3ヶ月で、手元の仕事が1.6倍になった会社があります。
アメリカ海軍の潜水艦を作っている会社です。ほかにも、ビジネスジェットの「ガルフストリーム」、装甲車や砲弾、政府向けのITサービスを抱えています。ゼネラル・ダイナミクスといいます。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年10月30日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
この四半期に入った新しい注文は、約990億ドル。1ドル150円で計算すると、約15兆円です。会社の1年分の売上(約566億ドルの見込み)の、1.7倍を超える注文が3ヶ月で入りました。
990を566で割って、もう一度桁を数え直しました。1年かけて売る分より多い仕事が、たった1四半期で積み上がった計算です。
その前に——潜水艦の「契約」は、なぜその年の売上にならないのか
数字に入る前に、ひとつだけ押さえておきたいことがあります。大きな契約が取れたことと、売上が増えることは、時間がずれます。
💡受注残(バックログ)=もう契約は済んでいるけれど、まだ作り終えていない(売上になっていない)仕事の合計。
この会社自身の数字で見ると分かりやすいです。この会社の造船所(エレクトリック・ボート)は、バージニア級の最後の1隻を数ヶ月以内に引き渡すと、「5年で5隻」を引き渡したことになります。だいたい1年に1隻のペースです。今回の契約で増えたのは、コロンビア級とバージニア級を合わせて14隻。契約した日に代金が売上になるのではなく、部品をそろえ、ブロックを組み、工事が進んだ分だけ少しずつ売上になります。
最新型の初号艦(コロンビア級と、バージニア級の新しい型の2隻)でさえ、引き渡しの目標は「2028年末まで」です。
だから、この記事の読み方はこうなります。受注残が1年で倍になったことは「この先何年分の仕事が確定したか」の話で、「来年の売上が倍になる」話ではありません。 来年以降の売上を決めるのは、造船所がどれだけ速く作れるか、のほうです。ここを分けておくと、この決算の良いところと地味なところが、両方とも見えます。
3ヶ月前の「もうすぐ」が、署名と着工になりました
前の四半期の決算説明会で、潜水艦の大型契約について聞かれたCEOは、こう答えていました。
「これらの契約はまもなく来ると聞いています。来たら、皆さんが求めている見通しをお示しします」
今回、財務責任者の口から出たのは、隻数と金額でした。
「約990億ドルの新規受注で、受注残は過去最高の2,200億ドルになり、1年前の2倍になりました」
「コロンビア級潜水艦の第2期分として5隻追加で295億ドル、バージニア級潜水艦のブロック6として9隻追加で421億ドルを含みます」
2つ合わせて716億ドル。米海軍という顧客、艦の種類、隻数、金額が、すべて名指しで出ています。
💡コロンビア級=核ミサイルを積む新型の戦略原子力潜水艦。バージニア級=攻撃型の原子力潜水艦。どちらもこの会社の造船所(エレクトリック・ボート)が中心になって建造しています。
そして社長は、契約の「その先」まで言いました。
「直近のバージニア級とコロンビア級の受注については、製造に時間のかかる部品の調達を進めており、ブロック単位の組み立ても始めています」
「まもなく来る」から、「署名した」、そして「作り始めた」へ。3ヶ月で2段進んでいます。
受注残の数字だけで並べると、前の四半期末が1,365億ドル(それでも当時の過去最高)、今回が2,200億ドルです。1ドル150円なら約33兆円になります。
7〜9月期の実績も、全部門で前年を上回りました
契約の話に目を奪われますが、足元の四半期そのものも強い数字でした。
- 売上 145.7億ドル(前年同期比 +12.9%)
- 一株利益 4.49ドル(前年同期比 +15.7%。市場の予想を0.37ドル上回った)
- 全社の営業利益率 10.5%(前年同期比 +0.2ポイント)
- 部門別の売上は、潜水艦などの海洋 +21%、航空 +9.3%、テクノロジー +10.8%、装甲車などの戦闘システム +6%
💡一株利益(EPS)=会社の利益を株の数で割ったもの。株1株あたり、いくら稼いだか。
CEOの言い方も、強気が続いています。前の四半期は「上期は最高(superb)の四半期だった」、今回は「今四半期はさらに良い」「素晴らしい(splendid)四半期です」。ただ、もともと強い言葉を使う人なので、言葉の格上げ自体は大きくありません。目を引いたのは別の一言でした。前の四半期、社長は海洋部門について「下期は上期に比べて自然に伸びが落ち着く」と言っていました。今回の海洋は+21%。落ち着くと言っていた下期に、伸びは落ちていません。
前の四半期には無かった言葉も出ています。軍向けの通信・電子システムを作る部門について、社長は「第3四半期の受注は、単一の四半期として過去最高だった」と言いました。
年間の見通しは3回続けて引き上げ。ただ、幅は小さめです
会社はこの1年、年間の一株利益の見通しを毎回引き上げてきました。CEOが自分で並べています。
- 1月:16.10〜16.20ドル
- 4月:16.45〜16.55ドル
- 7月:16.80〜16.90ドル
- 今回:17.20〜17.30ドル(売上は565億〜568億ドル)
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。コンセンサス=その会社を追っているアナリストたちの予想の平均。
期初から見れば約7%の上積みです。期初の見通しから3回続けて上げているのは、言ったことを毎回少しずつ上回ってきた、ということでもあります。
ただ、比べる相手を市場の予想にすると、景色は少し変わります。年間の一株利益の市場予想は17.00ドルあたりでした。新しい見通しの中心17.25ドルは、それを約1.5%上回るだけです。売上も同じくらいの差です。
