このページでは、ボリンジャーバンドを使った手法が実際に効果があるのかを詳しく説明します。まず基本的な知識から始めて、その後、過去35年にわたる全世界の市場データに基づいたボリンジャーバンドの主要な手法のバックテスト結果を紹介し、確かな判断材料と自信を提供します。ブレイクアウト手法や逆張り手法が本当に有効かどうかを掘り下げていきます。
単に一般的な話を鵜呑みにするのではなく、詳細なバックテストの結果を確認することで、その知識をトレードに自信を持って活用できるようになります。
このページの前半部ではボリンジャーバンドについての基礎を説明していますが、既にご存知の方は、ページ後半に進んでください。そこでは、長期間にわたるデータを用いたボリンジャーバンドの手法のバックテスト結果を詳しく公開しています。
もくじ
ボリンジャーバンドとは?
投資の世界に足を踏み入れたばかりの方や、既に市場で活動している方にとって、ボリンジャーバンドは非常に有効なツールです。このセクションでは、ボリンジャーバンドが何であるか、そしてそれをどのように活用するかについて解説します。
ボリンジャーバンドとは、1980年代にジョン・ボリンジャーによって開発されたテクニカル分析ツールです。このツールは、価格の上限と下限の動きを示すために使われます。具体的には、移動平均線を中心に、価格の変動に基づいて設定された上下のバンドで構成されています。なぜこのツールが有効かというと、市場のボラティリティやトレンドの変化を捉えやすくするからです。
例えば、バンドが狭まっている時は、相場が静かであり、大きな動きが起こる前の静けさを示していることが多いです。これを「スクイーズ」と呼びます。一方、バンドが広がっている時は、相場が活発に動いており、価格が大きく変動していることを意味します。これらの情報を利用することで、投資家はトレードのタイミングや方向を判断する重要な手がかりを得ることができます。
ボリンジャーバンドを利用する際には、単にバンドの幅に注目するだけでなく、価格がバンドのどの位置にあるかを見ることも重要です。例えば、価格が上部バンドを突破すると、相場が強気である可能性が高く、下部バンドを下回ると、相場が弱気である可能性が高いと考えられます。しかし、これらのシグナルをトレードの唯一の根拠とすることは避けるべきで、他のテクニカル指標や市場のニュースと組み合わせることが推奨されます。
ボリンジャーバンドは、FX、株式、商品など、様々な金融市場で活用できる汎用性の高いツールです。そのシンプルさと有効性から、多くのトレーダーにとって必須の分析ツールとなっています。このガイドが、ボリンジャーバンドを使ったトレードの第一歩となることを願っています。
ボリンジャーバンドの計算方法と設定値
ボリンジャーバンドを正確に理解し利用するには、その計算方法と設定値を知ることが重要です。このセクションでは、ボリンジャーバンドを構成する要素の計算方法と、トレードにおける設定値の選択基準について解説します。
ボリンジャーバンドは主に3つのラインで構成されています。中心のラインは移動平均線で、多くの場合、20日間の単純移動平均(SMA)が使用されます。この移動平均線は、過去20日間の価格を平均したもので、市場の中期的なトレンドを示します。移動平均線を基準に、価格の変動範囲を把握するための上部バンドと下部バンドが設定されます。
TradingViewではBB(ボリンジャーバンド)があります。MT4やMT5でも標準装備されています。
設定する項目は基本的には2つだけです。
上部バンドと下部バンドは、移動平均線からの標準偏差を利用して計算されます。標準偏差は、価格が平均からどれだけ離れて動くかを示す指標で、ボリンジャーバンドの幅を決定します。一般的には、移動平均線から±2σ(2倍の標準偏差)の距離でバンドが設定されます。これにより、価格が約95%の確率で含まれる範囲が示され、トレーダーは相場のボラティリティを視覚的に捉えることができます。
