データセンターの中を飛び交う光の信号。その信号を扱う部品や装置を、自社の名前を出さずに作っている工場がタイにあります。ファブリネットという会社です。
■ ファブリネットの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月2日
- 結果:売上 15億ドル
- 売上は14四半期続けて増え、伸び率は7四半期続けて上がりました
- 「建てる余地がある」が、「1月に着工する」に変わりました
- 電気から光へ。経営陣の答えは、どの方式も伸びるというものでした
- 「とても重要」と語った提携は、今回は損失の1行でした
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※この記事で扱うのは、2026年11月2日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言は記録に残ります。
今回の説明会で、最高経営責任者は建設中の工場の広さを「アメリカンフットボール場35面分」とたとえ、「かなり巨大です」と言いました。来年1月に完成します。そして完成と同じ月に、次の工場の工事に入ります。
売上の伸びは過去10年で最高でした。その一方で、この四半期に本業で入ってきた現金は2,100万ドル、売上の1.4%です。伸びも、伸びるために出ていく現金も、どちらも大きい決算でした。
その前に——「売上換算の生産能力」って、何でしょう
光の部品の会社と聞くと、自分で技術を開発して、自分の名前で売っている会社を思い浮かべるかもしれません。この会社は違います。顧客が設計した製品を、顧客の代わりに作ります。今回の説明会で顧客として話題になったのはルメンタムとマーベルで、このほかエヌビディア、シスコ、ノキア、アマゾンといった名前が並びます。
ふつうのメーカーは、自分で考えた製品を自分の工場で作り、自分の名前で売ります。受託製造の会社は、このうち「作る」だけを引き受けます。iPhoneを組み立てている台湾の鴻海(ホンハイ)を思い浮かべると、形は近いです。この会社の場合、作るものが光通信の精密な製品です。
この形の会社は、利益率が薄いです。今四半期の粗利率は12.1%でした。100ドル売って、材料費や工場の費用を引くと12ドル残る計算です。
そして、売上の天井は工場の広さが決めます。注文があっても、作る場所が無ければ売上になりません。だから経営陣は工場の話をするとき、面積だけでなく「その工場で年にいくら分作れるか」を金額で言います。これが売上換算の生産能力です。
ここがこの決算の中心になります。能力を先に増やせば、注文を取りこぼさずに済みます。その代わり、現金は売上より先に出ていきます。
売上は14四半期続けて増え、伸び率は7四半期続けて上がりました
- 売上 14億7,400万ドル(前年同期比 +51%、前の四半期比 +12%。1ドル150円で約2,200億円)
- データセンター向け 7億7,700万ドル(前年同期比 +78%、売上の53%)
- 通信インフラ向け 4億4,400万ドル(前年同期比 +35%)
- 自動車・産業・その他 2億5,300万ドル(前年同期比 +20%)
3ヶ月前に会社が示した売上の見通しは13億7,500万〜14億2,500万ドルでした。実績はその上限を約3.4%上回っています。データセンター向けの伸びも、前の四半期の+68%から+78%へ上がりました。
一株利益は調整後で4.34ドルと過去最高で、見通しの4.10〜4.25ドルも超えました。会計基準どおりの数字は2.86ドルです。
💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的、または本業の外と考える項目を除いた数字。今回の差には、現金の出ていかない税の引当金2,000万ドルや、出資先の評価損2,100万ドルが含まれます。
利益率のほうは伸びていません。調整後の粗利率は前の四半期から0.1ポイント下がって12.1%、営業利益率も0.1ポイント下がって10.8%です(営業利益率は前年同期よりは0.2ポイント上です)。会社は粗利率の下げについて、前の四半期比は年1回の昇給、前年比は為替が主因と説明しました。
売上の伸びに一度きりのものは見当たりません。経営陣も「1社の顧客からの一度きりの上振れではありませんでした」と言っていて、3つの分野すべてが前年比でも前の四半期比でも伸びています。
「建てる余地がある」が、「1月に着工する」に変わりました
3ヶ月前と今回で、いちばん変わったのは工場の話です。
3ヶ月前:「チョンブリには、さらに2棟を建てる余地があります。それぞれ約120万平方フィートで、売上換算の能力は約18億〜21億ドルです」
今回:「1月に建屋10が完成したらすぐ、チョンブリの敷地で建屋11の建設を始める決定をしました」「建屋11は約150万平方フィートで、上乗せされる売上換算の能力は約30億ドルです」
30億ドルは、1ドル150円で約4,500億円です。床は25%広くなっただけなのに、能力は21億ドルから約43%増えています。経営陣の説明では、新しい建屋には事務所や倉庫がほとんど要らず、製品が小さく高密度になって面積あたりの売上も増えています。
