戦闘機F-35と、迎撃ミサイルのパトリオットを作っている会社が、3ヶ月で注文を620億ドル積み増しました。
それなのに、今年の売上の見通しは0.3%しか動いていません。この2つの数字の間に、今回の決算の中身が全部入っています。
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※この記事で扱うのは、2026年10月22日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「7年分の注文」は、ふつうの注文と何が違うのか
ミサイルの注文と聞くと、国が「今年は何発」と決めて、その分だけ買う姿を思い浮かべると思います。アメリカの国防予算は議会が毎年決めるので、作る側から見ると、来年も同じだけ注文が来る保証はありません。
だから作る側は、工場を広げるのをためらいます。3年かけて建てた工場が、2年目の予算で空っぽになるかもしれないからです。
今回この会社が結んだのは、その逆の形です。パトリオット・システムで使う迎撃ミサイル「PAC-3」を、7年にわたって作る契約です。日本の航空自衛隊も配備している、あのパトリオットのミサイルです。総額は最大586億ドル。今年の前半に結んだ、もう1つの迎撃ミサイル「THAAD」の7年契約に続く2本目です。
レストランで言えば、毎晩の予約ではなく、7年分の貸し切りの予約が入ったようなものです。それなら厨房を広げて、人を雇えます。
ただし、中身はまだ全部は決まっていません。質疑応答で財務責任者は、残っている作業を「利益の条件と、スケジュールそのものの最終化」と言いました。量と期間の枠は決まった。いくらで儲けるかと、いつ納めるかは、まだ詰めている最中です。ここは後でもう一度出てきます。
3ヶ月前は「狙っている」、今回は「署名した」
経営陣の言葉は、3ヶ月でいちばん大事なところが変わっていました。
3ヶ月前(財務責任者):「下期には、PAC-3でも複数年契約を取るつもりです」
今回(社長):「この四半期、PAC-3の7年契約に署名しました」
意向が、署名に変わりました。
自動車メーカーとの提携も同じ向きに動いています。3ヶ月前、社長はGMとの取り組みを「自動車産業の大量生産とサプライチェーンの知見を、防衛の生産に応用できないか探る」と説明していました。それが今回は、もう納品の話になっていました。
「たとえばGMディフェンスは、最初の契約から1ヶ月足らずで、最初のPAC-3の部品を私たちに納めました」
言い方の強さも一段上がりました。3ヶ月前は「戦略が勢いを得ているという自信の表れ」、今回は「事業の勢いは加速しています」です。
受注残は2,920億ドル。1四半期で620億ドル増えました
- 売上 207億ドル(前年同期比 +11%)
- 一株利益 7.97ドル(前年同期は6.95ドルで、+15%)
- セグメント営業利益 22億ドル(利益率10.8%)
- フリーキャッシュフロー 30億ドル(年初からの累計は56億ドル)
💡一株利益(EPS)=会社の最終的な利益を、株式1株あたりに割り振った金額。
💡セグメント営業利益=各事業部門が本業で稼いだ利益の合計。本社の費用や年金の会計処理などを入れる前の数字で、部門ごとの稼ぐ力を見るのに使います。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきた現金から、設備などへの投資を引いて手元に残る現金。
売上の+11%には意味があります。3ヶ月前、会社は下期の売上を前年比「7%から12%の増加」と予告していました。第3四半期の+11%は、その範囲の上の方です。
そして受注残です。
「四半期末の受注残は過去最高の2,920億ドルで、前年同期比1,130億ドル増、受注対出荷比は4倍でした」
言葉を2つだけ補っておきます。
💡受注残(backlog)=契約は済んでいるけれど、まだ売上になっていない注文の残高。
💡受注対出荷比(book-to-bill)=その期に新しく取った注文を、その期の売上で割った数字。1を超えると、作るより速く注文が積み上がっています。
2,920億ドルは、1ドル150円で約43.8兆円です。3ヶ月前は2,300億ドルだったので、1四半期で620億ドル(約9.3兆円)増えています。今年の売上見通しが800億〜820億ドルなので、受注残はその3.6年分ほどにあたります。
