僕が一番驚いたのは、「6月までは心配ない」の言い直しでした【KBホーム(KBH)2026年6〜8月期決算】

3ヶ月前の決算説明会で、アメリカの住宅メーカーの経営陣はこう言っていました。受注のペースは想定どおりで、6月の時点まで、心配になるようなことは何も起きていない、と。

今回、同じ会社が言い直しました。「6月の前回の説明会のあとから、状況は弱まっています」。

起点に選んだのが、3ヶ月前に心配ないと言っていたその6月でした。アメリカで戸建てを建てて売っている、KBホームという会社です。買い手の約半分は、初めて家を買う人です。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年9月22日に行われた、2026年6〜8月期(同社の会計年度では2026年度の第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表のあとに、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「売ってから建てる」家づくりとは

この会社を読むには、ひとつだけ言葉を知っておく必要があります。受注生産(build-to-order)です。

日本の住宅でいうと、「建売(たてうり)」の反対の「売建(うりたて)」に近い形です。建売は、先に家を建ててから買い手を探します。売建は、先に買い手と契約して、間取りや設備を選んでもらってから建て始めます。

違いは在庫です。建売は、売れなければ完成した家が残ります。残った家は、値下げして売るしかありません。売建なら、建て始めた時点で買い手が決まっているので、値下げに追い込まれにくい。会社によると、この売り方の差だけで、粗利率がおよそ4ポイント違うそうです。

💡粗利率=売ったお金から、土地や建築の原価を引いて残る割合。家1軒の値段のうち、何割が会社の手元に残るか。

KBホームはここ数年、この「売建」中心の会社に戻すことを目標にしてきました。そして今回、その目標を予定より早く達成したと言っています。引き渡した家のうち売建の割合は、前の四半期の60%から74%へ上がりました。

普通なら良い知らせです。ただ、この記事の結論はここから来ます。移行が済んだということは、「売建の割合が増えるほど粗利率が上がる」という追い風は、ここから小さくなるということです。会社自身がそう言いました。

6月を境に、言葉が反対を向きました

まず、冒頭の言い直しを原文で並べます。

3ヶ月前:「6月については、受注のペースは安定していて、想定どおりに推移しています。6月までの流れの中に、懸念の理由になるようなものは何もありません」
今回:「住宅市場は厳しいままで、6月の前回の決算説明会以降、状況は弱まっています」

続けて、何が起きたのかも具体的に言っています。住宅ローン金利の上昇で買いやすさがさらに圧迫され、家を買うことに慎重な人が増えた。そして、

「7月と8月は販売が前の期間より鈍り、その結果、純受注は前年同期を下回りました」

純受注は、新しく結んだ契約の数から、解約された数を引いたものです。

競合についての言い方も変わりました。3ヶ月前、中古住宅は「歴史的に最大の競合」という、どこか過去形の扱いでした。今回はこうです。

「最大の競合である中古住宅の在庫は、この10年で最も高い水準まで増えています。そして、より多くの市場で価格が下がり始めています」「ここ数年よりも、手ごわい競合になりつつあります」

新築を売る会社にとって、売りに出ている中古の家は同じ買い手を取り合う相手です。中古の値段が下がれば、新築も値段で応えるしかなくなります。

もうひとつ、強く残ったのは締めの言葉です。3ヶ月前の説明会は、こう終わっていました。

「私たちは長期の住宅市場について楽観的です。時間とともに需要を押し上げる人口動態と、住宅が構造的に足りていない状態が続いていることが、意味のある将来の成長機会を支えています」

今回の締めに、「楽観的」も「構造的な不足」も出てきません。代わりにあったのは、こういう言い方です。

「状況が正常に戻ったときに、その先にあると信じている機会に向けて、備えができています」

成長の話が、全部「〜したら」の中に入りました。財務の説明でも「市場が許すときに成長できる財務体質と、許さないあいだは数量を追わない規律」。土地の話でも「市場環境が許せば、成長の余地は十分にある」。3ヶ月前は条件なしで言えていたことです。

アトランタも木材も、今回は一度も出てきません

言い方が変わっただけではありません。前の四半期に具体的に語っていた話が、今回はいくつも消えていました。

  • アトランタへの再進出。前回は「最初の用地を取得し、2027年初めに販売開始の予定」と語っていました。今回、アトランタは一度も出てきません
  • 木材のコスト。前回は木材価格の圧力と、樹種や価格固定期間を分散する調達戦略を説明していました。今回、木材は一度も出てこず、コストの話題は燃料の追加料金に置き換わっています
  • アリゾナ州テンピへの本社移転。前回は移転の費用を毎四半期計上していくと言っていました。今回、その費用に触れていません

