思わず二度読みました。「受注残にすら入っていない」約束が、3ヶ月で700億ドルの契約に【RTXコーポレーション(RTX)2026年7〜9月期決算】

ミサイルの話から始めます。

アメリカの国防総省が、巡航ミサイルや迎撃ミサイルを「何年分もまとめて」買う約束をしました。その相手の会社は、3ヶ月前の決算説明会で、この約束についてこう言っていました。「それはまだ、受注残にすら入っていません」。

今回、同じ会社の同じ社長が言ったのは「拘束力のある契約です」でした。

この一文を、僕は思わず二度読みました。

会社の名前はRTX。迎撃ミサイルのパトリオットや巡航ミサイルのトマホークを作るレイセオン、旅客機のエンジンを作るプラット・アンド・ホイットニー、航空機の部品や電子機器を作るコリンズ・エアロスペースの3つを抱える、アメリカの航空・防衛の大手です。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月20日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「枠組み合意」と「契約」は、何が違うんでしょう

この決算の背骨は、ひとつの言葉の入れ替わりです。だから先に、その2つの言葉の距離を説明させてください。

「枠組み合意」は、握手です。 家を建てるときにたとえると、工務店と「この土地に、だいたいこのくらいの家を建てましょう」と話がまとまった段階。お互い本気ですが、金額も引き渡し日もまだ紙になっていません。だから会社は、これを受注残に数えられません。

💡受注残(バックログ)=もう注文を受けたけれど、まだ売上になっていない仕事の合計。これから入ってくる売上の「予約台帳」です。

「契約」は、ハンコです。 金額と引き渡しの予定が書かれた請負契約に、両方が判を押した状態。ここで初めて、受注残に載ります。

ただ、ハンコを押しても、お金が一度に入るわけではありません。大きな工事を請け負う建設会社は、代金を完成した日にまとめて売上にするのではなく、工事に使った費用の進み具合に合わせて少しずつ売上にしていきます。RTXも同じやり方を取ると、財務責任者が説明しました。「プログラムに費用がかかった分だけ、売上を計上していきます」。

つまり、こうなります。今回の四半期で決まったのは「受注」で、「売上」はこれから何年もかけて出てきます。 工場や生産ラインを先に整えてから量を増やすので、立ち上がりはさらに後ろにずれます。この記事の結論は、ほとんどこの距離感で決まります。

3ヶ月前は「まだ受注残にすら入っていない」でした

前の四半期、7月の説明会で、社長のクリス・カリオ氏はこう言っていました。

「それらは、今日の時点ではまだ受注残にすら入っていません」「枠組み合意を正式な契約に変える作業を、国防総省と続けています。そのプロセスは進行中です」

今回の10月20日、同じカリオ氏はこう言いました。

「レイセオンでは、それらの枠組み合意を複数年の生産契約に転換しました」「そしてこれは、拘束力のある契約です。価格や納入スケジュールなどを含む、しっかりした条件が入っています」「ですから、私たちはいま実行の段階に移りました」

「進行中」から「実行の段階」へ。中身はこうです。

  • トマホーク 約230億ドル、空対空ミサイルのアムラーム 140億ドル超
  • 10月に入ってから、艦船用の迎撃ミサイル(SM-6とSM-3ブロック1B)の複数年契約にも署名
  • 4本を合わせて約700億ドル(1ドル150円で約10.5兆円)。社長の言葉では「レイセオンにとって、ほぼ10年分の需要の見通し」
  • これを7〜10年かけて納め、生産のペースを2〜4倍に引き上げる

会社全体の受注残は、前の四半期の2,890億ドルから3,400億ドル(約51兆円)へ。前年同期比36%増、3ヶ月で18%増えています。

💡受注対出荷比(book-to-bill)=その期に取った注文の額を、その期の売上で割った数字。1を超えれば、売るより速く注文が積み上がっています。

防衛部門全体の受注は約590億ドルで、この比率は4.57。ミサイルのレイセオンだけで見ると受注523億ドル、比率は6.54でした。3ヶ月で売る額の6倍以上の注文を取った、ということです。

実績も、3つの柱が全部2桁で伸びていました

受注が大きすぎて目立ちませんが、足元の四半期の数字もしっかりしています。

  • 調整後の売上 250億ドル(前年同期比+11%、為替や買収・売却の影響を除くと+12%)
  • 調整後の一株利益(EPS) 2.26ドル(前年同期比+33%)
  • フリーキャッシュフロー 21億ドル

💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的と考える項目を除いた数字で、会計基準どおりの数字とは別物です。今回の説明会で語られたEPSは、この調整後の数字です。

売上の伸びの中身は、旅客機の新しいエンジンや部品の出荷が+10%、すでに飛んでいる機体の整備・部品(アフターマーケット)が+16%、防衛が+10%。どれか1本に頼った伸びではありません。

見通しは2四半期続けて上がり、市場の予想も超えました

通期の見通しは、前の四半期に続いてまた引き上げられました。

  • 調整後の売上 950億〜960億ドル → 970億〜975億ドル(有機成長率は8〜9% → 10〜11%)
  • 調整後のEPS 7.10〜7.25ドル → 7.65〜7.75ドル
  • フリーキャッシュフロー 85億〜87.5億ドル → 90億〜92億ドル

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が前回より上の数字を出しても、周りがもっと上を予想していれば「物足りない」になります。比べる相手は前回の自分ではなく、周りの予想です。

今回のEPSの見通しは、市場の予想の平均(7.25ドル)だけでなく、予想の中で一番強気な数字(7.40ドル)も上回っています。

ただ、この上がり幅には中身の注釈が要ります。

引き上げの半分近くは関税の払い戻し。700億ドルの時期は、4回聞かれても数字が出ませんでした

EPS見通しの引き上げのうち、半分近くは関税の還付です。 財務責任者は、引き上げの内訳を「事業の実力で約0.28ドル、関税の還付で約0.25ドル」と自分から分けて説明しました。アメリカで裁判により無効とされた関税の払い戻しで、当四半期のEPS 2.26ドルにも約0.25ドル、フリーキャッシュフローにも約3億ドルが入っています。部門の利益率の改善3.1ポイントのうち、約1.6ポイントもこれです。財務責任者自身が、還付は第4四半期に入る残り約5,000万ドルで、ほぼ終わると言っています。フリーキャッシュフローの見通しの引き上げも、主因はこの還付だと本人が述べています。

それでも、ここは誠実だと思いました。還付を除いても、EPS見通しの中央はおよそ7.45ドルで、市場の予想の平均を上回ります。実力の分だけで、すでに予想を越えていました。

還付のほかにも、今期の数字を少し持ち上げたものが2つあります。レイセオンで、海外との契約の修正などによる一回きりの利益が約8,500万ドル。エンジン整備では、旧型エンジンV2500の整備の中身が今期は特に濃く、財務責任者は「第4四半期には落ち着く」と言っています。

そして、700億ドルの契約が「いつ、どれだけ売上と利益になるか」は、数字で語られませんでした。 質疑で、この論点は形を変えて4回聞かれています。売上がどの年に出てくるか、予算が変わったら会社は守られるのか、利益率はどうなるか。返ってきたのは「2026年の売上はわずか、2027年から立ち上がり、今後2年で本格化し、2030年のフル生産まで続く」という流れと、「細かい条件には立ち入りませんが、予算環境や数量が変わった場合にも守られています」という言葉でした。2027年の数字は1月に示す、とのことです。

もうひとつ、言葉の細部です。財務責任者は同じ説明会の中で、この4本を「undefinitized contracts」とも呼んでいます。条件の最終確定を待たずに作業を始める形の契約、という意味の言葉です。社長の「拘束力がある」と、財務責任者の「最終確定前」。どちらも本当なのだと思いますが、その境目がどこにあるのかは、今回の説明会からは分かりません。

地上待機の減少と国防予算の数字が、今回の説明会から消えました

言葉が強くなった一方で、前の四半期にははっきり語っていたのに、今回は消えたものが3つあります。

1つ目は、地上で止まっている飛行機の数です。 プラット・アンド・ホイットニーの主力エンジン「GTF」は、部品の素材に不具合が見つかって、検査のために多くの機体が飛べずに地上に止まっています。

💡AOG=Aircraft on Ground。整備や部品待ちで、飛べずに地上に止まっている機体のこと。

前の四半期、社長はこう言っていました。「AOGは前の四半期からさらに減り、年初から25%減っています。下期を通じて減り続けると見ています」。今回は「前の四半期と比べて、AOGはおおむね横ばいでした」「第4四半期にはAOGが減ると引き続き見ています」。夏場は機体がよく飛ぶぶんエンジンの取り外しも増え、整備のペースで相殺するのがやっとだった、という説明です。下期を通じて減る、が、第4四半期には減る、に後ろへずれました。

