この記事では、ボリンジャーバンドの上部バンドをブレイクアウトしたら買ってミドルバンド(移動平均線)を下回って引けたらエグジットするというシンプルな売買システムを全市場でバックテストした結果を公表します。
前回の記事でボリンジャーバンドの上部バンド抜けで買って下部バンド抜けでドテンする売買システムをバックテストしましたが、今回は少し違うバージョンをバックテストします。
ボリンジャーバンド手法の有効性を徹底的にバックテスト【FX/先物/株】
もくじ
今回のバックテストの目的
前回のバックテストでボリンジャーバンドを使ったシンプルなブレイクアウト手法が素晴らしく機能することが確認できたので、少し違ったバージョンもバックテストしてみてさらに良い結果が得られるかを探ってみたいと思います。
前回のバックテストとの違いは、損切りラインが近いということです。
前回使った売買ルールは上部バンドで買って下部バンドでドテンする売買ルールでした。
今回は上部バンド上抜けで買ってミドルバンドに損切りラインを置きます。ショートは、下部バンド下抜けでショートエントリーをしてミドルバンドに損切りラインを置きます。
損切りラインが近いので勝率は落ちると思いますが、最大負トレードが小さくなるかもしれません。もしかすると最大ドローダウンも小さくすることができ、より良いリスク調整後リターンを実現できるかもしれません。
売買ルールの詳細
買い(ロング)のルール
- ボリンジャーバンドの上部ラインを上回って引けたら次の日の寄り付きで買いエントリー
- ミッドライン(移動平均線)を下回って引けたら次の日の寄り付きで買いポジションをエグジット
売り(ショート)のルール
- ボリンジャーバンドの下部ラインを下回って引けたら次の日の寄り付きで売りエントリー
- ミッドライン(移動平均線)を上回って引けたら次の日の寄り付きで売りポジションをエグジット
完全に売り買いが対称の売買システムです。
ボリンジャーバンドのパラメータは以下のような幅でバックテストを行いました。
- 移動平均線の本数設定:10~200(10刻み)
- 標準偏差の設定:1σ~3σ(1刻み)
対象銘柄と期間
前回と全く同じ対象銘柄を選定しました。
- 米国で上場されている様々な先物銘柄(24種)(1990年~2024年)
- FX全通貨ペア(トルコリラなどエキゾチックペアも)(1995年~2024年)
- 個別株としてS&P500採用銘柄(サバイバーシップバイアスを排除した)(1990年~2024年)
このように非常に幅広い市場で30年~35年という長期間の日足を使ってバックテストを行いましたので、その結果にはかなりの信憑性があります。
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法(別バージョン)を先物市場(24種)でバックテスト
どの設定の組み合わせが良いかを調べたいので、最適化グラフを見てみましょう。
横軸がボリンジャーバンドの設定の組み合わせ、縦軸が平均年利/最大ドローダウン比率です。
文字が小さくて見にくいですが、BBLengthがボリンジャーバンドの本数設定、BBMultiが標準偏差の設定です。
緑の棒グラフが高いほど良い組み合わせとなります。
前回のバックテスト同様、ほとんどの設定の組み合わせで利益になっています。これ程広い範囲の設定値で安定して利益を上げているので、この売買システムはかなり堅牢であると言えます。
ボリンジャーバンドの本数設定は50本あたりから200本まで、どれを選択しても問題なさそうです。
標準偏差の設定は、本数設定が大きくなればなるほど3σのパフォーマンスが悪くなるようです。1σか2σを選択するのがよさそうです。
今回は本数設定130、標準偏差が2σを選択しようと思います。
資産曲線とパフォーマンスのスタッツは以下のようになりました。
緑が買い、赤が売り、グレーが合計です。
過去35年を通して安定して右肩上がりの資産曲線となっており、シンプルな売買ルールとしては驚くほど良いパフォーマンスです。
前回のボリンジャーバンドブレイクアウト手法のバージョンと比較したらどうでしょうか?
