普通じゃ勝てない逆張りショートはCOTレポートでどこまで“救える”か

【保存版】COTレポート完全解説|先物47銘柄20年データで検証、FXやゴールドの意外な発見も公開

普通では勝ちにくい逆張りショート。でもCOTレポートを重ねると意外な発見がありました。商業筋は強気側で効き、投機筋は弱気側、小口は極端な局面で効く──通説とは違う一面が見えます。

はじめに:今回は「どれだけ“救える”か」を見ます

逆張りショートって、素のままだと正直キツい手法です。
だからこそ今回は、黒字になったかよりも、COT(商業筋・投機筋・小口)を重ねたらベースからどれだけ良くなるの?(ΔPF)を徹底チェックしました。

結果から言うと、効く場面はちゃんとある。ただし“魔法の条件”じゃない。
ポイントは、直近の上げの強さ(1週 or 2週)COTの偏りの組み合わせです。

この記事でわかること

  • 商業筋・投機筋・小口で、逆張りショートの効き方(ΔPF)がどう変わるか
  • なぜ「2週 > 1週」で効きが強く出るのか
  • 実務で使うならどの条件から重ねるべきか(最初の一歩)

先にサマリー

  • 商業筋:弱気ではほぼ横ばい、強気に絞るほどΔPFが伸びる(例:2週×商業筋のCOTIndex≥100でΔ+0.68)。
  • 投機筋:売り寄りで相対改善、買い寄りで悪化。シンプルに“弱気側で使う”。
  • 小口:極端域が効く(2週×NR≥100でΔ+0.40)が、サンプルは薄くなる。低域(≤50〜≤70)は小幅改善+件数キープ。
  • 共通項:どのグループも2週連続上昇のほうが効きが強い(「上げが強め × 偏りがはっきり」で救われやすい)。

読み方ガイド(ここだけ押さえればOK)

  • ベースライン:「COTなし」に等価な COTインデックス≤100 のPF(1週=0.80/2週=0.73)。
  • ΔPF:表のPF − ベースPF。数値がプラスなら“救えている”と解釈。
  • 取引数:しきい値を厳しくすると件数が減るのは宿命。改善と件数のバランスを見てください。

それでは、まずはベースラインの確認から。
そのあとで、商業筋・投機筋・小口を重ねたときの“改善の幅(ΔPF)”を、一気に見ていきます。

どんなテストをやったのか?

今回のテーマは「逆張りショート × COTフィルター」。まずはシンプルな土台を作り、その上にCOTを乗せて“ベースラインからどれくらい改善するか(ΔPF)”をチェックしました。条件はロング編と同じく、あえて単純化しています。

  • 対象市場: 米国の主要先物(株価指数・金利・通貨・商品など)47銘柄
  • 期間: 2007年〜2025年(COTデータの整合性のため統一)
  • ベースとなる売買ルール:
    • 「連続して上昇した週の本数」を条件に翌週に売りでエントリー
    • 保有期間は5週間に固定(利食い・損切りなし、時間決済)
    • 「素のままでは勝ちにくい逆張りショート」をあえて土台にして、COTを重ねたときの“改善の幅(ΔPF)”を測るのが目的
  • 見る指標: PF(プロフィットファクター)、期待値(%/1取引)、勝率(%)、取引数

ミニ解説: PF=1がちょうどトントンですが、本稿ではPFの絶対値そのものではなく、ベースラインからの改善幅(ΔPF)を主に比較します。

ベースライン(COTフィルター無し=COTインデックス≤100)の成績(5週保有)

逆張りロング(連続下落→買い)

週数 PF 期待値 勝率 取引数 コメント
1週 1.09 +0.09% 53.63% 3,873 かろうじて黒字、件数十分
2週 1.02 +0.05% 52.02% 2,495 トントン付近
3週 0.99 +0.02% 51.37% 1,351 赤字寸前
4週 0.94 -0.02% 50.36% 695 赤字化
5週 0.94 -0.02% 48.60% 358 赤字化・勝率低下

逆張りショート(連続上げ→売り)

週数 PF 勝率 取引数 コメント
1週 0.80 47.7% 2,799 (ベースライン)
2週 0.73 46.9% 2,227 (ベースライン)
3週 0.77 45.4% 1,446 参考
4週 0.80 43.8% 834 参考
5週 0.80 43.9% 437 参考

以降、ΔPF=「各条件PF − 上表のベースPF」で改善度を示します。


商業筋COTフィルター(ショート逆張り・5週保有)

「商業筋が弱気(COTインデックス低)」では改善が出にくい一方、「商業筋が強気(COTインデックス高)」では段階的に大きく改善する、という関係が明確でした(ΔPFで評価)。

① 商業筋が弱気(COTインデックス低)=改善は誤差〜横ばい

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
商業筋COTインデックス ≤ 60 0.76 -0.04 46.68% 1,945
商業筋COTインデックス ≤ 80 0.82 +0.02 47.37% 2,717
商業筋COTインデックス ≤ 100(ベース) 0.80 47.70% 2,799

