僕が一番驚いたのは、社長が1年の遅れを認めたことでした【ボーイング(BA)2026年7〜9月期決算】

飛行機を作る会社の決算で、いちばん大事な数字は売上でも利益でもありません。1ヶ月に何機作れるかです。

その数字の見通しが、3ヶ月で後ろへずれました。しかも、ずれたことを会社がはっきり口にしています。

アメリカの航空機メーカー、ボーイングです。

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※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「月産47機」は、何の数字なんでしょう

ボーイングの決算説明会では、「47」「52」という数字が何度も出てきます。これは売上の目標でも、受注の数でもありません。主力の小型機737を、1ヶ月に何機の速さで作るかという、工場のペースの数字です。

ふつうの会社なら、注文が増えれば作る量を増やせばいい、で話は終わります。飛行機はそうはいきません。主翼、胴体、エンジン、無数の部品が、全部同じ速さで工場に届いて、はじめて1機が組み上がります。どれか1つが遅れると、ラインの全体がその遅いところに合わせて止まります。

身近なものでいえば、行列のできるパン屋に近いです。お客さんが何人並んでいても、オーブンが1時間に焼ける数は決まっています。しかも生地をこねる人が1人休めば、オーブンが空いていても焼けません。

そしてこれが、この記事の結論に直結します。飛行機の代金の多くは、機体を引き渡したときに入ってきます。 作るペースが1ヶ月ずれれば、現金の入り方もそのままずれます。ボーイングには、すでに注文が山のように積み上がっています。足りないのは注文ではなく、作る速さです。

3ヶ月前は「予定どおり」、今回は「思ったより時間がかかっている」

経営陣の言い方は、3ヶ月でかなり変わりました。民間機についての言葉は、ほぼ全部が後ろ向きに動いています。

737の年間の納入目標について。 3ヶ月前、財務責任者はこう言っていました。

3ヶ月前:「この四半期に129機を納入し、今年500機を納入する計画に引き続き沿っています」
今回:「月産47での遅れと安定化が、納入数の減少につながり、500機の納入目標を下回る見込みです」

月産47機について。 社長の言い方です。

3ヶ月前:「今のところ、初期の結果は想定の範囲内です」
今回:「月産47の水準で実績を示すのに、想定より時間がかかっています」「この水準で完全に安定するまでには、来年までかかると見ています」

主翼について。 ここがいちばん率直でした。

3ヶ月前:「流れを良くする改善策を入れていて、今のところ、それはかなり良さそうに見えます」
今回:「その改善策のいくつかは、見込んでいた効果をまったく出しませんでした」

原文は「flat out did not yield」。「期待ほどではなかった」ではなく、「まったく効かなかった」です。経営者が自分の工場の改善策について、ここまで言い切るのはあまり見ません。

次の段階の月産52機について。 今回、時期がはっきり出ました。「財務計画では、月産52を2027年後半に置きます」。

中型機の787について。 3ヶ月前は「今年90〜100機の納入計画に引き続き沿っています」。今回は「月産10への到達が遅れているので、下限に近くなる見込みです」。

そして、いちばん重い変化はこれです。

3ヶ月前:「これらを合わせると、2020年代の終わりまでに、737の利益率は2018年の水準に近づくでしょう」
今回:「737の利益率は上がっていきますが、率としては2018年の水準には届きません」

2018年は、事故で737の運航が止まる前、ボーイングが大きく稼いでいた年です。3ヶ月前は「あの頃に戻れる」と言っていた。今回は「戻れない」と言いました。目先の遅れではなく、長い先の天井そのものが下がったということです。

それでも、前に進んだものがあります

悪い話だけではありません。上向きに変わった言葉も、はっきりありました。

737の新しい2機種が、認証を取りました。 3ヶ月前は、737-7について「FAAから、まもなく型式証明の修正を受ける見込み」と言い、737-10はその後に続く予定でした。今回は「737-7は7月に、737-10はつい先週、FAAの認証を受けました」。予定が実現に変わっています。

💡FAA=アメリカ連邦航空局。新しい機種や設計変更は、ここの認証を受けないと引き渡せません。

この2機種は、認証を待つ間に作り置きされていた機体があります。財務責任者によれば、2027年に約30機をまとめて引き渡せる見込みです。

防衛の伸び方が、一段上がりました。 社長はこう言っています。「私たちは、売上の伸びを一桁台の前半で考えていました。それが今後は、一桁台の半ば、あるいはそれ以上に向かうのは明らかです」。