パフォーマンスを2つ並べて見てみます
前回のバージョンのバックテストの詳細はこちら
最大ドローダウンが前回の -48.11% → -32.60% に改善しています。
リターンは若干落ちましたが、年利/最大ドローダウンの比率が 0.18 → 0.23 に改善していますので、リスク調整後リターンは良くなっていることが分かります。
もう一点、MAEを見てください。MAEは最大の負トレードで何パーセント負けたかを示します。1トレードで最大何パーセント負けたかということです。
この数値が、前回-11.68% → 今回 -5.42% に改善しています。最大負トレードの大きさを半分以下にすることができたということです。
これはかなり大きな改善と言えます。
マーケットの魔術師にも登場し世界トレード選手権で驚異的なパフォーマンスを出したことで有名なラリー・ウィリアムス氏は、最大負トレードの大きさ(MAE)をなるべく小さくすることを最大ドローダウンを小さくすることよりも重視しているそうです。彼なら今回のバージョンを選ぶでことでしょう。
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法(別バージョン)をFX全通貨ペアでバックテスト
【お詫び】FXのバックテスト結果を2024年3月26日に修正しました。データベンダーからインポートした銘柄リストに偏りがあったため、バックテストの結果にも偏りが生じていました。現在は適切な銘柄リストに基づいたバックテスト結果に修正されております。
全く同じボリンジャーバンドのブレイクアウト手法をFX全通貨ペアでもバックテストした結果です。
まずは最適化グラフから見てみましょう。
ほとんどすべてのボリンジャーバンドの設定の組み合わせで利益になっています。
ボリンジャーバンドの設定は140-2あたりの設定がよさそうです。
以前のバージョンと同じようにショートは負けていますが、トータルではかなり良い数字です。
前回のバージョンよりもかなり改善しました。
さらに改善を重ねれば、もっと良くなるかもしれません。
ただし、近年のパフォーマンスが良くないのが気になります。
ボリンジャーバンドのブレイクアウト手法(別バージョン)を個別株(S&P500)でバックテスト
最後に個別株(S&P500)でもバックテストしておきます。いつも通りサバイバーシップバイアスは排除してバックテストしました。
株の場合はショートがひどいことになるので、前回と同様ロングのみとしました。
まずは最適化グラフから。
ボリンジャーバンドのほぼ全ての設定の組み合わせで勝てています。
130-2の設定の資産曲線はこちらです。
緑が今回のボリンジャーバンドのブレイクアウト手法。赤はS&P500の買い持ちです。
ボリンジャーバンドブレイクアウト手法はのトータルの利益はS&P500の買い持ちに遠く及びません。
しかしドローダウンが非常に小さく滑らかな資産曲線は魅力です。
前回のバージョンと比較してもドローダウンが半分ほどになり、1トレード最大負%も下がっています。
このバージョンのボリンジャーバンドブレイクアウト手法(ミドルラインを損切りラインに使用)をベースにしてさらに進化させれるといいですね。
- 逆張り手法と組み合わせる
- 多数シグナル同時発生時の銘柄選択のルールを考える
- ファンダメンタルズも組み合わせる
などなど、アイデアはあなたの想像力次第です。
まとめ
今回は、ボリンジャーバンドを使ったブレイクアウト手法の別バージョンを徹底的にバックテストしました。
ボリンジャーバンドのミドルラインに損切りラインを置く今回のバージョンは、上下バンドだけを使ってドテン売買する前回のバージョンよりもトータルの利益が小さくなる半面、いくつかの面で優れていました。
- ドローダウンを小さくできる
- 1トレード最大負けサイズを小さくできる
- リスク調整後リターンを大きくできる(場合が多い)
リスクを小さくできるのは大きなメリットです。このバージョンのボリンジャーバンド順張り手法を基本とし、さらに進化させることができればと思います。
前回のバージョン↓
ボリンジャーバンド手法の有効性を徹底的にバックテスト【FX/先物/株】
ボリンジャーバンドの逆張りはこちら↓
ボリンジャーバンドの「逆張り手法」の有効性を徹底的にバックテスト【FX/株/先物】