2つ目は、国防予算の大きさです。 前の四半期は「1.1兆ドルの基本予算の要求は、前年比でおよそ25%の増加です」と、数字を挙げて追い風を語っていました。今回、その数字は出てきません。代わりに出てきたのは「アメリカ政府は現在、暫定予算で運営されています」という一文でした。

💡暫定予算=新しい年度の予算が議会で決まらないとき、前の年度に近い水準でとりあえず政府を動かす仕組み。新しいことに大きくお金を付けにくくなります。

3つ目は、伸び率の小さな鈍化です。 重要な弾薬の生産量は、前の四半期の「前年比で2倍超」から、今回は「前年比で90%超の増加」へ。整備中のエンジンを送り出すペースも「前年比40%超」から「35%超」へ。どちらも十分に高い数字ですが、前の回より少しだけ小さい言い方になっています。

ミサイルとエンジン整備の両方で注文が積み上がり、鍵は電子部品の確保

ミサイルの話だけなら、「戦争と予算の会社」で終わります。この決算が面白いのは、防衛と民間航空の両方で、同時に注文が積み上がっているところです。

防衛の側は、在庫の補充です。 弾薬の生産を2〜4倍にするという話は、裏返せば、いまの生産ペースでは足りないと国が判断したということです。海外からの注文も強く、レイセオンの海外受注は今期だけで90億ドル、年初からで前年の2.5倍。会社全体の受注残のうち37%が海外向けで、今回のミサイル契約を除くと52%になります。

民間航空の側は、整備の仕事です。 新しい民間の受注は今期220億ドル超で、前年同期比60%超の増加。ブリティッシュ・エアウェイズが最大63機分のエンジンにGTFを選び、取り外しまでに飛べる時間を2倍にするという新型の「GTFアドバンテージ」を積んだ最初の機体が、10月にユナイテッド航空で運航を始めました。エンジン部門のアフターマーケット売上は今期+21%。航空会社が燃料高で運航計画を削っていないかと聞かれた社長は、退役する機体が想定どおり少ないことを挙げ、需要は底堅いと答えています。

そして、ひとつ意外なつながりがありました。質疑で「いま、プリント基板が誰も手に入らない。コンデンサや抵抗も足りない。AIのデータセンター建設が部品を吸い上げている」と聞かれた社長は、こう答えています。

「まさにそれが、2〜4倍という増産のペースに到達するうえで、いちばん大きな鍵になる要素です」

質問者の見立てが正しければ、ミサイルを増やせるかどうかを、AIの投資ブームが左右していることになります。その場合、700億ドルの契約の速度を決めるのは、国防総省の予算だけではなく、同じ電子部品を奪い合っている別の産業でもある、ということです。部品不足への具体的な手当て(試験要件の簡素化、新しい供給元の参入、重要鉱物の確保)は語られましたが、どのくらい足りないのかの数字は出ていません。

1月の2027年見通しで、700億ドルが売上に見え始めるか

今回の僕の読みは、「約束が契約に変わった回。ただし売上になるのは早くて来年以降で、その速度は予算と部品が握っている」です。外れていたと分かる形を書いておきます。

  1. 1月に出る2027年の見通しで、レイセオンの売上に新しいミサイル契約の寄与がほとんど見えない
  2. 暫定予算が長引いて、契約の数量が減らされる、または守られていると言った条件が実際に使われる
  3. 第4四半期にも、地上で止まっている機体の数が減らない

逆に、良い方へ外れる形もあります。2027年の見通しで、還付が消えても利益が前に進む姿が示された場合です。今期の数字から関税の還付を抜いても予想を超えていたことが、来年も続くかどうか。そこが一番知りたいところです。


約束が契約に変わるのは、一度きりの出来事です。ここから先は、毎四半期「契約が売上に変わっていく速さ」を見ることになります。3ヶ月前の言葉と今回の言葉を並べたように、次の回も今回の言葉と並べて読みます。1月の説明会で、2027年の数字がどう出てくるか。この会社については、そこを待っています。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。