FX、株、先物の35年にわたる広範なデータを使用してドンチャンチャネルの効果をバックテストし、その結果を深掘りしています。
この長期間に渡る分析を通じて、ドンチャンチャネルがトレーダーにどのような優位性を提供するのか、そしてどのようにしてトレード戦略に組み込むことができるのかを探ります。
ドンチャンチャネルの分かりやすい基礎の解説もしますので初心者の方も安心して読んでください。
もくじ
ドンチャンチャネルとは|定義と概要
ドンチャンチャネルは、トレーダーが市場のトレンドを識別し、その動向に基づいて取引戦略を立てるのを助ける、非常にシンプルで効果的なインジケーターです。このインジケーターは、特定の期間における最高値と最低値を利用して、市場のボラティリティとトレンドの方向を示します。
このインジケーターは、20世紀の中頃に著名なトレーダーであるリチャード・ドンチャンによって開発されました。リチャード・ドンチャンは、トレンドフォロー戦略を用いた取引で名を馳せ、特に1950年代に彼が考案したこのインジケーターは、その後のトレード手法に大きな影響を与えました。ドンチャンチャネルの開発は、市場分析とトレード戦略の方法論に革命をもたらし、シンプルながら強力なツールとして現代にも引き継がれています。
ドンチャンチャネルの魅力は、その使いやすさにあります。チャートにこのチャネルを追加するだけで、トレンドの存在を視覚的に捉え、上昇トレンドまたは下降トレンドに沿った取引の機会を見つけることができます。価格がチャネルの上限を突破した場合は上昇トレンドのサインと捉えられ、下限を割った場合は下降トレンドの開始を示唆します。
このように、ドンチャンチャネルは、リチャード・ドンチャンが1950年代に開発して以来、トレンドを基にした取引戦略を立てる際の強力なツールとして多くのトレーダーに利用され続けています。このシンプルながら効果的なインジケーターを使用することで、トレーダーは市場の動きをより良く理解し、より賢明な取引決定を下すことが可能になります。
ドンチャンチャネルの計算方法
ドンチャンチャネルは、トレーディングで使用されるインジケーターの一つで、市場のトレンドや価格の動きを理解するのに役立ちます。このインジケーターの計算方法はとてもシンプルですが、トレードにおいて非常に有用な情報を提供してくれます。
ドンチャンチャネルを計算するには、主に3つのバンド、つまりラインを使用します。これらは「上限バンド」、「下限バンド」、そして時には「中央バンド」と呼ばれます。上限バンドは、選択したピリオド中の最高価格で形成され、下限バンドは同じ期間中の最低価格で形成されます。これらのバンドは、価格の上下動を捉えるための枠として機能し、トレーダーが市場のトレンドを判断するのに役立ちます。
計算の具体的なステップは以下の通りです:
- 上限バンド: 選択したピリオド中の最高価格を特定します。
- 下限バンド: 同じピリオド中の最低価格を見つけます。
- 中央バンド(オプション): 上限バンドと下限バンドの平均値を計算することで求められます。
たとえば、20日間のピリオドを設定した場合、過去20日間の最高価格が上限バンドとなり、同じく20日間の最低価格が下限バンドとなります。これにより、その期間の価格の動きを視覚的に捉えることができ、チャート上でこれらのバンドを表示させることで、価格がこれらのバンドのどちらかを突破した時にトレードの機会を見つけることができます。
ドンチャンチャネルの計算方法を理解し、それをチャートに適用することで、トレーダーは市場のボラティリティやトレンドの変化をよりよく理解することができ、その情報をもとにした賢明な取引決定を下すことが可能になります。このシンプルな計算方法は、初心者から上級者まで幅広いトレーダーにとって有用なツールです。
ドンチャンチャネルインジケーターの設定
ドンチャンチャネルはほとんどのトレードプラットフォームで無料インジケーターとして使うことができます。また設定も非常に簡単です。
TradngViewでももちろん無料で使えて、インジケーターの画面でDonchian Channelと入れると見つかります。
設定が必要な設定項目は1つだけです。
Lengthに高安値を見る期間を入力します。画像だと20なので、過去20本のローソク足の高安値を見てバンドを描画します。必要な設定はこれだけです。
ドンチャンチャネルを利用したトレンド分析
ドンチャンチャネルは、トレーダーが市場のトレンドを理解し、適切な取引戦略を立てるのに役立つ重要なインジケーターです。このセクションでは、ドンチャンチャネルを使ったトレンド分析の方法について解説します。
