3ヶ月前、この会社は「コストが上がったのは一時的です」と言いました。
今回、その約束はきちんと数字で返ってきました。生産は前の四半期の2.5倍を超え、1ポンドあたりのコストは大きく下がっています。ここまでは、気持ちのいい決算です。
それでも読み終えたとき、手元に残ったのは別のことでした。アナリストが3人、角度を変えて来期の生産量に迫り、3回とも同じところで答えが止まったからです。
扱うのは、ウラニウム・エナジー(UEC)。アメリカの国内でウランを掘っている会社です。ワイオミング州とテキサス州に鉱山を持ち、掘ったウランを電力会社や政府に売ろうとしています。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年9月29日に行われた、2026年5〜7月期(同社の会計年度では2026年度の第4四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——ウランを「井戸で掘る」とは、どういうことでしょう
鉱山と聞くと、山を削る露天掘りや、地下に掘ったトンネルを思い浮かべると思います。この会社のやり方は、そのどちらでもありません。
地上から地下の鉱床まで井戸を何本も掘り、そこへ溶液を流し込んで、岩の中のウランを溶かします。溶けたウランを含んだ水を別の井戸から汲み上げ、地上の工場で取り出して、乾かして、ドラム缶に詰める。岩を運び出さない採掘です。英語では in-situ recovery(ISR)、「その場で回収する」と呼ばれます。
日本で一番近い実物は、温泉の源泉だと思います。地下から汲み上げる設備と、それを受ける施設がある。ちがうのは、汲み上げたものからウランを取り出すところです。
この記事でもうひとつ覚えておいてほしい言葉が、ヘッダーハウスです。井戸の群れをまとめて、流量を管理する小屋のことです。井戸を何本掘っても、このヘッダーハウスが動かなければ汲み上げは始まりません。そして1基ずつ、州や連邦の規制当局の承認が要ります。
この仕組みが、今回の決算をそのまま説明します。生産量にいちばん大きく効くのは、承認されたヘッダーハウスの数です。だから承認がいつ下りるかが、ほぼそのまま来期の生産量になる。 3ヶ月前に生産が落ち込んだのも、今回戻ったのも、ここが理由でした。
「一時的です」は、本当に一時的でした
3ヶ月前の説明会で、社長はこう言っていました。
「この四半期は1ポンドあたりのコストが上がりましたが、一時的で、主にタイミングの問題だと見ています」
前の四半期(2026年2〜4月期)は、新しいヘッダーハウスの承認が遅れ、生産は3万2,000ポンドにとどまりました。1ポンドあたりの総コストは54.61ドルです。
今回、社長は自分の言葉を引き取りました。
「前回の説明会で、新しいヘッダーハウスが生産を押し上げること、第3四半期に見られた1ポンドあたりのコスト上昇は一時的であることをお伝えしました。実際にそうなりました」
数字はこうです。
- 四半期の生産量 約8万3,000ポンド(前の四半期比 +157%)
- 1ポンドあたりの現金コスト 約30ドル、総コスト 約36.50ドル(前の四半期は46.69ドルと54.61ドル)
- 主力のワイオミングの鉱山は生産が2倍の6万5,000ポンド超になり、総コストは1四半期で35%下がりました
- テキサスの鉱山は、今回が初めて丸ごと稼働した四半期で、1万7,000ポンド超
ウランの量はポンドで数えます。1ポンドは約0.45kgで、この四半期の生産8万3,000ポンドは約38トンです。
💡現金コストと総コスト=現金コストは、その場で出ていくお金(薬剤・電気・人件費など)。総コストは、それに設備の減価償却なども足したもの。
社長はもうひとつ、この1年を1文で言いました。「12ヶ月前、私たちは1つの州の1つの鉱山でしか生産していませんでした。今は2つの州の2つの鉱山で生産し、3つ目の建設も大きく進んでいます」。そして「2026年度は基盤を作った年。2027年度は、それを拡大し始める年です」。
ただし、+157%の多くは谷からの戻りです。比べている前の四半期そのものが、承認の遅れでへこんだ谷でした。ワイオミングでコストが35%下がったのも、同じ工場により多くのウランを通したからで、社長は前の四半期に「操業コストの大部分は固定費」と言っています。量が落ちれば、同じ形で逆に動きます。
テキサスの数字は、最初の生産エリアの「小さな一部分」だけを動かした段階の値です。そして一時的ではないコストもあります。前の四半期、財務責任者は、ワイオミング州の税の計算に使う係数が引き上げられ、2026年から2029年まで適用されると説明していました。こちらは今後4年続く上乗せです。
