久しぶりに明るい決算でしたが、僕は「買う回数」が気になりました【エッツィー(ETSY)2026年7〜9月期決算】

手作りの雑貨や一点物を、作り手から直接買えるサイトがあります。ここ2年ほど、この会社の決算は「買い手が増えない」の一言で片づけられてきました。

その買い手が、今回ようやく前の年より増えました。ただ、同じ決算説明会の中で、増えなかったものもはっきり出ています。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——エッツィーは「店」ではなく「場所貸し」の会社です

エッツィーという名前を聞くと、通販の店を思い浮かべるかもしれません。でも、この会社は商品を1つも仕入れていません。

普通の通販は、商品を仕入れて、倉庫に置いて、売れたら差額が利益になります。エッツィーは違います。約600万の作り手がサイトに商品を並べ、買い手がそれを買う。エッツィーはその取引から手数料を受け取り、さらに「自分の商品を上の方に出したい」作り手から広告費を受け取ります。

日本でいえば、メルカリやminneに近い形です。フリマや手作り品のアプリで、運営会社が商品を持たずに、売り買いの場所だけを用意しているのと同じです。

💡GMS(流通総額)=その場所で売り買いされた商品の合計金額。エッツィーの売上ではなく、作り手の売上の合計です。
💡テイクレート=GMSのうち、手数料や広告費としてエッツィーの売上になる割合。

この形の会社で大事なのは、場所に来る人が増えるか、来た人が何度も買うかの2つです。手数料率をいくら工夫しても、人が来なければ場所代は増えません。だからこの記事は、最後まで「人」の数字を追います。

「ほぼ横ばい」が「2年ぶりの増加」に変わりました

3ヶ月前と今回で、経営陣の言い方が目に見えて変わったところがあります。

買い手の数について。

3ヶ月前:「アクティブな買い手は前の四半期から35万人増えて約8,700万人。前年比ではおおむね横ばいです」
今回:「アクティブな買い手は、2年ぶりに前年比で増えました」

ここで言う買い手は、次の意味です。

💡アクティブな買い手=直近12ヶ月に1回以上買った人の数。

増え方はまだ小さく、前年比+1%、約8,800万人です。それでも前の四半期からの増加は約54万人で、3ヶ月前の35万人より大きくなっています。

会社全体の言い方について。

3ヶ月前:「この取り組みが、市場の基礎体力の強化と、成長の加速につながっています」
今回:「今年は3四半期続けて成長が加速しました。私たちの事業は、もうしっかりと成長の局面に入ったと、以前より強く確信しています」

「加速している」から「成長の局面に入った」へ。言葉が一段上がりました。

そして、施策の効果に初めて数字が付きました。 3ヶ月前は「質の高い商品が表示されるようになり始めている」という、手応えの話でした。今回は、それが数字になって出てきました。

「第3四半期までに、パーソナライズの改善だけで、年率換算の前年比GMS成長率に約2ポイント寄与したと推計しています」

前年比の成長率を、この仕組みだけで約2ポイント押し上げた、という会社の見立てです。

💡パーソナライズ=買い手ごとに、その人が好みそうな商品を選んで見せる仕組み。AIで買い手の好みを読み、検索結果やおすすめを一人ずつ変えています。

「推計」と言っている点は、そのまま受け取っておきます。それでも、手応えの話が数字の話に変わったのは、今回の決算で一番大きな変化です。

数字も、言葉と同じ方向を向いています

実績はこうでした。

  • GMS 26億ドル(前年同期比 +8.8%。1ドル150円で約3,900億円)
  • 売上 6億9,200万ドル(前年同期比 +10.9%。約1,040億円)
  • テイクレート 26.2%(前年同期比 +0.5ポイント。主に広告の改善による)
  • 調整後EBITDA 2億1,000万ドル(前年同期比 +14.6%)、マージン30.4%

💡調整後EBITDA=会社が「本業のもうけ」として示す数字で、会計基準どおりの利益(GAAP)ではありません(non-GAAP)。減価償却や一時的な費用などを除いて計算しています。

GMSの伸び8.8%は、3ヶ月前に会社が出した見通し(4〜6%)の上限を約3ポイント上回りました。調整後EBITDAが売上より速く伸びたのは、これで2四半期連続です。

人の数字も揃っています。新しく来た人と戻ってきた人を合わせた数は前年比+6.2%。買い手1人あたりのGMSは前年比+3.9%で、3四半期続けて伸びています。

広告の効率も具体的でした。マーケティング費用の伸び以上に、マーケティング経由のGMSが伸びたと説明しています。TikTokで出した広告の表示のうち、約半分が18〜29歳に届いていて、ここは半年前にはほとんどお金を使っていなかった場所だそうです。

見通しは上がりました。ただ、次の四半期は減速します

通期の見通しは引き上げられました。

  • GMSの伸び:「1桁台の半ば」→ 約7%
  • 調整後EBITDAマージン:29〜30% → 約30%

一方で、10〜12月期のGMSの見通しは34.6億〜35.2億ドル、前年比+5〜7%です。今回の8.8%から減速します。会社は理由を、為替が小さな逆風に変わったことと、前年の比較対象が強くなることだと説明しています。

💡ガイダンス(見通し)=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

通期の売上について、市場の予想は約28.5億ドルでした。今回の見通しから僕が概算すると、約28.8億ドルになります(1〜9月の売上の合計に、10〜12月期のGMS見通しの中央値とテイクレート約25.6%を掛けた分を足した数字です)。上回ってはいますが、差は小さいです。通期の引き上げは、ほぼ7〜9月期の上振れ分で、次の四半期の見通しそのものは強くなっていません。

