経済指標発表の瞬間を狙うFXの短期トレード手法のやり方を詳細に解説します。経済指標の長期的分析の方法は?指標発表で勝ちやすい通貨ペアを見つける方法は?指標発表時に何に注目して売買の判断をするか?指標発表の速報を最速で知るにはどのツールを使えばよいか?などを分かりやすく解説します。FX初心者でも1日で覚えることができる手法ですが、奥が深いのでこの記事を参考にしてさらに上を目指しましょう。
もくじ
経済指標とは
経済指標とは、各国の経済の状態を示す様々なデータのことです。雇用統計や、インフレのデータなどいろんなデータがあり、その多くは月に1回発表されます。そしてそれらの経済指標の数値はFXの値動きに大きな影響を与えます。
経済指標の発表の正確なスケジュールは、経済指標カレンダーで確認することができます。経済指標はスケジュール通りに発表されるので、数値の良し悪しによって、あらかじめどのようにトレードするかを準備しておくことができます。
経済指標は、地元の通貨に大きな影響を与えます。米国の経済指標は米ドルに直接的に影響を与えますし、日本の経済指標は日本円に影響を与えます。
様々な経済指標があり、それらを総合的に分析することでその国の経済の状況を把握します。その国の経済が順調なのか、不調なのか。経済が順調であることを示す指標がコンスタントに出てくるのか、悪い指標がコンスタントに出てくるのか?といったことが、その国の通貨の強弱に大きな影響を与えます。
通貨が弱くなりそうな指標がコンスタントに出てくるならその通貨を売りますし、逆なら買うということで優位性を得るのが指標発表トレーダーです。
経済指標はどこで見れるか
経済指標の数値は様々なサイトで確認することができます。
経済指標の予定と結果を確認できるFXカレンダーが便利です。FXカレンダーで一番有名なのはForexFactoryです。私も経済指標の予定の確認にはForexFactoryを使っています。
経済指標の数値の長期ヒストリカルデータが欲しい場合は、IMFや世界銀行のサイトからダウンロードすることができます。データをExcelで開けば自由に分析することができます。
なぜ経済指標が重要なのか?
FXトレーダーにとってなぜ経済指標が重要なのでしょうか?
経済指標の数値によってFXで大きな値動きが出るからです。そして、うまくやればその大きな値動きをとることができます。いつもではありませんが、その国にとってポジティブな経済指標のデータが出ると、その通貨は上がります。一方、ネガティブな経済指標が出るとその国の通貨は下げります。
国の中央銀行は、重要な経済指標のデータを数か月分まとめて分析することで、国の金融政策を決めます。金融政策とは、国が行うお金(通貨)に関する戦略のことです。
中央銀行は、国の経済が落ち込んでいると判断すれば経済を刺激するような金融政策をとります。逆に国の経済が過熱しすぎていてコントロールが効かなくなってきていると判断すれば、経済を冷ますような金融政策をとり、危険なバブル経済になるのを避けようとします。
そして、国が金融政策を実際に実行に移すと、FX市場では大きな値動きがおき、トレンドが転換したりトレンドが加速したりします。
どうなれば通貨が強くなるのか?どうなれば通貨は弱くなるのか?その要因を理解していることはとても重要です。なぜなら、これから強くなりそうな通貨とこれから弱くなりそうな通貨を組み合わせてトレードすれば大きな利益を狙えるからです。
いつ経済指標が発表されるか
経済指標が発表されるのは、その国のセッション中が多いです。
ヨーロッパセッション、北米セッション、アジア・オセアニアセッションがあります。
