ほっとしたのは半分だけでした。「期待を下回った」会社が、3ヶ月で「加速」と言うまで【IBM(IBM)2026年7〜9月期決算】

3ヶ月前、この会社の社長は決算説明会の冒頭で、自分から頭を下げていました。

「事前にお知らせしたとおり、第2四半期の業績は期待を下回りました」。

今回、同じ社長の第一声はこうでした。「第3四半期の売上の伸びは6%に加速し、7月にお示しした基本シナリオを上回りました」。

会社の名前はIBMです。長い歴史を持つコンピューターの老舗で、いまは企業向けのソフトウェア、銀行や大企業の基幹システムを支える大型コンピューター、そしてシステムづくりを請け負うコンサルティングの3本で稼いでいます。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月21日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「メインフレーム」は、古いコンピューターなんでしょうか

この決算の上下は、ほとんど一つの製品の周りで起きています。だから先に、その製品の話をさせてください。

メインフレームは、「昔の大型計算機の生き残り」ではありません。 名前の響きから博物館の展示物を想像しがちですが、IBMはいまも新しい世代を出し続けていて、最新の「z17」は発売から6四半期目に入ったところです。

普通のサーバーとの違いは、得意なことです。AIの学習のように、膨大な計算を大量のサーバーに分けて一気に片付けるのは、普通のサーバーの仕事です。メインフレームはその逆で、一件一件は小さいけれど、絶対に止まってはいけない処理を、間違えずに途切れなく回し続けるための機械です。社長の言葉では「メインフレームの処理は、AIで起きていることのほぼ正反対」。

日本の暮らしに置き換えると、銀行の預金残高や振込の記録のような処理です。ATMでお金を下ろした瞬間に、残高が1円の狂いもなく書き換わる。その裏側で動いている種類の仕事、と考えると近いと思います。

そして、IBMが本当に稼いでいるのは、機械そのものよりその上で動かすソフトウェアです。財務責任者は「メインフレームを1ドル売るごとに、3〜5ドルのソフトウェアが付いてくる」と説明しています。このソフトの部門を、会社は「トランザクション・プロセッシング」と呼んでいます。

💡トランザクション・プロセッシング=取引の記録や処理のように、止まってはいけない業務をメインフレーム上で動かすためのソフトウェア群。

このソフトは、大企業が数年分の利用権をまとめて契約する形で売られることが多い。大きな契約の判子が1四半期ずれるだけで、その期の売上がごそっと動きます。3ヶ月前の「未達」も、今回の「加速」も、ほとんどこの仕組みで説明がつきます。 この記事の結論は、そこから出てきます。

「先送りか、消滅か」に、会社は自分で答えを出しました

前の四半期、このソフト部門の売上が落ちて、投資家の頭にあった問いは一つでした。顧客の需要がなくなったのか、それとも契約の時期がずれただけなのか。

7月の時点で、社長が出せたのは「兆し」という言葉まででした。

「これは消滅ではなく先送りだった、という兆しです。まだ完全な証拠ではありませんが、良い兆しです」

今回、財務責任者はこう言い切っています。

「3ヶ月前は、需要の消滅か時期のずれか、という議論がたくさんありました。今回の結果で、その話には決着がついたと思います」

「まだ完全な証拠ではない」から「決着がついた」へ。数字も同じ向きです。このソフト部門の売上は今期+10%。通期の見通しは、3ヶ月前の「1桁台前半から半ばの減少」から、今回は「横ばい」へ引き上げられました。

ソフトウェア全体の通期見通しも、3ヶ月前の「6〜8%」から「7〜8%、基本シナリオは約7%」へ、下限が1ポイント上がっています。

足元の四半期は、3つの部門すべてで伸びが上向きました

下の1・2行目の売上の伸び率は、どれも為替の影響を除いた数字です。

  • 売上の伸び +6%
  • ソフトウェア +9%、インフラ(メインフレームなどの機械) +5%、コンサルティング +2%
  • 営業税引前の利益率(本業の利益が売上に占める割合) +0.7ポイント、一株あたりの営業利益 +11%