理由は、この四半期の受注です。

  • アメリカ海軍の次世代戦闘機(F/A-XX)の競争で、ボーイングが選ばれました
  • 迎撃ミサイルPAC-3の目標探知装置について、生産を加速して最終的に3倍にする7年契約
  • 戦闘機F-15EXを22機追加で受注し、契約済みは合計120機
  • 防衛部門の受注は230億ドル、受注残は過去最高の1,010億ドル(前の四半期は850億ドル)

💡受注残(バックログ)=注文は受けたが、まだ作って引き渡していない分の合計。将来の売上の「予約台帳」です。

ただし、F/A-XXの金額は今回の受注残に入っていません。財務責任者は「この受注は第3四半期の受注残には含めていない」と言いました。会社は、金額も契約の形も開示していません。

受注残は、会社全体でも7,450億ドル(前の四半期は7,150億ドル)で過去最高です。1ドル150円で計算すると、約112兆円。民間機部門だけで6,120億ドル・6,300機超あります。注文が足りない会社ではありません。

この四半期の数字

実績も並べておきます。

  • 売上 242億ドル(前年同期比 +4%。前の四半期は+8%)。1ドル150円で約3兆6,300億円
  • 営業利益率 1.5%
  • 1株あたりのコア利益 −0.34ドル(赤字)
  • フリーキャッシュフロー 4億6,400万ドルのプラス(会社が前に示していた「数億ドル前半」を上回りました)

💡コア利益=会社が独自に定義した調整後の数字(non-GAAP)で、会計基準どおりの1株利益とは別物です。年金などの一部の費用を除いて計算しています。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきた現金から、設備などへの投資を引いた残り。会社が自由に使える現金です。

この四半期に引き渡した民間機は161機(737が124機、787が22機)。3ヶ月前に737を129機引き渡していたので、737は少し減っています。

民間機部門だけを見ると、売上107億ドルで、営業利益率は−6.5%。財務責任者は理由を「生産ペースの調整にともなう採算の見直しと、サプライチェーンのコスト見通しの上昇」と説明しました。この部門が収支トントンに戻るのは「2028年の初め頃」だそうです。

一方で、整備や部品の部門は2四半期続けて利益率18%台(18.1%→18.3%)で安定しています。最終組立での手直しの作業は、昨年の初めから40%減ったとも言っています。工場の中で、良くなっている部分は確かにあります。

初めて出た「2029年に100億ドル」と、その読み方

今回、ボーイングは初めて、何年か先までの現金の目標を数字で出しました。

  • 2026年:約20億ドル
  • 2027年:約30億ドル
  • 2028年:約60億ドル
  • 2029年:100億ドル(1ドル150円で約1兆5,000億円)

3ヶ月前、財務責任者は「100億ドルという数字は、十分に達成可能だと考え続けています」と言っていました。ただ、いつとは言っていませんでした。今回、それが2029年と決まりました。

これだけ見ると前進です。ところが質疑応答では、投資家の関心はそこに向きませんでした。最初の質問がこうです。2027年の30億ドルは、2026年より10億ドル多い。でも2026年には司法省への和解金の支払い(約7億ドル)があり、2027年には無い。それを除けば、伸びは数億ドルしかないのでは?

答えたのは財務責任者で、司法省への支払いが2027年には無く、それが約7億ドルの差になることを認めました。

💡市場の期待=投資家やアナリストが、口には出さなくても「この会社はこのくらい出すだろう」と見込んでいる水準。会社の発表は、前回の自分ではなく、この水準と比べて受け止められます。

現金の道筋について、質問はその後も続きました。別のアナリストに「道筋が急になるだけで、行き着く先は同じなのか」と聞かれ、社長はこう答えています。

「私は、期待に比べると、ほぼ1年、右にずれたような感じだと見ています」

グラフの右、つまり時間が先へずれた、という言い方です。新しい目標を出したその日に、それが期待より1年遅いことを、社長が自分で認めた。僕がこの決算でいちばん驚いたのはここでした。言い繕おうと思えば、いくらでもできた場面です。

2026年の見通しは、前回の「10億〜30億ドル」から「約20億ドル」へ、幅を狭めただけで中心は同じです。一方で737は500機に届かず、787は下限寄り。通期の納入見通しは前回より下がっています。

答えきれなかったことと、数字を押し上げているもの

737の主翼は、まだ解決していません。 生産の立ち上げについては、複数の証券会社から繰り返し質問が出ました。社長は具体的に答えていますが、結論は「月産47を支えるだけの主翼を安定して作れている、とはまだ言えない段階です」。月産52に進む前に改善策を十分に確かめる、とも言っています。

主翼の次は、胴体の立ち上げが焦点になります。胴体を作るウィチタの工場はもともと別の会社で、ボーイングが買収して取り込んだところです。統合は計画どおりですが、安全と品質の計画を入れたことで少し減速し、胴体の在庫の減りが速くなっていると説明しました。