設定値については、トレーダーのスタイルや分析したい市場の特性に応じて調整することが可能です。例えば、より短期的なトレンドを捉えたい場合は、移動平均線の期間を短く(例:10日間)設定することができます。また、市場のボラティリティが非常に高い場合は、標準偏差の倍数を増やしてバンドの幅を広げ、頻繁なブレイクアウトの誤認を避けることができます。
ボリンジャーバンドの計算方法と設定値を理解することは、この分析ツールをより効果的に活用するための第一歩です。各トレーダーの目的に合わせた設定で、市場の動きを正確に捉え、より良いトレード判断を下すことが可能になります。バンドの幅や位置から、相場のボラティリティやトレンドの変化を読み取ることで、投資の成功率を高めることができるでしょう。
ボリンジャーバンドの一般的な使用方法
ボリンジャーバンドはその柔軟性から、さまざまなトレーディング戦略に活用することができます。このセクションでは、ボリンジャーバンドを利用したトレードの際に知っておくべき一般的な使用方法について、具体的な例と共に解説します。
ボリンジャーバンドの基本的な使用法の一つは、市場のボラティリティの変化を捉えることです。バンドが狭まっている時は、相場が安定していて大きな価格変動が少ないことを示しています。これは「スクイーズ」と呼ばれ、価格がバンドの範囲内で狭いレンジに収束している状態を指します。スクイーズは、将来的に大きな価格の動きが発生する可能性があることを示唆しており、トレーダーはこれをブレイクアウトの兆しとして利用することができます。
一方で、バンドが拡大している時は、市場のボラティリティが高まり、価格が大きく変動していることを示しています。この状態は、強いトレンドの存在を示すことが多く、トレーダーはこの情報を利用して、トレンドに沿ったポジションを取ることができます。
さらに、ボリンジャーバンドは価格がバンドの上限や下限に触れた際の反応を分析するのにも用いられます。例えば、価格が上部バンドに接触し、それを突破する場合、市場が強気であることを示しているため、買いポジションを検討することができます。逆に、価格が下部バンドに接触し、それを下回る場合、市場が弱気であることを示しているため、売りポジションを検討することができます。これらはボリンジャーバンドのブレイクアウト手法というものです。
ボリンジャーバンドのもう一つの重要な使用法は、逆張りの戦略です。逆張り戦略では、価格がバンドの外側に達した際に反転する可能性を探ります。例えば、価格が上部バンドを突破した後に反転することが予想される場合、それは売りのチャンスとなるかもしれません。逆に価格が下部バンドを下方向に突破した後に反転することが予想される場合、それは買いのチャンスになるかもしれません。これらをボリンジャーバンドの逆張り手法と呼びます。
これらの一般的な使用方法を理解することで、ボリンジャーバンドはトレーダーにとって非常に強力なツールとなります。相場の動きをより深く理解し、より良いトレード判断を下すために、これらの戦略を積極的に活用してください。
ボリンジャーバンドの手法:順張りと逆張り
ボリンジャーバンドは、逆張り戦略と順張り戦略の両方に有効に活用できる柔軟なツールです。市場のトレンドやボラティリティを読み解くこのツールを駆使して、投資家は利益を最大化するための戦略を練ることができます。
逆張り戦略では、ボリンジャーバンドを使って、価格が極端に高い水準や低い水準に達したときに反転する可能性を探ります。例えば、価格が上部バンドを突破し、過熱状態にある場合、市場が過剰に買われていると判断し、売りポジションを検討することがあります。逆に、価格が下部バンドを下回り、過度に売られている場合は、買いポジションを検討します。この戦略の鍵は、価格がバンドの端に達した後に、明確な反転シグナルを待つことです。反転シグナルには、キャンドルスティックのパターンや他のテクニカル指標が確認される動きが含まれます。