消えたことが悪い知らせだとは限りません。順調だから話さなかっただけかもしれない。ただ、少なくとも「話す価値がある」とは扱われなかった、ということです。

数字そのものが縮んだものもあります。前回、会社は「契約済みでまだ着工していない家が1,500戸以上ある」と誇っていました。下請けとの価格交渉で使える武器だ、という説明つきです。今回も同じ「交渉の武器」の話をしていますが、その数は約1,100戸でした。武器の話は同じで、弾が3割近く減っています。

売上は20%減、それでも会社の予想は上回りました

実績です。

  • 住宅の売上 13億ドル(前年同期の16億ドルから−20%)。1ドル150円で約1,950億円
  • 引き渡した家 2,732戸(前年同期比 −19%)
  • 住宅の粗利率 16.5%(前年同期 18.2%)。調整後は 16.8%(前年同期 18.9%)
  • 一株利益 1.05ドル(前年同期 1.61ドル)

💡調整後=会社が除外した在庫の評価損などを抜いた数字(non-GAAP)。今回除いたのは300万ドル、前年同期は1,100万ドルで、除く額が違うぶん、見かけの差も変わります。

売上も利益も前年から大きく減っています。一方で会社は、すべての指標で自分の見通しの範囲内か、それ以上だったと言っています。粗利率は見通しの上限を少し超えました。

ここだけ読めば「悪い環境の中で健闘した」決算です。ただ、その「上限超え」の中身を会社自身が説明していて、そこで話が変わります。

第3四半期の上振れは、第4四半期の分を先に使っていました

粗利率が上振れた理由について、会社はこう言っています。売建の家の引き渡しが予想より多かったこと。そして、すぐあとにこう続けました。

「予想より早く、売建が中心の事業に戻すという目標を達成しました。その結果、第4四半期には、売建の比率から得られる上乗せの利益は小さくなると見ています」

つまり、第4四半期に来るはずだった追い風が、第3四半期に前倒しで入った。上振れの分は、次の四半期から借りてきた、と言っていい形です。

建築期間の短縮も同じ形です。売建の家は着工から完成まで平均99日で、1年前より23日(19%)速くなりました。「1年前は4ヶ月以上かかっていた家が、いまは3ヶ月ちょっとで建つ」。ただ会社は、「ここからの改善は緩やかになる」とも言っています。もう十分に速くなったからです。

しかも、この速さには裏面がありました。アナリストに「第3四半期に着工した家のコストは下がっているのに、なぜ第4四半期のコストが上がるのか」と聞かれて、会社はこう答えています。四半期のあいだにコストは上がり続けていて、第3四半期の後半に着工し第4四半期に引き渡す家には、その上昇分が入っている。家が速く建つほど、コストの上昇がすぐ決算に出てきます。前回は強みとして語られた速さの裏返しで、僕には逃げ場の無さに見えました。

3ヶ月前に「+1ポイント」と言った四半期が、「−0.5ポイント」になりました

見通しは、ほぼすべて下がりました。

3ヶ月前、会社は第4四半期の粗利率について、「中心の値で、前の四半期から約1ポイントさらに上がる」と言っていました。今回はこうです。

「第3四半期は16.8%で着地しました。第4四半期は16.3%を見込んでいます」

上がるはずだった四半期が、下がる四半期になりました。会社自身、前回の見通しが示していた水準より約1ポイント低いと認めています。中身もはっきり説明しました。売上の規模の効果で約0.5ポイント上がるが、値下げの圧力、コストの上昇、商品と地域の構成で約1ポイント失う。とくに南カリフォルニア、と。

ほかの見通しも並べます。

  • 第4四半期の平均販売価格:前回の見通しが示していた約50万ドルから約48万ドルへ(1軒あたり約300万円の下げ)
  • 通期の粗利率:16.1〜16.5%から16.0〜16.2%へ
  • 通期の住宅売上:49億〜53億ドルから49億〜51億ドルへ(上限を2億ドル下げ)
  • 通期の引き渡し戸数:10,500〜11,000戸で据え置き

💡見通し(ガイダンス)=会社が自分で出す業績予想。前回の自分の数字と比べると、経営陣がこの3ヶ月で何を見たかが分かります。

戸数は守り、値段と利益率を下げた。数を売るために値段で譲っている、ということです。会社も「需要と価格の両方に、想定以上の圧力がかかっている」と言っています。

経営陣が答えなかったことと、事業の外側で利益を支えたもの

この決算には、答えが出なかった問いと、事業の外側から利益を押し上げた数字が混ざっています。

来年の話は、3人が角度を変えて聞き、数字は一度も出ませんでした。 最初の質問者は、今の第4四半期の構成が来年前半の出発点になるのかを聞きました。返ってきたのは「2027年度の見通しは出していません。市場はいま、かなり不安定で荒れています」。別の質問者が、来年は販売拠点(コミュニティ)の数が増加に戻るのかと聞くと、「見通しは出しません。遠回しに拠点数の見通しを聞いておられますね。工夫には感謝しますが、本当にまだ早い」。3人目も、来年の構成の改善を裏口から聞こうとしました。