大型機777Xの認証が、目標の前提になっています。 3ヶ月前、社長は777Xについて「認証のための飛行試験を55%以上終えた」と進み具合を数字で語っていました。今回、その数字は出てきません。代わりに出てきたのは「ETOPSの試験を含む、残りの飛行試験を始める承認を、まだ受ける必要があります」という言い方です。

💡ETOPS=エンジンが2つの機体が、近くに空港の無い洋上などの長い航路を飛ぶための認定。

そのうえで財務責任者は、「これらの目標は、777Xが2027年の半ばまでに認証されることを前提にしています」と言っています。認証がさらに遅れても吸収できるのかと聞かれ、いったん「吸収できる」と答えたあと、別の質問者に「その答えは意外だった」と突っ込まれました。言い直しはこうです。「お話ししている影響は数ヶ月、1〜2ヶ月という意味で数字を示しました」。吸収できるのは1〜2ヶ月までで、それ以上は約束していません。

787の利益率についても、3ヶ月前は「2020年代の終わりまでに、2018年の水準を上回る」と言っていました。今回、この話は出てきませんでした。2027年の機種ごとの納入数は「1月にお伝えします」と先送りしています。

数字を押し上げているものもあります。

  • 防衛部門の営業利益率6.2%には、研究所(HRLラボラトリーズ)の売却益2億5,200万ドルが入っています
  • 2026年の現金20億ドルは、空中給油機KC-46Aの次の注文を前倒しで見込んだ分と、季節的な運転資金の追い風を含みます
  • 2026年は民間機の注文の前受金が記録的でした。財務責任者は、2027年にはこれが「数十億ドル規模」の逆風になると言っています
  • 777Fと767の主翼部品のサプライヤーで供給が途切れ、その費用は「今後数四半期、異常なコストとしてその期の費用に計上する」とのことです

整理すると、2026年の現金は一時的な追い風で底上げされていて、2027年はその反動を受けながら、777Xの認証を前提に30億ドルを目指す形です。

なぜ、ボーイングはこうなっているのか

ボーイングは、2つの違う商売を1つの会社でやっています。

ひとつは、世界の航空会社に737・787・777Xを売る民間機の商売です。この四半期もトルコ航空、エチオピア航空、ルフトハンザから注文が入り、民間機の受注残は過去最高を更新しました。注文はあり余っています。詰まっているのは工場です。主翼の改善策が効かず、月産47での安定は来年にずれ、月産52は2027年後半になりました。

この先3〜18ヶ月の売上で効いてくるのは、作り置きの737-7/-10の約30機、2027年に10〜15機を見込む777Xの初納入、そして財務責任者が言う「民間機の納入は2027年に10%以上増える」見通しです。道筋はあります。ただ、この四半期の遅れで、近いところの道は細くなりました。

もうひとつは、アメリカ海軍や空軍に戦闘機やミサイルの部品を売る防衛の商売です。こちらはこの四半期、明らかに加速しました。F/A-XX、PAC-3、F-15EX。社長自身が成長の見通しを一段上げています。ただし、F/A-XXはまだ開発の段階で、売上の柱になるのは18ヶ月より先です。

会社の価値の中心は、民間機のほうにあります。2029年の100億ドルも、737を月産50機台の半ばから後半、787を月約12機で作れることが前提です。防衛の格上げは本物ですが、民間機の言葉が後ろへ下がった分を、それだけで埋めることはできていません。

「1年右にずれた」が2年になるとしたら

今回の読みは「注文はあり余っているが、作る速さが1年遅れた。会社はそれを隠さずに認めた」です。

これが違っていたと分かるのは、たとえば次のような形です。

  1. 1月の説明会で示される2027年の737の納入見通しが、月産47に相当する数を下回る
  2. 月産52の時期が、2028年以降にずれる
  3. 777Xの認証が2027年の半ばを越えて遅れ、2027年の30億ドルの目標が引き下げられる

反対に、僕の読みより良いほうへ外れる形もあります。主翼について「月産47で安定して作れている」と社長が言えた場合です。そうなれば、1年のずれは取り戻しに向かいます。


ここに書いたのは、2026年10月27日の説明会までに分かっていることだけです。1月には2027年の機種ごとの数字が出ます。

うまくいかなかった改善策を「まったく効かなかった」と言い、期待より1年遅いことを自分の口で認める。残ったのは、数字よりこの社長の言い方でした。遅れていることと、遅れを隠していることは、別の話です。この会社は今回、前者でした。

それが次の回でも続くのか。1月の説明会を読んだら、ここに続きを書きます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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