順張り戦略では、ボリンジャーバンドが現在のトレンドの強さと持続性を判断するのに役立ちます。トレンドが強いとき、価格はしばしばバンドの一方の端を「バンドウォーク」します。上昇トレンドでは価格が上部バンドに沿って動くことが多く、この状態が続く限り、トレンドはまだ健在であると判断できます。トレンドに沿って取引を行う際には、価格が中心の移動平均線に近づいたときにエントリーすることが一般的です。このアプローチでは、トレンドの継続を示す確かな指標として、バンドの拡大と移動平均線からの価格の離れ具合を利用します。
ボリンジャーバンドを活用した逆張りと順張りの戦略は、市場のさまざまな状況に対応できるようにするためのものです。逆張り戦略は、価格が過剰に反応した後の市場の反転を捉えるために使用され、順張り戦略は既存のトレンドから利益を得るために使用されます。どちらのアプローチも、リスク管理の原則を適用し、適切なエントリーとエグジット戦略を確立することが重要です。ボリンジャーバンドはこれらの戦略をサポートし、より情報に基づいた取引決定を行うための洞察を提供します。
ボリンジャーバンドの使用方法の例 | スクイーズとエクスパンションを利用する
ボリンジャーバンドはトレーダーが市場のボラティリティを理解し、利益を得るための戦略を立てるのに役立つツールです。システムトレードの世界ではボリンジャーバンドからのブレイクアウトを使ったトレンドフォローの戦略がよく用いられ、長期間にわたって成功を収めています。
また裁量トレードの世界においては特にスクイーズとエクスパンションの概念を理解することが、有効な取引の機会を見極める上で重要とされています。
ボリンジャーバンドのスクイーズは、バンドが狭まっている状態を指し、相場のボラティリティが低下していることを示します。スクイーズが発生すると、これはしばしば市場が方向性を見つけようとしているサインです。多くの場合、スクイーズの後には価格が大きく動き、新たなトレンドが始まる可能性があります。トレーダーは、スクイーズの期間中に価格がバンドのどちらの方向にブレイクするかを観察し、それに応じてエントリーの準備をします。
エクスパンションは、バンドが拡大している状態を指し、市場のボラティリティが増加していることを示します。この状態は、価格が急速に上昇または下降しているときにしばしば見られます。エクスパンションが発生すると、トレーダーは既存のトレンドが継続する可能性が高いと考え、トレンドに沿ってポジションを取ることができます。たとえば、価格が上部バンドを突破して拡大し続ける場合、これは上昇トレンドの強さを示しており、買いポジションを取る良い機会かもしれません。
スクイーズやエクスパンションを利用する際には、いくつかの要因を考慮する必要があります。まず、スクイーズの期間が長ければ長いほど、その後の価格の動きは大きくなる可能性があります。また、エクスパンションが発生した場合、バンドの外側で形成される新しい価格のV字や逆V字を注意深く監視し、トレンドの継続性を評価することが重要です。これらの現象を理解し適切に利用することで、トレーダーは市場のボラティリティを自分の利益に変えることができます。
ボリンジャーバンドを使ったスクイーズとエクスパンションの観察は、トレードの機会を見極め、リスクを管理するための強力な手法です。市場の変動を読み解き、これらの現象を利用して戦略を立てることで、トレーダーはより効果的に取引を行い、利益を最大化することができるかもしれません。
ブレイクアウトの信頼性を判断する方法
ボリンジャーバンドを使用したトレード戦略の中で、ブレイクアウトの機会を捉えることは非常に一般的です。しかし当然ながら、全てのブレイクアウトが利益をもたらすわけではありません。このセクションでは、ブレイクアウトの信頼性を効果的に判断する方法について解説します。
ブレイクアウトとは、価格がボリンジャーバンドの上部または下部バンドを突破する現象を指します。この動きは、市場が新たなトレンドに向かっている可能性があることを示唆しています。しかし、ブレイクアウトがすべて有効なトレードの機会であるわけではありません。実際には、誤ったブレイクアウトや「ダマシ」が発生することがあり、これにより損失を被ることがあります。
