AIの主役は、やっぱりエヌビディアです。GPUを作って売っている会社ですから、そこは動きません。
でも、GPUを「買った側」で、いま静かに起きていることがあります。何千台ものGPUを調達しても、それを並べて、冷やして、繋いで、動かし続ける部分は自前で抱えていない。資金は集まった、GPUの割り当ても取れた、でも建物の中を組む人がいない。
その穴を埋めることで商売をしている会社が、今回の決算で、来期の見通しを大きく引き上げました。ペンギン・ソリューションズ($PENG、ナスダック上場)です。
💡 何屋さんか一言で言うと、「AI用のデータセンターを設計・調達・建設して、そのあと3〜5年、24時間動かし続けることまで請け負う会社」+「AIサーバーに差すメモリを作って売る会社」の二枚看板です。
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※この記事で扱うのは、2026年10月6日に行われた、2026年8月28日に締めた第4四半期(2026年5月30日〜8月28日)とFY2026通期の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
その前に——「ネオクラウド」って、何でしょう
今回の話は、この言葉を知らないと何も伝わりません。先にここだけ片付けます。
「クラウド」と付いていますが、アマゾンやマイクロソフトのような総合クラウドではありません。 メールもデータベースも請求書システムも動かす何でも屋ではなく、GPUの計算力だけを時間貸しする専業業者です。ここ数年で一気に増えました。
普通のクラウド大手——いわゆるハイパースケーラーは、データセンターを自分で設計して、自分で建てて、自分で運用する社内チームを持っています。アマゾンがクラウドを始めたのは2006年ですから、20年やってきて当たり前に持っています。
ネオクラウドは、ここが逆です。資金調達は上手い。GPUの確保も上手い。でも、設計から24時間の運用までを自前で全部抱えるかというと、そこを外に出す会社が出てきています。 実際、ペンギンが今四半期に新しく獲得したAIインフラ顧客の多くは、このネオクラウドでした。
日本の実物に置き換えると、賃貸マンションを建てて貸したいオーナーのような立場です。土地と資金は用意できた。でも設計事務所も工務店も管理会社も社内には無いので、そこは丸ごと外に出すことになります。
ペンギンは、その「設計事務所+工務店+管理会社」を一社でやります。
そして、ここが結論に効いてきます。この会社の売上は「GPUが売れるかどうか」に乗っているのではなく、「GPUを買った人が、建てて動かす部分を外に出すかどうか」に乗っているということです。しかも運用の受託は3〜5年契約で、メモリの値段が上がろうが下がろうが続きます。覚えておいてほしいのはここだけです。
3ヶ月前の「たぶん15%くらい」が、「約40%」になりました
いちばん変わったのは、この一行です。
3ヶ月前(第3四半期)の説明会で、同じ事業セグメント(AIインフラの受託。会社の言い方では advanced computing)の来期の伸びについて、会社はこう言っていました。
「advanced computingについては、たぶん15%前後(mid-teens)、そのあたりが出発点になるかと思います」
それが今回は、こうなりました。
「advanced computingについては、通期の売上が中間値で約40%、プラスマイナス10ポイントの成長を見込んでいます」
15%前後から約40%です。2.5倍以上の引き上げを、1四半期でやっています。
言葉の性格も変わりました。前回のCFOは、来期見通しについて質問された時に「あれは暫定(preliminary)ですからね。まだ自分たちの計画の途中なんです」と言っていました。今回、CEOはこう言い直しています。
「前四半期にお示ししたのは、方向性としての大まかな色合い(high-level color)でした。今回はそれよりずっと、正式な見通し(formal outlook)です」
