僕がいちばん知りたかった数字だけ、最後まで答えてもらえませんでした【ラムリサーチ(LRCX)2026年7〜9月期決算】

AIへの投資の話は、たいていエヌビディアや、チップを作る工場の会社に集まります。でも、その工場の中に置く機械を売っている会社があります。工場が増えれば、まずこの会社の注文が増えます。

ラムリサーチは、その機械の会社です。今回の決算説明会で、3ヶ月前には「まだ数字にするのは早い」と言っていた来年の見通しに、初めて金額が付きました。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月21日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「エッチ」と「成膜」って、何をする機械でしょう

ラムリサーチは、半導体を作っている会社ではありません。半導体を作るための機械を売っている会社です。中でも得意なのが「エッチ(削る)」と「成膜(薄い膜を積む)」という2つの工程です。

昔の半導体は、平らな板の上に回路を描いていく、いわば平屋の建物でした。描く工程が主役で、削る・積むは脇役です。ところが平屋では詰め込める量に限界が来たので、いまは上へ積み上げる方向に進んでいます。メモリはその代表で、この会社は3ヶ月前の説明会で、記録用のメモリが「128層から500層超」へ進むと話していました。

たとえるなら、ミルフィーユです。生地を1枚敷いて、クリームを塗り、また生地を重ねる。層が128から500になれば、塗る回数も切る回数もそれだけ増えます。しかも縦に深い穴を、まっすぐ正確に開けなければいけません。

ここが、この記事の結論に効くところです。チップが3次元になるほど、同じ1枚のウエハーから作るのに必要な「削る・積む」の機械が増えます。 だから業界全体の設備投資が伸びる以上に、この会社の取り分が伸びやすい。会社は今回、2026年で3年連続、業界全体の設備投資の伸びを上回る見込みだと言いました。

💡WFE=ウエハー製造装置(Wafer Fab Equipment)。世界の半導体メーカーが、工場に入れる製造装置に払うお金の合計。この会社の売上の「市場の大きさ」にあたります。

売上は前年同期比+54%、5四半期連続の過去最高でした

数字そのものは、過去最高を更新し続けてきた延長にあります。

  • 売上 82.2億ドル(前四半期比 +22%、前年同期比 +54%。1ドル150円で約1兆2,300億円)
  • 一株利益 2.20ドル(過去最高)
  • 営業利益率 40.2%(これも過去最高。前四半期は38.4%)
  • フリーキャッシュフロー 32.4億ドル(手元に実際に残った現金)

💡この会社が説明会で話す数字は、ことわりが無い限りすべて調整後(non-GAAP)です。会社が一時的と考える項目を除いた数字で、会計基準どおりの数字とは別物です。上の一株利益も調整後です。

3ヶ月前に会社が出していた見通しは「売上81億ドル(上下4億ドル)、一株利益2.15ドル」でした。実績はどちらも、その真ん中を少しだけ上回っています。大きく驚かせた決算ではありません。前年比の伸びは大きいけれど、自分で出した予想からのズレは小さい。

3ヶ月前は「まだ早い」と言っていた2027年に、金額が付きました

いちばん大きく変わったのは、来年の話し方です。

3ヶ月前(財務責任者):「2027年がどうなるかを数字で示すには、まだ早すぎます。ただ、かなり良い年になりそうに見えます」
今回(社長):「2027年のウエハー製造装置の暫定見通しは、2,000億ドル超の支出です」

2,000億ドルは、1ドル150円で30兆円です。今年(2026年)の見通しは「1,500億ドル台の半ば」なので、来年は約3割増えるという見立てになります。その今年の数字も、3ヶ月前の「1,500億ドル台の前半」から上に動きました。財務責任者は、今年の見通しを1,300億ドル台の半ばから始めて、少しずつ上げてきた経緯を自分で振り返っています。

視界も延びました。3ヶ月前は「顧客との話はもう2027年以降に及んでいる」でした。今回は「顧客の視界は2028年まで延びている」です。社長は業界を「複数年にわたる投資サイクルの、初期段階」にあると表現しています。