何らかの方法でこの「ダマシ」を完全に防ぐことができるのか?というと、それは無理な話で、ダマシは覚悟でエントリーする必要があります。しかし、裁量トレーダーの間で一般的に言われている、ボリンジャーバンドブレイクアウトのダマシをなるべく防ぐ方法というのがあります。
ブレイクアウトの信頼性を判断する方法の候補として1つめは、ブレイクアウトの強度を取引量で評価することです。強いブレイクアウトは通常、高い取引量で発生します。したがって、ブレイクアウト時の取引量をチェックすることが重要です。取引量が平均以上であれば、そのブレイクアウトはより信頼性が高いと考えられます。取引量は、市場参加者がその価格変動を支持しているかどうかを示す良い指標と言われています。
次に、ブレイクアウトが発生した後の価格の動きを観察する方法です。ブレイクアウト後に価格がバンドの外側で持続的に動く場合、それは新しいトレンドが確立している強い兆候です。逆に、価格がすぐにバンドの内側に戻る場合、それはブレイクアウトが誤ったものであった可能性があると言えます。
さらに、他のテクニカル指標とブレイクアウトのシグナルを組み合わせることも、信頼性の高いトレードの決定に役立つかもしれません。例えば、移動平均線のクロスオーバーの併用、特定の移動平均線を使ったフィルタリング、相対強弱指数(RSI)などの指標を使って押し目/戻りを待つなど、他の指標がボリバンのブレイクアウトと同じ方向を示している場合、それは強いトレンドが始まる可能性をさらに支持すると考えることができるかもしれません。
ブレイクアウトの信頼性を判断するには、これらの要素を総合的に考慮することが重要と言われています。
- 強い取引量
- 価格動向の持続性
- 他のテクニカル指標の支持
これらが一般的に言われている有効なブレイクアウトの機会を識別するための鍵となります。これらの指標を正しく読み取ることで、トレーダーはより確実な取引判断を下し、市場での成功率を高めることができるかもしれません。
とはいえ、ここで列挙したすべての方法は、あくまで一般的に言われていることです。それらの方法が本当に有効なのかを確かめるためには、幅広い市場の長期間のデータを使って検証して確認する以外にはありません。
また、世界のトップファンドの多くはトレンドフォローの戦略を採用していますが、彼らはダマシを避けることより、たくさんの糸を垂らしておくことを重視しているようです。いつどの市場でトレンドが発生するかは誰にも分からないからです。
そうすることでいずれかの市場で強いトレンドが発生した時、ダマシに何度も引っかかって蓄積した損失を埋め合わせさらに利益を蓄積することができます。
後ほどボリンジャーバンドの代表的な手法を徹底的にバックテストした結果を提示するので、必ずそこまで読んでください。
ブレイクアウトのリスクを管理する方法
ブレイクアウト戦略は、市場での大きな動きを捉える機会を提供しますが、それにはリスクも伴います。このセクションでは、ブレイクアウト取引のリスクを効果的に管理し、可能な限り利益を最大化する方法について説明します。
ブレイクアウト取引のリスク管理の最初のステップは、正確なエントリーポイントを定めることです。ブレイクアウトが発生したことを確認したら、価格がバンドの外側に確実に定着するのを待ちます。時には、価格が一時的にバンドを超えてもすぐに元に戻る「ダマシ」が発生します。そのため、価格がバンドの外側で一定の期間(例えば、ローソク足数本)を過ごし、その方向に明確な動きを見せた後にエントリーすることが有効だと思われます。
次に、損切りラインを設定することにより、潜在的な損失を制限します。損切りラインは、エントリーの時のローソク足のすぐ下または上に設置し、もし市場が予期しない方向に動いた場合にポジションを自動的に閉じることができます。もしくは、損切り値幅が広くなってしまいますが、ボリンジャーバンドの反対側のブレイクアウトポイントを損切りラインとして設定することも一つのアイデアです。ブレイクアウト取引では、特に損切りラインの設定は非常に重要であり、投資家が大きな損失を避けるための鍵となります。
