楽しみだと言っていた社長が、今回は「分かりません」と言いました【BEセミコンダクター(BESIY)2026年7〜9月期決算】

3ヶ月前、この会社の社長は「第3四半期と第4四半期に、結果が見えてくるのが楽しみです」と言っていました。

AIの半導体というと、エヌビディアのような計算するチップの話になりがちです。でも、その隣に積み上げて置くメモリや、複数のチップを1つにまとめる「組み立て」の工程にも、専用の機械が要ります。BEセミコンダクターは、その組み立ての機械を作っているオランダの会社です。本国ではアムステルダムに上場していて、アメリカでは店頭取引のADR(BESIY)で売買されています。

💡ADR=外国の会社の株を、アメリカの市場で売買できるようにした預かり証。BESIY は取引所ではなく店頭で売買されています。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月22日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「ハイブリッドボンディング」って、何をつなぐ技術でしょう

名前から想像すると、2つの技術を混ぜた何か、に聞こえます。中身はもっと素朴で、チップとチップを、どうやって上下にくっつけるかという話です。

これまでの普通のやり方は、チップの表面に小さな「はんだの粒」をたくさん並べて、その粒を溶かして上のチップとつなぐ方法でした。粒を間に挟むので、段と段のあいだに、わずかな隙間と厚みが残ります。

ハイブリッドボンディングは、その粒を使いません。両方のチップの表面を平らに磨いて、銅の配線どうしを直接くっつけます。たとえるなら、積み木のあいだに接着剤のダマを挟んで重ねるのではなく、面と面をぴったり合わせて貼り合わせるやり方です。間に挟むものが無いので、薄く、細かく、たくさんの配線をつなげます。

これが効いてくるのが、AI向けのメモリ(HBM)です。

💡HBM=メモリのチップを何段も縦に積み上げて、計算用のチップのすぐ隣に置く、AI向けの高速メモリ。

段を高く積むほど、つなぎ目の数も厚みも増えます。だから、いつかHBMはハイブリッドボンディングに切り替わる。この会社の物語の中心はそこにあります。そして今回の決算で動いたのは、まさにその「いつか」の部分でした。

「楽しみな瞬間」から「やや遅れた」へ

3ヶ月前の説明会で、社長はこう話していました。

「HBM向けのハイブリッドボンディングの採用について、私たちはいま、とても興味深く、楽しみな瞬間にいます」「第3四半期、そして第4四半期にかけて結果が見えてくるのが楽しみです」

今回の説明会で、社長の口から出たのは、メモリ不足の話でした。

「今年の深刻なメモリ不足によって、いまのHBMの生産では、低い段数の製品を使う期間が、以前の想定を超えて延びています」
「足元の需要は、できるかぎり既存の技術で満たされています。その結果、より優れた技術の採用は、やや遅れています(somewhat delayed)」

理屈は分かりやすいです。メモリが足りないときに、メーカーは新しい作り方に切り替える余裕がありません。いま作れるやり方で、とにかく数を出す。新しい技術はその分、後回しになります。

そして、3ヶ月前にあった日付が、今回は出てきませんでした。

「特定の用途が、いつ本格的な量産に入るのか、その正確な時期は私たちには分かりません」

「第3四半期から第4四半期にかけて」という時期の言い方が、「分かりません」に変わりました。社長は「やや(somewhat)」と付けていて、計画をやめたという話ではありません。それでも、時期の言葉が消えたのは、この3ヶ月でいちばん大きな変化です。

それでも、注文は入っていました

ここで話が単純でなくなります。言葉は後ろに下がったのに、注文は前に進んでいるからです。

「大手のメモリ顧客から、ハイブリッドボンディングとTC-NEXTの両方の装置の注文を受けました」

どのメモリ会社かは明かしていません。ただ、HBMの採用時期が「分からない」と言った同じ説明会で、メモリの大手から実際の注文が付いています。

💡TC-NEXT=熱と圧力でチップを接合する、この会社の別系統の装置。はんだの粒を使う従来のやり方を、細かく精密にしたもの。

数字で並べると、こうなります。

  • 受注 3億4,260万ユーロ(前の四半期比 +17%、前年同期比 +96.1%)。1ユーロ170円で計算すると、約580億円です
  • 直近12ヶ月の受注 12億ユーロ(前の四半期は9億8,760万ユーロ)
  • ハイブリッドボンディングの採用社数 23社(2025年末の15社→前の四半期末の21社→今回23社)
  • ハイブリッドボンディング装置の累計の需要 215台超(台数を出したのは今回が初めて)

