約束を守った決算なのに、僕は少しだけ身構えました【アメリカン・エキスプレス(AXP)2026年7〜9月期決算】

3ヶ月前、この会社は「次の四半期に年会費の伸びが加速する」と予告していました。今回、その予告はそのとおりに実現しました。

アメリカン・エキスプレス。日本でも、ゴールドやプラチナのカードで名前を知っている人は多いと思います。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月23日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

予告が当たったのは良い知らせです。ただ、同じ説明会の中で、経営陣の言葉の温度が一段下がっていました。そして、前の四半期には無かった言葉が2つ出てきました。人員の約5%削減と、規制当局からの制裁金です。

その前に——カードの年会費は、払った日に売上になりません

この決算を読むには、アメックスがどこでお金を稼いでいるかを先に押さえておく必要があります。

「カード会社」と聞くと、買い物の手数料で稼ぐ会社を思い浮かべると思います。それは半分だけ正しい答えです。アメックスの稼ぎ方は、大きく3本の柱でできています。

  • お店から受け取る手数料(カードで払われた金額の一部)
  • 会員から受け取る年会費
  • 分割払いやリボ払いの残高から受け取る金利

ふつうのカード会社は、年会費を無料にして会員を集め、手数料と金利で稼ぎます。アメックスは逆で、高い年会費を払ってもらう代わりに、空港のラウンジやホテルの特典を厚くします。スポーツクラブの会費に近い形です。会費を払うから施設を使い倒す。使い倒すから、またそのカードで払う。

そして、この記事でいちばん大事なのはここです。年会費は、会員が払った日に一度に売上になりません。 会社は12ヶ月かけて、少しずつ売上に載せていきます。財務責任者は3ヶ月前に、こう説明していました。

「会員を新しい価格帯に移すと、それを12ヶ月かけて償却します。…始めから終わりまで、損益計算書に現れるまでに2年くらいかかります」

2年の内訳はこうです。会社の説明では、1月から順に会員を新しい価格へ移しています。全員が移り終えるまでに最大12ヶ月かかります。移ったあと、その年会費が12ヶ月かけて売上に載る。足して約2年です。

アメックスは去年、アメリカでプラチナ・カードの中身を作り直し、会員を新しい価格に移し始めました。作り直しから1年たった今、その効果が売上に出てきている途中です。だから3ヶ月前に「次の四半期に加速する」と予告できたわけです。予告が当たったのは、驚きではなく、仕組みどおりということです。 そして同じ仕組みは、いずれ一巡して落ち着くことも意味しています。

年会費は予告どおり、15%から17%へ

3ヶ月前:「年会費については、第3四半期に伸びが加速し、年末には10%台後半の伸びで抜けると見ています」
今回:「その変曲点を、この四半期に確認しました。第2四半期は15%で、この四半期は為替調整後で17%です」

年会費の収入は、この四半期で約30億ドル(1ドル150円で約4,500億円)、前年同期比で+17%。会社の中で、いちばん速く伸びている収入です。年会費の2桁成長は、3ヶ月前の時点で32四半期連続でした。

値上げをしたら会員が逃げるのでは、という心配も数字が答えています。プラチナ・カードの作り直しから1年たっても、会員がカードで使う金額の維持率は99%。新しく作られたカードは310万枚で、そのうち76%が年会費のかかるカードでした(3ヶ月前は75%)。この比率を開示し始めてから、いちばん高い水準だと会社は言っています。

会員の質も落ちていません。延滞率はこの15四半期、1.2%か1.3%のどちらかに収まっています。高い年会費を払える人を集めているので、貸し倒れが増えない。ここまでは、3ヶ月前に描いた絵のとおりです。

決算の実績——売上は+9%、ただし一株利益は2つあります

  • 売上 201億ドル(前年同期比 +9%、1ドル150円で約3兆円。3ヶ月前の四半期は+10%)
  • 調整後の一株利益 4.68ドル(前年同期比 +13%)
  • 会計基準どおりの一株利益 5.42ドル(前年同期比 +31%)

💡調整後(non-GAAP)=会社が「一時的だ」と考える項目を除いた数字。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。今回はこの2つで0.74ドルの開きがあります。