傾向: 低しきい値でのΔPFは-0.04〜+0.02と小さく、改善らしい改善は見られません。

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
商業筋COTインデックス ≤ 60 0.68 -0.05 44.54% 1,464
商業筋COTインデックス ≤ 80 0.73 ±0.00 46.20% 2,082
商業筋COTインデックス ≤ 100(ベース) 0.73 46.88% 2,227

傾向: ΔPFは0〜-0.05。弱気域では改善せず


② 商業筋が強気(COTインデックス高)=段階的に大きく改善

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
商業筋COTインデックス ≥ 80 1.00 +0.20 48.05% 845
商業筋COTインデックス ≥ 90 1.07 +0.27 48.47% 489
商業筋COTインデックス ≥ 100 1.07 +0.27 49.48% 192

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
商業筋COTインデックス ≥ 80 1.02 +0.29 51.64% 548
商業筋COTインデックス ≥ 90 1.23 +0.50 55.38% 325
商業筋COTインデックス ≥ 100 1.41 +0.68 59.13% 115

傾向: しきい値を上げるほどΔPFが大きくなる(最大+0.68)。改善の中心は強気域


投機筋COTフィルター(ショート逆張り・5週保有)

投機筋(Large Speculators)は、本検証では買い寄り(COTインデックス高)で悪化、売り寄り(低)で相対改善という結果。つまり「買い寄りに絞るほど逆張りショートが効く」わけではない点に注意が必要です(ΔPF基準)。

① 投機筋が売り寄り(COTインデックス低)=相対改善(ただし過度な期待は禁物)

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
投機筋COTインデックス ≤ 60 0.93 +0.13 48.15% 2,488
投機筋COTインデックス ≤ 80 0.90 +0.10 48.66% 2,832
投機筋COTインデックス ≤ 100(ベース) 0.80 47.70% 2,799

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
投機筋COTインデックス ≤ 60 0.99 +0.26 48.50% 1,670
投機筋COTインデックス ≤ 80 0.86 +0.13 48.02% 2,091
投機筋COTインデックス ≤ 100(ベース) 0.73 46.88% 2,227

傾向: 低域でΔPFがプラス。相対改善はあるが、過度なフィルタ強化で万能化するわけではない。

② 投機筋が買い寄り(COTインデックス高)=段階的に悪化

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
投機筋COTインデックス ≥ 80 0.71 -0.09 43.96% 869
投機筋COTインデックス ≥ 90 0.73 -0.07 43.50% 515
投機筋COTインデックス ≥ 100 0.67 -0.13 44.91% 167

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
投機筋COTインデックス ≥ 80 0.65 -0.08 43.23% 569
投機筋COTインデックス ≥ 90 0.68 -0.05 44.05% 336
投機筋COTインデックス ≥ 100 0.64 -0.09 45.36% 97

傾向: しきい値を上げるほどΔPFはマイナス幅が拡大。買い寄りにショートで挑むのは、少なくとも短期逆張り(5週)では改善しにくい


小口(NR)COTフィルター(ショート逆張り・5週保有)

NR(Non-Reportables)は極端域での改善が目立ちますが、中域では改善が小さいか逆に悪化する帯もあります(ΔPFで評価)。

ベースライン

  • 1週連続上昇 → 翌週ショート:PF=0.80(NR COTインデックス ≤100, 取引数=2,799)
  • 2週連続上昇 → 翌週ショート:PF=0.73(NR COTインデックス ≤100, 取引数=2,227)

① NRが売り寄り(COTインデックス低)=小幅改善〜横ばい

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
NR COTインデックス ≤ 40 0.89 +0.09 47.70% 1,587
NR COTインデックス ≤ 50 0.85 +0.05 47.18% 2,054
NR COTインデックス ≤ 60 0.81 +0.01 47.28% 2,405
NR COTインデックス ≤ 80 0.78 -0.02 46.88% 2,402

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
NR COTインデックス ≤ 50 0.87 +0.14 48.03% 1,370
NR COTインデックス ≤ 60 0.80 +0.07 47.71% 1,679
NR COTインデックス ≤ 70 0.78 +0.05 47.35% 1,909
NR COTインデックス ≤ 80 0.75 +0.02 47.08% 2,054
NR COTインデックス ≤ 90 0.65 -0.08 45.98% 1,768

傾向: 低域では段階的に小幅改善(最大ΔPF+0.14)。ただし過度に広げる(≤90)と逆効果

② NRが買い寄り(COTインデックス高)=極端域ほど改善幅が大きい

1週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.80)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
NR COTインデックス ≥ 80 0.86 +0.06 47.60% 853
NR COTインデックス ≥ 90 0.82 +0.02 48.06% 439
NR COTインデックス ≥ 100 0.95 +0.15 48.50% 167

2週連続上昇 → 翌週ショート(ベースPF=0.73)