引き上げ幅を中央値で見ると、1月の16.15ドルから4月に+0.35ドル、7月に+0.35ドル、今回が+0.40ドル。毎回ほぼ同じ刻みで、外さない会社です。でも、受注残が1年で倍になったのに、今回の刻みは前の2回とほとんど変わっていません。「1年に1隻」の造船所の話が、ここで効いてきます。契約が倍になっても、今年作れる隻数は増えません。だから今年の利益の見通しも、同じ刻みでしか上がらないのです。
2027年の見通しは、例年どおり1月に出すと言っています。
ガルフストリームの「160機」と、戦闘システムの「まだ来る」が消えました
良い話が多い決算ですが、前の四半期から消えた言葉がいくつかあります。
まず、部門ごとの見通しです。前の四半期、CEOは部門別に売上や利益率を示し、ガルフストリームの年間の引き渡しを「約160機」と言っていました。今回は「部門別の見通しは更新しない予定です」。160機という数字は、確認も修正もされていません。
装甲車などの戦闘システム部門では、前の四半期に社長が「受注は売上の2.1倍。まだこれからも来ると確信しています」と言っていました。今回の受注は「売上をわずかに下回る」水準に戻っています。「まだ来る」という言葉は、検証されないまま出てこなくなりました。
ビジネスジェットの受注も、勢いが落ちています。前年同期と比べた受注機数の上乗せは、前の四半期の「16機多い」から、今回は「5機多い」へ。中東の顧客については、CEOが「関心はあるが、発注には慎重だ」と付け加えました。新型機G300の引き渡しも「中東の情勢にある程度左右される」と社長が認めています。
海洋の利益率から、社長は一度きりの分を自分で差し引きました
数字を押し上げたものも、会社自身が説明しています。
- 海洋の利益率には、一度きりの上乗せがあった。完成間近のバージニア級ブロック4の採算が良く、累積分をこの四半期にまとめて計上した(社長が「一度きり」と明言)
- それを除いた実力は「7%台半ば」で、そこから伸ばすというのが会社の説明
- 支払利息の純額が7,400万ドルから4,500万ドルに減ったのは、手元現金の利息収入が増えたため。本業とは関係ない
- テクノロジー部門は、第4四半期に少し減る見込み。社長は「第3四半期が強かったから」と説明
海洋の利益率について質問した最初のアナリストに、社長は自分から一度きりの上乗せを持ち出し、そのうえで「7%台半ば」という基準を数字で示しました。一度きりの分を問われる前に、自分から差し引いて見せた答え方です。ここは好感を持ちました。
残っている大きな問いは2つです。来年、海洋の売上がどれだけ伸びるのか。そして、中東の慎重さがガルフストリームの引き渡しにどこまで響くのか。どちらも答えは1月以降です。
なぜ今、造船所の「速さ」が効いてくるのか
この決算の背骨は、潜水艦の契約そのものより、それを作る側の速度が上がっていることだと僕は読んでいます。
社長は、コロンビア級とバージニア級の両方で、作業の処理量が前年比で30%増えたと言いました。新しい造船工を6,000人迎え入れ、その人たちが経験を積むほど効率は上がっていく、という説明です。最後のブロック4のバージニア級は数ヶ月以内に引き渡す予定で、冒頭で触れた「5年で5隻」がこれです。社長の話の力点は、この1年1隻のペースを、人と処理量で引き上げていくところにあります。
海洋部門の売上は、2026年に前年より約20億ドル増える見込みだと社長は言いました。そのうえで、来年について聞かれると、こう付け加えています。
「この先も成長は続きます。このペースほどではないかもしれませんが」
ここが正直なところです。規模が大きくなると、同じ額を毎年上乗せするのは難しくなる。受注残が倍になっても、売上の伸びの額は倍にならないかもしれない、と会社自身が言っています。
もうひとつの柱は、ビジネスジェットです。社長は「2030年に200機を引き渡すつもりだ」と言いました。そのためには2029年に200機を超える生産が要り、設備と人員はもう揃っている、ただしサプライヤーが付いてこられることを期待している、という説明です。
ミサイルの増産にも部品で関わっています。ロケットモーターのケースや、誘導装置の部品です。ただ、その枠組み全体に占める同社の比率は「一桁台前半」と、社長自身が控えめに言いました。ここは主役ではありません。
まとめると、この会社の3ヶ月〜1年半の売上を動かすのは、新しい契約ではなく、すでに建造中の艦をどれだけ速く進められるかです。新しい契約は、その速度が落ちないための「何年分もの仕事の保証」として効いています。
1月の見通しで、造船所の速度が本物か分かります
今回の読みは「仕事の量は何年分も確定した。来年以降の数字を決めるのは造船所の速度で、そこは上向いている」です。これが崩れる形を3つ書いておきます。
- 1月に出る2027年の見通しで、海洋の売上の伸びが10億ドルを下回る
- 一度きりの上乗せが無くなった後の海洋の利益率が、7%台半ばを割る
- コロンビア級1隻目の「2028年末までに引き渡す」という目標が遅れると開示される
ガルフストリームについては、次の回で部門別の見通しが戻ってくるか、160機という数字がもう一度出てくるかを見ます。
この説明会は、14年間CEOを務めてきた人にとって最後の決算説明会でもありました。会長職には残り、次からは今回たくさん答えていた社長が中心になります。
話し手が変わると、言葉の癖も変わります。「まもなく」が「署名」に変わったのと同じように、次の回で何が新しく出てきて、何が消えるのか。1月の説明会も、同じように前回と並べて読むつもりです。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。