💡コミュニティ=分譲地の単位。1つの分譲地で何十戸、何百戸と売っていきます。拠点の数が増えないと、売れる家の総数も増えにくい。

今年の期末の拠点数の見通しは270〜275で、前年とほぼ同じです。1つの拠点で月に売れる家は、前回は4.0戸と実績として示していましたが、今年は通期で3.3〜3.4戸あたりになるというアナリストの計算に対しては、会社は数字を確かめず、長期の目標を持ち出しました。「長期では月4戸前後を目指していますが、今年はそれを下回るペースで推移しています」。

長期の粗利率目標も、道筋が出ませんでした。 売建への移行が済んだ今、長期目標の22%はどうなるのかと聞かれて、答えは「それは今も目標です」。足元の通期見通しは16%台で、6ポイント近い開きがあります。いつ、どうやって埋めるのかは語られませんでした。

一方で、事業の外側で利益を支えたものもあります。

  • 税金。会社が払う税金の割合(実効税率)が一時的に19.6%まで下がりました。残っていたストックオプションが今期にすべて行使された効果で、会社は第4四半期に約26%へ戻ると言っています。前回の説明会で「10月に期限が来る」と予告されていたもので、もう繰り返しません
  • 自社株買い。一株利益の計算に使う株数が、前年同期より9%減っています。会社が大きくなったのではなく、割る数が減った効果です。借入れの利用額は前の四半期の2億7,500万ドルから4億1,500万ドルに増え、負債資本比率は35.7%(前年同期33.2%)に上がりました。第4四半期の買い戻しは最大5,000万ドルで、前回予告していた第3四半期の5,000万〜1億ドルより小さくなっています
  • 人件費。業績連動の報酬が減り、人員も前年比6%減りました。業績が戻れば、この部分は逆に動きます

税率と株数と報酬。売上が2割減った四半期の一株利益を、事業の外側にある3つが下から支えていました。

ただ、悪い知らせを隠す経営陣ではありません。準備原稿に無かった「価格の高い分譲地の販売開始が遅れた」ことを質疑で自分から足し、四半期末のあとに金利がさらに0.2〜0.3ポイント上がったことも言いました。来店は約10%減っている、とも。

それでも、前に進んでいるもの

受注残が、4年ぶりに前年を上回りました。 前回の説明会で「第3四半期に前年比で増加に戻る」と予告していて、そのとおりになりました。言ったことをやっています。

💡受注残(バックログ)=契約は済んでいて、まだ引き渡していない家。この先の売上の予約のようなもの。

ただ、受注残のうち、この四半期に引き渡しまで進んだ割合は60%で、前年同期の71%から下がっています。予約は増えたが、消化は遅くなった、という形です。

売れ残りの在庫が大きく減りました。 建築中と完成済みを合わせた売れ残りは、生産全体の26%(前年同期41%)。完成したのに売れていない家は9%(前年同期16%)。値下げで処分しなければならない家が少ない状態です。

買い手の質は保たれています。 平均の世帯年収は約13万4,000ドル、信用スコアは742、頭金は平均16%(約7万6,000ドル)。住宅ローンは85%が自社の合弁ローン会社を使っています。

そして会社が一番強く語った前向きな材料は、来年の出発点でした。今年は、去年より多い受注残を持って新しい年度に入る見込みで、しかも家を建てる速さが上がっている。 同じ受注残を、より早く引き渡しに変えられる。

これは本当です。ただ、受注残を早く回すのは「増やす」ではなく「早める」です。来年の売上を大きく押し上げるのは、金利と、買い手が家を買う気になるかどうか。どちらも、この会社の外にあります。

16.6%を超えるか、48万ドルを割るか

今回の読みは「売建への移行という自分の手で動かせる追い風は使い切り、ここからの数字は市場次第になった」です。

次の決算(2026年9〜11月期)で、次の3つのうち2つ以上が起きたら、この読みは外れです。住宅の粗利率が今回の見通しの上限16.6%を超える。純受注が前年同期比でプラスに戻る。来年度について、拠点数か戸数の具体的な見通しが出てくる。

逆に、第4四半期の平均販売価格が48万ドルを下回るか、通期の引き渡しが下限の10,500戸に届かなければ、悪化はまだ続いていることになります。


今回一番重かったのは、数字ではありませんでした。3ヶ月前に「6月まで心配ない」と言った同じ口が、「6月から弱まった」と言ったことです。経営陣は嘘をついていたわけではありません。6月の時点では、本当にそう見えていたのだと思います。住宅の需要は、3ヶ月でそれだけ向きを変えることがある、ということです。

ここに書いたのは、2026年9月22日の説明会までに分かっていることです。その後の金利も、中古住宅の値段も、まだ動いています。締めの言葉に「構造的な不足」が戻ってくるかどうか。次に開くのはそこです。

同じ会社の次の四半期も、この連載で書きます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。