また、リスクを管理するもう一つの方法は、ポジションサイズを適切に調整することです。すべてのトレードにおいて、使用可能な資本の小さな割合だけをリスクにさらすべきです。例えば、あるトレードで資本の1%から2%以上をリスクにさらさないというルールを設けることが推奨されます。これにより、一連の取引で不利な結果が続いても、トレードを続けることができます。初心者の場合は、これよりもはるかに小さいリスク(例えば0.5%程度など)しか許容しないようにするべきでしょう。
最後に、ファンダメンタルズ分析得意な人は、テクニカル分析とファンダメンタル分析を組み合わせることで、ブレイクアウトのリスク管理を強化できます。ブレイクアウトが発生した時に経済指標の発表や重要なニュースがないかをチェックし、これらの要因が価格の動きにどのように影響を与えるかを考慮に入れます。市場の基本的な要因を理解することは、テクニカル指標のみに依存するよりも、より堅牢なトレード戦略を構築するのに役立つかもしれません。
ブレイクアウトのリスクを効果的に管理することは、トレーディングで成功するために不可欠です。上記の方法を実践することで、リスクを最小限に抑えつつ、市場のブレイクアウトから利益を得る機会を最大限に活用することができるでしょう。
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法を徹底的にバックテスト!
ボリンジャーバンドの基礎知識をいくら詰め込んでも決して自信をもってトレードに活かすことはできません。その知識の有効性を広い市場でバックテストして確かめる必要があります。
まずは、順張り手法であるブレイクアウト手法をバックテストしてみました。
対象の市場は以下の通りです。
- FXのメジャーな通貨ペア
- 米国で取引されている主要な先物銘柄24種(株インデックス、貴金属、コモディティー)
- S&P500に採用されている個別銘柄(サバイバーシップバイアスを避けるためにS&P500に採用されたことのあるすべての銘柄を対象とし、それら銘柄がS&P500に採用されている期間だけをテスト対象としました)
これらをバックテストすることで世界の売買高で90%以上の市場をカバーすることができていると思われます。
時間足は日足を選択し、可能な限り長い期間のデータを使いました。
買いの売買ルール
- ボリンジャーバンドの上部バンドを抜けたら次の日の始値でエントリー
- ボリンジャーバンドの下部バンド-1ティックに損切りを置く
売りの売買ルール
- ボリンジャーバンドの下部バンドをした抜けしたら次の日の始値でエントリー
- ボリンジャーバンドの上部バンド+1ティックに損切りラインを置く
ボリンジャーバンドの設定
- 移動平均期間:80
- 標準偏差の設定:2
これは適当に決めました。後ほど最適化します。
ほぼ全期間で売りか買いのどちらかのポジションを建てている最もシンプルなボリンジャーバンドの手法の一つです。
ボリンジャーバンドブレイクアウト手法を先物市場(24銘柄)でのバックテストした結果
対象銘柄としては以下のように多種多様な先物銘柄を選択しました。
- 10年物国債先物
- 5年TNote先物
- 30年TBond先物
- S&P500先物
- ナスダック先物
- ダウ先物
- 原油先物
- 天然ガス先物
- 灯油先物
- ユーロ先物
- ポンド先物
- 日本円先物
- 金先物
- 銀先物
- 銅先物
- コーン先物
- 大豆先物
- 小麦先物
- 砂糖先物
- コーヒー先物
- 綿先物
- Live Cattle先物
- Feeder Cattle先物
- 豚肉先物
緑が買いの資産曲線、赤が売りの資産曲線、灰色がトータルの資産曲線です。
長期間のドローダウンはありますが、確実に優位性があるのが分かります。
ボリバンの上部バンドと下部バンドだけを使ったシンプルなブレイクアウト手法の売買ルールでこの結果は驚きです。(正直、そんなに期待していませんでしたので)
通貨、株インデックス、金利、貴金属、エネルギー、フードなどの様々な先物銘柄を含んだ24銘柄の過去35年程度のバックテストで右肩上がりの資産曲線になっているので、その堅牢性にはある程度の自信が持てます。
