振れの中身については、社長が自分から並べてくれました。
「小さな案件が増えました。新しい契約の立ち上げを、いくつか前倒しできました。買収した会社の寄与があり、連邦政府向けの事業も想定を上回りました。そして社員に有給休暇の繰り越しを認めたので、需要に対して人手がありました」
- 立ち上げの前倒し=社長の説明では「新しい契約を早く始められた、という意味」で、仕事そのものが増えたわけではありません。開始の時期がずれただけです
- 有給休暇の繰り越し=休むはずだった人が働けた分、売上にできる時間が増えました。毎年は使えない手です
- 買収=この年度は17件、49億ドルを投じています
社長は「どれか一つの要因が大きかったわけではない」と言っています。それでも、並んだ理由の多くが、来年も同じように効くとは限らない種類のものです。上限を超えた+7%は、そのまま実力の伸びとして来年に持ち越せる数字ではありません。
僕はここを、むしろ好感を持って読みました。有給休暇の繰り越しまで自分から言う経営陣は多くありません。良い数字の理由を、都合の悪いものまで含めて並べています。
来年度の見通しは、市場の予想にわずかに届きません
来年度(2026年9月〜2027年8月)の見通しはこうです。
- 売上:現地通貨で+3〜6%。うち買収による上乗せが2〜2.5%
- 営業利益率:15.9〜16.1%(0.1〜0.3ポイントの改善)
- 一株利益:14.39〜14.81ドル(今年度の調整後13.97ドルから+3〜6%)
💡営業利益率=売上のうち、本業の儲けとして残る割合。
買収の上乗せを引くと、自力の伸びは0.5〜4%です。今年度の約3%と比べて、中央では下がります。この点は質疑で「見通しは自力の成長の減速を示している」とアナリストから指摘されました。財務責任者の答えは「パイプラインは堅調で、大型案件への需要は続いている」まで。自力の伸び率を、数字で答えることはありませんでした。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が「14.60ドルくらい」と言っても、周りが14.65ドルと思っていれば、ほんの少し足りない数字になります。
一株利益の見通しの中央は14.60ドル。市場の予想の平均は14.65ドルでした(27人の平均)。次の四半期の売上見通しは189.5億〜196億ドルで、中央は約192.8億ドル。こちらも市場の予想の平均194.3億ドルを下回っています。
もう1つ。会社は来年度、自社株買いなどで発行済み株式の平均を約3%減らす見込みです。一株利益の見通しは+3〜6%。株の数が3%減れば、利益の総額が同じでも一株利益は約3%増えます。一株利益の伸びのかなりの部分は、株数の減少から来ることになります。
ひどい見通しではありません。今年度の上振れを踏まえて大きく上げた見通しでもありません。営業利益率の改善幅0.1〜0.3ポイントも、毎年のように出てくる、いつもどおりの幅です。
なぜ、いまアクセンチュアに「値段」の話が出てくるのか
AIの仕事が増えているのは本当です。100社近くが新しくAIの仕事を始め、提携先経由の受注は3倍超になりました。製薬会社の案件では、臨床試験のシナリオを作って分析するのにかかる時間が「10日から10分」になったという実例も紹介されています。
ただ、この「10日から10分」こそが、冒頭の人月の話です。顧客にとっては劇的な成果で、請け負う側から見ると、1件あたりの仕事の量が縮む話でもあります。
会社はこれを、新しい種類の仕事と範囲の拡大で埋めていると言っています。実際、受注は増え、AI人材は11万人近くまで増えました。ただ、3ヶ月前の説明会で社長自身が、AIの案件について「まだ小さいものの、平均の規模は着実に大きくなっている」と言っていました。今回も「顧客の準備の段階はまちまちで、多くはAIの取り組みを始めたばかり」「企業全体のAI変革の芽が引き続き見えている」。3ヶ月前と同じ「芽」という言葉です。
つまり、いまのアクセンチュアの中では、AIが既存の仕事を速くする力(単価を下げる方向)と、AIが新しい仕事を生む力(量を増やす方向)が、同時に動いています。新しい仕事はまだ「芽」の段階。効率化のほうは、もう価格に出始めた。今回の決算は、その2つの力の向きが、初めて言葉の上で並んだ回でした。
大型の案件は、売上になるまで何年もかけて積み上がると財務責任者は説明しています。だから、受注が厚いことは、来年すぐの大きな伸びを意味しません。来年度の見通しそのものが、自力で0.5〜4%です。
次の決算で、何を見れば僕が間違っていたと分かるか
今回の読みは「良い四半期の中に、値段の弱さが初めて出てきた回」です。
この読みが外れていたと分かるのは、来年度の最初の2つの四半期で、会社が自力の伸びを4%以上だと数字で言い切ったときです。そうなれば、新しい仕事の量が単価の下落を十分に上回っていることになり、「価格が下がった」は一時的な話だったことになります。
逆に、読みより悪い方へ進む形もあります。「価格が下がった」という言葉が次の回も続き、そのうえで営業利益率の見通し(15.9〜16.1%)か、一株利益の見通し(14.39〜14.81ドル)が引き下げられる場合です。それは、AIの追い風という会社の主張そのものが試される局面になります。
そしてもう1つ、言葉ではなく沈黙を見ます。Accenture Edgeと中堅企業の市場の話が、次の回でも出てこないかどうか。3ヶ月前に「来週立ち上げる」と言った新事業が2回続けて語られなければ、それは語れる成果がまだ無いということです。
ここに書いたのは、2026年10月1日の説明会までに分かっていることだけです。値段の話も、新事業の話も、次の回でまた動きます。
AIは、仕事を請け負う会社にとって、追い風と向かい風を同時に運んできます。どちらが勝っているかは、1回の決算では決まりません。前の回と今回を突き合わせて、言葉の向きが変わった場所を1つずつ拾っていくしかありません。この会社については、来年度の最初の決算で「価格」という言葉がどう語られるかを待っています。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。