日本時間の午前中から夕方までの時間帯でトレードするなら、アジア・オセアニアの経済指標に集中してトレードします。
日本時間夕方からのヨーロッパセッション中はヨーロッパの国々の指標発表に集中し、その通貨でトレードを狙います。
日本時間の夜、北米セッションでは北米の経済指標発表に集中し、北米の通貨でトレードを狙います。
どの時間帯でトレードするにしても、指標発表トレードのチャンスがあります。
中央銀行というFXの中心プレーヤー
中央銀行は、様々な経済指標のデータを分析して金融政策の方針を決めます。
彼らの方針としては、強気(ブル)、弱気(ベア)、ニュートラルの状態があり、その時々に合った金融政策でFX市場に実際に影響を与えてきます。
通貨を強くしたり弱くしたりする中央銀行のスタンスをヘッジファンドなどの機関投資家は注目していて、彼らはそれをもとにトレードします。
中央銀行が行う金融政策のFX市場への影響は絶大なので、ヘッジファンドは中央銀行の方針に寄り添うようにトレードします。
先進国の中央銀行は以下の通りです。
国 | 中央銀行の名前 |
米国 | 連邦準備制度理事会(FRB) |
日本 | 日本銀行(日銀/BOJ) |
英国 | イングランド銀行(BOE) |
ユーロ圏 | 欧州中央銀行(ECB) |
カナダ | カナダ中央銀行(BOC) |
スイス | スイス国立銀行(SNB) |
ニュージーランド | ニュージーランド準備銀行(RBNZ) |
オーストラリア | オーストラリア準備銀行(RBA) |
これらの中央銀行のスタンスを知っておくことが、FXの指標トレードにおいて非常に重要です。
彼らがブルならその国の通貨で買いを優先的に狙いますし、ベアなら売りを狙います。
例えば、米国の様々な指標で良い数値が連続して出ているなら、米国のFEDは強気な相場と判断し、近々利上げを発表する可能性が高くなります。そうなると、数カ月間はほかの通貨に比べて米ドルが高くなります。
一方でユーロ圏の経済指標で悪い数値が出ているなら、ECBは利下げやQE(量的緩和)など景気刺激の金融政策を行ってユーロ安になる可能性が高くなります。
その時に米ドルを買ってユーロを売るトレード(EURUSDのショート)は、スキャルピングでもデイトレードでもスイングトレードでも勝てる可能性が高まります。
なぜ経済指標と使ったトレード手法でトレードするのか?
なぜ経済指標を使ったトレードに取り組むべきなのでしょうか?
まず、ほとんどのヘッジファンドは経済指標を使ってトレードしています。(新米トレーダーは別として)
そして、彼らヘッジファンドは相場を動かすぐらいの力があります。それなら、彼らがどんなふうにトレードするのかを知り、できるだけ彼らと同じ方向にトレードし、決して逆らわないようにしようじゃないかということです。
もちろん、我々一般投資家はヘッジファンドや投資銀行が使っているよな高額なツールは使えません。でも今の時代はインターネットの接続速度も上がっていますし、無料で使えるFXツールも増えました。一般投資家でも彼らとほぼ同じようなことができます。
影響力の大きい経済指標は毎日発表されます。ですからトレードチャンスには事欠きません。
しかも、経済指標の発表されるタイミングは経済指標カレンダーで確認でき、そのスケジュール通りに発表されるので、事前にしっかりと準備して待ち受けることができます。そしてうまくいけば、ボラがおおきくなりますので、大きな利益を短時間で取ることができます。
あと、手法がシンプルで楽しいとうのもあります。勝率65%でリスクレワード比がほとんど1:1ぐらいの賭けを楽しむことができます。先進国の経済情勢にも詳しくなれるし、儲かるし、一石二鳥のトレードです。
どの経済指標をトレードするか?