+31%と+13%。どちらを見るかで、まったく違う決算に見えます。この0.74ドルの差は、出張管理の会社(Global Business Travel Group)の株を売った利益(一株あたり1.11ドル)から、後で書くリストラの費用(0.37ドル)を引いた残りです。会社は売却益の3分の2を利益に残し、残りをリストラの費用に充てました。

調整後の4.68ドルの中にも、一時的な項目が3つ入っています。法務関連の引当で−0.51ドル、一時的な税の効果で+0.29ドル、貸し倒れに備える引当金の計算モデルを見直したことによる+0.24ドル。足し引きすると、ほぼゼロです。会社自身も「この3項目を合わせて、調整後の一株利益に意味のある影響は無かった」と説明しています。調整後の+13%は、飾られた数字ではありませんでした。

「想定よりも強い勢い」は「良い勢い」に下がり、人員削減の前置きになりました

数字は約束どおりでした。それでも僕が身構えたのは、経営陣の言い方が変わっていたからです。

勢いについて。

3ヶ月前(社長):「年の半分が過ぎて、想定よりも強い勢いが出ています」
今回(社長):「良い勢いはあります。ただ、この先数年でイノベーションを加速して勝つには、もっと機敏で効率的な組織になる必要がありました」

「想定よりも強い」から「良い」へ。しかも今回の「良い勢い」は、人員削減を説明する文の前置きとして出てきました。

カードで使われた金額について。

3ヶ月前(財務責任者):「取扱高の伸びは、この3年で最も高い水準に上がりました」
今回(財務責任者):「全体の取扱高は8%で、過去4四半期の流れに沿ったものです」

アメリカの個人会員の利用額も、3ヶ月前は+11%で「2018年の第1四半期以来の高い伸び」と言っていました。今回は+9.4%で、「第2四半期にかけてやや伸びが落ち着いた」という言い方です。海外の利用額も、社長によれば13%から11%へ。社長は「どうなるか見ていきます」と言っています。

💡取扱高=会員がカードで支払った金額の合計。お店から受け取る手数料は、この金額に比例します。

ただし、この+9.4%には差し引くものがあります。取扱高には、アマゾンなどの提携カードの事業を売却した影響が約0.6ポイント入っています。アマゾンのプライムデーのような大型セールが前の四半期に集中して、今回はその反動が出た、という説明もありました。航空は+13%と加速していて、財務責任者は「+9.4%は、この3年で3番目に高い伸び」とも言っています。悪くなったわけではありません。「加速している」から「続いている」に、言葉が一段降りました。

旅行予約の+22%と、The Forkの買収が説明会から消えました

3ヶ月前、財務責任者が説明の中で挙げた数字があります。旅行予約の+22%です。

「お客さまの旅行需要は強く、アメックスの世界の旅行予約は前年同期比で22%増でした」

社長も質疑応答の中で、この22%をプラチナ・カード作り直しの成果として結びつけていました。今回、その数字は一度も出てきませんでした。

もうひとつは、ヨーロッパのレストラン予約サービスの買収です。3ヶ月前は、こう紹介していました。

「有力なオンラインのレストラン予約サービスであるThe Forkの買収を提案しています。これで欧州11カ国の5万軒のレストランが、私たちの飲食のネットワークに加わります」

質疑応答でも、自社の他の予約サービスと並べて何度も名前が出ていました。今回は、名前ごと出てきません。

どちらも、消えた理由は説明されていません。消えたことが悪い知らせだとも限りません。ただ、3ヶ月前に看板として出した数字は、次の回にも出てくるのが普通です。

自分から誇った数字を黙って引っ込める会社を、僕は少しだけ疑ってかかります。

代わりに今回出てきた具体は、民泊のAirbnbとの独占提携でした。100万件を超える世界の宿泊先を、会員向けの旅行の特典に加えると言っています。社長は、レストランでの利用額が+9%、そのうち自社のレストラン予約サービスResyに載るレストランでの利用額が+18%、高級ホテルの特典プログラムでの利用が+50%だったとも挙げています。特典に投資して会員を惹きつける、という戦略そのものは止まっていません。

人員の約5%削減と、銀行の監督当局(OCC)からの制裁金

ひとつ目は、人員の削減です。会社は3億3,600万ドルのリストラ費用を計上し、世界の人員の約5%を削減する見込みだと発表しました。社長は「いつもより規模が大きい」と自分から断ったうえで、組織の階層を減らして意思決定を速くするためだと説明しています。費用は、先ほどの株の売却益の一部で賄っています。