製品の話も、具体の側に寄りました。

  • 微細な回路を焼き付ける工程(露光)で使う、新しい感光膜の技術「Aether」は、2030年までの累計売上の見込みを約25億ドルへ。従来の見込みより約10億ドル上です
  • 保守サービスは、3ヶ月前の「急速に採用が進んでいる」から、今回は「複数のメモリメーカーと、成果報酬型のサービス契約を結んだ」へ
  • チップの裏側から電気を送る新しい工程(裏面電源)では、ある主要顧客で、4つの製品すべてが量産ラインの標準装置に採用されました。ただし顧客名と金額は出していません

💡成果報酬型のサービス契約=機械を売って終わりではなく、その機械が工場でどれだけ成果を出したかに応じて代金が決まる保守契約。「採用が進んでいる」より、一段先の段階です。

初めて出てきた言葉——「供給が追いつけば、もう少し高かった」

その一方で、3ヶ月前には無かった言い訳が、今回初めて出てきました。

3ヶ月前(財務責任者):「私たちがボトルネックにならないよう、できることはすべてやっています」
今回(財務責任者):「この売上見通しは、目先のサプライチェーンの制約が無ければ、もう少し高かったでしょう」

次の四半期(2026年10〜12月期)の見通しは、売上86億ドル(上下4億ドル)、一株利益2.33ドル(上下0.15ドル)です。市場の予想は売上85.4億ドル、一株利益2.32ドルあたりでした。ほぼ同じ水準です。 来年の話は大きく上がったのに、すぐ次の四半期は、予想どおりの数字に収まっています。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が「86億ドル」と言っても、周りが「90億ドルは出るだろう」と思っていたら、86億ドルは物足りない数字になります。今回は、周りの予想とほぼ重なりました。

足を引っ張っているのは、需要ではなく作る側の都合だと会社は言います。今年は主に、顧客の工場のクリーンルーム(チリを極限まで減らした製造用の部屋)の空きが足りなかった。そこに一部の部品の供給が加わっています。出せなかった分は「1〜3月期に出荷する」と財務責任者は言いました。売上が消えたのではなく、後ろにずれただけ、という説明です。

3ヶ月前に語っていた3つの数字が、今回は出てきません

変わったのは足された言葉だけではありません。前の四半期にはっきり語っていた数字が、今回は出てきませんでした。 3つあります。

1つ目は、メモリでの取り分です。 3ヶ月前、社長はこう言っていました。

「記録用メモリでの、ウエハー1枚あたりの当社の取り分は、128層から500層超のデバイスへ進むまでに2倍になると見ています」

上のミルフィーユの話の、いちばん直接的な数字です。今回、この「2倍」は出てきません。

2つ目は、新しいエッチ装置の広がりです。 3ヶ月前は「ACARA(アカラ)は発売以来、導入台数が毎年2倍になっています」と言っていました。今回、この言い方は消えています。

3つ目は、利益率の目標です。 3ヶ月前、財務責任者は「今後数年で、営業利益率を40%台半ばの水準へ」と言いました。今回、この目標には一度も触れていません。粗利率(売上から製造原価だけを引いた残りの割合)については、質疑で「今後数年で50%台半ばへ広げる機会がある」と改めて言っていますが、すぐ後に「目先は、いまの水準の前後で上下する」と付け加えています。

もう1つ、数字が残ったまま向きが変わったものがあります。保守・部品の事業は、今年は「30%超」伸びる見込みですが、来年は「15%超」と、会社自身が減速を数字で示しました。

取り下げたとは言っていません。ただ、来年の装置市場には新しく数字を出したのに、自分の取り分と利益率の数字は語らなかった。足した数字と、言わなかった数字が、同じ説明会に並んでいます。

なぜ、いまこの会社に注文が集まるのか

背景にあるのは、工場そのものが増えていることです。財務責任者は「来年は年初から年末までに、大手の新しい工場が10カ所稼働を始め、時間をかけて立ち上がっていく」と言いました。工場が立ち上がれば、その中に削る・積む機械が入ります。