たくさんの経済指標が毎週発表されるが、全てがFX市場を動かすわけではありません。
FX市場に最も大きな値動きをもたらす経済指標に集中してトレードします。
大口トレーダーが特に注目している影響度の大きな経済指標があります。
また、その時によって、または国によって特に注目される経済指標があります。たとえば、ユーロ圏のECBがインフレ率を心配していると言っているなら、インフレ率関連の指標に注目が集まります。
ではどうやって重要な経済指標を見分けるかというと、無料ツールで簡単に判別できます。ForexFactoryという無料の経済指標カレンダーを使います。重要度のフィルターがあるので便利です。重要度が赤色に表示されている経済指標は大きな影響があるので、トレード対象となります。
トレード対象となるイベントは、具体的な数値が発表される経済指標だけです。要人のスピーチなどは対象としません。経済指標は具体的な数値が発表されるので、それが良い数値か悪い数値化は予測値と比較すれば明確に分かります。しかし要人のスピーチなどは同じスピーチの中に様々な情報が含まれるので、それが全体として良いのか悪いのか、白黒つけにくいからです。またそれ以上に、英語のスピーチをリアルタイムで理解するのはほとんどの日本人にとって不可能というのもあります。
対象となる経済指標は以下の通りです。
- 金利の決定
- CPIとコアCPI(インフレの数値)
- GDP(国民総生産)
- 雇用統計
- 生産指数
- 貿易収支
- 消費者自信指数
- 小売売上高
上記の経済指標は、トレード対象の8か国において予測値と実数が発表されます。予測値よりも実際の値が良ければ地元通貨が値上がりします。逆に予測値よりも実際の数値が悪ければ地元通貨が値下がりします。
経済指標トレードに必要なツールやサイト
経済指標発表を狙ったFXの短期トレードに必要なものをリストアップします。
全てほぼ無料で揃います。
- ForexFactory(経済指標のカレンダー)
- ロイター経済指標速報(このページで後程解説)
- スプレッドの狭いFX業者のMT4口座
上記の物がそろえば実践できます。詳細はこのページで解説していきます。
FXカレンダーで経済指標が発表されるフォーマット
経済指標の発表には以下の3つの要素があります。この3つの意味をしっかりと理解しておくことが基本中の基本です。
- Previous(前回の数値)
- Forcast(予測値)
- Actual(実際の数値)
前回の数値はその名の通り、その経済指標の先月の数値です。
Forecast(予測値)は、これから発表される今月の数値がどれぐらいになりそうなのかを複数の投資銀行のアナリスト達が予測した平均値です。予測値は通常、経済指標発表の1週間ぐらい前に出ます。ですからマーケットの参加者は全員、今回の数値がどれぐらいになるか?という期待を持っています。
そして、経済指標カレンダーのスケジュール通りのタイミングで「実際の数値」が発表されます。
上記画像1行目はフランス(EUR圏)のPMIデータです。指標発表の1週間ほど前に予測値が発表され、実際の数値はスケジュール通りに発表されます。この場合は実際の数値が予測値を大きく下回ったので、EURがかなり値下りしたはずです。
画像の上3行以外の経済指標では実数の部分が空白になっています。これはまだ指標発表の時間が来ていないからです。
BOJ Gov Kuroda Speaks の行の数値が全部空白になっているのは、これがスピーチであって経済指標ではないからです。実際の数値が無いので数値の部分は空白です。
ForeCastとActualが特に重要な数値となります。なぜなら、経済指標発表の瞬間に「予測値」と「実際の数値」を比較してトレードの判断をするのが経済指標発表トレードの基本的なやり方だからです。
何が経済指標発表直後の大きな値動きを引き起こすか?