個の売買システムと相関性の低い他の売買システムと組み合わせて運用するなら実運用でも使えそうなレベルです。
【備考】
- 手数料として1枚あたり25.5ドルの手数料を考慮しました。
- 取引枚数はエントリー時の必要証拠金の金額により調整しました。
- 単利で運用しました。(初期資金に対して一定の割合でポジションサイズを計算)
ボリンジャーバンドの設定を最適化してみる
売買システムの堅牢性を調査する有効な方法の一つに、指標のパラメータの広い範囲で安定して利益を上げることができるかを調べる方法があります。やってみましょう。
先ほどのバックテストにおけるボリンジャーバンドの設定(移動平均線の設定80、標準偏差の設定2)は僕が適当に決めたものでした。
これを以下の範囲で組み合わせてバックテストして勝てるのかを見てみます。
- 移動平均線の設定:10~100、10刻みで変更
- 標準偏差の設定:1~3、1刻みで変更
結果はこのようになりました。
横軸がボリンジャーバンドの設定の組み合わせ、縦軸が年利/最大ドローダウン比率です。
移動平均線が10本の設定は良くないですが、それ以外の設定では安定して利益を上げているのが分かります。
80-2の設定はたまたま選んでいましたが、まずまず良いところを選んでいたようです。
ベストは60-2の設定のようです。
60-2の設定での資産曲線はこのようになりました。
先ほどとあまり変わらないですが、少し改善しています。
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法は、ボリンジャーバンドの設定パラメータの広い範囲で利益を上げることができているので、その目線でも堅牢であると言えます。
FX市場でボリンジャーバンドのブレイクアウト手法をバックテストした結果
【お詫び】この記事の以前のFXのバックテスト結果に誤りがあったため、2024年3月26日にFXのバックテスト結果を修正しました。データベンダーからインポートした銘柄リストに偏りがあったため、バックテスト結果にも偏りが生じていました。最新版は正しい銘柄リストに基づいたバックテスト結果となっております。
売買システムの堅牢を調べるさらなる方法の一つは、他の市場でもうまくいくことを確認することです。
先ほどと全く同じボリバンのブレイクアウト手法を、FX市場でも安定して勝てるのかバックテストしてみましょう。
実は先物のバックテストにもFX先物の銘柄が3つ含まれていました。GBPUSD先物、EURUSD先物、JPYUSD先物です。ここではさらに他のFX通貨ペアも含めてバックテストをしてみます。
対象銘柄:FX全通貨ペア(メジャー通貨ペアだけではなく、トルコリラなど可能な限りすべての通貨ペアを含めています)
時間足:日足(1995年~2024年)
まずは、いろいろなボリンジャーバンドの設定の組み合わせで勝てているかをざっと見てみます。
ほとんどすべての設定で勝てています。
特にボリンジャーバンドの期間設定が80で標準偏差2σがよさそうです。
資産曲線とスタッツは以下の通りです。
買いは勝てていますが売りで負けていて、トータルでは勝てています。
近年はあまりパフォーマンスが良くないようですが、優位性はあると言えそうです。
個別株(S&P500採用銘柄)でボリンジャーバンドのブレイクアウト手法をバックテストした結果
【備考】
- Interactive Brokersの手数料体系で手数料を考慮
- 予想されるスリッページを考慮
残念ながら、個別銘柄ではボリンジャーバンドのシンプルなブレイクアウト手法が勝てないことが分かりました。
買いはとても良い結果ですが、売りで大きく負けるのでトータルでは少し負になっています。
買いは良いですが、売りがひどいですね。
株式市場は長期的に上昇トレンドになりますので、売りサイドでシンプルなブレイクアウト手法が負けることは当然と言えば当然です。
株式市場でボリンジャーバンドを使ったシンプルなブレイクアウト手法を実践するのであれば、買いサイドのみにするのがよさそうです。