増えた一番の理由は、さきほどのPAC-3の7年契約です。ほかにも、輸送機C-130Jの34機分で44億ドル、台湾向けの陸軍戦術ミサイル(ATACMS)の生産で4億3,900万ドル、オーストラリアの防空計画(Air 6500)の次の段階で8億ドルと、相手と金額の付いた契約が並んでいます。
売上の見通しは、市場の予想にぴったり重なっただけでした
僕が驚いたのは、冒頭の0.3%のほうでした。受注残が過去最高になった回に、会社自身の売上の見通しは、周りが思っていた数字の外へ出ていなかったからです。
前回の797.5億〜817.5億ドルが、今回は800億〜820億ドルです。中心の810億ドルは、アナリストの売上予想の平均と同じ水準でした。見通しは上がりましたが、その数字をなぞっただけで、超えてはいません。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。
利益の側は、むしろ上の端が下がっています。セグメント営業利益の見通しは、前回の85億〜87億ドルから、85億〜86億ドルへ。3ヶ月前の説明会で示された幅と並べると、上の端が1億ドル下がり、下の端は同じです。財務責任者はこの見通しを「前回の見通しから上がった」と表現しています。
理由ははっきりしています。戦闘機の部門です。3ヶ月前、会社は「F-35の次の生産ロットの受注時期次第で、下期の売上がさらに伸びうる」と上振れの余地を見せていました。今回は「その前提を2027年に移します」。戦闘機部門の売上見通しは、7月時点より「やや低く」なりました。
伸びているのは、ミサイルの部門だけです。この部門の今年の売上見通しは165億〜169億ドルから172.5億〜174.5億ドルへ上がり、この四半期は売上も利益も前年比+24%でした。会社は「弾薬の生産の立ち上げが、予定より前倒しで進んでいる」と言っています。
全社の見通しが大きく動かなかったのは、ミサイルの上振れを、戦闘機の後ろ倒しがほぼ打ち消したからです。7年分の注文が入っても、今年の売上にすぐ乗るわけではありません。乗るのはこれからの数年です。
その「これから」について、会社は1つだけ踏み込みました。質疑応答で来年のことを聞かれて、財務責任者はこう答えています。
「来年は会社全体で、高い一桁台の売上成長がはっきり見えています」
アナリストの2027年の売上予想は約856億ドルで、前年比+5.7%前後です。「高い一桁台」はそれをやや上回ります。ただし言葉だけで、数字の見通しは1月に出すと言っています。
前回語っていた「レーザー」が、今回は出てきません
前の四半期に具体的に語っていたことのうち、今回出てこなかったものがあります。
いちばん具体的だったのは、社長が挙げたレーザー兵器の契約でした。
「米国政府から、コンテナに収める500キロワット級のレーザー兵器を開発する、統合レーザー兵器システムの契約を受けました」
今回、レーザーへの言及はありません。前回触れていた宇宙配備の迎撃機の試作(米国のミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」向け)も、今回は構想の名前が1回出ただけでした。ドイツのラインメタルと結んだ、陸軍戦術ミサイルを欧州で作る覚書にも触れていません。
それから、全社の一株利益の見通しを、今回は口頭で示していません。
レーザーが消えたことが悪い知らせだとは限りません。開発の契約は、量産の話に比べれば金額が小さく、7年契約が2本並んだ回に話す時間が無かっただけかもしれません。ただ、3ヶ月前に自分から出した話題を、次の回で一度も繰り返さなかったのは事実です。
経営陣が数字で答えなかったことと、今回の数字に乗っているもの
この決算には、確かめられていない点と、一回きりのものが混ざっています。
いちばん大きいのは、さきほどの7年契約の利益条件です。量と期間は決まりましたが、どれだけの利益率で作るのかは、まだ最終化されていません。質疑応答で、社長は契約に入れたい条件を4つ挙げました。7年や10年という長い期間、毎年の値上げ条項、増産の投資期間中に会社の手元の現金が減らない仕組み、そして数量や期間を削られたときに投資を回収できる仕組みです。「従来以上の財務成果が得られなければ契約しない」とも言っています。筋は通っています。ただ、条件の中身はまだ数字になっていません。