経済指標の発表でFXが大きく動くのは、実際の数値が予測値と乖離している場合です。要するに経済指標でサプライズがあった場合にFXが動くということです。
具体的には…
実際の数値が予測値よりも良ければ、その国の通貨はたいてい上がります。
実際の数値が予測値よりも悪ければ、その国の通貨はたいてい下がります。
乖離が大きければ大きいほど値動きが大きくなります。
実際の数値と予測値に差が無い場合は、たとえそれが雇用統計のように重要な経済指標だったとしても、そんなに大きな値動きは出ないことが多いです。
ですから、乖離が無い場合はトレードを見送ります。大きな値動きが期待できないところでエントリーしてもしょうがないからです。
長期的な分析と短期的な分析
経済指標を使った短期トレードにおいても、長期的分析と短期的分析のマルチタイムフレーム分析を行います。
2つの時間軸で経済指標を分析します。
- 長期的分析 = 中央銀行の金利に関する長期的な動向
- 短期的分析 = 経済指標の予測と実数の乖離
経済指標を使った短期トレードにおける長期的な分析とは、過去3か月~1年ぐらいの中央銀行の定める金利の動向となります。その国の中央銀行が金利を上げる傾向にあるのか、それとも下げる傾向にあるのかということです。これは、複数の経済指標を時系列で分析したり、金利の上げ下げのデータを分析したり、中央銀行のトップの発言などから読みとります。
そして、長期的分析と短期的分析が同じ方向を向くときにだけエントリーします。
8つの主要通貨について長期的分析を行っておくことで、強い通貨と弱い通貨を組みあわせ、もっとも大きな利益を期待できる通貨ペアでエントリーを狙うことができます。
経済指標の傾向を読み取る長期的分析
FXにおける長期的な値動きは、その国の中央銀行が金利を上げているか下げているかによってもっとも大きな影響をうけます。
中央銀行は、過去数カ月の経済指標を詳細に分析し、その国の金利を上げるか下げるかを決めます。
例えば、連続して良い経済指標が出ているなら、経済が過熱気味と判断し、金利を上げる可能性が高まります。(金融引き締め)
一方、連続して悪い経済指標の数値が出ているなら、景気が停滞していると判断し、金利を下げる可能性が高まります。(金融緩和)
金利が上がるとその国の通貨は値上がりし、金利を下げるとその国の通貨は値下がりします。
世界中で投資している投資家の立場で考えてみてください。
金利が安い通貨に投資するよりも金利の高い通貨に投資してたくさんの金利収入を得たいと思うはずです。ですから、金利の安い通貨が売られて金利の高い通貨が買われやすくなるのです。
先進国では、毎月その国の状況を示す正確な経済指標データを発表してくれます。それらのデータを使って中央銀行が金融引き締めをしそうなのか、それとも金融緩和に動きそうなのかを予測します。
ForexFactory などの経済指標カレンダーを見るかIMFのサイトから経済指標のヒストリカルデータをダウンロードし、連続して良い数字が出ているのか、連続して悪い数値が出いているのかを把握します。そして、連続して良い数値が出ている国は、金融引き締めにつながる可能性が高いから、金利が上がり、通貨が上がると予測します。一方、連続して悪い数値が出ている国は、金融緩和につながる可能性が高いから、金利が下がり、通貨が下がるだろうといった予測をします。
これが、最も高度な経済指標の長期的分析です。ただし、これは結構難易度が高いです。FX初心者の方にとっていきなりこのような分析に取り組むのは敷居が高すぎるかもしれません。ですからこのページではもっと簡単な方法も解説します。
実際の金利の変化から読みとる
様々な経済指標の時系列データをトータルで分析するのは大変なので、金利そのものを分析して金利のトレンドをつかもうという方法です。
中央銀行は金利変更の方針を正式に発表しますので、そのデータを調べて金利のトレンドを把握することができます。
主要8か国の金利データはIMFのサイトや世界銀行のサイトからのダウンロードできますし、ForexFactoryからも取れるでしょう。
私は以下のようなExcelの表に、主要8か国の金利のトレンドをまとめていますので参考にしてください。以下は2019年9月時点のデータです。(最新データは当サイトやFacebookページで発信していきたいと思います)
国 | 金利 | 最新の変化 | 最終変更日 | 年初から変化 | 2018年変化 | 2017年変化 | 2016年変化 | 長期的な流れ |
