今回は、株式市場でときどき起きる「名前だけで株価が跳ね上がる」現象をテーマにします。難しい話はなるべく避けて、歴史と今、そして実務的な付き合い方までサクッとまとめました。肩の力を抜いて読んでくださいね。
もくじ
「名前だけ」で上がるって本当?
新しい言葉が出てくると、投資家の目線がそこに集まりやすくなります。実態(製品・売上・顧客)がまだ追いついていなくても、会社説明や社名に旬ワードが加わるだけで買いが先行し、最初の上げがさらに話題を呼び、また買いが入る——という自己強化ループが走る。これが「名前だけ」現象の基本形です。
歴史はけっこう似ている:ざっくり年表
1999年:ドットコム・バブル(社名に「.com」を付けるだけで急騰)
2017年:ブロックチェーン転換(飲料会社が「Blockchain」を冠して急騰)
2021年:SPAC(特別買収目的会社)ブーム(上場直後の過熱→失速の典型)
2022年:NFTブーム(「トークン化」の物語で短命に過熱)
どれも、先に「物語」が走り、実態は後から。たいていの場合、実態が十分に追いつかず、熱が冷めると価格は元の水準へ戻っていきました。
これはLong Block Chain社の株価チャートです。今も米国でアイスティーを販売している会社です。
この会社は2017年12月21日 に、旧Long Island Iced Tea Corp. は Long Blockchain Corp. への社名変更をデラウェア州に登記しています。
ブロックチェーンとは何も関係ない会社で、アイスティーを売っているだけなのに、会社名をLong Blockchaiに変更したことで株価が急騰しましたが、その後急落しているのが分かります。

investing.comより
いま起きていること:「Blockchain × AI」期
最近は、事業説明に「Blockchain」「AI」「SOL」「ETH」などの言葉を添えるだけで、小型株が数百%の上昇を見せるケースが散見されます。典型的な軌道は、発表直後にパラボリック(急角度)に上昇→その後は出来高が細り、じわじわ原点回帰、という流れです。
なぜ危ない?どう付き合う?
この手の銘柄は、空売りが難しかったり、オプション市場が未整備だったりで、リスクを限定した逆張りがやりづらいのが実情です。結果として、高値掴みや踏み上げでダメージを受けやすい構造になりがち。ですから——
① テーマは「本体」に素直に乗る:ビットコイン強気ならBTC、ソラナ強気ならSOLなど“中身そのもの”を検討。余計なラップ(なんちゃって関連株)は回り道になりがち。
② 先に出口を決める:成行で売れる出来高・板の厚みが続いているかを常にチェック。細ったらプランB。
③ 情報源の質:SNSの熱量より、開示・顧客・製品・売上などの一次情報。ここを見れば“物語の濃度”が分かります。
これは天井サインなの?
「名前だけ」現象が目立つとき、相場の天井圏にありがちな“楽観の極み”が疑われます。過去にも似た騒動が暗号資産のピーク期と重なった例がありました。ただし、これだけで天井を断定はできません。実務的には「警戒灯が点いた」と受け止め、ポジションサイズや損切り基準を引き締める合図に使う、くらいがちょうどよいと思います。
まとめ
ドットコム、ブロックチェーン、SPAC、NFT、そして“Blockchain × AI”。看板と物語が先行する上げは、短期的には魅力的に見えますが、長く効くのはやはり実態(キャッシュフローと成長力)です。過熱のサインを見たら、サイズを落とす・出口を決める・本体で素直に乗る——この3点だけは忘れずにいきましょう。