受注残の言い方も変わりました。前回は「非常に強い受注残を持って第3四半期を終えました」という形容詞だけ。今回は全社について「過去最高の受注残」と言い、さらにメモリ事業については期間が数字で出ました。メモリの伸びは価格なのか数量なのかを問われた流れで、CEOがこう答えています。
「メモリでまた記録的な四半期になりましたが、我々の受注残は、この四半期に計上した売上よりもずっと多いのです。そして受注残はいま、少なくとも4四半期分に及んでいて、しかも強まり続けています。だからこそ事業の見通しを引き上げる自信があるのです」
ここは範囲に注意が要ります。
💡 受注残(バックログ)=すでに注文をもらったけれど、まだ納めていない仕事の積み上がり。ここで「4四半期分」と言っているのはメモリ事業についてで、全社の受注残について会社が言ったのは「過去最高」という形容詞までです。
ノルウェーに36,000台のGPU——受注の中身も具体になりました
言葉が変わるだけなら、よくある話です。今回は中身も具体になりました。
第4四半期の実績はこうです。売上は5億6,669万ドル(約850億円、1ドル150円で換算)で前年同期比+68%。調整後の希薄化後一株利益は1.00ドルで前年同期の0.43ドルから+133%。通期では売上17億3,147万ドル(+26%)、調整後EPSは2.87ドル(+51%)でした。
💡 ここでのEPSは「調整後(non-GAAP)」です。買収に伴う無形資産の償却など、会社が本業の実力から外して見ている項目を除いた数字です。会計基準どおり(GAAP)の通期ガイドは別の数字が出ています。
受注側で、CEOが挙げた案件はこういう顔ぶれでした。
- 韓国の大手テクノロジー企業が後ろ盾のネオクラウドが、NVIDIAのブラックウェル世代の上位GPUを72台ひと組にした構成の設計・構築・配備・運用をペンギンに任せた
- 複数年のAIインフラ契約を30億ドル以上署名済みの上場ネオクラウドが、配備と24時間365日の運用サービスを複数年で委託した
- そして、あるAI研究所から100億ドル分の計算力を受注している別のネオクラウド向けに、ノルウェーで36,000台のGPUを使うAI工場の配備と運用を任された
- Lektraというネオクラウドが、既存の二酸化炭素を出さない電源を使う分散型のAIマイクロデータセンターの配備と最適化に、ペンギンのプラットフォームを選んだ
顧客数も実数で出ています。第4四半期に新しいAIインフラ顧客を6社追加(うちネオクラウドが4社、大手クオンツ運用会社が1社、一般企業が1社)。FY2026通期では17社を追加し、既存12社が取引を拡大しました。なお、上に挙げた4件がそのままこの新規4社だとは、会社は言っていません。
混ぜてはいけない数字が、一つあります。上に出てくる「30億ドル」「100億ドル」は、顧客側が持っている契約額です。ペンギンが受け取る金額ではありません。 ペンギン自身の受注額は、今回一件も開示されていません。規模感(36,000台)と期間(複数年、3〜5年)は読めますが、自社の金額は読めない。
4.45ドル——来期の見通しが、市場予想の平均を大きく超えました
会社が出したFY2027(2026年8月29日に始まり、2027年8月に終わる会計年度)の通期見通しは、次のとおりです。
- 売上:中間値で約40%成長(±10ポイント)、金額で約24.3億ドル(約3,600億円)。増収額は約7億ドル
- 調整後希薄化後EPS:約4.45ドル(±0.70ドル)。+約55%
- 調整後粗利率:約28%(±2ポイント)
おもしろいのは、起点を揃えた比較です。会社自身がこう説明しています。
「前四半期に、当時のFY2026見通しの中間値から約30%成長という暫定的な見方をお示ししました。同じFY2026見通しの中間値を起点に置くと、現在のFY2027の中間値は約45%の成長にあたります」
