Azureは48%に加速したのに、僕はCopilotの「3,000万席」の行方ばかり探していました【マイクロソフト(MSFT)2026年7〜9月期決算】

AIの売上がいちばん大きい会社の一つ、マイクロソフトの決算です。

クラウドの伸びはまた速くなりました。AI開発の基盤の売上は3倍を超えました。経営陣の言葉は、3ヶ月前よりはっきり強くなっています。

それなのに、読み終えて残ったのは別のことでした。3ヶ月前に胸を張って出していた数字を、今回は出さなかったのです。 決算説明会の最後のほうで、アナリストに「その数字は出したのか」と直接聞かれて、財務責任者は「出していません」と答えました。

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※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——マイクロソフトは、いま何を売っている会社なのか

マイクロソフトと聞くと、WindowsやWord、Excelを思い浮かべると思います。ソフトを作って売る会社、という印象です。

いまの成長の中心は、そこではありません。Azure(アジュール)という、巨大なデータセンターの計算機を時間で貸し出す事業です。

普通の会社がシステムを動かすなら、サーバーを買って、自社の部屋に置いて、電気代を払って保守します。Azureを使えば、その全部をマイクロソフトのデータセンターから必要な分だけ借りられます。カーシェアに近い形です。車を買わずに、使った時間の分だけ払う。AIを動かすための高価な計算機(GPU)も、同じように時間で借りられます。

この記事の結論に効くのは、ここからです。いまのAzureは、借りたい人の数より、貸せる計算機の数のほうが少ない。 会社自身がこの四半期も「お客さんの需要は、使える供給を上回り続けています」と言っています。カーシェアで言えば、予約が埋まっていて、車を増やした分だけ売上が増える状態です。

だからこの会社の伸びは「売れるかどうか」ではなく、「どれだけ早く計算機を増やせるか」で決まります。後で出てくる「設備の遅れ」の話は、この会社にとっては売上の天井そのものの話です。

クラウドの伸びは、3ヶ月前よりまた速くなりました

639億ドル。これがクラウド事業の3ヶ月分の売上です。

  • Microsoft Cloud(クラウド事業の合計)の売上 639億ドル、前年同期比 +30%(為替の影響を除くと+31%)。前の四半期は+27%でした
  • Azureの売上 +48%。3ヶ月前、会社はこの四半期を「約45%(為替の影響を除く)」と見込んでいました
  • 全社の営業利益率は 50%

💡為替の影響を除く=ドル高・ドル安で見かけの伸びが変わる分を取り除いた数字。会社の実力の伸びに近い見方です。

1ドル150円で計算すると、クラウド事業だけで1四半期に約9.6兆円の売上です。この大きさで、伸び率がまだ上がっています。

この四半期から部門の分け方が変わり、「エージェント(人の代わりに作業をこなすAI)とインフラ」が768億ドル(+25%)、「デバイスと消費者」が155億ドル(−3%)でした。財務責任者は冒頭で「売上、営業利益、一株利益の全てで、想定を上回りました」と述べています。

経営陣の言い方も、3ヶ月前からはっきり強くなりました。

Azureの次の四半期の見通しについて。

3ヶ月前:「Azureでは、為替の影響を除いて約45%の売上成長を見込んでいます」
今回:「Azureでは、為替の影響を除いて49〜50%の売上成長を見込んでいます」

AI開発の基盤(Foundry)について。 Foundryは、企業がいろいろなAIモデルを選んで、自社のAIの仕組みを組み立てるための基盤です。Azureの上で動く「AIの工作台」だと思ってください。

3ヶ月前:「Foundryの顧客は10万社になり、売上は前年の2倍を超えました」
今回:「Foundryの顧客は12万社を超え、売上は前年の3倍を超えています」

「2倍を超えた」が「3倍を超えた」に。言葉が強くなっただけでなく、Azureの実績も見通しを上回っています。言ったことに数字が付いてきています。

3ヶ月前に出していた数字が、3つ消えました

ここからが、この決算でいちばん大事なところです。前の四半期にはっきり言っていたことが、今回は出てきませんでした。

1つ目は、Copilotの有料席数です。

💡Copilot(コパイロット)=WordやExcel、Teamsの中で動くAIアシスタント。会社向けには、使う社員1人ごとに月額で課金します。この「何人分売れたか」が席数です。

