初めての上方修正で、僕が引っかかったのは「下の端だけ」でした【ビッグベアAI(BBAI)2026年7〜9月期決算】

この会社の経営陣は、今回はっきりこう言いました。

「ビッグベアが売上の見通しを引き上げるのは、今回が初めてです」

アメリカの連邦政府、それも国境の税関やFBI、沿岸警備隊、NASAといった機関に、安全に使える生成AIと分析ソフトを売っている会社です。日本でも「AIの小型株」として名前を見かけることが多いと思います。

BBAI chart_article.png

日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家に向けて業績を説明する電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

初めての上方修正。受注残も大きく増えました。言葉は3ヶ月前よりはっきり強くなっています。それでも読み終えたとき、僕の手元には「引き上げたのは下の端だけ」「3ヶ月前に語っていたものが消えている」という引っかかりが残りました。

目次

その前に——政府の「契約額」は、売上とどう違うんでしょう

この会社を読むときに一番つまずきやすいのが、ここです。

ニュースで「◯億ドルの契約を獲得」と見ると、その金額がそのまま今年の売上になるように感じます。でも政府の契約は、そうなりません。

たとえるなら、5年間のスポーツジムの会員契約です。契約した日に「5年分の総額」は決まりますが、ジムの売上になるのは毎月の会費だけ。しかも途中で使う量が変われば、実際に払われる額も変わります。政府の契約も同じで、契約額は「最大でこれだけの仕事を頼むかもしれない」という枠であることが多く、売上は仕事をした分だけ、何年もかけて入ってきます。

💡受注残(バックログ)=契約は決まったが、まだ売上になっていない仕事の残高。将来の売上の「貯金」のようなものです。

もう一つ、政府の仕事には再入札(リコンピート)があります。契約の期限が来ると、同じ仕事をもう一度入札し直す仕組みです。取れれば仕事は続きますが、それは「新しい需要」ではなく「今ある仕事を守った」ことになります。

この2つを知っておくと、今回の決算の読み方が変わります。大きな契約額や受注残の伸びは本物の材料です。ただ、その中身がどれだけ新しいのか、どれだけ早く売上になるのかは、別に確かめる必要があります。

「計画どおり」から「初めての引き上げ」へ

3ヶ月前と今回で、経営陣の言い方はこう変わりました。

売上の見通しについて。

3ヶ月前:「1億3,500万〜1億6,500万ドルという売上見通しを、達成する軌道に乗っています」
今回:「2026年通期の売上見通しを1億5,000万〜1億6,500万ドルに引き上げます。ビッグベアが売上見通しを引き上げるのは、今回が初めてです」

「軌道に乗っている」から「引き上げる」へ。さらに「今四半期の実績は、私たちの想定を上回りました」とも言っています。見通しは「1億5,000万〜1億6,500万ドル」という幅で出ていて、動いたのはこの幅の下の端、1億3,500万ドルだった数字だけです。

契約の語り方について。

3ヶ月前:「第2四半期に20件以上の新規契約を獲得しました。1件あたり最大500万ドルです」
今回:「第2四半期以降、25件以上の新規契約を獲得・発表しました。合計で2億2,500万ドルを超える契約額です」

3ヶ月前は「件数」と「1件の上限」で語っていたものが、今回は「総額」で語られました。総額を出したのは今回が初めてです。2億2,500万ドルは、1ドル150円で約340億円。今年の売上見通しの中心(約1億5,750万ドル)を上回る額です。

売上の伸び方について。 財務責任者は「前の四半期比の売上の伸びは、第2四半期の6.7%から、第3四半期には18.6%に加速しました」と、加速という言葉を使いました。

売上は前年比+31%、受注残は3ヶ月で+22%

  • 売上 4,360万ドル(前年同期比 +31%。前の四半期は前年比+13%)
  • 受注残 3億3,000万ドル(前の四半期末から +22%。1ドル150円で約495億円)
  • 粗利率 31.2%(前年同期比 +8.78ポイント)
  • 現金と投資の残高 ほぼ4億ドル