💡営業利益(operating)の一株利益=IBMが自分で定義している調整後(non-GAAP)の数字。買収に伴う償却などを除いたもので、会計基準どおりの一株利益とは別物です。

ソフトの中では、IBMが買収した企業向け基盤ソフトの会社、レッドハットが2四半期続けて+11%、データ関連が+20%。データの伸びには、買収したコンフルエントという会社の上乗せが含まれています。

続いている数字もあります。レッドハットの主力製品「オープンシフト」の年間契約額は、3ヶ月前の22億ドルから24億ドルへ、伸び率は30%超。会社が「高付加価値」と呼ぶ、毎年くり返し入ってくるソフトなどの売上は、249億ドル(前年比+8%、1ドル150円で約3.7兆円)になりました。

💡オープンシフト=アプリを、自社のサーバーでもクラウドでも同じように動かせるようにするための基盤ソフト。

上振れの4分の1は、3ヶ月前の「取り戻し」でした

ここで、ほっとしたのが半分だけだった理由を書きます。

最初に質問したアナリストが、いきなりそこを突きました。今期の加速は、先送りされた契約が戻ってきただけではないのか。財務責任者は、聞かれる前に答えるつもりだったと前置きして、こう分けました。

「先に言っておくと、ソフトウェア全体の加速のうち、約4分の1は先送りになっていた案件です」

金額も出ています。前の四半期から先送りになっていた大型案件は約4億ドル。そのうち3分の2、2億5,000万ドル超(約375億円)を今期に締結しました。残りの4分の3は新規の事業だ、というのが会社の説明です。

そして、社長は自分から上振れの持続を打ち消しました。

「率直に申し上げると、トランザクション・プロセッシングの2桁成長が続くとは思っていません。来年に向けてはより平常に近い伸びになり、第3四半期から第4四半期にかけてはおそらく鈍化するでしょう」

前の四半期から繰り越された分と、第3四半期のいつもの購買の波が、同じ3ヶ月に重なった。今期の+10%は、その二つを足した数字です。

これはむしろ、誠実な説明だと思いました。悪い数字の後に良い数字が出たとき、取り戻し分を自分で切り分けて、しかも「続かない」まで言う経営陣は多くありません。

ただ、全社の売上見通しは4〜5%のまま動いていません。 利益とフリーキャッシュフローの見通しも、引き続き「4%成長」を前提に置いています。フリーキャッシュフローの増加額は「約10億ドル」から「10億ドル超」へ、言い方が少し強くなっただけです。

💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきた現金から、設備などへの投資を引いて、会社の手元に自由に残るお金。

市場の予想と比べても、大きな差はありません。財務責任者はソフトウェアの通期売上について「市場の予想は約320億ドルで、その数字に違和感はありません」と言いました。予想に合わせたのであって、上回るとは言っていません。だから驚きはありません。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

数字の向きは良くなった。けれど、会社自身が「一回分が混ざっている」と言っている。そういう決算です。

前の四半期に誇っていた数字が、3つ静かになりました

言葉が明るくなった一方で、3ヶ月前ははっきり数字で語っていたのに、今回は数字が消えたり下がったりしたものがあります。

1つ目は、z17の売れ行きを測る比率です。 3ヶ月前の社長は「z17は、前の世代と比べた同じ時期の実績で130%近い」と言っていました。今回の冒頭の説明では、%が出てきません。代わりに「6四半期で、前の世代を10億ドル以上上回る売上を生んだ」という金額の言い方に変わりました。%が出てきたのは質疑の中で、財務責任者の「6四半期目で125%、記録上で最も高い世代」という一言です。歴代最高なのは本当です。それでも、130%近くから125%へ、数字は下がっています。

2つ目は、メインフレーム以外のサーバーやストレージの受注残の金額です。 3ヶ月前は「約5億ドルの受注残で四半期を終えました。過去最高です」と金額を言っていました。今回は「相当な受注残を持って四半期を終えました」で、金額がありません。この部門の伸びも、37%から32%に落ち着いています。

