移動平均乖離率を使った逆張りは「地合い」を意識することで劇的に改善することができます。逆張りの買いでも空売りでも改善します。しかし買いと空売りでは方法が全く違うことが分かりました!
「株の暴落でビビってんじゃねー」の第2話では、地合いを意識することで移動平均乖離率を使った逆張り買いのパフォーマンスを上げれることを証明しました。
今回の番外編では、暴落時の買いだけではなく、株価暴騰時の逆張り売りも含めて検証したいと思います。
もくじ
検証方法の詳細
検証には前回ご紹介した移動平均線乖離逆張り手法のデータを使用しています。全てのデータで検証すると膨大な量になるので、比較的成績が良く取引量も十分な以下の設定で行ったテストのデータを使用しています。
- 5本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
また、その日の地合いをはかる為の指標として以下を用いて検証しました。
- TOPIXの騰落率(前日比)
- TOPIXの5MA乖離率
- TOPIXの25MA乖離率
- TOPIXの75MA乖離率
- サインが発生した銘柄の数
1~4については、平均線乖離のサインが発生した日のTOPIXの状況をフィルタとして使用します。
「1.TOPIXの騰落率」を例にとると、
- TOPIXが前日比マイナス3%の時に「買い」サインが発生した銘柄
⇒相場全体の下落に巻き込まれて下落し、買いサインが発生した銘柄 - TOPIXが前日比プラス3%の時に「買い」サインが発生した銘柄
⇒相場全体が上昇しているのにも関わらず下落し、買いサインが発生した銘柄
という事になります。
5についてはTOPIXではなく、その日に発生したサインの数をフィルタとしています。
考え方は1~4と同じで、
- 買いサイン数が多い時に「買い」サインが発生した銘柄
⇒多くの銘柄が下落して買いサインが大量に発生した日に買いサインが発生した銘柄 - 買いサイン数が少ない時に「買い」サインが発生した銘柄
⇒殆どの銘柄が下落していないにも関わらず下落し、買いサインが発生した銘柄
となります。
前者はいずれも地合いの影響による下げの場合が多く、後者はその銘柄の個別要因で下げている場合が多いと考えられます。
検証結果
フィルタとして用いた指標とトレードの成績の間にどのような関係があるかを分析するため
各指標をKeyにトレードをソートした表を作成し、どのような傾向があるのかを確認してみます。
取引数が少ない項目は数値がぶれやすく極端な数値が出ることがあるので、あまり重視する必要はありません。
統計的な分析をするにはある程度の取引数が必要になるので、取引量の多い項目の1トレード損益や勝率に注目し、どのような傾向があるかを探ってみてください。
1.TOPIXの騰落率(前日比)との関係
TOPIXの騰落率(前日比)との関係をみると、買い/売りのいずれの場合もTOPIXが下げた日に発生したサインの方が優位性が高い傾向があることがわかりました。
特に買いの場合は、TOPIXの下落率が高いほど1トレード損益や勝率が高くなる傾向があり、
統計的には暴落は買いという結果になりました。
売りの場合、勝率に大きな変化はありませんが、買いと同様にTOPIXが下げた日の方が1トレード当たりの損益が高くなる傾向があるようです。
5本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
2.TOPIXの5本移動平均線乖離率
TOPIXの5本移動平均線乖離率との関係を見た場合も、1と同様に買い/売りのいずれの場合も短期的な下落が発生して、TOPIX5本移動平均線乖離率がマイナスの日に発生したサインの方が優位性が高い傾向にあることがわかりました。
5本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
3.TOPIXの25本移動平均線乖離率
TOPIXの25本移動平均線の場合も乖離率がマイナスの場合の方が優位性が高くなる傾向があるようです。
特に売りの場合は乖離率がプラス2%以上の時には、パフォーマンスがかなり低下するようです。
相場全体にある程度の上昇トレンドが発生しているときは、安易に空売りをするとパフォーマンスが下がる傾向があるようです。
25本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
4.TOPIXの75本移動平均線乖離率
TOPIXの75本移動平均線の場合も他と同様に乖離率がマイナスの場合の方が優位性が高くなる傾向があるようですが、
5本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
5.サインが発生した銘柄の数
サインが発生した銘柄の数をフィルタとして使った場合、買いに関してはサイン発生数が多い方が成績が良くなり売りに関してはサイン発生数が少なくなるほど成績が良くなりました。
買いのサイン発生数が多い日は、多くの銘柄が下落した日=急激な下落が起こった日となります。