💡受注=お客さんから「この装置を買う」と注文をもらった金額。まだ売上にはなっていません。装置を納めた時点で売上になります。

当四半期の実績も大きな数字です。

  • 売上 2億8,340万ユーロ(前の四半期比 +13.4%、前年同期比 +113.6%)
  • 純利益 1億720万ユーロ
  • 売上のうち、人件費や事務の経費に消えた割合は 16.4%(前の四半期は18.9%)

3ヶ月前に会社が出していた売上の見通しは「前の四半期比で+10〜15%」でした。実績の+13.4%は、その範囲の中に着地しています。見通しどおりに来た、という結果です。

ただ、ハイブリッドボンディングだけの受注金額と、注文した顧客の名前は、今回も出していません。今年に入ってからのハイブリッドボンディングの受注は「2025年通年の2倍を超えた」という言い方に留まっています。

次の四半期の売上は、横ばいの見通しです

見通しは、前回より落ち着いた形になりました。

3ヶ月前:「第3四半期の売上は、第2四半期比で10〜15%増えると見込んでいます」
今回:「第4四半期の売上は、横ばい、プラスマイナス5%と見込んでいます」

前の四半期比で1割以上の伸びを見込んでいた会社が、次は横ばいと言っています。

💡ガイダンス=会社が自分で出す、次の期の業績の見通し。

理由について、会社はこう説明しています。第3四半期に受けた注文のうち一部について、顧客が「自分たちの来年前半の生産計画に合わせて、納品の時期を決めたい」と求めてきた、と。

延期ではないのか、という質問には、社長がはっきり答えました。

「顧客による先送りではありません」

工場のラインごとにまとめて注文が入り、装置と建屋の準備に合わせて、出荷が第4四半期、来年の第1四半期、第2四半期に分かれていく。これは通常の形だ、という説明です。ここは具体的で、筋が通っています。受注の3億4,260万ユーロが、この先3つの四半期の売上へ流れていく道筋は、会社の口からきちんと描かれました。

粗利率の見通しは63〜65%で、前回と同じです。販管費は5〜10%増える見通しで、理由はコンサルタントへの一時的な費用だと説明しています。

💡粗利率=売上から原価を引いた残りが、売上に占める割合。

もう一つ、今回だけ出てきた言葉があります。

「過去の年は、見通しが利くのはおよそ1四半期、1.5四半期でした。いまは見通しが長くなっています。1四半期、2四半期、6ヶ月です」

注文の先が、前より遠くまで見えている。これは悪い方向の言葉ではありません。

3ヶ月前に話していたことが、3つ消えました

消えたのは時期の言葉だけではありません。3ヶ月前は社長が自分から数字や時期を付けて話していた材料が、3つとも今回の説明会では出てきませんでした。

1つ目は、AI向けの比率です。3ヶ月前、社長は「今年前半の装置の受注のうち、AI向けはおよそ60%まで上がったと見ています」と数字で言っていました。今回、この比率は出てきません。

2つ目は、台湾の大手ファウンドリ(受託製造の会社)の新しい工場からの追加注文です。3ヶ月前は「今年後半にもう一段の注文があるかもしれません。分かりませんが、納期は6ヶ月ほどです」と、時期の目安まで添えていました。今回は「装置の注文量は、最初の時点では常に分かりません」に変わり、追加の注文そのものには触れていません。

💡ファウンドリ=他社が設計したチップを、受託して製造する会社。会社はこの顧客の名前を出していません。

3つ目は、3ヶ月前に出てきた新しい大手クラウド企業の顧客です。今回は続報がありませんでした。

3つとも、良い話として語られていたものです。悪い数字が出たわけではありません。ただ、どれも今回は話題から外れています。

質疑で3回聞かれた、HBMの時期

質疑応答で最初に質問した証券会社が聞いたのは、HBM向けのハイブリッドボンディングは遅れるのか、2028〜29年の話なのか、来年から意味のある売上が出るのかでした。社長の答えは、開発は全速で続いていること、量産の時期は最終顧客が決めることで自分たちは把握していないこと、そして注文は続いていること。時期は出てきませんでした。

