工場の発表に期待しましたが、お金の話で引っかかりました【クアンタムスケープ(QS)2026年7〜9月期決算】

電気自動車の電池の会社だと思われてきた会社が、AIデータセンターに電池を売ると言い始めました。

フォルクスワーゲンと組んできたことで知られる、全固体電池の会社です。今回の決算説明会で、この会社は初めて「量産ライン」を発表しました。ただ、同じ説明会の中で、その工場を誰が持ち、誰がお金を出すのかは、最後まで決まらないままでした。

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※この記事で扱うのは、2026年10月21日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——「全固体電池」は、普通の電池と何が違うんでしょう

「全固体」と聞くと、電池の中身が全部カチカチの固まりになったものを想像すると思います。この会社の電池で大事なのは、そこではありません。電池のプラスとマイナスを隔てる「仕切り」を、セラミックの固い板にしたことです。

普通のリチウムイオン電池は、この仕切りに薄い膜を使い、まわりを燃えやすい液体が満たしています。スマートフォンが熱くなると少し不安になるのは、このためです。会社の説明では、LFPと呼ばれる種類も含めて、従来のリチウムイオン電池はおよそ180度を超えると熱で安定を保てず、一気に燃え広がる「熱暴走」の危険が出てきます。この会社の電池は、300度を大きく超えても安定していることが、顧客の試験と外部の試験所で確認されたと言っています。

さらにこの仕切りのおかげで、マイナス側の材料を最初から作り込まない設計にできます。同じ大きさで、より多くの電気を詰められるということです。

日本の読者には、部品の側から見ると身近です。この会社は村田製作所、ガラスのコーニングと提携していて、今回ドイツの装置メーカーミュールバウアーが加わりました。電池を作る工程の、頭から終わりまでに提携先が並んだことになります。

この「熱に強い」という一点が、この記事の結論に効きます。車の電池は寒さにも強くなければいけないし、何年も毎日のように充放電を繰り返します。データセンターの非常用電池は、寒さは要らず、満充電から使い切るのは月に数回程度です。代わりに、高価なGPUのすぐ隣に置いても燃えないことが最大の条件になります。車より先に、この会社の電池が「そのまま合う」売り先が見つかった。今回の決算は、その方向転換の決算でした。

3ヶ月前は「準備」、今回は「発表」でした

経営陣の言葉は、3つの事業でそろって一段進みました。

工場について。

3ヶ月前:「実績のある電池装置メーカーと緊密に連携し、将来の工場の土台づくりを進めています」
今回:「本日、100メガワット時の量産ラインを発表しました。データセンター向けと先端用途向けの事業で急速に生まれている機会に応えるための生産能力です」

後工程の装置はミュールバウアーが用意し、生産の立ち上がりは2028年が目標です。

💡100メガワット時=電池の生産能力の単位。会社はこの先「ギガワット時」の規模を目指すと言っていて、1ギガワット時は1,000メガワット時です。つまり今回のラインは、1ギガワット時と比べても10分の1の、最初の一段です。

データセンターについて。

3ヶ月前:「AIデータセンター市場に向けて、ODMと協力して当社の電池技術を使った設計を進めています」
今回:「10月8日、AIデータセンター向けのQS Power Blockを投入しました」

設計を「一緒に進めている」から、製品の名前をつけて「投入した」へ。

💡ODM=他社ブランドの機器を設計から請け負って作る会社。サーバーの多くはこうした会社が作っています。

Power Blockは、サーバーラックの中に置く蓄電の「参照設計」です。会社によると、試験では、業界団体が定めた参照仕様と比べて出力密度が4倍、稼働時間が5倍でした。