カナダ | 1.75% | 25 | 24-Oct-18 | 0 | 75 | 50 | 0 | 強い → ニュートラル |
英国 | 0.75% | 25 | 2-Aug-18 | 0 | 25 | 25 | -25 | やや強い→ニュートラル |
ユーロ | 0.00% | -5 | 10-Mar-16 | 0 | 0 | 0 | -5 | ニュートラル |
日本 | -0.10% | -20 | 29-Jan-16 | 0 | 0 | 0 | -20 | ニュートラル |
オージー | 1.00% | -25 | 2-Jul-19 | -50 | 0 | 0 | -50 | 弱い |
米国 | 2.00% | -25 | 18-Sep-19 | -50 | 100 | 75 | 25 | かなり強い→弱い |
ニュージー | 1.00% | -50 | 7-Aug-19 | -75 | 0 | 0 | -75 | 弱い |
スイス | -0.75% | -50 | 15-Jan-15 | 0 | 0 | 0 | 0 | ニュートラル |
(変化の数値はベーシスポイント表示)
この表から明確に見えるのは、オーストラリアとニュージーランドが金利を下げていているので弱い。
カナダが金利を上げているのでカナダドルが強い。
米国は2018年のかなり強い状態(利上げ)から2019年は弱い状態(利下げ)に変化してきている。
といった感じです。
強いカナダドルかニュートラルな日本円を買って、弱いオージードルかニュージーランドドルか米ドルを売るというのが良いかな?と考えています。(あくまで金利だけを考慮した場合です)
この長期的な分析で何の傾向も見えない場合は、ファンダメンタルズ分析を根拠としたトレードは見送ります。上の表で言うと、ニュートラルとなっている部分です。ニュートラルな通貨を組み合わせた通貨ペアのトレードは見送るということです。
この方法は実際の金利の変化を事後的に見ているだけので、この先を予測するということでいうと不十分です。すべての経済指標を連続的に分析する方法にはるかに及びません。しかしFX初心者のうちは、まずはこれぐらいから始めるのが良いと思います。
一般のFXトレーダーの中には、この程度の情報すらも把握できていない人がほとんどだと思いますので、これをやっているだけでも随分違ってきます。
注意点ですが、FXの値動きに影響を与えるのは金利だけではないので、金利さえ見ていれば100%完璧というわけではないということです。徐々に他の様々な経済指標も総合的に分析できるスキルを身に付けて行きましょう。
専門家の意見を採用する
僕は基本的にすべてを自分で分析して自分で判断するというモットーでトレードしています。
しかしFXの初心者の方や、自分で全てを分析する時間の無い兼業投資家と方は、専門家の意見を採用するのも一つの手かもしれません。とくにFXファンダメンタルズの長期分析などは難易度が高いですから、情報発信している専門家の意見を聞くのです。多くのFX業者ではユーザーに様々な情報を提供してくれているので、そういった専門家の意見を採用しても良いかもしれません。
ただし専門家の意見を鵜呑みにするのではなく、参考にするけれど、なぜその結論に至ったのか?を自分なりに裏付けを取るという意識も必要です。最終的には自分でデータを集めて自分で分析し、そして自分で投資判断をするという方向を目指していくことをお勧めします。
FXの経済指標の短期的な分析
FXにおける経済指標の長期分析の方法を解説しました。次は短期的な分析の方法を解説します。
短期的な分析というのは、目の前で発表される経済指標の数値が予測値とどれぐらい乖離しているかということです。
経済指標発表の瞬間に、以下の3つのうちのどれなのか?の判断を行います。
- 予測値よりも実際の数値が良いなら、その通貨は短期的に強くなる可能性が高いので買い
- 予測値よりも実際の数値が悪いなら、その通貨は短期的に弱くなる可能性が高いので売り
- 予測値と実際の数値が同じであればトレードを見送り
全ての通貨で上記の短期分析をしてエントリーをするわけではありません。長期的分析で判断した方向性に合致した場合のみエントリーを狙います。
例を挙げて説明します。せっかくなので、先ほどの長期分析表を使いましょう。
国 | 金利 | 最新の変化 | 最終変更日 | 年初から変化 | 2018年変化 | 2017年変化 | 2016年変化 | 長期的な流れ |
カナダ | 1.75% | 25 | 24-Oct-18 | 0 | 75 | 50 | 0 | 強い → ニュートラル |