1年で売ったのは40万ポンド。残りは、売らずに持っています
年間の数字も出ています(同社の2026年度=2025年8月〜2026年7月)。
- 年間の生産量 22万9,000ポンド超(総コストは1ポンドあたり39.94ドル)
- 年間の販売 40万ポンド、平均の販売価格は1ポンド93.13ドル
- 年間の売上 3,730万ドル(1ドル150円で約56億円)、粗利は1,690万ドル
💡粗利=売上から、売ったウランの原価を引いた残り。
ここで目を引くのは、売った量より、持っている量です。期末の在庫は126万ポンド(約570トン)。いまの市場価格で約1億900万ドル(約164億円)で、社長は「今年の売上のほぼ3倍」と言いました。
「もっと多く売ることもできました。私たちは売らないことを選びました」
手元の現金は4億9,500万ドル、換金しやすい資産は合わせて7億5,300万ドルで、借金はありません。急いで売る理由が無い会社です。
この会社の売上は、何ポンド掘れたかではなく、何ポンド売ると決めたかで決まります。だから四半期ごとの売上は、生産の伸びと一緒には動きません。
経営陣は、来期の生産量を一度も数字で言いませんでした
僕がいちばん知りたかったのは、2027年度にこの会社が何ポンド掘れるのか、でした。
質疑応答では、3つの証券会社のアナリストが、そこへ向けて別々に質問しました。年間の見通し、定常的な生産水準、ヘッダーハウスを建てるペース。聞き方は違いますが、どれも来期の生産量につながる質問です。
3回とも、生産量の数字は出ませんでした。社長の答えはこうです。
「承認のペースがもっと予測できるようになり、稼働している設備がまとまった規模になれば、ガイダンスを出して、もっと具体的に話せると思います。それまでは、毎四半期に私たちが出す実績で判断していただくのが一番だと思います」
ガイダンスは出せるようになったら出す、という答えです。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。この会社は、生産量も売上も、来期の数字を出していません。
別のアナリストには、「お尋ねの水準に到達する予測を話すのは、今日の時点ではまだ早すぎます」と答えています。
数字を出さない理由は、正直に言っています。
「昨日の良い知らせがあってもなお、その作業の多くはまだこれからです。そしてそれは、私たちがコントロールできる範囲の外にあります」
ここが、3ヶ月前と逆向きに動いたところです。前の四半期、承認の遅れについて社長は「遅れはありましたが、それはもう解決した遅れです」と言っていました。解決した、から、まだこれから、へ。生産を決めるのは承認で、その承認は会社の外にある。最初に書いた井戸とヘッダーハウスの仕組みを、社長自身が認めた形です。
説明会では、前日に待っていた5基のヘッダーハウスのうち4基が最終承認を受けたと明かしました。数週間のうちに生産を始める予定で、ほかに3基を建設中、さらに1基が承認待ちです。来期の生産が増える材料は、はっきり在ります。それでも、それが何ポンドになるかを会社は言いませんでした。言えないのだと思います。
売り先は、まだ1本も決まっていません
生産の次は、売る側です。
最初の質問は、2027年度に継続的な販売ができるか、でした。社長に続いて、副社長の1人が答えています。長期契約の価格水準が「1ポンド100ドルかそれ以上に近づいているかもしれない」と言い、価格の上限を付けない提案に手応えが出ていると説明して、こう締めました。
「この先数ヶ月のうちに、電力会社との長期契約の締結に成功する可能性も、排除はしません」
「排除はしません」。つまり、まだ締結はしていません。同じ答えの中で副社長は、今年の前半、電力会社の契約は消費量を補う水準に届かなかったとも認めています。
政府の需要にも、同じ距離があります。アメリカの核兵器と海軍の燃料を担う政府機関(NNSA)が、年間400万ポンドのウランと、UF6の形で年間1,500トンの米国産を、早ければ2030年から買う方針を示しました。
💡UF6(六フッ化ウラン)=掘ったウランは、そのままでは燃料になりません。いったん気体にできる形に変える「転換」という工程を通ります。その転換後の形がUF6です。
前の四半期、社長はこの分野について「ロシアと中国の外では、UF6の商業的な能力が足りない」と、数字の無い言い方をしていました。今回は400万ポンドという数字が付きました。社長も「これまで、政府の需要が年間何百万ポンドだと指させる数字は無かった。今は数字がある」と強調しています。