💡ラック内の非常用電池(BBU)=サーバーを収めた棚の中に置く電池。停電や電圧の瞬断が起きたときに、サーバーを止めずにつなぐ役目です。

防衛・航空などの先端用途について。

3ヶ月前:「アメリカの大手防衛企業に、当社のセルを出荷しました」
今回:「この四半期、先端用途の事業で最初の顧客請求を計上しました」

ホンダも同じ形です。6月に提携を発表し、今回「ホンダとの契約から最初の顧客請求を計上した」と言いました。

サンプルを送っていた段階から、お金を請求する段階へ。工場は「土台づくり」から「発表」へ。言葉の格は、3本ともはっきり上がっています。

数字は、まだほとんど動いていません

ここからが、僕が喜べなかった理由です。

  • 顧客請求 980万ドル(前の四半期は1,080万ドル。減っています)
  • 調整後EBITDAの赤字 6,070万ドル(会社は「想定どおり」と説明)
  • 会計基準どおりの純損失 8,450万ドル
  • 手元の資金 8億1,980万ドル(1ドル150円で約1,230億円)

💡顧客請求=その四半期に、会社が顧客や提携先に出した請求書の合計。会計上の「売上」とは別物で、会社自身が「売上の代わりにはならない」と断っています。中身は開発費の分担、提携先からの支払い、サンプルの出荷です。
💡調整後EBITDA=本業の現金の出入りに近づけるため、減価償却や株式報酬などを除いた利益(non-GAAP)。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。

請求書の額は、「準備から発表へ」と言葉が上がった四半期に、前の四半期より100万ドル減りました。会社は「請求額は、取り組みの段階によって四半期ごとに変動する」と最初から断っています。だから1回減ったことを大きく言うつもりはありません。ただ、言葉が上がった分だけ数字が付いてきた四半期ではなかった、とは言えます。

見通しも動いていません。通期の調整後EBITDAの赤字は2億5,000万〜2億7,500万ドル、設備投資は2,700万〜3,700万ドルで、どちらも据え置きです。売上の見通しは、そもそも出していません。アナリストの予想を見ても、今年と来年の売上はほとんど立たない見立てです。

量産ラインの立ち上がりは2028年が目標です。今回の発表が、売上として数字に出てくるまでには、まだ時間があります。

3ヶ月前に言っていた数字が、今回は出てきません

量産ラインとデータセンターの話が増えた分、今ある生産と自動車の話から、具体的な数字が抜けました。

1つ目は、生産の目標です。 3ヶ月前、会社はこう言っていました。

「2026年後半に、セルの生産量をさらに倍にすることを目指しています」「中核の装置は、稼働率90%超を示しています」

今回、倍増の目標にも、90%という数字にも触れていません。代わりにあったのは、既存のラインが「生産量を増やしている」という言い方だけです。量産ラインを発表した説明会で、今あるラインの数字が消えたのは、僕には順番が逆に見えます。

2つ目は、フォルクスワーゲン側からの支払いです。 3ヶ月前、財務責任者はこう言っていました。

「1億3,000万ドルの前払いに変更はありません。技術の節目の達成と、電池の形状についての合意によって支払われます」

今回、この1億3,000万ドルには一言も触れていません。そのうえで社長が、こう述べました。

「協業の契約を改定し、移行期の支払いをなくしました。代わりに、技術の進歩に結びついた節目を加える作業を進めています」

支払いの条件を一つなくし、新しい条件はまだ作っている途中、ということです。説明会の中で、これは「定期的な見直しの一環」として語られました。悪い話として前に出したのではなく、自動車事業の説明の途中に置かれていました。

経営陣が答えなかったこと

質疑応答の最初の質問は、まっすぐでした。その量産ラインは、誰が持ち、誰がお金を払うのか。

答えはこうです。立地は選定中で公表しない。資本計画は、次の第4四半期の決算で2027年の見通しと一緒に出す。装置のうちこの会社が負担する分は1億ドル(約150億円)未満を目指す。そして資金については、

「顧客、政府、提携先、ライセンス先を含めた、株を薄めない資金源を探しています」

「探している」です。決まってはいません。

別の証券会社も同じ論点を聞き直しました。この会社はこれまで、工場を自分で持たない身軽なやり方を掲げてきたので、なぜ転換するのか、ラインは誰のものになるのか、と。答えは、自動車向けはこれまでどおり技術を貸すやり方を続け、このラインは主に航空宇宙・防衛・データセンター向けだ、というところまで。持ち主がどういう形になるのかは、2回聞かれて2回とも明示されませんでした。 政府資金の可能性を聞かれたときも「それも見ていく」でした。