英国 | 0.75% | 25 | 2-Aug-18 | 0 | 25 | 25 | -25 | やや強い→ニュートラル |
ユーロ | 0.00% | -5 | 10-Mar-16 | 0 | 0 | 0 | -5 | ニュートラル |
日本 | -0.10% | -20 | 29-Jan-16 | 0 | 0 | 0 | -20 | ニュートラル |
オージー | 1.00% | -25 | 2-Jul-19 | -50 | 0 | 0 | -50 | 弱い |
米国 | 2.00% | -25 | 18-Sep-19 | -50 | 100 | 75 | 25 | かなり強い→弱い |
ニュージー | 1.00% | -50 | 7-Aug-19 | -75 | 0 | 0 | -75 | 弱い |
スイス | -0.75% | -50 | 15-Jan-15 | 0 | 0 | 0 | 0 | ニュートラル |
表を見ると、長期的分析でニュージーランドドルが弱いと判断しています。その場合は、これから発表されるニュージーランドの経済指標発表において、予測値よりも悪い数値が発表された場合にニュージーランドドルを売るトレードをします。
FXですから通貨ペアをトレードするわけで、どの通貨を買ってニュージーランドドルを売るか?ということを決めないといけません。相手通貨を決めないといけないのです。長期的に弱い通貨を売りたい場合には、相手通貨としては長期的に強い通貨を買うようにします。
この表には金利の分析で強い通貨は無いので、ニュートラルとなっている通貨から選びます。日本円かカナダドルがいいかなと思います。日本円はずいぶん前からすでに金利をいっぱいいっぱい下げていますから、これ以上下げにくいというのがあるのでニュートラルです。さらに今は米中貿易戦争や北朝鮮問題、イラン問題などがあるのでリスクオフの流れになって円が強くなっていく可能性が高そうかな?といった分析です。カナダドルも、カナダが気にしているインフレ率が今は安定していて利下げに進む可能性が少なそうで、原油が高くなりそうな流れもあるのでコモディティー通貨のカナダドルは強くなりそうといった分析です。
ということで、NZDを売って、JPYかCADを買うトレードを狙います。ようするに、NZDJPYのショート、NZDCADのショートです。
具体的にどうするかというと、経済指標カレンダーをチェックして、NZD関連の重要な指標を探します。
NZDのANZ Business Confidenceがあります。来週発表の分なのでまだ予測値が出ていませんが、そのうち出てきます。
指標発表の瞬間に注目し、Actual(実際の数値)がForecast(青枠)と比較して悪い数値だった場合に、即NZDJPYかNZDCADのショートを打ちます。
ファンダメンタルズが長期的に弱いNZDの経済指標で短期的な弱さ、つまりサプライズな更なる弱さが出たので、NZDをショートするということです。そのときに相手通貨としては長期的に強そうなJPYかCADを選択します。
また、JPYやCADの経済指標に注目して予測値よりも良い数値が出た場合に、NZDを売ってJPYやCADを買うトレードもありです。
この時Actual(実際の数値)が発表された瞬間に如何に早く判断してエントリーできるかがカギとなります。
指標の速報を最速で見る方法
経済指標発表のタイミングで瞬時に判断してエントリーする手法の場合、経済指標の速報性が非常に重要です。指標の数値を確認できるのが5秒遅れるだけで数十pips損することも多々あります。
指標発表のスケジュールを確認するために私が使っているForexFactoryの経済指標カレンダーは、カレンダーとしては非常に優秀で使いやすいです。しかし、経済指標発表時の速さでいうと、最速ではありまえん。
では最速のツールはどれなのか?それは…
ロイター経済指標速報が最速
一般投資家が使えるツールとしては、ロイター経済指標速報が最速です。
我々一般投資家が使えるツールとしてはこの一択だと思ってください。
ロイター経済指標速報を使うと、実際の指標発表からほぼリアルタイム~数秒遅れ程度で実際の数値を知ることができます。
これ以外のツールだと、10秒~30秒ぐらいはかかってしまいます。
ロイター経済指標速報は、JFXかヒロセ通商というFX業者に口座を開設することで使うことができます。
ロイター経済指標速報は見やすい
このツールのもう一つのメリットは、指標発表時の表示が見やすいということです。
指標発表トレードにおいては、実際の数値が予測値と比較して
- 良かったのか?
