FXのデイトレードではプライスアクションだけ見れば十分と思っていませんか?もしあなたがデイトレードで勝てないなら、指標カレンダーのちょっとした分析をしてないことが原因かもしれません。
この記事では、プライスアクションを使ったFXのデイトレードに指標カレンダーを活かす方法を解説します。
「なぜこの値動きが出ているか?」を考えることで、プライスアクションシグナルが出てもエントリーすべきでない時を見極められるようになります。
デイトレやスキャルの場合は長期トレードの場合のような丁寧なファンダメンタルズ分析は行いません。しかしほんの少し指標カレンダーを確認するかしないかで、長期的なパフォーマンスに雲泥の差が出るでしょう。
もくじ
デイトレやスキャルで使う指標カレンダー
デイトレード向けのファンダメンタルズ分析をする場合は、指標カレンダーやFXカレンダーと呼ばれるWebサイトを使います。いくつか有名な指標カレンダーのWebサイトがあります。
使い方はどれもほぼ同じです。どれでも構いません。このページでは、investing.comを使った方法を解説します。
機関投資家のトレーダーの多くは有料だけど更新が速いブルームバーグの端末を使っていると思います。しかし我々一般投資家は、上記リストアップした無料のFXカレンダーで十分です。
日本語化してタイムゾーンを設定する
Investing.comは海外のサイトですが、日本語に設定することができます。
ページの右上の国旗マークをクリックし、日本国旗を選択すればOK。
指標の名前まで日本語化されています。
ForexFactoryは人気がありますが、英語なので使いにくい人は日本語化できるInvesting.comが良いですね。
次に、指標カレンダーに表示される時間のタイムゾーンの設定です。
Investing.comの場合は言語設定で日本語を選択するとタイムゾーンも日本時間になります。
海外Fx業者のMT4のサーバー時間に指標カレンダーの時間を合わせたい場合は、↑の画像②の部分で設定できます。
Investing.comと並んで人気のあるForexFactoryも見ておきます。
ForexFactoryは世界中のトレーダーを対象としたサイトなので、カレンダーの表示が日本時間になっていません。
タイムゾーンの設定を、あなたのPCの時間、もしくはあなたの使っているトレード端末(MT4など)のタイムゾーンに合わせる必要があります。
ここをクリックしてタイムゾーンを設定できます↓
指標カレンダーのタイムゾーンの設定は以上となります。
指標の重要度(インパクト)で絞り込む
investing.comはノーマルのままだと、あまり重要でない経済指標までリストアップします。
FXのデイトレードやスキャルピングに影響を与えるインパクトの大きい重要な経済指標だけをリストアップするようにフィルターを設定します。
カレンダーの右上にある「フィルター」をクリック。
2Bullマークと3Bullマークにチェックを入れて、「適用」をクリックします。
その他にも、どの国の経済指標発表を表示するか?を選択することができます。ノーマルだと大体重要な国にチェックが入っています。不要な国があれば、チェックを外しましょう。
これで指標カレンダーのフィルター完了です。
なぜ指標カレンダーがFXデイトレードに必要なのか
FXのデイトレードにはローソク足チャートだけでOK!他は何もいらない!という考え方が主流かもしれません。
確かにローソク足チャートのプライスアクションだけでも勝てます。でも僕たちが目指すのは、さらに上の、もっと勝てるFXデイトレーダーです。
指標カレンダーを確認することで、トレンドの信ぴょう性を推し量ることができます。そこで自信を持てるトレンドを捕まえたら、通常よりも大きな値幅を自信をもって狙えるようになります。
指標カレンダーで重要な指標の種類と意味
FXのデイトレードに影響を与える経済指標は以下の通りです。
- 金利
- GDP
- CPI
- PMI(ISM)
- 雇用統計
この5種類の経済指標が最もFXの値動きに影響を与えると言われています。
他にもたくさんの経済指標が存在しますが、まずはこの5種類から注目していくのがお勧め。
これらの数値で予想外の結果が出たら、関連する通貨ペアの値が大きく動く傾向にあります。
5つの指標の意味と数字の読み方を一覧にしておきます。マクロ経済学を勉強したことが無い方は面食らうと思いますが、デイトレードで使う分にはざっくりと意味を知っているだけで十分です。各指標が経済にどう影響するか?などは考える必要はありませんので、ご安心ください。
指標 | 意味 | 数字の読み方 |
金利 | 各国の政策金利 | 値が上げると通貨も上がる 値が下がると通貨も下がる |
GDP | 国内総生産 経済成長率 | 値が上げると通貨も上がる 値が下げると通貨も下げる |
