AIの設備投資ブームで、いちばん分かりやすく儲かっているのは誰か。チップを作る会社だと思われがちですが、その隣で同じだけ忙しくなっている会社があります。
ジェイビル(Jabil)。他社のブランドで、AIサーバーのラックや液冷の部品、データセンター用のストレージを作っている会社です。
💡 こういう会社をEMS(受託製造)と呼びます。自分のブランドでは何も売りません。 日本の読者にいちばん近いのは、iPhoneを作っている鴻海(ホンハイ/Foxconn)の立ち位置。Jabilはその米国版で、顔は出さずに中身を作る側です。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年9月30日に行われた、ジェイビルの2026年度 第4四半期および2026年度通期(2026年8月31日締め)の決算説明会です。ジェイビルの会計年度は8月末で終わるので、2026年度は暦の2025年9月〜2026年8月にあたります。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
その前に——受託製造の売上は、自分では決められません
ここを押さえると、この決算の読み方が変わります。
ふつうのメーカーは、自分で作って自分のブランドで売るので、売れ行きは自分の商品力の結果です。受託製造は違います。客が「来年これだけ作ってくれ」と言った分だけが売上になる。つまり売上は、客の設備投資計画の写しです。
だから受託製造の会社を見るとき、効く問いは「この会社は強いか」ではなく、「客はもう発注したのか」になります。
💡 発注済みかどうかが決定的なのは、工場を建ててから客が来るのでは遅いからです。先に床を用意して、埋まらなければ固定費だけが残る。空いた工場は、この業態でいちばん高くつきます。
今回ジェイビルは、そこをはっきり言いました。
We have a line of sight to all the capacity that we’re adding. We have booked orders. We have customers ready to go.
(増やしている生産能力の全部について、見通しが立っています。受注は入っています。客はいつでも始められる状態です)
床は約37万平方メートル(4百万平方フィート)増やしています。その床に入る分が、受注として先に埋まっている、という話です。
数字は、素直に強かった
2026年度 第4四半期の実績
- 売上 106億ドル(前年同期比 +29%)。6月時点の自社見通しの中心値を10億ドル超も上回った
- AIインフラ関連(会社の言う intelligent infrastructure)の売上 58億ドル(+56%)
- 調整後(non-GAAP)の1株利益 4.40ドル/会計基準どおりでは3.76ドル
2026年度 通期
- 売上 360億ドル(+21%)。1ドル150円で約5兆4,000億円
- 調整後1株利益 13.09ドル/会計基準どおりでは9.75ドル
- AI関連の売上は 約144億ドル(前年から+54億ドル)
💡 調整後(non-GAAP)=一時的な費用などを除いた、会社独自の基準。この会社は両方を並べて出していて、通期なら調整前が9.75ドル、調整後が13.09ドル。その差が「除いた分」です。
そして来年(2027年度)の見通しが、この決算の主役でした。
- AI関連の売上を 約221億ドル(+54%) と、初めて金額で提示
- 調整後1株利益 17.55ドル(+約34%)
- 営業利益率 6.1%(+0.3ポイント)
3ヶ月前の決算では、同じCEOがこう言っていました。
I expect AI-related revenue growth in FY27 in percentage terms to be similar to FY26.
(2027年度のAI関連売上の成長率は、2026年度と同程度になると見ています)
そのうえで、こう付け加えていました。
but let’s have some caution in — I want to make sure that we don’t get carried away with the numbers there.
(ただ、少し慎重にいきましょう。数字で舞い上がらないようにしたいと思っています)
「数字で舞い上がらないように」から、3ヶ月で「221億ドル・54%増」へ。 しかも今回は「6月の我々の想定よりも高い成長率で」と、自分の前回見通しを超えたことまで明示しています。言葉としては、はっきりした格上げです。
ただし、全部が伸びているわけではありません。消費者向けの事業(connected living)は、前期に自分で上方修正した27億ドルから、今回は15%減って約23億ドルになる見通しへ反転しています。
一時要因についても書いておくと、この決算に利益を嵩上げしたものは見当たりません。売上の伸びは数量そのもので、調整後と会計基準どおりの数字を両方出しています。ただし利益率は年の後半に寄ると会社が明言していて、理由は「それだけの床を増やしたときに出る立ち上げコスト」。最初の数四半期の利益率が低いのは設計どおりということで、ここは一時要因というより順番の話です。
ただし、その上積みはどこに入っているのか
良いニュースの数え方が、ここで変わります。
通期ガイダンスは市場の予想を上回りました。どれくらい上かというと、売上で約16億ドル、1株利益で約70セント——これは電話会議の場でアナリストが挙げた数字です(市場予想の水準は集計元によって幅があるので、ここでは本人の言った前提のまま使います)。強そうに見えます。
でも、あるアナリストが電話会議の場で、その中身を割ってみせました。
you’re guiding $1.6 billion, $0.70 above Street, right? But some investors might say, well, $1 billion and $0.40 of that is already in 1Q.