ただ、副社長自身がこう説明しています。
「政府調達の言葉で言うRFI(情報提供依頼)は、正式な提案依頼を出す前の、最初の一歩です」
数字は出ました。でもそれは、政府が「これくらい欲しい」と言った段階で、この会社に何ポンド割り当てるかはまだ決まっていません。しかも始まるのは2030年です。
パラグアイの鉱山と、転換工場の候補地の話が消えました
言い方が変わっただけではありません。前の四半期に語っていたことが、今回は消えています。
ひとつは、ウラン以外の鉱物です。前の四半期、社長は説明の最後に1つの章を割いて、パラグアイのアルト・パラナというプロジェクトを紹介し、カナダのコバルト・ニッケルの案件も含む「重要鉱物のポートフォリオ」を語っていました。今回、この話は1語も出てきません。
もうひとつは、転換工場の立地です。前の四半期は「候補地の最終リストを作成しました」と言っていました。今回は「立地の選定は前に進み続けています」だけ。最終リストという言葉が消えて、進行中の言い方に戻りました。質疑応答で、転換事業のオフテイク(引き取り契約)、資金調達、立地の進み具合をまとめて聞かれた場面でも、社長が答えたのは競合との違いだけでした。
「私たちが提供するのは、垂直統合です。ウランも、U3O8も、UF6も出せる。そういう会社は今、存在しません」
U3O8は、汲み上げたウランを取り出して乾かした粉のことで、色から「イエローケーキ」とも呼ばれます。これを転換したものがUF6です。
言っていることは強い。でも、聞かれた3つには、どれも直接は答えていません。転換工場の費用見積もりの完成時期も、前の四半期の「2027年前半」から、今回は「2027年半ば」に、少し後ろへずれています。
それでも、なぜいまアメリカのウランなのか
ここまで、答えが出なかったことを中心に書きました。それでも、この会社の周りで起きていることは大きいです。
背骨は、ロシアです。アメリカはロシア産ウランの輸入を禁止していて、これまで認めてきた例外が2027年末で期限を迎え、禁止が全面的に効き始めます。社長は「市場が本当に逼迫を感じ始めるまで、あと1年ほど」と言いました。電力会社にとっては、どこから買うかが価格以上の問題になりつつあります。副社長は、地政学的に安定した供給元にはプレミアムが付き、電力会社が「50セントや1ドルを争うことに以前ほどこだわらなくなる」と見ています。
そこに、政府の需要が数字で乗りました。社長の説明では、先ほどの年間400万ポンドは海軍の今ある原子炉を維持するだけの量です。陸軍のマイクロ原子炉の計画は、その上にさらに乗ります。
会社の側の準備も、数字で追えます。
- 操業チームは250人超(前の四半期は185人、その1年前は103人)。掘削リグは2倍の40台
- 3つの処理工場の許認可上の処理能力は、合計で年間1,200万ポンド
- 生産を始めてからの累計は約35万9,000ポンド(前の四半期は27万6,000ポンド)
需要は2030年から大きく来る。ロシアの扉は2027年末に閉まる。会社は人と設備を先に積んでいる。並べるときれいにつながります。ただ、そのつながりの真ん中にある「何ポンド掘って、誰にいくらで売るのか」が、今回の説明会ではまだ空欄でした。
次の決算で見るのは、承認された4基と、まだ無い契約書
生産の回復は果たした。でも、生産の規模と売り先は、まだどちらも数字になっていない。僕はそう読んでいます。次の説明会で、次のどれかが起きたら、この読みは甘かったことになります。
- 次の四半期の生産が8万3,000ポンドを下回る、または総コストが1ポンド40ドルを超えて戻る
- 説明会の前日に承認された4基のヘッダーハウスが、次の説明会までに稼働を始めていない
- 「排除しません」と言った電力会社との長期契約が、この先2四半期で1本も締結されない
反対に、次の説明会で年間の生産見通しが数字で出てきたら、それは承認のペースが読めるようになったという、会社自身の合図です。社長がそう言っていました。僕はそこを待っています。
ここに書いたのは、2026年9月29日の説明会までに分かっていることです。承認の日程も、契約の行方も、この先で動きます。
ウランの会社は、相場の話で語られることが多いと思います。でもこの会社の次の数四半期を決めるのは、相場より先に、小屋1基ずつの承認と、まだ空欄の契約書です。その空欄が埋まるかどうかを、決算のたびに前の回と並べて確かめていきます。
次の説明会が終わったら、このサイトで今回の3つと並べて書きます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。