逆に売りのサイン発生数が多い日は、多くの銘柄が上昇した日=急激な上昇が起こった日となります。
本題からは少し外れますが、ここで買いと売りのサイン発生数毎のトレード数の分布に注目してみてください。
買いの場合、サイン発生数が多いレンジにもトレードが分布しているのに対し、売りの場合はサイン発生数が少ないレンジに取引が集中しています。
相場経験のある程度長い人なら経験があると思いますが、○○ショックのような暴落が発生した時には殆どの全ての銘柄が一気に下がり、大量の買いサインが同時に発生することがあります。
逆に上昇トレンドの場合、全ての銘柄が一気に上がるようなことは少なく、どちらかというと選択的に上昇していく傾向があります。
5本移動平均線から5%乖離で逆張りエントリー(5本経過後にエグジット)
損益推移
数字ばかりが並んた表だけではわかりにくいので、それぞれの指標の前半/後半でデータを分けた場合の損益推移のグラフを表示してみます。
フィルタを用いず、全てのデータで損益推移のグラフを表示した場合には以下のようになります。
フィルタをかけた場合と比較してどのような変化があるかを確認してみましょう。
全てのデータのグラフ
1.TOPIXの騰落率(前日比)
TOPIXの騰落率が0%未満、つまりTOPIXが下落した日に発生したサインの方が圧倒的にパフォーマンスが良くなっている事がわかります。
逆にTOPIXが上昇した日のサインはパフォーマンスがかなり悪くなっています。この傾向は買いの方が顕著に現れますが、売りの場合でも1トレード当たりの損益は3倍程度の差があり、
かなりパフォーマンスが向上していることがわかると思います。
また、損益推移のグラフをみても、TOPIXが0%未満の時の方が明らかにパフォーマンスが良いことがわかります。
TOPIX騰落率が0%未満のデータのみを抽出したグラフ
TOPIX騰落率が0%以上のデータのみを抽出したグラフ
2.TOPIXの5本移動平均線乖離率
TOPIXの5本移動平均線をフィルタとして使用した場合も同様の傾向が見られました。
特に買いの場合、乖離率がプラスの場合の合計損益がマイナスになっているので、期待値の低い無駄なトレードを効率よくフィルタリング出来ているようです。
売りに関しては、多くの取引がフィルタリングされてしまい合計損益が少なくなってしまうようです。
TOPIX5本移動平均線乖離率が0%未満のデータのみを抽出したグラフ
TOPIX5本移動平均線乖離率が0%以上のデータのみを抽出したグラフ
3.TOPIXの25本移動平均線乖離率
TOPIXの25本移動平均線をフィルタとして使用した場合も同様の傾向が見られました。5本移動平均線と比較すると、買いのパフォーマンスが低下し、売りのパフォーマンスが向上しました。
TOPIX25本移動平均線乖離率が0%未満のデータのみを抽出したグラフ
TOPIX25本移動平均線乖離率が0%以上のデータのみを抽出したグラフ
4.TOPIXの75本移動平均線乖離率
TOPIXの75本移動平均線をフィルタとして使用した場合も同様の傾向が見られました。
TOPIX75本移動平均線乖離率が0%未満のデータのみを抽出したグラフ
TOPIX75本移動平均線乖離率が0%以上のデータのみを抽出したグラフ
5.サインが発生した銘柄の数
サイン発生数に関しては、明確な中間地点がないので、取引数がバランスよくなるようにサイン発生数50を基準に分割しました。
サイン数に対するパフォーマンスを見た場合、買いと売りで逆の傾向があります。
買いの場合、サイン発生数が50以上の方が圧倒的にパフォーマンスが良くなります。買いのサイン発生数が多いという事は相場全体が下降トレンドにあるときです。
逆に売りの場合はサイン発生数が50以上の時には圧倒的にパフォーマンスが悪くなります。売りのサインが多いという事は相場全体が上昇トレンドにあるときという事になります。
サイン発生数をフィルタとして使用した場合もTOPIXをフィルタとして使用した時と同じような傾向があることがわかりました。
サイン発生数/日が50未満のデータのみを抽出したグラフ
サイン発生数/日が50以上のデータのみを抽出したグラフ
「地合い」と逆張りの関係 結論
今回の検証結果をみると、移動平均線乖離逆張り手法は売り/買いともに株式市場全体が下落トレンド時に機能しやすく、逆に株式市場が上昇トレンドでは機能しにくいことがわかりました。
地合いと逆張り買いの関係
買いの場合は株式市場全体の下落トレンドが強いほどパフォーマンスが良くなるので、統計的には「株式市場の暴落は買い」という事になります。
地合いと逆張り売りの関係
売りの場合、株式市場全体が上昇トレンドではパフォーマンスが落ちるので、統計的には「株式市場の上昇トレンドでは安易に空売りするべきではない」という事が分かりました。
もし逆張りで空売りするなら、株相場全体の地合いが下げている時に、全体の流れに逆らって上げている銘柄を売っていく方が良さそうです。
以上で、株式市場における移動平均乖離の逆張り手法を「地合い」を使って劇的に改善する方法の解説を終わります。