コロナウィルスの影響による各国協調利下げが行われることになった2020年3月~の中長期のFX戦略について書きます。結論から先に言うと、僕はUSD買い、EURとGBP売りの戦略でいきます。この記事ではその根拠を、経済指標のデータをまとめて分析した結果を使って詳しく解説します。
もくじ
米国緊急利下げで米ドルはあまり下げなかった
コロナウィルスによる世界的な危機に対抗するため、世界中の中央銀行が協調利下げを「たぶんやる」ということを決めました。実際、米国は日本時間2020年3月3日の夜、0.5%の緊急利下げをしました。(日本とスイスはすでにマイナス金利だからできないだろうけど)
FOMC以外のタイミングでのサプライズ利下げだったのですが、USDはそれほど売られませんでした。通常、サプライズで突然米国が利下げをしたら、USDは大きく売られるはずです。でも地味にしか売られなかったのです。
この画像はドルインデックスの4時間足です。緊急利下げで陰線は出ていますが、それほど大きな陰線にはなってません。普段のボラからそれほどかけ離れてはいません。
FRBの緊急利下げ!のニュースを見て慌ててチャートを見ましたが、え?そんだけ?という感じで拍子抜けしました。
そこで、僕はすでに2週間前からショートしている中長期のGBPUSDで売り増しを行い、EURUSDもショートしました。
本命のGBPUSDショート。
USDの緊急利下げで地味に上げてるけど、レジスタンスエリアに押さえられて下げそう。
USDがGBPより先に利下げでUSDのバーゲン価格実現?
ありがとうFRBってなったらいいんだけど。
まぁ、予定通りショート乗せ行きます。
— サンチャゴ@システムトレードと投資で自由に生きる (@TraderSantiago) March 3, 2020
EURUSDのショート
EURUSD売ってます。
昨日の米国緊急利下げでもう一段上のレジスタンスゾーンまで上げました。
米国緊急利下げ直後ではなく、上髭の辺りまで戻った所でショート。
まだ上でストップ狩りが出るかもしれないけど、そのたびに売る予定。
ファンダメンタル重視の逆張りトレードで、覚悟と度胸が必要。 pic.twitter.com/H5gIlc3eK1
— サンチャゴ@システムトレードと投資で自由に生きる (@TraderSantiago) March 4, 2020
【注意:この投稿は読者の方に特定の投資行動を推奨するものではありません。決して真似をしないようにお願いいたします。】
金利 → どの国がGDPを守れるか?
米国の緊急利下げにあまり市場が反応しなかった理由は、他の国も利下げやQEで追従してくることが確実だからです。
他の国がすぐにでも追従してくることがほぼ100%確実なら、そのタイミングで他国通貨も安くなる圧力がかかってくるので、米国の緊急利下げを理由にして腰の据わった米ドル売りのポジションを作る投資家は少ないでしょう。
となると、これから各国は利下げを行い、表では強調・協力して利下げを行う。でも本心は通貨安戦争をしながら、何としてでも自国のGDPを守ろうとすることでしょう。
ですからこれからしばらくは、
どの国がGDPを守れるか?がテーマになる。
と考えています。
別の言い方をすると、どの国が最初にリセッション(不況)に突入してしまうか?です。
ですから、3月に注目すべき経済指標はGDP関連です。対前年度比GDPや対前四半期比GDPだけではなく、対前月比GDPも重要になってくると思います。
あとGDPに直結した指標である雇用統計も超重要です。いつも重要だと思われているけれど、今回はいつも以上に重要かと。
それらの指標で悪い数値が出たら、その国の通貨は売られると思います。
もちろんコロナウィルスで世界経済のエンジンである中国がポシャってしまったわけですから、すべての国が失速すると思います。
問題はその失速の度合いと、失速に対応するために景気刺激政策を行う銃弾を十分持っているか?ということです。
具体的に言うと以下のような国は強いので通貨が上がりやすくなるはず。
- 金利を下げる余地がある国
- 今の時点でGDPが悪くない国
- インフレ率が目標に達している国
- 失業率が低い国
逆に次のような国は危ないので通貨が下がりやすいはず。
- すでにマイナス金利か低金利状態
- 今の時点でGDP成長率がすでにゼロに近い
- インフレ目標を達成できていない
- 失業率が高い国
以上のような要素を通貨別に比較できるよう、関連する経済指標を主要8か国別に並べて比較ランキングしてみました。
この表をじっくり見れば、中長期的にどの通貨を買ってどの通貨を売る戦略が有利なのかが見えてきます。
一つ一つ、私の今の考えを解説していきましょう。
どの国がGDPを守れる?どの国が最初に不況に突入する?