それでも、「買う回数」だけは戻っていません

ここからは、この決算の弱いところです。いちばん大事な論点が、まだ片付いていません。

購入頻度=1人が何回買うか、です。 3ヶ月前、経営陣はこう言っていました。

3ヶ月前:「購入頻度は前年をまだ下回っていますが、前年比の下げ幅は第1四半期より縮小しました」
今回:「頻度は、今年ずっとそうであるように、小幅なマイナスです」

「下げ幅が縮んだ」が消えて、「ずっと小幅なマイナス」になりました。改善を示す言葉がなくなっています。

この点は質疑応答で、2つの証券会社が別々に聞きました。最初に聞かれたときの財務責任者の答えは正直でした。リピートして買う人や習慣的に買う人の数は2四半期続けて増えている、と先行の兆しを挙げたうえで、こう認めています。

「ただ、頻度全体の合計が前年比でプラスになるところには、まだ来ていません」

社長は、頻度は四半期ごとに大きく動かせるものではない長期の指標だ、と位置づけました。言っていることは分かります。ただ、改善を示す数字は出てきませんでした。2回聞かれて数字が出なかったのは、まだ答えが無いという意味です。

前の四半期に出していた数字も、今回は出てきません。 3つあります。

  • アプリ経由のGMSの伸び:3ヶ月前は「前年比12.5%へ再加速、全体の約47%がアプリから」。今回は「アプリは引き続き好調です」だけ
  • 買い手の好みを記録したプロファイル:3ヶ月前は「6,500万人以上をカバー」。今回は人数に触れていません
  • AIエージェント経由の来訪:3ヶ月前は「全体の1%未満」。今回は数字なしで「まだごく初期の段階です」

デジタル商品と実物の商品の比率を聞かれたときも、財務責任者は「これまで分けて出したことはなく、今日も出すつもりはありません」と断りました。

数字を押し上げたものもあります。 社長は冒頭で「外からの追い風からも、まだ恩恵を受けています」と自分から認めていました。財務責任者の説明では、年初の成長の大部分は、インフレと関税で出品価格が上がったこと、当時は有利だった為替、それに前年の比較が楽だったことから来ていました。その追い風は年の後半に向けて弱まり、為替はいまは逆風です。外の追い風を数字で示してほしいと聞かれても、数字は出ませんでした。社内の施策についても、互いに重なっていて「きれいに切り分けるのは難しい」と答えています。

利益の側にも、本業の伸びとは別の要素が入っています。8月にリストラを行い、その効果がEBITDAの伸びに乗っています。この四半期には約3億9,500万ドル(約590億円)の自社株買いも行いました。7月には中古衣料アプリのDepopの売却も終えています。

なぜ今、この会社の買い手が戻ってきたのか

外の追い風が弱まっていく中で、GMSの伸びは逆に上がりました。会社の説明はこうです。

「年が進むにつれて、商品体験で私たちがやってきたことの効果が、成長の要因としてよりはっきり定義できるようになってきました。外の要因が弱まっていく中でも、です」

具体的には3本です。

1つ目は、パーソナライズ。アプリで先に試したやり方をウェブにも広げ、ウェブ側でも効果が出始めたと言っています。大きな技術的な障害は無く、順番の問題だった、という説明です。

2つ目は、広告。作り手が出す広告の表示の精度が上がり、クリックと購入につながる割合が上がりました。テイクレートが0.5ポイント上がったのは、主にこれです。

3つ目は、集客の場所を変えたこと。グーグルのショッピング広告の出し方を細かく分け、若い人が多いTikTokなどへ費用を移しました。新しい人を連れてきて、離れた人を呼び戻す。買い手の数が2年ぶりに増えたのは、この結果です。

ここで最初の話に戻ります。場所貸しの会社では、人が来ることと、来た人が何度も買うことの2つが揃って、初めて場所代が積み上がります。 今回、前者は数字で動きました。後者はまだ動いていません。会社自身が「新しく来た人や戻ってきた人が混ざると、1人あたりの回数は下がって見える」と説明しているとおり、人が増えている局面では頻度が遅れて見えるのは筋が通っています。ただ、それが本当に遅れているだけなのかは、次の決算でしか分かりません。

次の決算で、どの数字が出れば僕の読みが外れるか

今回の読みは「人を呼び戻す施策は効き始めた。ただ、何度も買ってもらう段階にはまだ入っていない」です。

これが外れていたと分かる形は、2つです。

  1. 10〜12月期のGMSの伸びが、会社の見通しの下限の5%を割る
  2. アクティブな買い手の数が、再び前年比マイナスに戻る

逆に、僕の読みより良い方へ外れる形もあります。購入頻度が前年比でプラスに転じた、と経営陣が言えた場合です。そのときは、人が増えるだけでなく、場所そのものが強くなったことになります。

もう1つ、静かに見ておきたいのは、3ヶ月前に出ていて今回消えた数字です。アプリの伸び率や、AIエージェント経由の来訪の比率が次の回で戻ってくるのか、消えたままなのか。


外の追い風がどこまで抜けたのかも、まだはっきりしていません。

2年間「買い手が増えない」と言われてきた会社が、ようやく増やしました。それが一度きりの山なのか、上り坂の始まりなのかは、1回の決算では決まりません。「買う回数」がプラスだと言える日が来るかを、次の説明会で確かめます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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