既存店13%増に喜びかけたら、CFO本人が半分はFTCの追い風だと認めました【カーマックス(KMX)2026年6〜8月期決算】

派手な数字が出た決算でした。既存店の販売台数は、前の四半期がマイナスだったのに、今回はプラス13%。1株利益は81%増。

ふつうなら「復活した」と書く場面です。

でも、その日の最初の質問に答えたCFOが、自分から水を差しました。

カーマックス(CarMax)は、アメリカ最大の中古車屋です。

💡 日本でいえばガリバー(IDOM)の立ち位置。店で中古車を売り、同じ窓口で自社のローンを組み、延長保証も付けて売ります。売るだけでなく、一般の人から車を買い取るのも仕事です。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年9月29日に行われた、カーマックスの2027年度 第2四半期(2026年8月31日締め=暦の6〜8月)の決算説明会です。カーマックスの会計年度は2月末で終わるので、年度の数字は暦年と1年ズレます。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

その前に——アメリカの中古車広告で、去年までやらなかった取り締まりが始まりました

ここが分からないと、この決算の意味が反対に読めてしまいます。

アメリカの中古車屋には長いあいだ、「広告に出す価格」と「実際に払う総額」が違うという商習慣がありました。店頭やサイトに安い価格を出して客を呼び、契約の段で書類手数料や各種フィーが足されていく。日本の「車両本体価格○○円+諸費用」が、もっと強い形で残っていたと考えてください。

そこに、連邦取引委員会(FTC)が「広告価格には必須のフィーを含めなければならない」という取り締まりを本格的に始めました。2026年3月には、97のディーラーグループに警告状が出ています。会社の説明では、実際に動きが見えたのは2026年5月です。

ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。新しい法律ができたわけではありません。 CEO自身が、同じ説明会でこう言っています。

Again, these aren’t new guidelines. These guidelines have existed. This was basically saying they were going to enforce compliance.
(繰り返しますが、これは新しい指針ではありません。指針はもともと存在していました。今回はつまり、当局が遵守を執行していくと言った、ということです)

💡 つまり「ルールが変わった」のではなく、守られていなかったルールを守らせ始めた。法律が中古車を安くしたのではなく、値段の見せ方が業界全体で揃わされたという話です。

ここで何が起きるか。もともと総額に近い出し方をしていた店は、何もしなくても急に安く見えるようになります。 カーマックスはそちら側でした。

つまりこの四半期の好調には、「自社が強くなった分」と「同業が縛られた分」が混ざっています。 そして会社は、その比率を自分で言いました。

「半分は我々がやったこと。もう半分はFTCです」

最初の質問は、1台あたりの粗利が会社の通期計画より良く着地した理由についてでした。CFOの答えがこれです。

So those items that we control directly we think is about half of the comp performance, while the other half is really coming from what we think is the FTC enforcement benefits that we’re seeing.
(我々が直接コントロールしている要素が、既存店の伸びのおよそ半分だと考えています。残りの半分は、いま見えているFTCの執行による便益から来ているものです)

💡 既存店の伸び(コンプ)=新しく開けた店の分を除いて、前からある店だけで比べた売れ行き。店舗数を増やして売上が増えたのか、1店1店が強くなったのかを分けるための数字です。

では、この追い風はいつまで続くのか。ここで会社の見方と、僕の見方が分かれます。

会社の説明は「続く」です。

really, May is when we saw actually movement there. So again, we have until May and then certainly thereafter to benefit.
(実際に動きが見えたのは5月です。ですから、5月までも、そしてその後も確かに恩恵を受けられます)

CEOも「業界の大多数がその方向へ向かっていて、それはカーマックスにとって追い風だ」と言っています。会社は、この追い風が終わる日付を言っていません。

ただ、僕が気にしているのは別のことです。比べる相手が入れ替わります。

取り締まりが効き始めたのが2026年5月なら、2027年5月以降の「前年同期」は、すでに取り締まりが効いていた期間になります。同じ追い風が吹き続けていても、前年と比べた伸びのほうには出てこなくなる。

💡 追い風が止まることと、追い風が数字に出なくなることは、別の話です。ここは会社の発言ではなく、僕の計算です。 会社は「その後も恩恵を受けられる」と言っていて、それはおそらく正しい。でも「前年比+13%」という見え方のほうは、2027年5月を境に変わります。

言葉は、はっきり変わっていました

ひとつ前の決算説明会で、CEOは自社をこう評していました。

Our core operations are not yet fast and efficient enough. Retail prices and selection must continue to improve, and our costs remain too high.
(我々の中核業務は、まだ十分に速くも効率的でもありません。小売価格と品揃えは改善を続けねばならず、コストは依然として高すぎます)

今回はこうです。

Our strong second quarter results reflect solid execution and the initial benefits we are seeing as we deliver on the strategy.
(好調な第2四半期の結果は、着実な実行と、戦略を実行に移す中で見えてきた初期の便益を反映しています)

自己批判から、実行の成果へ。そして今回は、言葉より重い変化が1つありました。

前期は株主還元について「適切な時期にそうするつもりです」でした。今回は「第3四半期に自社株買いを再開します」。残っている枠は13.1億ドル(1ドル150円で約1,965億円)です。

💡 自社株買い=会社が自分の株を買い戻すこと。配当と並ぶ株主還元の手段で、手元のお金に余裕があり、先行きに自信があると判断したときにやります。「適切な時期に」から「来期やります」への変化は、言葉でなく行動です。