ではどの国がGDPを守れるでしょうか?
どの国が一番最初に不況に突入するでしょうか?
経済指標を確認してみましょう。
現状のGDP成長率は?
まずは現状のGDP成長率から見てみましょう。現状のGDP成長率が高い方が、コロナウィルス危機に耐える余裕があると言えると思います。
↑これは2020年3月4日現在の数値です。
YoYは対前年同期比、QoQは対前四半期です。
GDP成長率が良い国の通貨
どちらを見ても、USDが1位です。トランプ大統領の「Make America Great」がものすごく上手くいっているようです。
次に良いのがNZD。GDP(YoY)ではUSDと並んで1位です。
そして次にAUDが続きます。
USD、NZD、AUDがGDP成長率に余裕があると言えそうです。
GDP成長率が悪い国
一方、ダントツで悪いのがJPY(日本)です。対前年同期比で-0.4%、前四半期比でも-1.6%と、すでにマイナス成長に突入しています。
次にGDP成長率が悪いのが、EURとGBPです。どちらもまだマイナスにはなっていませんが、次の発表ではマイナスに突入してくる可能性が高いのではないでしょうか。
ということで、コロナウィルス危機に耐えられそうにないGDP成長率が悪い国は、JPY、EUR、GBPとなります。
失業率はどうか?
GDP成長率と密接に関係すると思われる失業率も見ておきましょう。
失業率は、値が小さい方が良い指標です。
失業率が良いのはJPY、CHF、USDです。
逆に悪いのはEUR、CAD、AUDです。
各国のインフレ率
インフレ率は景気が良いときに大きな数値となり、景気が悪いときに小さな値となります。
各国の中央銀行の目標として、インフレ率を2%にできるだけ近づけるというのがあります。各国は現段階でその目標を達成できているのでしょうか?
目標を十分に達成して多少行き過ぎなぐらいなのが、USDとCADです。
そして、ほぼ2%を達成しているのがNZD、AUD、GBPです。
逆に全く達成できていないのはJPYの0.7%と、CHFの-0.1%です。
金利という銃に弾は入っているか?
中央銀行が金融政策として操作できるレバーは金利です。
景気が行き過ぎると利上げを行って過熱気味の景気を冷まします。
逆に不況になると(なりそうになると)利下げを行い景気を刺激します。
今回はコロナウィルス不況になるのを防ぐため、世界各国の中央銀行が協調して利下げを行うってことになっています。
ここで重要なことがあります。あたりまえのことですが…
利下げを行うには、それ以前に十分な利上げが行われ、金利が高い状態になければいけないということです。
金利がすでに低い国は、みんなで利下げしよう!と言われても、もうこれ以上は金利を下げられません!ということになります。
世界各国の現状での金利はどうなっているでしょうか?
金利が高い位置にあり、銃弾に弾が十分装填されてそうなのがCAD、USD、NZDあたりです。
USDは昨夜、他国に先駆けて緊急利下げをすでにしたので1.25%になっていますが、緊急利下げの前は1.75%でCADと並んで1位でした。(AUDも昨日利下げしてます)
逆に金利が現段階で低く、もうこれ以上利下げをすることができそうにない国は、
CHF、JPY、EURです。
JPYとCHFに至ってはすでにマイナス金利です!
USDを買い、EURとGBPを売る理由
ここまでの内容を総合的に考えると、おのずとUSDを買って、EURとGBPを売るのが良いという結論に至ります。
なぜか?
