数字は見事でした。それでも僕は、値上がりが速すぎて少し怖くなりました【ウエスタンデジタル(WDC)2026年7〜9月期決算】

AIの話になると、名前が出るのは半導体の会社ばかりです。でも、AIが作って読み込むデータを最後に寝かせておく場所は、いまもハードディスクです。その円盤を作っている会社の決算が、この四半期、驚くほど強く出ました。

ウエスタンデジタルです。かつてはパソコン用のハードディスクで知られた会社で、いまは売上の9割近くが、巨大なデータセンター向けの大容量ハードディスクです。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月22日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——ハードディスクは、もう古い技術ではないんですか

「ハードディスク」と聞くと、パソコンから消えていった部品を思い浮かべる方が多いと思います。手元の機械は、速い半導体のメモリー(SSD)に置き換わりました。だから、終わった技術に見えます。

ところが、データセンターの中では話が逆です。速さが要るデータはSSDに置きますが、量が要るデータは、1テラバイトあたりの値段が安いハードディスクに置きます。会社自身も、データの大半はハードディスクに保存されていると説明しています。

家のテレビ録画を思い出すと分かりやすいです。録りためた番組は、レコーダーの中のハードディスクに何百時間も入っています。あれを何万台も並べたものが、AIのデータの倉庫です。

この会社がいま売っているのは、その倉庫の「棚」です。そして棚の値段は、1台の値段ではなく、1テラバイトあたりいくらかで決まります。同じ大きさの円盤に、より多く書き込めるドライブを作れれば、お客さんは置き場所と電気代を節約できる。その節約分が、値上げの余地になります。この記事の数字は、ほとんど全部この一点につながっています。

💡エクサバイト(EB)=100万テラバイト。この会社は、何台売ったかより「合計で何エクサバイト分の容量を出荷したか」で事業を語ります。

3ヶ月前より、値上がりが速くなりました

いちばん変わったのは、値段の話です。財務責任者の言い方を並べます。

3ヶ月前:「テラバイトあたりの平均価格の前年比の上昇は、前の四半期の1桁台後半から、この四半期は10%台後半に改善しました」
今回:「テラバイトあたりの平均価格の前年比の伸びは、前の四半期に報告した10%台後半に対して、さらに28%に高まりました」

1桁台後半、10%台後半、28%。値上がりの幅が、2回続けて大きくなっています。しかも今回は、その先まで口にしました。

「テラバイトあたりの平均価格には、今後も上がる余地が間違いなくあります。今後の、そうですね、3〜4四半期にわたって」

3ヶ月前は、自分たちの値付けを「予測可能で持続的な価格戦略」と表現していました。今回、その「予測可能」という言葉は、値段の話の中で使われていません。落ち着いた値上げの話から、もっと強い値上げの話に変わった、ということです。

見通しの届く範囲も広がりました。3ヶ月前の社長は、「大口顧客の1社と、2029年まで続く長期契約がある」と話し、2029〜2031年の契約は「顧客と話し合いの真っ最中」と言っていました。今回、社長が口にした社数は7でした。

「上位7社の顧客を例に取れば、7社すべてについて、2030年、2031年まで良好な見通しを持っています」

1社から7社へ。ただし、ここは言葉を正確に読む必要があります。今回の言葉は「見通し(visibility)」で、2029〜2031年の契約を結んだとは、一言も言っていません。

💡長期契約(LTA)=数年分の数量と値段の決め方を、前もって取り決めておく契約。売り手は先の売上が読め、買い手は品薄のときも確保できます。

売上は+55%、一株利益は2.6倍になりました

3ヶ月前に会社が出した見通しを、売上・粗利率・一株利益の3つとも越えました。

  • 売上 44億ドル(前年同期比 +55%)。1ドル150円で約6,600億円
  • 粗利率 58.1%(前年同期比 +14.2ポイント)
  • 調整後の一株利益 4.64ドル(前年同期比 +161%)
  • 出荷容量 248エクサバイト(前年同期比 +22%、前の四半期比 +8%)

💡調整後=会社が「一時的だと考える項目」を除いた数字(non-GAAP)。この説明会では、特に断りが無い数字はすべてこの調整後の基準で話されています。

その3ヶ月前の見通しは、売上が41億ドル前後、粗利率が55〜56%、一株利益が4.00ドル前後でした。

売上の中身を見ると、データセンター向けが39億ドルで全体の88%(前年同期比+54%)。パソコン向けは3億2,000万ドル(+119%)、個人向けは1億9,300万ドル(+19%)です。