F-35のほうはもっとはっきりしています。別の証券会社が、F-35の利益率の構造と、次の生産ロット(ロット20)の締結時期を続けて聞きました。前の四半期にも、ミサイル部門の利益率は複数の証券会社から繰り返し聞かれています。今回の回答は仕組みの説明が中心で、利益率の水準とロット20の時期には、数字で答えませんでした。
数字の側に乗っている一回きりのものは、4つです。
- 地上・海上システムの部門の利益に、契約上の問題が解決したことによる有利な利益の調整が乗っています
- 戦闘機部門の売上に、受注に伴って回収したC-130の契約前コストが乗っています
- フリーキャッシュフローの見通しの引き上げ(70億〜72億ドル→78億〜80億ドル)は、税務のガイダンスによる恩恵と、入金のタイミングによるものです。財務責任者は、この税の恩恵は来年は縮むと言いました
- 第4四半期は、前年より1週間長い期間です
逆に、まだ乗っていないものもあります。年内に買収が完了する予定のウルトラ・マリタイム社は、見通しに含まれていません。そして来年は、年金への拠出が10億ドルを超えると言っています。
現金の見通しが8億ドル上がったと聞くと強く見えますが、その中身は、本業が伸びた分というより、税と入金時期の分が大きい。来年はそこに年金の支払いが加わります。
7年契約は、部品の会社にまで注文を流しています
効いているのは、注文の形が変わったことです。
迎撃ミサイルは、1発を作るのに多くの部品会社がかかわります。目標を捉える「シーカー」と呼ばれる目の部分、飛ぶための推進装置。年ごとの注文では、その部品会社も設備を増やせません。7年契約は、その連鎖の全員に「数年先まで注文がある」と示す紙です。
実際に、会社は部品の注文を一気に出しています。
- L3ハリスに、PAC-3の推進装置で47億ドル
- ボーイングに、PAC-3のシーカーの増産で147億ドル
- ノースロップ・グラマンに、推進装置などの部品で16億ドル(ボーイングとノースロップの2本は、四半期が終わった後の発注です)
自社の側も動いています。8つの拠点で、200万平方フィート(約18.6万平方メートル・東京ドーム約4個分)の設備を今後3年で増やし、その半分以上はもう建設中です。ミサイル部門の拠点では、今年だけで3,000人以上を新たに雇って訓練しています。財務責任者は、この規模と長さの受注残があれば「来年の仕事の多くは、すでに契約済みで進行中です」と言いました。
ミサイルだけの会社ではありません。戦闘機の部門は、F-35の次のロットが後ろにずれて今年は足を引っ張りましたが、C-130Jの34機の受注が入り、来年については財務責任者が「4部門とも増収」と言っています。ミサイルの部門は、会社の説明で今年+20%前後、今後5年も10%台半ばのペースで伸びる想定です。今年の数字を引っ張っているのはミサイルで、来年はそこに戦闘機が戻ってくるかどうかです。
1月に確かめること
今回の読みは、「7年分の注文は確かに入った。ただ、それが今年の見通しにはまだ乗っておらず、利益の条件も決まっていない」です。
この読みが違っていたと分かるのは、次のどれかが起きたときです。
- 7年契約の利益条件が決まらないまま、数量の削減や納入の遅れが出る
- ミサイル部門の今年の売上が、172.5億ドルを下回って着地する
- 1月に出る2027年の数字の見通しで、売上成長が「高い一桁台」を下回る
反対に、利益条件が決まり、その利益率が今と同じか上だと会社が数字で示せば、読みは良い方へ外れます。そのときは、受注残の2,920億ドルが、売上だけでなく利益の残高にもなります。
ここに書いたのは、2026年10月22日の説明会までに分かっていることです。利益条件も、F-35の次のロットも、まだ決まっていません。
注文の大きさは、ニュースの見出しになります。でも決算説明会で経営陣が時間を使って説明していたのは、その注文が「いつ、いくらの利益で」売上に変わるかのほうでした。答えが出るのは、まだ先の回です。
1月の説明会で、来年の数字と、利益条件がどうなったかを確かめます。同じ作業を続けて読みたい方は、ブックマークしておいてください。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。