もう一度表を見てください。
経済指標が全体的に良いのは、USDなのは一目瞭然です。
GDP(YoY)、GDP(QoQ)、インフレ率で1位。金利で2位、失業率で3位と上位で安定しています。これは米国の経済が安定していることを示しています。
次に良いのが、NZD、AUDあたりですが、NZDとAUDはコモディティー通貨なのでリスクオフで売られる通貨です。
また、ニュージーランドとオーストラリアは貿易における中国依存が最も強い国なので中国がコケることが予想される今、買いたくありません。
オーストラリアは鉄鋼、ニュージーランドは乳製品などの輸出で中国に依存しています。
中国は各種経済指標、特に先行指標として知られるPMIがあり得ないぐらいに悪かったですから、かなり高確率で不況になると予測されます。
注目していた中国のPMIは35.7と過去最低となりました。
PMIは中国企業の購買担当者への「最近どうでっか?」のアンケートを集計したようなものです。
重要なことは
「悪くなる」と分かってた専門家の予測を、さらに大幅に下回ったことです。(予測45→実際35)
来週、世界中の投資家はどうする? pic.twitter.com/wJQrjl2zwN
— サンチャゴ@システムトレードと投資で自由に生きる (@TraderSantiago) February 29, 2020
ということで、僕の中で中長期で買いたい通貨はUSDがダントツで1位となります。
次に売りたい通貨を考えましょう。
一方、JPY、CHF、EUR、GBPは全体的に良くないのが分かります。
しかし、JPYとCHFはいくら経済指標が悪いといっても、今は売りたくありません。なぜならこの2つの通貨はリスクオフで買われるセイフヘイブン通貨だからです。今後、コロナウィルス関連で何かが起きるたびに買われることでしょう。だから、売りの通貨としてJPYとCHFは、とりあえず却下します。
そこで残るのがEURとGBPです。
特にEURは、金利が0%なので利下げができず、QE(量的緩和)をやるしかありません。
量的緩和とは、要はお金を刷ってばらまくこと。EURがジャブジャブとばらまかれれば、その価値は下がり、EURの相対的価値が落ちます。だからEURは売られるはず。
また、EURは失業率が一番高く、GDP成長率も下から2番目。
こんな状態でコロナウィルスに追い打ちをかけられたらどうなっちゃうのでしょう?
やばいというのは、数字を見れば一目瞭然です。
GBPもEURとよく似ていて、こちらも全体的に良くありません。ブレクジット後のユーロ圏との交渉で何かネガティブなことがあれば下げるという要因もあるでしょう。
ということで、以上を総合的に考えて判断すると
USD買い
EUR、GBP売り
という結論に至ります。
あくまで僕の予想ですが、EURUSDとGBPUSDのショートポジションを上手に作れば、今後1か月~2カ月ぐらいで大きく稼げるのではないかと考えています。
そして今、米国が他国に先行する形で緊急利下げしたこともあり、米ドルのバーゲン価格が進んだので、僕はEURUSDで新規のショートポジションを作り始め、すでに持っているGBPUSDのショートポジションにさらに乗せをやっています。
EURUSD売ってます。
昨日の米国緊急利下げでもう一段上のレジスタンスゾーンまで上げました。
米国緊急利下げ直後ではなく、上髭の辺りまで戻った所でショート。
まだ上でストップ狩りが出るかもしれないけど、そのたびに売る予定。
ファンダメンタル重視の逆張りトレードで、覚悟と度胸が必要。 pic.twitter.com/H5gIlc3eK1
— サンチャゴ@システムトレードと投資で自由に生きる (@TraderSantiago) March 4, 2020
本命のGBPUSDショート。
USDの緊急利下げで地味に上げてるけど、レジスタンスエリアに押さえられて下げそう。
USDがGBPより先に利下げでUSDのバーゲン価格実現?
ありがとうFRBってなったらいいんだけど。
まぁ、予定通りショート乗せ行きます。
— サンチャゴ@システムトレードと投資で自由に生きる (@TraderSantiago) March 3, 2020
相場では何事も起こり得るので、僕の読みが完全に外れて、全く逆に行くかもしれません。でも投資家、トレーダーの仕事というのは、このように根拠を持った予想をして自分の予想に従ったポジションを作り、自分の予測に賭けることです。
どんな分野においても同じですが、初心者であれ熟練者であれ、次に出るカードを知ることはできません。熟練者は初心者よりも上手に予測することができるだけ。