ほかに残ったことを並べておきます。

  • ホンダからの最初の請求がどれくらいの規模かは、聞かれても答えませんでした
  • ホンダやフォルクスワーゲンの車にいつ載るかは「顧客の側から発表されるもの」として、会社は語りません
  • 今期の請求額は開発費の分担・提携先からの支払い・サンプル出荷で、続けて入ってくる製品の売上ではありません

💡株を薄めない資金=新しい株を発行せずに集めるお金。新株を出すと、今の株主の持ち分の比率が下がります。これを「希薄化」と言います。

逆に、具体的に答えた場面もありました。データセンター用に電池をどう作り直したかを聞かれたときです。寒さへの強さは要らない、使い切る放電は月に数回、だから車用とは求められる条件が違う。GPUの隣に置くので、熱暴走しにくいことが一番の適合点だ。技術の話になると、答えは急に細かくなります。お金と持ち主の話になると、止まります。今回の説明会は、その差がはっきり見えました。

なぜ、いまこの会社がデータセンターと防衛に向かうのか

理由は、売り先ごとに違います。

データセンターは、安全が先に立つ市場だからです。 AI向けのデータセンターは、GPUの電力を支えるために、ラックの中に電池を置くようになっています。そこで燃えやすい電池を使うと、保険や規制の承認に時間がかかり、設置が遅れる、と社長は説明しました。試験の段階とはいえ、出力4倍・稼働時間5倍という数字を、業界の集まりの場で出しています。会社は「2028年の量産開始は、データセンター業界の時間軸とよく合う」と言っています。

防衛は、どこで作られた電池かが問われる市場だからです。 社長によると、防衛の顧客は、外国政府の規制で最先端の電池を調達しにくくなっていて、それは「理屈の上の心配ではなく、すでに起きていること」だそうです。この会社の電池はアメリカで作られ、黒鉛のような材料で中国の供給元に頼らない調達網を、最初から設計しています。会社は、防衛・航空などの先端用途の市場規模を、2030年までに最大750億ドルと見ています。これは会社自身の見積もりです。

そして自動車は、待つ市場だからです。 自動車向けは、技術を貸して相手が自分で量産するやり方のままです。いつ車に載るかは、ホンダやフォルクスワーゲンが決めます。会社が自分で時計を進められない市場だから、自分で作って自分で売れる先を、別に探している。今回の量産ラインは、そのための工場です。

ただ、そう読むほど、前の節の問いが重くなります。自分で作って売るなら、工場のお金は自分で用意しなければいけません。 手元には約8億2,000万ドルあり、今年の調整後の赤字見通しは2億5,000万〜2億7,500万ドルです。工場のお金をどこから持ってくるかで、この会社の次の数年の形が変わります。

工場のお金の形が見えるのは、次の決算です

言葉は準備から発表へ上がりましたが、お金と顧客の契約はまだ付いてきていません。次の決算で確かめるのは、この3つです。

  1. 第4四半期の決算で出る2027年の資本計画に、株を薄めない資金が確定した形で入っているか。それが無く、新株の発行で集めるなら、資金はまだ見つかっていなかったことになります
  2. 量産ラインに向けて、データセンターか防衛の顧客と、名前の出る契約が結ばれるか
  3. 消えた生産の目標(後半に倍増・稼働率90%超)が、数字つきで戻ってくるか

その前に、11月11日に京都で、この会社が次の世代の技術と自動車メーカーとの協業の形を発表すると言っています。フォルクスワーゲンとの新しい節目の中身は、そこで少し見えるかもしれません。


工場をどこに建てるのかも、お金を誰が出すのかも、まだ公表されていません。発表の大きさと、お金の決まり方は、同じ説明会の中でも別々に進みます。この会社の場合は、前者が先に走りました。後者が追いつくかどうかは、次の回の資本計画で見えるはずです。そのときに、また続きを書きます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。