💡粗利率=売上から、仕事を提供する直接のコストを引いて残る割合。ここが上がると、同じ売上でも手元に残るお金が増えます。

受注残の伸びは、3ヶ月前と比べると性格が違います。前の四半期は「年初から約2,200万ドル増えて2億7,000万ドル」でした。今回は1四半期で約6,000万ドル増えています。会社は理由を「新規の受注と、再入札の成功」と説明しました。

名前が出た顧客は、FBI、沿岸警備隊、NASA、エネルギー省、退役軍人省。そして国境の税関(CBP)の仕事が、大手のSAICとUnisonの下請けとして5年契約で2本入っています。米国の主要空港「20数か所以上(more than two dozen)」で、生体認証の仕組みが動いているとも言っています。

ただし、粗利率にはひとつ注意があります。前年と比べれば+8.78ポイントですが、前の四半期の32.8%と比べると、31.2%に下がっています。 会社はこれを「31.2%に伸びた」と、前年比の側で語りました。間違いではありません。ただ、直近の向きは逆です。

買収の「加速」とエルサルバドルの話が、今回は出てきません

強くなった言葉の裏で、前の四半期にはっきり語っていたことが、今回は消えています。

1つ目は、買収への姿勢です。

3ヶ月前:「利益を押し上げる買収先の探索を加速しています」「今は積極的に動くときだと考えています」
今回:「買収先の探索を続けています」

「加速」と「積極的」が、両方とも落ちました。

2つ目は、前の四半期の看板だった製品です。 3ヶ月前は、エルサルバドルの税関の仕事について「12ヶ月の試験運用の成功を受けて、5年間の商用展開の契約を結んだ」と語り、ドローンの群れを制御するソフトや、ネットにつながない現場用の端末も紹介していました。今回は、エルサルバドルの仕事にも、この2つの製品にも触れていません。ネットにつながない環境で使う需要の話は出ますが、端末の紹介はありません。

3つ目は、利益の指標です。 前の四半期は、調整後EBITDAを「マイナス1,160万ドル」と自分から開示していました。今回は、この数字を口にしていません。

💡調整後EBITDA=本業でどれだけ現金を稼いでいるかの目安として会社が出す利益の数字(non-GAAP=会計基準どおりではない、会社独自の集計)。前回はマイナスでした。

そして今回、新しく出てきた数字があります。のれんの減損が7,670万ドル(一株あたり16セント)。現金の出ていかない会計上の損失ですが、これが主因となって、純損失は9,190万ドルでした。

💡のれんの減損=過去の買収で「将来これだけ稼ぐはず」と上乗せして払った分を、その見込みが下がったとして帳簿から削ること。買った会社の価値を、自分で切り下げた記録です。

減損7,670万ドルの中身を、誰も聞いていません

この決算には、まだ確かめられていない点がいくつもあります。

まず、今回の決算説明会には質疑応答の記録がありません。 説明は経営陣が読み上げて終わっています(前の四半期も、質疑応答があると予告されながら、その部分は記録に残っていません)。減損の中身も、調整後EBITDAを言わなくなった理由も、誰も聞いていないし、誰も答えていません。

加えて、財務責任者の説明のうち純損失の一株あたりの額やキャッシュフローにあたる部分は、僕が読んだ書き起こしでは途中が乱れていて読み取れませんでした。そこは会社の開示資料で確かめるしかありません。

伸びの中身は、買収と再入札

数字を押し上げたものが、3つあります。

  • 前年比+31%には、2025年12月に買収したAsk Sage(いまの生成AIプラットフォーム)の分が入っています。会社自身が、伸びは「このプラットフォームが大きく牽引した」と言っています。前の四半期比の伸びは買収ではなく自力だ、というのが会社の説明です
  • 国土安全保障省・税関の大きな契約は、中心が再入札です。新しい需要ではなく、今ある仕事を守った分が含まれます
  • 2億2,500万ドルの総額は出ましたが、1件ずつの金額は開示されていません