数字そのものは、たしかに良かった

2027年度 第2四半期の実績

  • 総売上 79億ドル(前年同期比 +19.5%)。1ドル150円で約1兆1,850億円
  • 小売+卸の販売台数 387,735台(+14.7%)
  • 既存店の中古車販売台数 +13.0%(前の四半期は −0.8%)
  • 1株利益(希薄化後) 1.16ドル(前年 0.64ドル・+81%)
  • 販管費は総台数あたり 1,621ドル(−157ドル・−9%)

1株利益は調整後ではなく、会計基準どおりの数字です。一時的な費用を除いて見栄えを整えた数字ではない、という点は公平に書いておきます。

一方で、1台あたりの粗利は下がっています(小売2,105ドル・前年比−111ドル)。これは事故ではなく意図で、値段を下げて台数を取るという今年一貫の方針です。経営は「今年は通年でも四半期ごとでも、1台あたりの粗利は前年より下がる見込み」と明言しています。

💡 1台あたり粗利(GPU)=車1台を売って残る利益。小売業の体力そのものです。ここを削って台数を増やすのは、薄く広く売る側に舵を切ったということ。

外から確認できる物差しも1つ出ていました。中古車の情報サイト Cars.com で「great deal(お買い得)」と格付けされたカーマックスの在庫の割合が、前年同期の2倍以上になっています。値下げは、ちゃんと客に見える形で効いていました。

それでも、会社が今回語らなかったこと

強くなったのは小売で、静かになったのは金融でした。

  • 「売った車の半分にローンを付ける」という目標が、今回は消えました
  • 自社ローンの第2階層でのシェアが、前期の25%から22%へ下がりました
  • 全体のローン付帯率も下がりました(40.9%・前年42.6%)
  • そして新たに「金融部門の今年の利益は、去年をわずかに下回る」と言いました

ひとつずつ。前期は金融部門の責任者が、聞かれた範囲を超えて先の話まで語っていました。「50%という数字は中期目標として出したもので、中期という言葉は慎重に選んでいます。それより大きくなり得ると考えています」。今回、50%にも中期目標にも一言も触れていません。シェアは「第2階層の22%を融資した、1年前は10%だった」という前年比の枠に置き換えられ、前期に自分で言った25%とは並べられていません。

詳しい説明は、11月3日の戦略アップデートへ先送りされました。

81%という伸びも、事業の力だけで作られたものではありません。 内訳に、ローン債権の売却益1,700万ドル、株式投資の未実現評価益1,500万ドル、そして貸倒引当が前年比で2,900万ドル減った分(前年に古い契約の成績悪化で積み増したものが、今期は要らなくなった)が入っています。会社は車種構成の上振れについても「今期は高めの価格帯が強かったのでそちらを多く売った。それは今期だけのことで、先の四半期では変わり得る」と自分で限定しました。

逆向きの一時要因も1つあります。前年の賞与費用が異常に低かったので、今期の人件費は前年比で1,100万ドル増えています。 これは81%を膨らませた側ではなく、足を引っ張った側です。

加えて、後半の見通しを数字で聞かれたCFOは、こう答えています。

In terms of an outlook for the back half of the year, look, you know, we captured it in our prepared remarks.
(下半期の見通しについては、冒頭の説明で申し上げたとおりです)

数字は出ませんでした。 同じ論点——13%の伸びと粗利を、比較が楽でなくなった後も自力で維持できるのか——は、複数の別々のアナリストから繰り返し聞かれています。回答はどれも定性的なものでした。

なぜ、いま中古車屋にこれが起きるのか

ひとつは、さきほどの取り締まり。 同業が「安く見せて後で足す」をできなくなり、もともと総額に近かった店の価格が相対的に際立った。これは自社が強くなったのではなく、相手が縛られた変化です。そして前に書いたとおり、追い風そのものは続くけれど、前年と比べた伸びのほうには2027年5月を境に出てこなくなります。

もうひとつは、地味な自社側の実行。 こちらは取り締まりと関係なく残ります。

  • 価格の付け方を細かくした(地域ごとの相場をより細かく取り込み、比較対象の車種を広げた)
  • 仕上げ(整備)のコストを下げ、保証期間を90日から30日に短くして、その分を車両価格の引き下げに回した
  • 店とコールセンターの受電を100%、AI音声に対応させた
  • 延長保証の商品を作り直し、1台あたりのマージンを46ドル増やした
  • 一般客からの買取はほぼ前年並み(約262,000台)だが、ディーラーからの仕入を+54%(約48,000台)に伸ばした

保証を90日から30日に短くした、という項目は、読者として気持ちのいい話ではないと思います。でもこれが値下げの原資の一部で、会社が自分の口で説明していることなので、そのまま書きます。

これは「今この瞬間」の見立てです

今回のカーマックスは、自力で良くなった部分と、業界の変化に乗った部分と、静かになった部分が、1時間の中に全部入っていました。

外れたときに自分で気づけるように、見るものを先に書いておきます。

  • 既存店の伸びが一桁台へ減速したとき(毎回、冒頭でCFOが数字を言います)
  • 「FTC」という言葉が説明から消え、半々の内訳が示されなくなったとき
  • 金融部門の「今年は去年をわずかに下回る」が、「大幅に下回る」へ変わったとき
  • 第2階層のシェアが22%からさらに下がったとき

業界の変化に乗った半分は、いずれ前年比の数字から消えます。そのとき自力の半分がどこまで伸びているか。僕が次に見るのは、そこです。

11月3日の戦略アップデートで何が出るかも、出たら書きます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。