💡受注残=もう注文を受けたけれど、まだ売上になっていない仕事の合計。

3つ目は、コンサルティングの受注の伸びです。 3ヶ月前は「受注は6%伸び、2四半期連続の成長」「受注の約50%が生成AI関連」と言っていました。今回は受注の伸び率に触れず、「AIはコンサルティング売上の約30%、受注残の約35%」という比率だけになりました。前の回にあった、z17の顧客の半数近くがAI用の追加カードに投資しているという話も、今回は出てきません。

どれも、それだけで悪い知らせというわけではありません。ただ、3ヶ月前のIBMは、良い数字を聞かれる前に自分から言っていました。言い方が変わった場所は、次の回でも同じ数字が戻ってくるかを見るつもりです。

値上げの分は、3人目に聞かれても答えませんでした

質疑で、メインフレームのソフトの回復は、3人のアナリストから聞かれました。3人目は、回復のうち「台数(処理能力)が増えた分」と「値上げの分」がそれぞれどれだけかを聞いています。財務責任者は、出荷された処理能力が100%超増えたこと、z17の比率が125%であることは答えましたが、値段の寄与には答えていません。

もう一つ、ソフトウェアで2桁成長を目指すという長期の目標に自信はあるか、買収はどんな役割を果たすか、という質問には「1月に、この点はもっと時間をかけてお話しします」でした。

ほかに、今期の数字を見るときに覚えておきたいことが3つあります。

  • データの+20%には、コンフルエントの買収による上乗せが入っている
  • 利益率の改善は、主にコスト削減などの生産性の施策から来ていて、売上の需要とは別の話
  • メインフレームの好調は、z17という新しい世代への入れ替えの時期に乗っている

それでも、来年に向けて積み上がっているもの

一回分の取り戻しを引いても、残るものはあります。

レッドハットは、受注が先に走っています。 社長は「受注の伸びが10%台後半に戻った」と言い、「これだけ受注が伸びると、その先の売上の伸びにつながる」と続けました。第4四半期については「2桁成長に自信がある」。受注は売上より先に動くので、ここは来期の数字で確かめられます。

メインフレームは、使われる量が増えています。 z17の導入済みの処理能力は10%台後半の増加、出荷された処理能力は100%超の増加。メインフレームの顧客のうち、処理能力全体の約85%を占める顧客が、容量を維持するか増やしている、とも説明しています。財務責任者はこれを「将来の近代化の機会」と呼びました。機械が先に入り、その上で動くソフトの契約が後から付いてくる。その順番どおりなら、ソフトにとっての材料は2027年側にあります。

新しい製品の芽もあります。 企業が使っているオープンソースのソフトの安全上の穴を、IBMとレッドハットが修正して届ける「ライトウェル」というサービスが一般提供を始め、見込み案件の合計は7億ドル近くに達しています。ただしこれは契約額ではなく、話が進んでいる案件の合計です。

💡パイプライン(見込み案件)=まだ契約に至っていない、商談中の案件の合計。全部が契約になるわけではありません。

1月に、レッドハットが2桁を割ったら読み違いです

今回の僕の読みは、「3ヶ月前の落ち込みは先送りだったと確かめられた回。ただし上振れには一回分が混ざっていて、全社の伸びの見通しはまだ上がっていない」です。

外れていたと分かるのは、次のような形です。

  1. 第4四半期のレッドハットの伸びが、会社が自信を見せた2桁を割る
  2. 毎年くり返し入ってくるソフトなどの売上(高付加価値の継続収入)の伸びが、今期の8%から上向かない
  3. メインフレームのソフトが再び減少に転じ、ソフトウェア全体の通期7%を下回る

反対に、良い方へ外れることもあり得ます。1月に会社が出す来年の見通しで、メインフレームの使われる量の増加が、ソフトの売上にはっきり出てくる場合です。今回の決算では、機械の数字は強く、ソフトの売上への換算はまだ「機会」という言葉にとどまっています。


3ヶ月前の「未達」と今回の「加速」を並べると、会社が変わったように見えます。でも中身を分けると、変わったのは主に契約の判子の時期で、事業の伸びの見通しはほとんど動いていません。それでいいのだと思います。前の回の心配が「需要が消えたのか」だったなら、今回の答えは「消えていない」で十分です。

次の回で見たいのは、取り戻しが無くなった後の数字です。この会社については、1月の説明会を待っています。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。