そのあと、別の2つの証券会社が、角度を変えて同じ論点を聞いています。採用を決める節目は何か。何を見ていれば時期が分かるのか。社長は、HBMを作るメモリの3社とも開発はやめておらず、注文も入っていると説明し、さらに「採用を決めるのは段数の高さではなく、消費電力や遅延、帯域、熱といった性能で、それを要求するのは最終顧客だ」と答えました。中身のある答えです。ただ、3回聞かれて、3回とも日付は出ていません。これは、まだ解けていない論点だという意味です。

台湾の顧客の追加工場がどれくらいの規模になるかという質問には、「装置の注文量は最初から分かるものではない」と答え、規模には触れませんでした。

一時的なもの、この会社の外側にあるものも、並べておきます。

  • 次の四半期の販管費には、コンサルタントの費用が一度だけ乗ります
  • 受注のおよそ40%が中国向けだと、アナリストが質問の中で指摘しています
  • 自社株買いの枠を1億ユーロに広げました。事業の伸びとは別の話です

そして、社長自身が景気の波を認めています。3ヶ月前には「ふつう上昇の局面は6四半期、長くて8四半期続く」と言い、今回も「波の形が過去と似ているなら」という前置きで話しました。装置の会社は、顧客が工場を建てる波に乗って動きます。いまが波のどこなのかは、会社自身も留保を付けて話している、ということです。

チップをつなぐ工程が増えるほど、この会社の機械が要る

AIのチップは、1枚の大きなチップを作るより、小さなチップを何枚も組み合わせて1つにする方向へ進んでいます。計算用のチップの隣にHBMを並べ、HBMの中ではメモリを縦に積む。どこを取っても、「チップとチップをつなぐ」工程の数が増えます。この会社が売っているのは、その工程の機械です。

その中で、ハイブリッドボンディングは最先端の部分です。従来型のつなぎ方(TC-NEXTを含む)は今も注文が続いていて、社長は今回、TC-NEXTの顧客が計7社になったと話しました。同じメモリ顧客が、ハイブリッドボンディングとTC-NEXTを別々の製品向けに注文していて、TCのほうは「再注文」だと言っています。新しいつなぎ方を待つあいだも、古いつなぎ方の機械が売れている。 今回の受注の伸びは、その両方から来ています。

競合として名前が挙がりやすいオランダの露光装置大手ASMLとの関係も聞かれました。社長の答えは、ASMLはチップの内部を3次元に積む方向に向かっていて、チップを1枚ずつウエハーに貼り付ける領域では競合しない、むしろ切り出したチップ1枚1枚にかかるストレスの研究を共同でやっている、というものです。この四半期には、接合位置の精度が50ナノメートルの世代の装置を初めて出荷し、精度を一段上げた25ナノメートルの世代を開発中だとも話しています。

ここまでをまとめると、この会社には時間の違う2本の柱があります。1本は、いま受注と売上を積み上げている、AI向けの組み立て全般。もう1本は、HBMがハイブリッドボンディングに切り替わる時点で一気に広がるはずの、まだ時期の決まっていない柱です。今回の決算は、1本目が太くなり、2本目の時期が霧の中に戻った回でした。

次の説明会で、HBMの時期に日付が戻るか

僕の今の読みは「注文の実体は積み上がったが、いちばん大きな柱の時期は後ろへずれた」です。この読みが外れたと分かる形を、先に置いておきます。

  • 次の四半期の受注が、今回の3億4,260万ユーロを大きく下回る
  • HBM向けのハイブリッドボンディングについて、経営陣が「開発をやめる」、あるいは「2028年以降」と時期を明言する

逆に、僕の読みより良い方へ外れるのは、次の説明会で、HBM向けの量産時期に再び日付が付いた場合です。注文はすでに入っているので、そのときは2本目の柱が霧から出てきたことになります。


ここに書いたのは、2026年10月22日の説明会までに分かっていることだけです。メモリ不足がいつ緩むのか、顧客がいつ新しい作り方に切り替えるのかは、この会社が決められることではありません。

3ヶ月前の社長は、楽しみだと言っていました。今回は、分からないと言いました。そのあいだに、注文は17%増えています。言葉と数字が逆を向いた回は、次の回でどちらが正しかったかが見えやすくなります。次の説明会で、社長が日付を口にするかどうか。そこを並べます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。