能力の階段は、経営陣の説明ではこうなります。前年度末に約58億ドル、来年1月に約100億ドル、建屋11の完成で約130億ドル、将来の建屋12まで建てれば約160億ドル。3ヶ月前は最終形を125億〜140億ドルと言っていました。
1月に増える分の大半は、建屋10の約35億ドルです。床面積は200万平方フィート(約18.6万平方メートル、東京ドーム約4個分)で、一部ではすでに売上が立ち始めています。これにタイのもう1つの拠点ナヴァの約4億ドル、アメリカのサンタクララの約3億ドルが加わります。
変わったのは工場の話だけではありません。
3ヶ月前:「それらの機会や顧客からの売上や利益率について話すのは、おそらくまだ早すぎます。プログラムごとの事情によるからです」
今回:「今年度の後半に向けて売上が立ち始めると確信している、NPOのプログラムが複数あります」
ここでのプログラムは、製品ごとの受託の案件のことです。同社の今年度は2027年6月までです。「まだ早すぎる」が、時期のある話になりました。
💡NPO(ニア・パッケージド・オプティクス)=光の部品を、半導体のすぐ近くに置く方式。さらに一体化させたものがCPO(コ・パッケージド・オプティクス)。今の主流は、機器の差し込み口に抜き差しする「プラガブル」型です。
同じ説明会の最初の部分では「2027年度の終わりごろ」という言い方もしていて、後半の中でも遅いほうかもしれません。
年間の伸びを聞かれたときの答えも変わっています。3ヶ月前、今年度の伸びが前年度を上回る可能性を問われた答えは「可能性の範囲外ではありません」でした。今回は「90日前に話したときと同じくらい楽観的で、もしかすると少しそれ以上です」です。ただし、言葉が一段上がっただけで、通期の数字は今回も出ていません。
データセンター向けの光トランシーバー(電気と光の信号を変換する部品)でも進みがありました。巨大IT企業から直接受ける案件とは別の、部品メーカーが広く売る製品の生産を受ける案件です。業界ではマーチャント向けと呼びます。3ヶ月前の「マーチャント向けのプログラムの1つは12月四半期に始まる見込みです」が、今回は「いま立ち上げています」になりました。発言のあった11月は、その四半期(10〜12月期)の中です。前倒しではなく、予定どおりに進んでいるという話です。
電気から光へ。経営陣の答えは、どの方式も伸びるというものでした
伸びの背景として経営陣が語るのは、電気の世界から光の世界への長い移行です。海底ケーブルのような長い距離から始まった光が、データセンターの中、さらに半導体のすぐ隣まで近づいてきました。
投資家の側には、NPOやCPOが広がると、今の差し込み型の光トランシーバーが食われるのではないかという心配があります。説明会でも正面から聞かれました。経営陣はその見方を「単純化しすぎ」と退け、差し込み型は長く続き、NPOとCPOも伸びると答えました。
受託製造なら、どの方式が広がっても作るのは顧客の製品です。どの方式でも仕事になると読めますが、これは経営陣の発言からの推論で、まだ数字で確かめられた話ではありません。
データセンターだけの会社でもありません。通信インフラ向けは通信システムや部品、衛星通信にまたがって+35%でした。自動車・産業・その他では、前の四半期からの伸びの中心はレーザーの分野でした。これまで自社生産が中心だった顧客の開拓が進んでいます。
説明会の当日の朝には、顧客であるルメンタムとマーベルの統合が発表されました。経営陣は「条件はまだ把握していません」としたうえで、過去の業界再編(ルメンタムとネオフォトニクス、インフィネラとコリアント、ノキアとインフィネラ)はどれも同社のプラスになったと答えています。今回も同じになるかは、まだ分かりません。
「とても重要」と語った提携は、今回は損失の1行でした
強くなった言葉の裏で、3ヶ月前に語っていたのに今回は出てこなかったものがあります。
まずRaytek(Raytek Semiconductor)です。パッケージング(部品を組み上げる工程)の提携先で、同社が出資もしています。
3ヶ月前:「Raytekとの提携は、当社にとってとても重要になると考えています。目にしている需要の可能性を引き出すうえで、本当に大きな役割を果たすでしょう」
今回、Raytekの名前が出たのは1か所だけです。財務責任者の「Raytekへの少数株主としての投資に関連する、現金の出ない2,100万ドルの未実現損失」でした。まだ売っていない株の値下がり分という意味です。提携がうまくいっていないとは誰も言っていません。今回は語られなかった、というだけです。
顧客名も減りました。3ヶ月前は高性能計算向けの基板について「AWSとの取引はとても順調です」と言っていました。今回も高性能計算の伸びには触れましたが、アマゾンの名前は出ていません。データセンター同士をつなぐ製品についても、3ヶ月前は「年率で10億ドルを超える」と金額で語り、今回は「引き続きとても強い」という言い方でした。
OCS(光を電気に変えずに、光のまま経路を切り替える装置)の話は、発言がそろっていません。