CPI | 消費者物価指数 インフレの度合い | 値が上がると通貨も上がる 値が下がると通貨も下がる |
PMI(ISM) | 購買担当者へのアンケート結果 | 50以上が景気上向き 50以下が景気下向き 値が上昇すると通貨も上がる 値が下落すると通貨も下がる |
雇用統計 | 雇用統計 | 失業率が下がると通貨が上がる 失業率が上がると通貨が下げる |
非常にざっくりと解説するとこんな感じです。(スイングトレードや長期トレードをされる場合はもっと深く理解して分析する必要があります。)
経済指標の3つの数値(前回、予想、結果)のギャップが重要
指標カレンダーでは3つの数字が発表されます。
- 前回
- 予想
- 結果
「前回」は、その指標が前回発表された際の数値です。
「予想」は、次回発表される際の予想の数値です。複数のアナリストが予想した数値の平均値となります。
「結果」は実際に出た数値です。
「結果」が「予想」や「前回」とどれぐらいギャップがあるかが重要。
実際の「結果」が「予想」と大きく異なる場合、それはサプライズとなり、大きな値動きが生まれることが多いです。
ですので、デイトレードやスキャルピングにおいては、予想外の「結果」が出た指標が重要になります。
例えばこれは、EUR圏の貿易収支なのですが、かなりサプライズな数値です。(貿易収支は数値が大きくなると通貨が強くなる方向)
前回が18.7Bで、アナリスト達の予想では17.5Bと悪くなる予想でした。しかし結果は21.6Bと予想よりも良く、しかも前回の数値よりも良い結果となりました。
こういった場合にはEURがデイトレードやスキャルピングの時間足で上げやすくなりますので買いが有利になります。
逆に結果がアナリストの予想通りだった場合はその指標の影響がすでに織り込み済みと考えられるので、短期的な値動きにそれほど影響はないと考えます。
こういった分析を、重要度が2以上の指標に対して行っていき、各通貨が短期的に強気か弱気かを判断していきます。
超短期ファンダメンタルズ分析表
僕がデイトレードをする場合、ここまでに解説した分析を主要な8通貨で行い、どの通貨が強くてどの通貨が弱いのか、一覧表にしています。そのやり方を解説します。
こういう表を用意して書き込んでいくといいですよ。
昨日~今日ぐらいの指標カレンダーを見ながら、主要8通貨(USD、EUR、JPY、GBP、AUD、NZD、CAD、CHF)の指標を一つ一つ見ながら、通貨別に総合的に判断していきます。
もし今日の指標カレンダーにネタが無い場合は、前日の日付の分も含めます。
まずはUSDから見てみましょう。FXの取引の8割ぐらいはUSD関連の通貨ペア(ドルストレート)ですので、どんな時もまずはUSDから分析します。
ネット長期TICフロー(2月)は米国にどれぐらい投資資金が流れ込んでいるかを見るためのものです。増えていますのでUSDにとってポジティブな結果です。しかし2月のデータなのでちょっと古いのが気になります。
建築許可関連がいくつかあります。コロナの影響で全体的に良くないのが分かります。建築許可件数は予想よりは良いですが、前回よりはかなり落ち込んでいます。
このような「予想よりは良いけれど、前回よりはだいぶ悪い」という場合はあまりポジティブな材料にはならないと考えられます。
失業保険申請件は予想よりは悪く、前回よりは良くなっています。これもいまいち分かりにくい結果なのでニュートラルとします。
フィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月)は前回よりも圧倒的に悪く、さらに予想よりも圧倒的に悪い結果です。これは完全にネガティブな要素です。
フィリー連銀雇用(4月)は、予想値が発表されていないので予想とは比較できませんが、前回と比べて極端に落ち込んでいます。これの強いネガティブ要素と考えられます。
USDは総合的に見ると、ネガティブな要素が多くそのネガティブ度合いも強いようです。
USDの超短期ファンダメンタルズ分析は、「弱い」と判断して良さそうです。
最初は指標の意味が分からないと思いますが、毎日分からない指標の名前をググりながら見ていると、だんだん覚えていきます。
最初は結果の数値にマウスカーソルをあてると「予想よりも良い」「予想よりも悪い」がポップアップして表示されるので、それを頼りに判断するところから始めればOKです。
僕も最初は指標の意味がパッパラパーでしたが、1か月ぐらい毎日Google検索で調べながら見ていたら大体分かるようになりました。
次にAUDを見てみましょう。
AUDも雇用関係の指標が出ています。
前回に比べてかなり悪い数字になることが予想されていましたが、それほど悪くなかったという結果です。
雇用者数は前回の26.7Kから大きく減ってマイナス40Kが予想されていましたが、マイナスにはならず5.9Kという結果でした。これは前回よりも悪い数値ですが、予想よりもかなり良い数字です。