この結果から、ボリンジャーバンドを使ったシンプルなブレイクアウト手法の堅牢性をどう判断すればよいでしょうか。
それはあなたの判断次第ですが、僕は、株式市場の売りサイドで負けることによってその堅牢性が無い、ということにはならないのではないかと思います。
株式市場の売りサイドは非常に難易度が高く、安定して勝てる売買システムは滅多にないからです。ロスカット注文をちゃんと入れる手法で、しかも売りサイドのブレイクアウト手法となるとほぼありません。
ですので、個別株に関しては買いのみで評価したいと思います。
S&P500の買い持ちと、ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法(買いのみ)のパフォーマンスを比較してみましょう。
赤がS&P500買い持ちの資産曲線。
緑がS&P500採用銘柄でボリンジャーバンドブレイクアウト手法(買いのみ)を行った場合の資産曲線です。
リターン(年利)は買い持ちの場合よりも25%ほど少なくなりますが、最大ドローダウンを64%ほど軽減しています。
リスク調整後のリターンとしてはボリンジャーバンドブレイクアウト手法の方が優れていると言えます。
資産曲線を見ても、赤(買い持ち)と比較して緑(ボリバン買いのみ)はドローダウンの落ち込みが小さいのが分かると思います。
では次に、パラメータ設定を動かしても勝てるかを確認しましょう。
ほとんど全ての設定の組み合わせで利益を上げていることから、株式市場におけるボリンジャーバンドブレイクアウト手法(買いのみ)の堅牢性が高いと判断できます。
インサンプルとアウトオブサンプルについて
今回は手に入る全期間のデータを使ってバックテストをしました。1990年~2024年のデータです。
熱心な読者の方は、こう思ったはずです。
ちょっと待ってくれ!インサンプルとアウトオブサンプルの考え方はどうした!?と
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法は今僕が考え出した手法ではありません。
冒頭で解説したようにジョン・ボリンジャー氏が1980年代にすでに完成させていた手法です。
ジョン・ボリンジャー氏はおそらく1980年代に、そこからさらに10年から数十年前からのデータを集めてバックテストをすることでボリンジャーバンドのブレイクアウト手法を作ったはずです。
ですので、今回使った1990年~2024年のデータを使ったバックテストは、全部丸ごとアウトオブサンプルのバックテストだということができます。
先人の知恵をバックテストする際には全てこの考え方が使えます。
ジョン・ボリンジャーさん、ありがとう!
まとめ
ここまでのバックテストで、ボリンジャーバンドを使ったシンプルなブレイクアウト手法は有効であることが分かりました。
様々な種類の銘柄を含んだ先物市場で安定して勝てること、また広いパラメータの設定値で安定して勝てていることから、その堅牢性も非常に高いことが分かりました。
ボリンジャーバンドを使ったブレイクアウト手法は1980年代には完成していた手法なので、今回の1990年~のデータを使ったテストはアウトオブサンプルのバックテストということになり、バックテスト期間の考え方においても非常に堅牢性が高いと判断できます。
ただし、株式市場とFXにおいてはボリンジャーバンドのブレイクアウト手法の売りサイドは全く勝てないことが分かりました。むしろ逆シグナルとなります。株式市場でボリンジャーバンドを使用する際には注意してください。
今回バックテストしたのはボリンジャーバンドを使ったブレイクアウト手法の最もシンプルな形です。
このシンプルな売買システムを進化させることは十分に可能だと思います。
他のインジケーターを組み合わせたり、フィルターを追加したり、想像力次第です。
とはいえ、できるだけシンプルさを保った方が良いと僕は思っています。
ボリンジャーバンドの逆張り手法については別の記事で解説しますので楽しみにしていてください。
ボリンジャーバンドの逆張り手法の有効性を徹底的にバックテスト【FX/株/先物】