そして、見通しの引き上げ方です。引き上げたのは下の端だけで、1億3,500万ドルが1億5,000万ドルになりました。上の端の1億6,500万ドルは据え置きです。中心で見ると、前回比+5%です。

見通しの中心から逆算すると、10〜12月期は横ばいです

ここは自分で計算しました。1〜3月期から7〜9月期までの売上を足すと、3,440万+3,670万+4,360万=1億1,470万ドル。新しい見通しの中心(1億5,750万ドル)から引くと、10〜12月期は約4,280万ドルになります。

7〜9月期の4,360万ドルを、わずかに下回る数字です。18.6%に「加速した」と語った直後の四半期を、会社の見通しは横ばいか少し下として置いていることになります。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

通期の売上を予想しているアナリストは2人しかおらず、その平均は約1億5,000万ドルでした。見通しの中心はそれを約5%上回ります。ただ、2人の平均です。ここに大きな意味は預けられません。

2027年については、数字の見通しはありません。「2027年に成長するための、しっかりした位置にいる」という言葉だけでした。

なぜ、いまこの会社に受注が積み上がるのか

背景にあるのは、アメリカの連邦機関が、生成AIを「安全に」使える道具を探していることです。

政府の仕事では、扱うデータの安全が何より先に問われます。この会社が2025年12月に買ったAsk Sageは、連邦機関向けに安全性を前面に出した生成AIのプラットフォームで、今回の新しい連邦機関の顧客も、このプラットフォーム経由で入ってきています。

もう一本の柱が、国境と空港です。税関の仕事は大手SAICとUnisonの下請けとして入り、5年契約が2本。空港の生体認証も、主要空港の20数か所以上で動いています。経営陣は税関の2本について「売上の土台に意味のある貢献をし、受注残を厚くする」と言いました。

だから受注残の+22%には、理由があります。新しい生成AIの顧客と、再入札で取り直した国境の仕事。その両方が積み上がった結果です。会社も「今年3四半期連続の自力での売上成長」と言っています。

ただ、受注残が売上に変わる速さは、まだ見えていません。会社自身の見通しが、次の四半期を横ばいに置いているからです。

10〜12月期に4,280万ドルを超えてくるか

僕の答えは、まだ「超えるとは言えない」です。言葉は確かに強くなった。でも、その強さが売上に届く速さは、まだ会社自身も約束していません。

  1. 10〜12月期の売上が、逆算の4,280万ドルを大きく上回り、通期で上の端の1億6,500万ドルに近づく(僕の読みより良い方へ外れる)
  2. 次の説明会で、受注残が3億3,000万ドルを下回る、または通期売上が新しい下の端の1億5,000万ドルに届かない(悪い方へ外れる)
  3. 2027年の見通しが数字で出て、それが2026年の実績と比べて横ばい以下になる

それとは別に、次の説明会で聞きたいことがあります。前回あれほど語ったエルサルバドルの税関の仕事とドローンのソフトは、どうなったのか。そして、調整後EBITDAは、また開示されるのか。


初めての上方修正は、この会社にとって確かに節目です。ただ、引き上げたのは下の端で、上の端は動いていません。強くなった言葉と、黙った言葉が、同じ説明会の中に並んでいました。

3ヶ月後、どちらの言葉が残っているのか。それを確かめに、また読みます。同じ会社を四半期ごとに追っていくので、よければ次の回も読みに来てください。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

現在、メルマガでは

  • レラティブストレングスランキング(日本株・米国株)
  • 季節性アノマリーチャート
  • 市場のDNAに基づいた実践的な考え方

を継続的に配信しています。

▶ メルマガの詳細はこちら

この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

目次