3ヶ月前、CEOはこう言っていました。

「Microsoft 365 Copilotの有料席数は3,000万を超え、席の純増は前の四半期の2倍を超えています」

今回、この数字は最後まで出てきませんでした。質疑応答の終わりに、アナリストが「今期はCopilotの数字を開示しましたか」と確認しています。財務責任者の答えはこうです。

「直接のご質問にお答えすると、今四半期はCopilotの数字の更新を開示していません」

代わりに出てきたのは、別の物差しでした。毎日使う人の数は前の四半期から約5割増え、前年の5倍超。5万席以上を入れている顧客の数は前年の8倍超。使った分だけ払う課金で利用している顧客は、前の四半期から75%超増えた。どれも良い数字です。ただ、3ヶ月前に自分で選んで出した物差しを、今回は自分で引っ込めています。

2つ目は、受注残の「中身」の説明です。

💡受注残(RPO)=契約は済んでいて、まだ売上になっていない金額。この会社の「これから入ってくる売上の予約帳」です。

3ヶ月前、財務責任者はこう念を押していました。

「前の四半期から増えた商用の受注残は、全てがフロンティアモデル企業以外の顧客との契約によるものでした」

フロンティアモデル企業とは、最先端のAIモデルを作っている少数の会社のことです。つまり「受注残の増加は、一部の巨大なAI企業に頼ったものではない」という説明でした。今回、この一文は消えています。

今期の受注残は 6,770億ドル(前年同期比+73%)、1ドル150円で約100兆円です。ただ、前の四半期の6,780億ドルからはほぼ横ばいでした。会社は、今期に大型のAzure契約があったため、例年の季節的な落ち込みより小さく済んだと説明しています。その大型契約の相手の名前も金額も、出ていません。

3つ目は、設備を「2年で2倍」にするという約束です。

3ヶ月前、CEOは「全体の容量を、わずか2年でおよそ2倍にする計画の通りに進んでいます」と言っていました。前の節で書いた通り、この会社にとって容量は売上の天井です。その約束が、今回は語られませんでした。

そして、前の四半期には無かった言葉が1つ出てきました。M365 E3は、WordやExcel、Teamsなどをまとめた会社向けの定番の月額プランです。AIの上位プランではなく、従来型の主力商品です。

「M365 E3と単体の製品では、営業の実行が弱かった」

自分から「弱かった」と言っています。これは誠実だと思いました。ただ、Copilotの席数を出さなくなった同じ回に、従来型の主力プランの売り方が弱かったと言っている。AIの席がどれだけ売れているのかを、今回は外から確かめる手段が減りました。

会社の見通しは、市場の予想を少しだけ上回りました

次の四半期(2026年10〜12月期)について、会社は売上を960億〜971億ドル(前年同期比+18〜19%)と示しました。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が960億ドルと言っても、周りが980億ドルだと思っていたなら、それは期待に届いていない数字になります。比べる相手は、周りの予想です。

市場の予想の平均は約957億ドルでした。会社の見通しの中心(約966億ドル)は、それを約1%上回ります。上回ってはいます。ただ、この会社の規模を考えると、大きな差ではありません。

中身はまちまちです。会社向けのMicrosoft 365のクラウドは約19%(為替の影響を除く)の伸びを見込み、3ヶ月前の見通し(約16%)から上がりました。一方でWindowsのライセンスと端末の売上は、3ヶ月前の見通し(20%台前半の減少)から「30%台半ばの減少」へ悪化する見込みで、営業利益率も前年より少し下がるとしています。

設備投資は、この四半期だけで452億ドル。暦年では約1,700億ドルと、前回の約1,750億ドルから下げました。理由は節約ではありません。他社から借りる予定だったGPUの容量の納入が、会計年度の後半(2027年1〜6月)にずれたからです。