ここで目を引くのは、出荷容量の伸び(+22%)より売上の伸び(+55%)がずっと大きいことです。量の伸びに、値段の伸びが上乗せされています。上の28%は、この決算でいちばん効いている数字です。

現金も残っています。この四半期のフリーキャッシュフローは14億ドルで、そのうち11億ドルを自社株買いと配当で株主に返しました。配当は1株17.5セントへ、17%の増配です。

次の四半期の見通しは、周りの予想を大きく越えました

2026年10〜12月期について、会社はこう示しました。

  • 売上 51億ドル前後(前年同期比 +69%)。1ドル150円で約7,650億円
  • 粗利率 60〜61%
  • 調整後の一株利益 5.80ドル前後

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。テストで「80点くらい」と言っていた子が85点を取っても、周りが90点だと思っていたら期待外れになります。比べる相手は、本人の宣言ではなく、周りの予想です。

この会社の場合、周りの予想は売上が45.6億ドル、一株利益が4.79ドルあたりでした。会社の見通しは、売上で約12%、一株利益で約21%上回っています。一株利益の5.80ドルは、20人ほどのアナリストの予想の中で、いちばん強気な人の数字(5.93ドル)とほぼ同じ高さです。

伸び率も、今期の実績の+55%から、次の四半期は+69%へ速まる見通しです。

ただし、会社は1四半期先までしか見通しを出しません。財務責任者自身が「私たちは1四半期ずつしか見通しを出していません」と言っています。その先の年度については、方向を示すだけでした。

UltraSMRの60%も、5社も8倍も、今回は出てきませんでした

値段の話が強くなった一方で、前の四半期に数字つきで語っていたことのいくつかが、今回は出てきませんでした。

1つ目は、UltraSMRという製品の目標です。 3ヶ月前、社長はこう言っていました。

「2027年度を終える時点で、UltraSMRが大容量ドライブの出荷容量の約60%を占めると見込んでいます」

今回、UltraSMRには一度も触れていません。60%という数字も出てきません。

2つ目は、読み書きの速いハードディスクの話です。 3ヶ月前は「5社でサンプル出荷中」「今のドライブの最大8倍の処理速度を目指している」と、社数と倍率を出していました。今回は「複数の顧客にサンプル出荷している」になり、こう付け加えました。

「この機会は、今日の時点では、まだいくぶん初期段階だと思います」

5社が「複数」に、8倍が消えて「初期段階」に。言葉は後ろに下がりました。

3つ目は、自動運転の会社からの需要です。 3ヶ月前は「その2027年分の需要が、何倍にも増えた」と言っていましたが、今回は自社の数字は出さず、一般論にとどまりました。

そしてもう一つ、コストの話です。3ヶ月前は「テラバイトあたりのコストが前年比で約8%下がった」と言っていました。今回は、アナリストから下がり方が鈍った理由を聞かれ、財務責任者がこう答えています。

「当面、テラバイトあたりのコストの前年比の低下は、10%未満になります」

理由は、ドライブの中に使っている半導体メモリーの仕入れ値が上がっていることです。会社は設計の見直しで対処していると言っています。値段は上がっているのに、作る側のコストの下がり方は鈍っています。

競合の増産を5つの証券会社に聞かれて、値段への影響には答えませんでした

質疑応答で、いちばん多く出た質問は、値段でもハードディスクの技術でもありませんでした。競合が生産能力を増やすことです。

最初に聞いたアナリストは、「市場でいちばん小さい会社が生産能力を増やすことへの懸念」と「業界再編の噂」を挙げ、それが大口顧客との価格交渉に影響しているかを尋ねました。同じ趣旨の質問は、5つの証券会社から繰り返し出ています。

社長の答えは、長期の需要は年25%超の伸びで変わらない、自分たちは記録の円盤も読み取りの部品も自社で作っている、という説明でした。別のアナリストに、他社にそれができるのかと聞かれた場面では、こう言っています。

「他社がそうすることについては、コメントできません。私たちが何をしているかはお話しできます」

価格交渉に影響が出ているかどうかには、最後まで直接答えていません。投資家がいちばん気にしている点が、この説明会では宙に浮いたままです。

もう一つ、データセンターを新しく建てている新興のクラウド会社の需要が鈍ったらどうなるか、という質問には「大きなつまずきになるとは、まったく見ていません」と答えました。ただ、その会社たちが売上のどれくらいを占めるのかは、明かしていません。

