僕が一番引っかかったのは、受注残が売上の4年分あるのに目標を上げなかったことでした【サーブ(SAABY)2026年7〜9月期決算】

7月の初め、スウェーデンの会社の社長がキーウにいました。ウクライナと、戦闘機の契約に署名するためです。

その会社が、サーブです。戦闘機のグリペン、空飛ぶレーダーと呼ばれる早期警戒機のグローバルアイ、潜水艦、防空ミサイル、地上のレーダーまでを、各国の政府に売っています。日本でも「欧州の防衛」の話になると名前が出てくる会社です。

※この記事で扱うのは、2026年10月23日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

その前に——防衛の「受注」は、いつ売上になるのでしょう

この記事の数字は、ほとんどが「受注残」の話です。先にここを片付けておきます。

💡受注残(バックログ)=契約は取ったが、まだ納めていない分の金額。注文帳に書いてあって、まだ厨房から出ていない料理の合計です。

普通の会社なら、注文を受けてから納めるまでは数週間か数ヶ月です。戦闘機や潜水艦は違います。今回ウクライナと結んだ契約で、新しい型の戦闘機が届き始めるのは2029年です。契約書に署名した日と、売上になる日のあいだに、何年もの時間があります。

身近なもので言えば、注文住宅に近いと思います。契約した日に家は建っていません。手付金を払い、工事が進むたびに支払いが起き、引き渡しは何年か先です。防衛の大型契約もこれと同じで、契約時に「前受金」が入り、作りながら少しずつ売上に変わっていきます。

だから、この会社を見るときは「いくら注文を取ったか」と「そのうち来年いくら売上に変わるか」を分けて読む必要があります。今回の決算は、まさにその2つが別々の顔をしていました。

3ヶ月前に「次の四半期に計上します」と言った契約が、そのとおり載りました

前の四半期(4〜6月期)の説明会で、社長はウクライナの戦闘機の件をこう言っていました。

「ただ、これはまだ受注に計上していません。次の四半期に計上します」

そして今回、社長は受注の話に入ると、まずこれを挙げました。

「大きな節目は、もちろん、7月の初めにキーウで、グリペンEの契約に署名したことです」

正確に言えば、3ヶ月前に「次で入る」と言っていたものが、そのとおりに入っただけです。新しく何かが起きたというより、言ったことを実行した四半期です。ただ、言ったとおりにやる会社かどうかは、それ自体が情報だと僕は思っています。

カナダでも、1歩進みました。

3ヶ月前:「カナダとは、いま交渉中です」
今回:「この四半期に、契約の条件の枠組みを定める条件書(タームシート)に署名しました」

グローバルアイ6機の話です。ただし、本契約ではありません。条件書は「この形で契約しましょう」という枠組みで、社長も「署名の日時までは言えない」と付け加えています。NATOの約10機も、まだ交渉中です。

ほかに、国名を明かさない新しい顧客がグローバルアイを契約し、オランダもグローバルアイを選びました。

そしてお金の流れです。3ヶ月前、社長は自分たちの四半期を「キャッシュフローがゼロのような四半期」と表現し、財務責任者は「ポーランドの契約の前受金をまだ受け取っていない」と言っていました。今回は「営業キャッシュフローは過去最高」です。

数字は、受注も利益も大きく伸びていました

受注残が3ヶ月で460億クローナ増えて、3,640億になりました。7〜9月期の数字です。

  • 売上は200億クローナ超で、為替や買収の影響を除いた伸び(有機成長)は30%超
  • 営業利益(EBIT)は19.5億クローナで、前年同期比+42%。利益率は9.5%(前年8.7%)
  • この四半期の受注は約659億クローナ。1〜9月の合計で1,520億クローナ
  • 受注残は3,640億クローナ

💡営業利益(EBIT)=本業で稼いだ利益。売上から原価や人件費、研究開発費などを引いた残りです。

受注残の3,640億クローナは、1クローナ16円で計算すると約5.8兆円です。この会社の直近12ヶ月の売上が930億クローナなので、売上のおよそ4年分の注文を抱えていることになります。

さっきの「分けて読む」が効くのはここです。財務責任者はこう言いました。

「来年分については63%増えていて、売上に変わる額は1,020億になります」

来年、受注残から売上に変わる予定の分が1,020億クローナ(約1.6兆円)。直近12ヶ月の売上930億を、それだけで上回ります。10〜12月期に納める予定の分も、前年より18%多い。遠い将来の数字だけでなく、手前の数字も積み上がっています。

それなのに、目標は1つも上がりませんでした

ここが、僕が一番引っかかったところです。

この会社は2023〜2027年の中期目標として、有機成長で年平均約22%、利益の伸びを売上の伸びより大きくする、キャッシュの転換率(利益のうち現金で入ってくる割合)を60%超にする、の3つを掲げています。目標の期間に入ってから直近12ヶ月までの年平均の伸びは、売上が24%、調整後の営業利益が33%。すでに目標を上回るペースで走っています。

それでも、財務責任者の言葉はこうでした。

「2023〜2027年の目標については、引き続き自信を持っています」

据え置きです。そして、この先の見通しをどう示すかの説明は、後ろへずれました。

3ヶ月前:「将来のガイダンスをどう考えるかは、年末に向けてあらためてお話しします」
今回:「来年の初めに、今後どう見通しを示していくかをもっとお話しします」

ここで言うガイダンスは、会社が自分で出す業績の見通しのことです。

受注残が売上の4年分あって、来年の売上に変わる分が今年の売上を上回るのに、目標の数字には触らない。慎重なのか、言えない理由があるのか。今回の説明会の中には、答えがありませんでした。