同じスタート地点から数えて、30%が45%になった。EPSの方は+約55%という数字が出ています。ただし、この2つは起点が違います。売上の45%はFY2026の「見通しの中間値」に起点を揃えた数字で、EPSの55%はFY2026の「実績」2.87ドルからの伸びです。それでも、売上の伸び(40%)よりEPSの伸び(55%)が大きい=利益の出方が良くなる前提が見通しに入った、という向きは変わりません。
そして、市場の予想との関係です。決算発表前の時点で、この会社のFY2027の一株利益について市場に出ていた予想は、平均で3ドル台前半でした。会社が出したのは4.45ドルです。しかも会社が示したレンジの下限(3.75ドル)でも、その平均を上回ります。
ただし、良い話だけではありません。同じ見通しの中で、調整後粗利率は約28%とされています。FY2026の実績は29.3%でした。つまり利幅は薄くなる前提です。会社は「売上の伸びと規模で粗利の金額は増える」と言っていますが、率は下がる。ここは見通しの中に明記されています。
金額や内訳を聞かれた5問は、全部断られました
質疑応答は全6問。方向や進捗を聞かれた質問には、具体的に答えています。でも、金額や内訳を求められた5件は、すべて断りました。 目立ったものを3つ挙げます。
- 受注残の金額:「FY2027のadvanced computing売上見通しのうち、どれくらいがすでに受注残に入っているのか」と聞かれ、CEOは「受注残が売上のどれだけを賄っているか、その詳細は開示していません」と断った
- セグメント別の利幅:2社から重ねて聞かれ、「セグメント単位の利幅は開示していません」。しかもその流れで、会社側から懸念を一つ足した=「AIインフラ側は、多少の下押し圧力があるかもしれません」
- メモリの値段と数量の内訳:伸びのうち価格がいくら、数量がいくらか。明示的に問われたが、割合も来期の価格前提も数字では答えなかった
金額や内訳ではないけれど、答えなかったものがもう一つあります。デルの沈黙です。前の四半期には、デルが提携先として2回登場し「2026年 デル・テクノロジーズ グローバル・アライアンス 米州 AIパートナー・オブ・ザ・イヤー」の受賞にも触れていました。今回の決算発表資料にも、説明会での経営陣の説明にも、デルは一度も出てこない。 しかも質疑で「NVIDIAとデルの関係が、この伸びにどれだけ寄与しているのか」と名指しで聞かれたのに、CEOの答えはNVIDIAの話だけで、デルには一言も触れませんでした。
消えたものは、デルだけではありません。前の四半期にCFOが顧客の三本柱と呼んでいた「企業、ネオクラウド、ソブリンAI(国が自前で持つAI基盤)」から、ソブリンAIが落ちました。今回は「ネオクラウドと企業顧客に集中」です。前の四半期に旗艦事例として名前を出していた顧客も、今回いずれもゼロ回でした。実名で出てきた顧客は、上に書いたLektraの1社だけです。
では、今回の数字に一度きりの上乗せは入っていたのか。
資産売却益も、税率の引き下げも、調整後の数字には入っていません。 調整後の税率は20%で据え置き。自社株買いはEPSを押し上げる規模ではなく、むしろ転換社債の発行で、想定する株数は来期に増えます=EPSには押し下げです。
ただし、これは調整後の数字の話です。会計基準どおり(GAAP)の一株利益は第4四半期1.29ドルで、調整後の1.00ドルより高い。主因は税の便益(法人税が戻り側に計上されたこと)で、調整後の数字からは外されています。
メモリの伸びには、値上がりが混ざっています
調整後の数字に、上乗せの問題はありません。でも、メモリには別の種類の問題があります。 全社売上の60%を占めるメモリ事業の伸びには、価格の上昇が含まれています。CEO自身の言葉です。
「数量と価格の両方で、増加が見えています」
そのうえで、こう続けています。
「メモリが循環的な(cyclical)市場であるのは確かですが、AIがそこに構造的な需要の駆動要因を加えていると考えています。とくにデータセンター向けのメモリ製品では」
そして、データセンター以外の需要については、こう切り分けています。
「その需要は、まだ単に需要と供給の力学によるもので、循環的なものかもしれないと考えています」