需要の中身も、ひとつではありません。来年の伸びを率いるのは、会社の説明では、伸び率の順にDRAM(計算用のメモリ)、最先端の受託製造・ロジック(計算を担うチップ)、記録用メモリ(NAND)です。今期の装置売上は、メモリが46%、受託製造が46%と、ほぼ半分ずつでした。AI向けのメモリ(HBM)を作る工程では、先ほどのAetherがすでに量産で使われ始めています。

チップを組み立てる段階でも、注文が出ています。複数のチップを1つにまとめる「先端パッケージング」向けでは、四角い大きな板にめっきをする装置を、世界の20社超に出荷しました。

社長は、AIへの設備投資と自社の関係をこう説明しています。「AIへの設備投資1,000億ドルあたり、ウエハー製造装置は約100億ドル。そして来年、その100億ドルの中での当社の機会は、今年よりさらに大きくなる」。チップが3次元になるほど、同じ100億ドルの中で削る・積むの比率が上がる、という意味です。冒頭の概念の話が、ここで売上につながります。

5社のアナリストが聞いて、最後まで出なかった数字

この決算でいちばん未解決なのは、題名に書いたとおり、供給の制約で取りこぼした売上はいくらなのかです。

最初の質問者は、3〜4億ドルくらいかと金額を挙げて聞きました。財務責任者の答えは「具体的な数字は出しません。説明の中で『もう少し高かった』と言いました。だから、もう少し高かったのです」。その後も、対策は何か、一時的なものか、来年の変動要因になるか、制約が無ければ需要はどれくらいかと、合わせて5社が同じ論点を角度を変えて聞きました。最後の質問には「答えないのはご存じでしょう」「高くはなるでしょうが、正確な数字は出しません」。5回聞かれて、金額は1度も出ませんでした。

晴れた点もあります。10〜12月期に一回限りの売上が混ざっていないかと聞かれて、財務責任者は「特殊なものも、一回限りのものも、突発的なものもありません」と具体的に否定しました。社長も「コロナの時期の部品不足とは、まったく違います」「ごく近いうちに追いつくと思います」と言っています。

数字を押し上げた一時的なものも、いくつか入っています。

  • 今期の売上の35%が中国(前の四半期は26%)。中国の国内顧客と多国籍顧客の両方が強かったためで、次の四半期は国内顧客の減少で「大きく下がる」と会社自身が言っています
  • 本業以外の収益の改善は、為替と、出資先の評価益によるもの
  • 一方で税率は11%から16.5%へ上がっています。これは一時的ではなく、この先も一株利益にかかり続ける向かい風です

中国の上乗せは次の四半期に剥がれ、出荷のずれは後ろへ回ります。次の四半期の見通しが市場の予想どおりに収まっているのは、その両方を抱えた上での数字です。

1月の説明会で、2,000億ドルと「1〜3月期に出荷」が残っているか

今回の読みは「来年の装置市場には初めて大きな数字が付いた。ただし足元は作る側の制約で頭を押さえられていて、自分の取り分の数字は語られなかった」です。

次の決算(2027年1月ごろ)で、違っていたと分かる形は2つあります。

  1. 2027年の「2,000億ドル超」が引き下げられる
  2. 「1〜3月期に出荷する」と言った分が、1〜3月期の売上に戻ってこない

逆に、良い方へ外れる形もあります。言わなかった3つの数字(メモリでの取り分、導入台数、営業利益率の目標)のどれかが、また口に出てくることです。そうなれば、会社がもう一度その数字を背負える、と判断したのだと僕は読みます。


ここに書いたのは、2026年10月21日の説明会までに分かっていることだけです。2,000億ドルは「暫定」の見通しで、まだ動きます。

工場に機械を売る会社の決算は、AIの投資が本当に建物と機械になっているかを、いちばん早く映します。来年に大きな数字が付いた一方で、すぐ次の四半期は作る側の都合で抑えられている。その2つがどう決着するかは、1月の説明会で見えます。出たら、続きをここに書きます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。