ふたつ目は、規制当局からの制裁金です。アメリカの銀行の監督当局(OCC)が、同社に民事制裁金を科し、改善を求める命令を出しました。社長の言葉はこうです。

「同意命令で指摘された不備は、起きてはならないものでした。私たちには、それを徹底的に直す責任があります」

会社は同時に、制裁金は2026年の通期見通しに影響しないこと、命令は会社の資産の規模に上限を課すものではないこと、改善にかかる費用は2027年の見通しにも影響しない見込みであることを説明しています。悪い話を、範囲を限ったうえで自分の口から言っています。

調整後の一株利益の見通しは、下限だけが17.60ドルへ上がりました

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。

通期の売上の伸びは10%で、3ヶ月前と変わらず。調整後の一株利益の見通しは、17.30〜17.90ドルから17.60〜17.90ドルへ。上がったのは下限だけで、上限は据え置きです。会計基準どおりの見通しは18.30〜18.60ドルですが、こちらが高いのは主に株の売却益によるものです。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

市場の予想の平均は、通期で17.64ドルでした。新しい見通しの中央は17.75ドルなので、上回ってはいます。ただその差は0.11ドルで、驚くほどの上振れではありません。

来年について聞かれた財務責任者の答えは、「2027年の見通しには、この段階では立ち入りません。1月まで待ってください」でした。ひとつだけ、来年に向けた手がかりを出しています。会員向けの特典にかかる費用(売上の44.3%)の伸びが、第4四半期に大きく鈍るという見通しです。プラチナ・カード作り直しに伴う費用が一巡するため、という説明です。

AIがいちばん得なカードを選ぶ時代の特典費用は、2回聞かれても数字が出ませんでした

質疑応答で最初に出た質問は、AIでした。AIが会員の代わりにポイントや特典を計算し、いちばん得なカードを使い分けるようになったら、アメックスの稼ぎ方はどうなるのか。

社長の答えは構造の話でした。「私たちは、会員が特典を使い残すことで儲けるモデルではありません」。お店と会員の両方の情報を持つ仕組み、ラウンジなどのアクセス、サービス、安全性で勝負している、と。そのうえで、締めの言葉は「ほかのことと同じで、どうなるか見ていきます」でした。

同じ論点を、別の証券会社が今度は財務の影響として聞き直しました。答えは「特典の費用にどう影響するかを判断するには、まだ少し早すぎます」。2回聞かれて、数字の目安は出ませんでした。 ここは未解決のまま次の回へ持ち越されています。

AIの取引そのものについても、言葉は少しだけ前に進んでいます。3ヶ月前の社長は「まだ序盤の回ですらない。プレシーズンです」と言っていました。今回は「まだ試合の序盤です。AIエージェント経由の取引量はまだ小さい。でも方向ははっきりしています」。前進ではありますが、量はまだ小さい、と自分で言っています。

競争についても、大手銀行がプレミアムカードに力を入れている中でどうか、と2回聞かれました。答えは「正直に言って、これまでと大きな違いは見ていません」。定性的な答えに留まっています。

第4四半期の年会費と特典費用、そして1月の2027年見通し

今回の読みは「年会費の仕組みは約束どおりに動いている。ただ、それ以外の勢いは加速から巡航に移った」です。この読みが外れたと分かる形は、次の3つです。

  1. 第4四半期の年会費の伸び(為替調整後)が、予告した「10%台後半」に届かない
  2. 会員向けの特典の費用の伸びが、第4四半期に予告どおり大きく鈍らない
  3. 2027年1月に出る見通しで、一株利益の10%台半ばの伸びが示されない

1と2は、どちらも3ヶ月前と今回、会社自身が口にした予告です。予告が当たるかどうかは、その会社の言葉をどこまで信じてよいかの目盛りになります。今回はひとつ当たりました。次の回で、残りの2つに答えが出ます。


ここに書いたのは、2026年10月23日の説明会までに分かっていることです。

アメックスの年会費の値上げは、会員が移り終えて売上に出きるまでに約2年かかります。だから今の数字の多くは、去年の判断の結果です。一方で、言葉の温度や、消えた数字は、今の経営陣の感触をそのまま映します。同じ決算の中に、1年前の答えと今の気分が並んでいる。

その2つがこの先どちらへ動くのかを、1月の決算で確かめます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。