なぜトレンド分析が重要なのかというと、トレードにおいてトレンドを正しく読み取ることは、成功への鍵を握っているからです。ドンチャンチャネルは、チャート上での価格の動きを通じて、トレンドの存在とその方向性を示すことができます。価格がチャネルの上限を超えると上昇トレンド、下限を下回ると下降トレンドのサインとみなすことが一般的です。
具体的なトレンド分析の方法には、次のステップが含まれます。
- ピリオドの選択: ドンチャンチャネルを設定する際に、適切なピリオドを選択することが重要です。一般に、20日間が標準的な設定とされていますが、トレードする市場や時間枠に応じて調整する必要があります。(この記事の後半のバックテストで市場別に最適な設定が分かりました。)
- トレンドの識別: チャート上でドンチャンチャネルを表示させ、価格が上限または下限を超えた場合にトレンドの発生を識別します。
- トレンドの確認: 一時的な価格の変動ではなく、持続的なトレンドであることを確認するために、他のインジケーターや分析ツールと併用することをお勧めします。
トレンド分析の際のポイントとして、ドンチャンチャネルはトレンドの強さや継続性を判断するためにも利用できます。チャネルの幅が広がっている時は、ボラティリティが高まっており、トレンドが強くなっている可能性があります。逆に、チャネルの幅が狭まっている時は、市場が安定してきており、トレンドが弱まっているかもしれません。
このように、ドンチャンチャネルを使ったトレンド分析は、トレーダーが市場の動向を理解し、より効果的な取引戦略を立てるための強力なツールです。正しく利用することで、トレンドに基づいた取引で成功の確率を高めることができます。
順張りトレード戦略|チャネルブレイクアウトの活用
ドンチャンチャネルを活用した順張りトレード戦略は、多くのトレーダーにとって強力な武器となります。この戦略の中心は、「チャネルブレイクアウト」です。これは価格がドンチャンチャネルの上限または下限を突破することで、新たなトレンドの開始を示唆するサインと捉えられます。
このページの後半でドンチャンチャネルブレークアウト手法を徹底的にバックテストします。
なぜチャネルブレイクアウトが重要なのかというと、これは市場が既存の範囲を超えて動き始めたことを意味し、強いトレンドの存在を示唆するからです。トレーダーはこのサインを利用して、トレンドの方向に沿った取引を行うことで、利益を得ることができます。
具体的な活用方法には、以下のステップが含まれます。
- チャネルの設定: まず、ドンチャンチャネルをチャートに追加し、適切なピリオドを設定します。一般的には20ピリオドが使われますが、トレードスタイルによって変更することが可能です。(後ほど様々な設定でバックテストをします)
- ブレイクアウトの識別: 次に、価格がチャネルの上限または下限を突破する瞬間を識別します。上限を突破すると、買いポジションを検討し、下限を突破すると、売りポジションを検討します。終値で判断し次のローソク足の始値で仕掛けるのが一般的です。
- ポジションの取り方: ブレイクアウトが確認されたら、トレンドの方向に沿ってポジションを取ります。この時、ストップロスを設定してリスク管理を行うことが重要です。損切りレベルの基本的な位置は反対側のバンドとなります。
ドンチャンチャネルブレイクアウト手法のロングエントリーの例 AAPL(Apple株)
ドンチャンチャネル ブレイクアウト手法のショートエントリーの例 大豆先物
活用する際のポイントとして、ブレイクアウトが真のトレンド変化を示しているかどうかを慎重に判断することが必要です。時には、価格が一時的にチャネルの範囲を超えることもありますが、これが必ずしも持続可能なトレンドであるとは限りません。そのため、追加のテクニカル分析やインジケーターを併用して、ブレイクアウトの信頼性を評価することが推奨されています。しかしそれ単体でも十分に機能する手法です。
このように、ドンチャンチャネルを用いた順張りトレード戦略は、市場のトレンドを捉え、それに基づいて取引を行うための有効な方法です。正しくブレイクアウトを識別し、適切なリスク管理を行うことで、トレードの成功率を高めることができます。
先物市場でドンチャンチャネルブレイクアウト手法を徹底的にバックテスト
ドンチャンチャネルを使ったチャネルブレイクアウト手法は本当に勝てるのでしょうか?またその堅牢性はどうでしょう?それをこの記事で明らかにしていきます。