失業率も同じ傾向です。
フルタイム雇用変更(3月)は予想がありませんが、同じ傾向だと思われます。
AUDの指標は、コロナの影響で軒並み前回よりも悪化していますが、思ったほど悪くないということですね。
今はコロナの影響でかなり特殊な状況です。どの国の経済指標も軒並み悪いのがデフォルト。問題はどれぐらい悪いのか?どれぐらいマシなのか?という感じになっています。
AUDは予想よりはだいぶ良かったわけですから、今のコロナの状況を考えると強い通貨に入れてよさそうです。
こんな感じで、他の通貨も同じように分析し、短期的に強まりそうな通貨と弱まりそうな通貨に分けます。
もう一つ、JPY(日本円)の指標カレンダーも見ておきましょう。
フィルターで日本だけにチェックを入れると、特定の国の指標だけを見たい場合に便利です。
JPYの指標は少しさかのぼらないと無いので10日ぐらいさかのぼって表示しました。
家計調査と消費支出は、前回よりも悪く、でも予想よりは良いという結果です。
経常収支は前回よりも大幅に増加しているようです。経常収支とは、輸出金額-輸入金額の値です。プラスになっていたら貿易黒字ということです。
JPYは、過去10日ほどの経済指標に限って言うと、全体的に悪いけれどまだマシという状況のようです。
このご時世(コロナ)ですので、短期的には強い通貨に入れて差し支えなさそうです。
こういった感じで、自分がウォッチしている通貨に対して全てでこの分析を行います。
そして、強まりそうな通貨を買って、弱まりそうな通貨を売るトレードを優先的に狙っていくことになります。
上記の結果だと、AUDUSDの買いとUSDJPYの売りを優先的に狙うことになります。
とはいえ、この指標カレンダーを使った短期ファンダメンタルズ分析の判断だけでエントリーするわけではありません。
テクニカル分析でエントリーシグナルが出た場合にエントリーします。
僕の場合は、強いトレンドが出ている場合は、押し目(戻り)を狙ったり、トレンド途中の三角持ち合いからのブレークアウトを狙います。
レンジ相場になっている場合は、レジサポエリアまで引き付け、そこでプライスアクションの反転シグナルが出たらエントリーを狙います。
例えば、指標カレンダーの分析だとAUDUSDは買いを狙いたいわけですが、エントリーの判断やタイミングはプライスアクションで決めます。
AUDUSDのチャート。左が1時間足。右が5分足です。
1時間足(左)を見ると、上昇トレンドだけれど、直近では強めの下落が起きていることが分かります。
5分足(右)を見ると、アジア時間のレンジ(紫)の高値を抜けるかどうかの攻防で三角持ち合いになっています。
この高値を抜けてくれば、ブレークアウトで買うか、押し目を待って買い、1時間足の直近高値ぐらいまでは狙っていけそうだな、という感じになります。
もしくは、アジア時間のレンジのサポートエリアで買いシグナルが出たら買えばレンジの上までは取れそうだと判断できます。
なぜそう思うか?
それは超短期ファンダメンタルズ分析の裏づけがあるからです。指標カレンダーの短期分析ではAUDUSDは上がりそうだということを示しているのですから、もしプライスアクションでもクオリティーの高い買いシグナルが出たら高い勝率と大きめの利食い幅を期待できます。
なぜ指標カレンダーのサプライズが重要なのか
指標カレンダーでサプライズが起きると、短期的な方向性に合わせて大口の機関投資家がポジションを変更したり作ったりしないといけないことが多いと思われます。
ですから指標カレンダーのサプライズを分析した方向性にトレードすることは、大口機関投資家が参加している値動きに便乗させてもらうことでもあると考えます。
とはいえ、これはたくさんある経済指標の一部だけを使った超短期的な分析。過信は禁物です。あくまでデイトレードで勝つために必要な分析の一部として使ってください。
指標カレンダーをデイトレードに活かす方法 まとめ
- デイトレードやスキャルピングでも経済指標の短期分析をすべき
- 理由はそれで「勝率」と「狙える値幅」が大きくなるから
- 指標カレンダーにはInvesting.comなどがおすすめ
- 指標カレンダーのタイムゾーンと重要度の設定を行う
- 短期ファンダメンタルズ分析表をつくるのがおすすめ
- 1日~2日程度さかのぼって各国の指標発表をふりかえる
- 「結果」が「予想」に比べてどうだったか?(「前回」との比較も)が重要
- 指標カレンダー短期分析で強い通貨を買い、弱い通貨を売るトレードを優先的に狙う
- 指標カレンダーの分析はあくまで補助的に使い、プライスアクションとの組み合わせでトレードする
このページでは指標カレンダーをFXのデイトレードやスキャルピングに使う方法を解説しました。
機関投資家の動きに便乗させてもらう方法はこれだけではありません。通貨ペアの強弱を比較分析する方法もあります。それはあまた別の記事で解説します。