貸借対照表にも出ています。在庫は前年の2億5,500万ドルから7億4,900万ドルへ、買掛金は2億6,700万ドルから8億1,700万ドルへ膨らみ、会社はどちらの理由にも「メモリ原価の上昇」を挙げています。営業キャッシュフローは第4四半期に1億6,300万ドルの流出、通期で1億5,200万ドルの流出でした(前期は1億1,300万ドルの流入)。伸びている最中に、現金は出ていっています。
27%の肺と、60%の肺
この二つの肺で、この会社の売上は立っています(残りの13%はLED事業で、今回の話には効いてきません)。性質がまるで違うので、両方の実数を並べないと、話が半分になります。
肺その1:AIインフラの受託(advanced computing)=四半期$1.54億、全社の27%。 セグメント内で、ハイパースケーラー以外のAIインフラが66%を占め、前年同期比+99%で伸びています。冒頭の「GPUは買えても、建てるのは別の会社」が、そのまま売上になっている部分です。
この肺の強さは、契約の形に出ています。運用の受託は典型的に3〜5年にわたる複数年契約。受注から売上への変換は、会社が前の四半期に説明したところでは3〜6ヶ月。つまり今回積んだ受注は、FY2027の中に落ちてくる窓にあります。しかも、案件の進行状況を聞かれたCEOはこう答えています。
「お話しした案件のほとんどは、すでに始まっています。つまり、彼らのデータセンターを我々が運用している、あるいは建設している、ということです。一部は調達の途中です。ですからこれらは将来の話ではなく、すでに起きていることです。実際、何ヶ月も前から作業しており、その一部が最近になって受注として計上が加速したのです」
肺その2:メモリ(integrated memory)=四半期$3.41億、全社の60%、前年同期比+158%。 通期では9億2,400万ドル(+99%)で、全社売上の53%。FY2025の34%から大きく比重が上がりました。中身はデータセンター向けのメモリモジュールと、CXLという規格を使ったメモリ拡張の製品です。
💡 CXL=GPUやCPUに外からメモリを足せるようにする接続規格。GPUに積めるメモリの量と速度が足りない、という今のAIの弱点を、外付けで補う方向の技術です。
ここが今回の決算でいちばん大事なところです。この二つの肺は、伸びの理由が違います。
27%の方は、3〜5年の契約と、ネオクラウドが自前では持っていない「建てて動かす」経験に乗っています。メモリの値段が来年下がっても、ノルウェーの36,000台は動かし続けなければいけない。
60%の方は、構造的な需要(データセンターのメモリ不足)と、商品の価格サイクルが混ざっています。しかも混ざり方の内訳を、会社は聞かれても出しませんでした。
だから僕の読みは、「全部が構造的な変化だ」ではありません。構造的に変わった部分は確かにあって、それは今の売上の3割に満たない方の肺で起きている。残りの6割は、良い風が吹いている間は良い数字が出る。 その二つが、同じ決算の中で同時に起きた四半期でした。
デルとソブリンAIが、次も出てこなかったら
ここまでは、2026年10月6日の説明会で分かったことです。3ヶ月後には変わっているかもしれません。
- 「record backlog(過去最高の受注残)」という言い方が落ちたら。言葉が引っ込むのは、数字が引っ込む前に来ます
- FY2027のガイド(売上の中間値 約24.3億ドル、調整後EPS 約4.45ドル)が引き下げられたら
- メモリ事業の四半期売上が、今回の3億4,100万ドルから前四半期比で減ったら。これが出たら、価格サイクルの反転を構造的な需要が埋めきれなかった、ということです
そして、消えた名前が戻ってくるかどうか。デルとソブリンAIが次回も出てこなければ、それは偶然ではありません。
だから僕は、決算説明会を一社ずつ聞き続けています。デルの名前が戻るかどうかも、次の決算で確かめて書きます。結論より、変化を追う姿勢を信じてほしい。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。