ひとつ考えられるのは、この会社の利益を削っている場所が、受注とは別のところにあることです。

3ヶ月前より悪くなったもの

ボーイングと組んで作っている練習機T7です。 アメリカ空軍向けの新型の練習機で、量産の立ち上げに費用がかかっています。前の四半期、この負担は四半期あたり1億クローナと説明されていました。今回、財務責任者はこう言いました。

「いまは、前にお示しした四半期1億よりも、やや大きなマイナスの影響が出ています」

社長は年で約5億クローナと補足し、T7を除けば航空機部門の利益率は1ケタ台後半だと言っています。ただ、この負担がいつ消えるかについては「年50機の水準に届くまでには、実際には数年かかる」でした。航空機部門の利益率は6.8%です。

ミサイルなどのダイナミクス部門も、言い方が下がりました。 前の四半期は「ダイナミクスは通常、10〜12月期がきわめて良い(extremely good)」と言っていたのが、今回は「しっかりした年末になる(solid end of the year)」です。この四半期の利益率は14.3%で、前年同期の19.3%から下がっています。社長は「まったくトレンドだとは思っていない」と言い、1〜9月で見れば利益率は約18%、成長は24%だと説明しました。ただ、10〜12月期の数字は示していません。

3ヶ月前に具体的に語っていたことが、今回は出てきませんでした。 前の四半期、財務責任者は「ジェネラル・アトミクスと一緒に、無人の早期警戒システムの初の試験飛行を行った」と強調していました。今回、ジェネラル・アトミクスの名前も、無人の早期警戒機の話も一度も出ていません。

レーダーも、前の四半期は機種名を挙げて「ジラフ1Xは年300システム超」と数を言っていたのが、今回は「毎年数百台のレーダー」に変わりました。

経営陣が答えなかったことと、数字を押し上げたもの

今回の一番目立つ数字には、一時的なものが入っています。

過去最高のキャッシュフローは、顧客からの大きな前受金によるものです。ポーランドの潜水艦と、グローバルアイの契約の前受金です。財務責任者自身が「この四半期のキャッシュフローの大きな増加は、顧客からの大口の前受金に関係している」と言っています。借入を差し引いた手元の資金(純資金)は3ヶ月で25億クローナから87億クローナに増えましたが、これは「これから作るためのお金を先にもらった」状態です。財務責任者は、前受金を取れる契約づくりに力を入れてきたとも言っていて、それ自体は会社の実力です。ただ、毎四半期この水準が続くと読むものではありません。

ほかにも、数字を押し上げたものと、次の四半期で効いてくるものがあります。

  • 監視・センサーのサーベイランス部門は売上+65%、利益率13.7%。ただしグローバルアイの数量と製品構成による面があります
  • 10〜12月期の同部門は前年との比較が厳しくなります。前年同期に事業売却益3.36億クローナが入っていたためで、会社自身が先に注意を促しました
  • ダイナミクス部門の利益率は、まとめて納品するタイミングで四半期ごとに振れます

質疑応答では、T7の負担について、バンク・オブ・アメリカと別の調査会社のアナリストが、それぞれ質問しました。数字は一部出ましたが、T7の負担がいつ収まるかは、2回聞かれても「数年」より先は出ませんでした。

ポーランドの潜水艦がこの四半期にどれだけ売上になったのかを聞かれた場面では、社長は「個別のプログラムに踏み込んでお話しするのは控えたい」と答えています。2038年まで続く大型案件の売上の出方は、外からは見えないままです。

なぜ、いまサーブにこれが起きているのか

今回の説明会で語られた顧客を並べると、ウクライナ、カナダ、NATO、オランダ、フィンランド、ドイツ海軍、ポーランド、スウェーデンの調達庁、そしてアメリカ向けの携帯型の対戦車兵器です。どれも、国が国のために買う大型の契約です。

ここで効いているのが、最初に書いた「注文住宅」の性質です。国の契約は一度決まると何年も続き、しかも前受金が先に入ります。会社はそのお金で工場を建てます。

実際に、生産能力の数字が大きく動いています。

  • 戦闘機グリペンは、年およそ15機から25〜30機へ
  • 早期警戒機グローバルアイは、年2機から6機へ
  • レーダーは「毎年数百台。防衛の会社としては、これまでに無かったこと」

受注残が売上の4年分あるいま、この会社が力を入れているのは「作る力」のほうです。研究開発費も1〜9月で47%増やしています。注文はもう取れていて、問題は作るのが追いつくかどうか、という段階に入っています。

一方で、遠い話も残ります。ウクライナの新型グリペンの納入は2029年からで、まずは旧型の16機を寄贈するところから始まります。カナダとNATOのグローバルアイは、まだ本契約になっていません。

1,020億クローナとカナダの6機が、次の答え合わせです

今回の読みは「注文は十分に取れた。利益と目標がそれにまだ追いついていない」です。違っていたと分かる形は、2つあります。

  1. 来年の売上に変わる予定の1,020億クローナが、次の回で下方修正される
  2. カナダ(6機)かNATO(約10機)のグローバルアイが、2027年の前半までに本契約にならない

逆に、良い方へ外れる形もあります。来年の初めに予告どおり見通しの示し方を話したとき、そこで中期目標の数字が引き上げられる場合です。そうなれば、今回の据え置きは慎重さだったと分かります。

T7の負担がこの先も四半期1億を上回り続けるのかも、毎回の数字で追えます。


ここに書いたのは、2026年10月23日の説明会までに分かっていることだけです。カナダやNATOの契約も、T7の立ち上げも、まだ動いています。

防衛の会社の決算は、注文の数字だけを見るとどこまでも明るく見えます。けれど同じ説明会の中で、目標は据え置かれ、練習機の負担は前回の説明より重くなり、3ヶ月前に強調していた試験飛行は一言も出てきませんでした。明るい数字と、言わなかったことの両方を、次の回でもう一度並べます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。