条件 PF ΔPF 勝率 取引数
NR COTインデックス ≥ 80 0.80 +0.07 45.42% 557
NR COTインデックス ≥ 90 0.96 +0.23 48.36% 275
NR COTインデックス ≥ 100 1.13 +0.40 43.56% 101

傾向: 高域ほどΔPFが拡大。ただしサンプルは557 → 275 → 101と急減し、統計的安定性は低下。


逆張りショートとCOTのまとめ(ΔPF基準)

ポイント:今回は「黒字化の可否」ではなく、ベースライン(COTなし)からどれだけ改善できるか(ΔPF)にフォーカスしています。

発見1|誰がポジションを担っているかで、効き方がガラッと変わる

同じ「直近1〜2週の上昇」でも、商業筋・投機筋・小口のどこが偏っているかで、逆張りショートの改善幅(ΔPF)がまるで違う。

発見2|商業筋(Com):強気側ほど“救済効果”が大きい

  • 2週連続上昇→翌週ショート(ベースPF=0.73)で、
    • 商業筋のCOTIndex ≥ 80:PF=1.02(Δ+0.29、取引数=548)
    • 商業筋のCOTIndex ≥ 90:PF=1.23(Δ+0.50、取引数=325)
    • 商業筋のCOTIndex≥ 100:PF=1.41(Δ+0.68、取引数=115)

    弱気側(≤60/≤80)はほぼ横ばい〜悪化で、改善は強気域に集中。

  • 1週でも 商業筋のCOTIndex ≥ 80→PF=1.00(Δ+0.20)、≥90→1.07(Δ+0.27)と“赤字圏からの引き上げ”が確認できる。

発見3|投機筋(NC):買い寄りは逆風、売り寄りは追い風

  • 2週(ベースPF=0.73):
    • 投機筋のCOTIndex ≤ 10:PF=1.11(Δ+0.38、取引数=330)
    • 投機筋のCOTIndex ≤ 20:PF=1.05(Δ+0.32、取引数=565)
    • 投機筋のCOTIndex ≥ 80/90/100:PF=0.70/0.68/0.64(Δ−0.03/−0.05/−0.09
  • 1週(ベースPF=0.80)でも、低域(≤60/≤80)はΔPFがプラス、
    高域(≥80〜100)は0.7台まで沈み悪化。

直感と逆で「投機筋が強気だから逆張りショートが効く」は誤り。売り寄りに絞るほど相対改善

発見4|小口(NR):極端域が効くが、件数は薄くなる

  • 2週(ベースPF=0.73):
    • NRIdx ≥ 80/90/100:PF=0.80/0.96/1.13Δ+0.07/+0.23/+0.40、取引数=557/275/101
    • NRIdx ≤ 50/≤60/≤70:PF=0.87/0.80/0.78(Δ+0.14/+0.07/+0.05
  • 1週は高域(≥100)でΔ+0.15、低域(≤40)でΔ+0.09と「両極」が目立つ。

極端域ほど改善幅が大きい一方、取引数が急減。安定運用は広めのしきい値と併用が無難。

発見5|一貫して「2週 > 1週

どのグループでも、直近2週の上昇を条件にした方がΔPFの伸びが大きい
つまり「上げが強め × COTの偏りがハッキリ」で逆張りショートは“救われやすい”。


一言でいうと

素の逆張りショートは厳しいけど、「2週上げ × 商業筋が強気」ΔPFは+0.50〜+0.68まで押し上がる。
投機筋は売り寄りが追い風小口は極端域が効くがデータ薄め
COTは「黒字化の魔法」ではなく、改善を積み上げるレバーだった。

実務でどう使う?(超要約)

  1. 起点:まずは商業筋のCOTIndex ≥ 90(or ≥80)× 2週連続上昇でスクリーニング。
  2. 補強:可能なら投機筋のCOTIndex ≤ 10〜20を重ねて、改善方向を揃える。
  3. 味付け:NRは極端域(≥90/100 or ≤50〜≤70)をアラート的に併用(件数バランスに注意)。
  4. リスク設計:本検証は5週固定・利確/損切りなし。実運用は保有短縮・利確/損切り・価格系フィルターでさらにΔPFを積み上げる。

COTレポートのバックテスト連載 目次

  1. 【第1回】【保存版】COTレポート完全解説|先物47銘柄20年データで検証
  2. 【第2回】COTレポートでいきなり出た!世界レベルの戦略~“投機筋について行け”は本当だった
  3. 【第3回】どの“市場”でCOTは効くのか?(セクター別と銘柄別の実証+グラフで一気に把握)
  4. 【第4回】COTレポートで順張りショートは勝てるか? 徹底バックテストの結論
  5. 【第5回】商業筋を信じるな? COTレポートを逆張り買いで使ったらどうなるか徹底検証
  6. 【第6回】普通じゃ勝てない逆張りショートはCOTレポートでどこまで“救える”か

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。