(16億ドル、70セント上を出していますよね。でも投資家の一部はこう言うかもしれません。そのうち10億ドルと40セントは、すでに第1四半期の中に入っているじゃないか、と)
つまり年間の上積み16億ドルのうち10億ドル=6割以上が、最初の3ヶ月分。残りの9ヶ月は、ほぼ市場の予想どおりということになります。
ここは少し込み入っています。一度で分からなくても大丈夫なので、ゆっくり行きます。
💡 年間の目標を「前よりだいぶ高く」出したのに、その上積みのほとんどがもう始まっている最初の3ヶ月で説明できてしまう。つまり残りの9ヶ月分は、ほとんど上積みされていません。
この指摘に、経営はこう答えました。
Look, we’re always appropriately conservative.
(我々はいつも適切に保守的です)I do expect each of the quarters to outperform the year-on-year quarter comps.
(各四半期が前年同期を上回ることは見込んでいます)
数字では否定していません。 「保守的だから後で上がる余地がある」という性格の答えで、「上積みがQ1に偏っている」という計算そのものを崩してはいません。
同じ論点——年間の利益率がどう積み上がるのか、期末にどの水準で走っているのか——は、4人の別々のアナリストから繰り返し聞かれました。冒頭の質問は特に鋭くて、「6.1%の営業利益率のうち、単純に数量が増えたことによる分はいくらで、自助努力による分はいくらか」という分解の要求でした。回答は上半期45%・下半期55%という配分と立ち上げコストの説明までで、求められた分解は最後まで出ていません。
そして、会社が今回語らなかったこと
良いニュースの隣に、静かになったものが3つありました。
- インドのデータセンター案件で、前期に条件まで示していた「正式契約」の話が消えました
- 3社目のハイパースケーラー向けの売上が、金額から「控えめな貢献」という言葉に戻りました
- ノースカロライナの立ち上がり規模(年10億→20億→30億ドル)と、メンフィスの話が出てきません
主なものを2つ。インドの案件は、前期は専用の段落を割いて「高密度AIラックの複数ギガワット規模の製造能力に注力する」と説明し、「正式な枠組みが結ばれるまでにはまだ作業が残っている」という条件まで自分から開示していました。今回は「インドのデータセンター建設には、提携を通じて極めて強気です」の一節だけ。3ヶ月後の、しかも年に1度の投資家向けブリーフィングの回なのに、その正式契約が結ばれたのかどうかに一言も触れていません。
3社目のハイパースケーラーは、前期が「2027年は数億ドル規模で、2028年には急速に10億ドル超へ拡大する」でした。今回は「2027年は控えめな貢献で、その先にはより大きな機会がある」。金額が言葉に戻るのは、後退です。
いちばん効く制約は、メモリでした
ジェイビルで供給網を見ている責任者は、いま何に困っているかをはっきり言いました。
Memory, in particular, is being reallocated towards AI and hyperscale demand.
(とくにメモリが、AIとハイパースケールの需要へ振り向けられています)
そして「夜も眠れないのは、いまも部材の確保だ」と続けています。前の四半期、同じ制約についてCEOは「問題ではあるが、そこまで寝られなくなるほどではない」と言っていました。3ヶ月で、会社としての制約の認識は確かに強くなっています。 今回はCEO自身も「この市場のメモリ制約については引き続き保守的に見ている」と、見通しに織り込んだことを明言しました。
同じ週、そのメモリを売っている側の決算もありました。そちらは2027年の値段をすでに決め終えて、生産量の4分の3が約束で埋まっていると言っています。買う側の「眠れない」と、売る側の「売り切れた」は、同じ現象の両側です。
なぜ、いま受託製造にこれが起きるのか
ひとつは、客の数と大きさが変わったこと。 AI関連で売上が10億ドルを超える客は、2年前は1社でした。いまは4社。来年はAI関連で10億ドル超が5社、AIインフラ事業全体では6社になる見通しで、2社目のハイパースケーラーは「売上の10%を超える客」になると会社は見ています。しかもその2社目は、ひとつの機能から始まって、年10億ドル超のストレージの仕事に育った客です。今年のデータセンター案件の大口6件のうち4件は、設計の相談から始まっています。
もうひとつは、設備が先に建っていること。 床を約37万平方メートル増やし、その分が受注で埋まっている。しかも設備投資は売上の1.5〜2%(AIインフラ単体では売上の1%程度)で、身軽なまま増やせているという説明です。
💡 ここが受託製造の面白いところで、客の投資ブームの波を受けるのに、自分の資産は重くならない形を取っています。だから客の発注が止まった瞬間に、こちらも軽く止まれる——はずです。そこは次の不況まで分かりません。
これは「今この瞬間」の見立てです
言葉の格上げははっきりしていました。 数字を出さなかった会社が、金額で出した。それ自体は本物です。
そのうえで、年間の上積みの6割が最初の3ヶ月に入っているという指摘には、まだ数字で答えが出ていません。
「上積みがQ1だけだった」と分かるのは、こういうときです。
- 第2四半期以降の実績が、市場の予想を上回らなくなったとき
- AI関連の年間売上221億ドルが、下方に動いたとき(この会社は3月・6月・9月と3回連続で上げてきました)
- メモリの制約について、「保守的に見ている」が「見通しを下げる」に変わったとき
床は建っていて、受注も入っている。あとは、上積みが最初の3ヶ月だけの話だったのかどうかです。だから僕は毎回、全部読みます。
3ヶ月後に、この3つがどうなったかを書きます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。