そして、この決算をいちばん押し上げているものの性質です。社長自身が「非常に供給が逼迫した環境」と言い、長期契約を結んでいない顧客には「供給が逼迫しているので、より良いスポット価格を得られている」とも言っています。品薄だから高く売れている、という部分が確かにあります。財務責任者も、値上がりの伸びについて「いずれは少し鈍化すると想定しています」と付け加えました。

💡スポット価格=長期契約ではなく、その時々の需給で決まる値段。品薄のときは上がり、余ってくると真っ先に下がります。

僕が怖くなったのは、ここです。28%の値上がりが品薄から来ているなら、品薄が終わる回には、同じ勢いで逆に回りえます。値上がりの幅は、1桁台後半から28%まで、たった2四半期で広がりました。上りがこれだけ速いものは、下りも同じくらい速くなりえます。

一株利益には、11億ドルの株主還元のうち自社株買いの分で株数が減る効果も入っています。これは本業の稼ぐ力とは別のところで、1株あたりの数字を押し上げます。

それでも、品薄だけでは説明できないもの

値上がりの全部が品薄のおかげなら、品薄が終われば元に戻ります。ただ、この会社には、品薄とは別に、1台に詰め込める容量を増やすという話が並行して進んでいます。冒頭で書いた「同じ大きさの円盤に、より多く書き込む」の話です。

いま立ち上げているのが、最大40テラバイトのドライブ(ePMRと呼ぶ方式)です。会社は、大容量ドライブの出荷に占めるこの製品の割合が、10〜12月期に約30%、2027年1〜3月期に50%になると見込んでいます。顧客の切り替えは、過去の世代交代より速く進んでいるそうです。

その次が、44テラバイトのHAMRという方式です。

💡HAMR=円盤を一瞬レーザーで温めながら書き込むことで、より細かく記録できるようにする技術。要するに、同じ円盤に、もっと多く詰め込むための次の世代の書き方です。

3ヶ月前は「2027年の前半にHAMRの44テラバイトを出荷する計画どおり」と言うだけでした。今回は段取りが具体的になっています。

「大手データセンター事業者2社との認定を2027年1〜3月期に終える計画どおりで、2027年の前半に量産出荷を始める予定どおりです」

さらに追加の2社との認定を始め、第2世代の認定は2027年の後半に始めるとしています。認定から量産までに何が残っているかを聞かれた社長は、「立ち止まる理由になるような反応は、何も受けていません」と答えました。

💡認定=お客さんが自分のデータセンターで新しいドライブを長期間試し、「これなら大量に使ってよい」と判断する手続き。ここを通らないと、量産しても買ってもらえません。

財務責任者は、これが出荷容量の伸びを「今後6、7、8四半期にわたって間違いなく加速させる」と言っています。社長も、今の四半期の出荷容量の伸びを「底」だと見ていると答えました。

つまり、この会社の数字は2本の柱で支えられています。1本は品薄による値上がりで、これはいずれ鈍ると会社自身が言っています。もう1本は、1台あたりの容量を増やして、お客さんの置き場所と電気代を減らす力で、こちらは製品の世代交代そのものです。値上がりの28%のうち、どちらがどれだけかは、会社は分けて示していません。

HAMRの認定が1〜3月期に終わらなければ、僕の読みは外れです

今回の読みは、「品薄の値上がりで大きく伸びているが、その裏で容量を増やす世代交代も予定どおり進んでいる」です。次の回で確かめるのは、この2本の柱のどちらが先に崩れるかです。見る場所は3つあります。

  1. HAMRの2社の認定が、2027年1〜3月期に終わらない。こちらは世代交代の柱で、崩れれば僕の読みが外れます
  2. テラバイトあたりの値段の前年比の伸びが、3〜4四半期を待たずに28%を下回る。会社は、あと3〜4四半期は伸び率を拡大する余地があると言っています。こちらは品薄の柱で、外れるのは会社の見立てです。僕が怖いと書いた側が、早く来たことになります
  3. 経営陣が、競合の生産能力の増強による値段への圧力を認める

もう1つ、静かに確かめたいことがあります。今回消えたUltraSMRの60%と、5社と8倍。次の回にこれが戻ってくるのか、消えたままなのか。戻らなければ、それは会社の優先順位が動いたという合図です。


この四半期のウエスタンデジタルは、ほとんど全部の数字が強く出ました。ただ、強い数字の大きな部分が品薄から来ていることも、経営陣は隠していません。品薄が緩んだとき、40テラバイトとHAMRがどこまで値段を支えられるのか。その答えが出るのは、品薄が緩み始める回の決算です。そこが、この会社のもう1本の柱が本当に試される回になります。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。