経営陣が答えきれなかったことと、数字を押し上げたもの

質疑応答で、AIへの巨額の投資が、何によって回収されるのかが、別々の証券会社から重ねて聞かれました。最初の質問に、CEOは「どれか1つから来るのではありません。全部から来て、それらを組み合わせると複利で効きます」と答えました。数字はありません。しかも財務責任者は「質問の前半を聞き逃していたら申し訳ありません」と言っています。最初のいちばん大事な問いが、晴れないまま終わりました。Azureの約50%の伸びと約50%の利益率を同時に保てるのかという問いにも、持続の条件を数字で示す答えはありませんでした。

Azureの伸びを支えたものについては、財務責任者は具体的に答えています。ただ、その中身には再現性の低いものが入っていました。

  • AIの利用料の単価(トークン単価)が想定より高かった。 財務責任者自身が「四半期を通じたトークン単価には分からない部分もあります。変わりうるものです」と言っています
  • 設備の効率改善が、追加のコストなしで売上を生んだ。 ただし「四半期の中でどれだけ効くかは、必ずしも予測しやすくない」とも言っています
  • 受注(新しく取った契約の額)は−12%。前年に大型のAzure契約があった反動、という説明です

💡受注(bookings)と受注残(RPO)は別物=受注は「この3ヶ月で新しく取った契約」、受注残は「契約済みでまだ売上になっていない残高の合計」。受注が減っても、受注残は高い水準を保てます。

もうひとつ。次の四半期のAzureの見通し49〜50%は、3ヶ月前に数えていた供給の一部が会計年度の後半にずれた状態で出されています。財務責任者は、その穴を追加の効率改善で埋める前提だと認めました。見通しは強い。ただ、それを支える前提には、まだ起きていない改善が入っています。

なぜ、いまマイクロソフトにこれが起きているのか

数字と言葉の両方を見ると、この会社の現状はシンプルです。需要は足りていて、供給が足りていない。

受注残6,770億ドルのうち、約30%が今後12ヶ月で売上になる見込みで、その金額は前年より29%多い。計算機を増やせば、その分が数ヶ月から1年半のうちに売上に変わる予約が、すでに積まれています。会社は「需要が供給を上回り続けている」と2四半期続けて同じ言い方をしています。

だから、Azureの加速が止まっていないのは不思議ではありません。前の四半期に会社は「上半期の伸びは加速し続ける」と言い、今期、それが実現しました。人の代わりに作業をこなすAI(エージェント)を管理する仕組みに登録されたエージェントの数も、前の四半期の4,000万近くから5,000万超へ増えています。

その一方で、マイクロソフトが自分で作るより速く容量を手に入れるために頼っていた、他社のGPUの納入が遅れています。設備投資の見通しが下がったのはそのためです。この会社の伸びを決めているのは、いまのところ顧客の側ではなく、計算機の届く速さです。

そう考えると、今回消えた3つの数字の意味が少し変わって見えます。席数、受注残の中身、2年で2倍。どれも「どれだけ売れているか」より、「どれだけ広く、どれだけ自力で伸ばせているか」を示す数字でした。そこを今回は語らなかった。理由は分かりません。分からないことは、分からないと書いておきます。

次の決算で、何を見れば僕が間違っていたと分かるか

今回の読みは「Azureの加速は本物。ただし、AIの席がどれだけ売れているかは、今回から外から見えにくくなった」です。これが違っていたと分かる形を書いておきます。

  1. 2026年10〜12月期のAzureの伸びが、会社自身の見通し49〜50%(為替の影響を除く)を下回る
  2. 他社から借りるGPUの容量の納入が、会計年度の後半からさらに後ろへずれたと財務責任者が言う
  3. 逆に、Copilotの有料席数がまた開示され、3,000万から大きく増えていた場合。そのときは、今回の沈黙を僕が深読みしすぎていたことになります

ここに書いたのは、2026年10月28日の説明会で分かったことだけです。AIの利用料も、他社の設備の納入時期も、次の3ヶ月でまだ動きます。

言葉が強くなったことと、出す数字が減ったことが、同じ回に起きていました。次の回で、どちらが本当の姿に近かったのかが分かります。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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