3ヶ月前:「OCSは今のところ、とても小さいです。製品をいくらか出荷していますが、とても小さいです」
今回:「それらはまだ始まったばかりです。実のところ、まだ何も出荷し始めてさえいません」
今回の発言はOCSとNPOをまとめて聞かれた答えです。「いくらか出荷している」と「まだ何も」のどちらが今の姿に近いのか、説明はありませんでした。
次の四半期の見通しは、市場の予想より約1割上でした
次の10〜12月期について、会社は売上16億〜16億5,000万ドル、調整後の一株利益4.77〜4.92ドルを示しました。
💡コンセンサス(市場の予想)=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。学園祭の模擬店で、周りが「売上は14万8,000円くらい」と読んでいるところへ、店長が「16万円台」と言った。今回はそんな差です。
コンセンサスは売上14億8,000万ドル(6人の平均)、一株利益4.43ドル(9人の平均)でした。見通しの中心は売上で約9.8%、一株利益で約9.4%上回ります。一株利益は見通しの下限でも、9人のうち最も高い予想(4.56ドル)を超えています。
ただ、見通しの中心は前年同期比+43%です。今四半期の+51%より低く、中心どおりなら加速は止まります。
これには前例があります。3ヶ月前に示した今四半期の見通しも、中心は同じ+43%で、結果は+51%でした。今回も上に外れるのかは次の決算で分かります。会社は3ヶ月前に「見通しは1四半期ずつしか出しません」と言っていて、今回も通期の見通しはありません。
工場に先に払った現金と、「手元にいくら要るか」に数字が返らなかった質疑
この四半期の営業キャッシュフロー(本業で入ってきた現金)は2,100万ドルで、売上14億7,400万ドルの1.4%にあたります。設備投資は1億5,900万ドルで、フリーキャッシュフローは−1億3,700万ドルでした。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入った現金から設備投資を引いた、自由に使えるお金。
設備投資のうち7,700万ドルはサンタクララの拠点の取得で、これは一度きりです。ただ、それを除いても約6,000万ドルのマイナスで、取得だけでは説明がつきません。財務責任者は、生産能力の拡大と運転資金のために現金を使っていると説明しました。手元の現金と短期投資は7億5,700万ドルで、前の四半期から1億1,900万ドル減っています。建屋11が始まれば、設備投資はさらに増える見込みです。
その中で、取締役会は自社株買いの枠を1億300万ドル追加しました。質疑では、建屋10と11を抱えながら枠を広げる理由と、最低限必要な現金の水準を聞かれました。答えは「最優先は成長への投資」で、水準の数字は出ていません。今四半期の自社株買いは2,900万ドルでした。約7,500万ドルの借り入れは、タイで借りるほうが、アメリカで運用している現金を崩すより安いからだと説明しています。
最も聞かれたNPOとCPOの規模も、はっきりしていません。「それぞれ数億ドルから10億ドルの事業になり得るのでは」と聞かれ、経営陣は「妥当な見方だと思います」と答え、「どちらも単独で数億ドルの機会になり得ます」と続けました。この規模感を持ち出したのは質問した側で、経営陣は続けて「まだ数字には入ってきてもいません」とも言っています。分野別の見通しを聞かれると「分野別には出しません」、光トランシーバーの顧客の数を聞かれると「1社より多いです」まででした。
もう1つ、3ヶ月前に財務責任者が付けた但し書きがあります。顧客からの長期の需要見通しについて「これらは発注の確約ではありません」と言っていました。工場は確約のない見通しも見ながら先に建てています。部品も「全般に品薄」で、経営陣は必要な分は確保できていると言いますが、「もっとあればもっと出荷できる」とも言っています。
経営陣はこのリスクにも触れています。固定費は原価の約5%で、「最悪のシナリオで需要が落ちても、大きな固定費は増えていません」という説明です。ただ、建てるための現金はもう出ていっています。
1月の着工と、次の説明会で分かること
建屋11が完成するのは2028年の半ばごろです。今回の決定が売上に出るのは1年半以上先で、経営陣自身も「それより前に能力が要る」と言って別の場所を探しています。
だから近いところで分かるのは、別のことです。次の決算で売上が16億ドルに届くか。NPOの売上の時期が「今年度の後半」のままか。1月に建屋11が本当に着工するか。このどれかが崩れれば、今回強くなった言葉のほうが先を行きすぎていたことになります。
逆に、営業キャッシュフローが売上に追いついてくれば、先に出ていった現金が戻り始めたと読めます。今回はまだそこまでの材料がありません。
建屋11はまだ着工前です。NPOの売上はまだ時期の話で、OCSは出荷の有無すら発言がそろっていません。11月2日の時点で、まだ答えが出ていないのはこの3つです。次の説明会は、1月の着工が本当に起きたかから読み直します。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。