まず最初に先物市場の過去35年間のデータを使ってバックテストしてみましょう。
対象銘柄
米国で上場されている様々な種類の先物銘柄24種類(株インデックス、通貨、コモディティー、金利)
売買ルール
- X日間の高値を終値で抜けたら次の日の始値で買いエントリー(売りポジを持っていたら手仕舞い)
- X日間の安値を終値で下抜けたら次の日の始値で売りエントリー(買いポジを持っていたら手仕舞い)
上記の売買ルールでドテン売買を繰り返します。
まずは様々なX日の設定で勝てているかをざっと見てみましょう。
X日の設定としては10日~300日までを10日刻みでバックテストしました。
横軸がX日の設定。縦軸がリスク調整後リターン指標です。
まず、10日~300日まですべての設定で利益になっています。
一般的に使われる20日よりも長い日数である100日~240日あたりが良いパフォーマンスになっていて、一番良かったのは170日です。
ドンチャンチャネルブレイクアウト手法(170日設定)の資産曲線とスタッツは以下の通りです。
こんなにシンプルな売買ルールなのに買いも売りも勝てていて、トータルでは長期的にに右肩上がりのまあまあ良い成績を出しています。
MAE(1トレード最大負)が-14.77と大きいのと、リスクレワード比があまり良くないというポイントを改善できれば、かなり良い手法になりそうです。
先物市場でシンプルなドンチャンチャネルブレイクアウト手法は勝てるようです。
FX市場でドンチャンチャネルブレイクアウト手法を徹底的にバックテスト
ドンチャンブレイクアウト手法はFXでも勝てるでしょうか。
いろいろなX日の設定で勝てるかをざっと見てみるところから始めましょう。
FX市場ではX日を短めの設定にすると負けるようです。
ドンチャンブレイクアウト手法の設定は20日が一般的ですが、FX市場では20日は負けます。
しかし設定を長くして130日を超えるとかなり良くなるようです。
一番良い設定は140日でした。
ロングがものすごく良い成績なのでショートで負けていてもトータルではかなり良い成績になっています。
FX市場でもシンプルなドンチャンチャネルブレイクアウト手法は勝てるようです。
株式市場(S&P500)でドンチャンチャネルブレイクアウト手法を徹底的にバックテスト
次は個別株です。米国のS&P500採用銘柄でサバイバーシップを排除した方法でバックテストしました。
株はショート(空売り)のトレンドフォローは勝てないことが分かっているので買いのみでバックテストしました。
全ての設定で利益になっています。
一般的な20日でも勝てていますが、70日~140日ぐらいの設定が良くて、一番良い設定は120日でした。
120日設定の資産曲線とスタッツは以下の通りです。
素晴らしい成績です!
考えてみてください。この手法は120日間の高値を抜けて引けたら次の日の始値で買い、120日の安値を下回って引けたら手仕舞いするだけの手法です。
そんなシンプルな手法でこんな素晴らしい資産曲線を実現できるのです。
どれだけ良い成績なのかを理解するためにこの手法を複利で運用した場合とS&P500の買い持ちと比較してみましょう。
緑がドンチャンチャネルブレイクアウト手法(買いのみ)、赤がS&P500の買い持ちです。
買い持ちと比較して最大ドローダウンを62%軽減し、リターンは少しだけ上昇させています。
素晴らしいの一言です。
株式市(S&P500)でシンプルなドンチャンチャネルブレイクアウト手法は勝てるようです。
これよりも優れた成績を出す売買手法(売買システム)はいくつもありますが、この売買ルールのシンプルさでこの成績はすごいと思います。
この手法をベースとしていくつもの優れた売買システムが派生してきた歴史も頷けます。
ドンチャンチャネルブレイクアウト手法のバックテスト結果 まとめ
以下の理由からドンチャンチャネルブレイクアウト手法は素晴らしい手法であることが分かりました。
- バックテストしたすべての市場で利益を上げることができた
- 幅広い日数の設定値で利益を上げることができた
- 1950年代に公開された後も勝ち続けている(時の試練に耐えている)
ドンチャンチャネル手法の一般的な設定値は20日とされていますがが、もっと長い日数の設定の方がバックテストでは成績が良かったです。100日~150日ぐらいが良さそうだと思われます。
ドンチャンチャネルブレイクアウト手法を突き詰めていって自分のものにする価値があると断言できます。