- 悪かったのか?
- 横ばいだったのか?
この判断を瞬時にしなければいけません。この判断を0.5秒でできる人と、3秒かかる人とでは収益に雲泥の差が出てきます。
ロイター経済指標速報はそこに強みがあり、「かゆいところに手が届く」ツールとなっています。
記号で判断できるようになっているのです。
青で囲んだ部分を見てください。矢印が表示されていて、矢印の向きで予測値に対して良かった/悪かった/同じだった、を判断することができます。
右端の矢印が
- ↗なら予測よりも良い数字だった
- →なら予測と実数が同じだった
- ↘なら予測よりも悪い数字だった
ということです。
結果の判断が簡単にできて、しかも速報性が圧倒的に良いということです。
それにより、他のツールを使うよりも数秒は速くエントリーできるので、かなり優位性が上がることを期待できます。
指標発表トレードをする場合は、かならずロイター経済指標速報を使うようにしましょう。
エントリーとエグジット(利食いとロスカット)
エントリーの判断方法は、先ほどからも解説している通りです。
長期的見通しのある通貨で、指標発表の実数が予測値と乖離している場合にエントリーします。
まず最初にしておく設定があります。それはワンクリック取引の設定です。
この手法はエントリーのスピードが命なので、注文確認をしている暇はありません。必ずワンクリック取引の設定をしておきます。
利食いとロスカットの値幅
利食いとロスカットの値幅は、いろいろな方法がありますが、ここでは基本をお伝えします。
ワンクリックでエントリーしたら、すぐに利食い注文とロスカット注文を入れます。
ドル円やユーロドルであれば、利食いもロスカットも80pips程度で設定するのが良いでしょう。ボラティリティーの大きい通貨ペアであればもう少し広くします。
MT4を使ってエントリーしたらすぐに、80pipsぐらいの利食い指値注文とロスカット注文を設定します。
この場合、リスクレワード比が1:1で、60%以上の勝率を狙います。
慣れてくれば、利食い値幅を2倍にして利益を伸ばすのも良いです。その場合は利食いに到達しにくくなるので勝率は35%~45%ぐらいまで落ち込む覚悟が必要です。
トレーリングストップをかけるのもありです。エントリーしたらすぐに40pipsぐらいのトレーリングストップを設定します。
経済指標を使ったトレード手法 まとめ
- 経済指標の瞬間を狙ってトレードするとボラがあるので勝負が早い
- 経済指標発表のスケジュールは決まっているので事前準備がしやすい
- 経済指標発表の短期トレードでも長期的分析と短期的分析のマルチタイムフレーム分析をおこなう
- 長期分析と短期分析が同じ方向の場合にエントリーを狙う
- 長期分析には中央銀行の金融政策(金利)に注目する
- 長期分析で強弱の傾向が分かりやすい通貨を狙う
- 短期分析は経済指標の「予測値」と「実際の数値」の乖離を分析する
- 経済指標の速報性が最速なのはロイター経済指標速報
以上で経済指標を使ったFXの短期トレード手法の解説を終わります。