ウラン株、原子力株と聞いて、日本でいちばん名前が挙がる会社がカナダのカメコです。AIのデータセンターが電気を大量に使う、だから原子力、だからウラン。この連想で名前を知った方も多いと思います。
その会社のCEOが、今回の決算説明会の冒頭で、わざわざ時間を割いて話したことがあります。AIとデータセンターは上振れの材料にはなりうる。けれど、原子力に投資する理由の土台ではない、という説明でした。
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※この記事で扱うのは、2026年10月30日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——ウランは「その日の値段」では、ほとんど売られていません
カメコはウランを掘って、製錬・精製して、電力会社に売る会社です。原子力発電所向けの燃料の加工や、原子炉メーカーのウェスチングハウスへの出資も持っています。
ここで1つ、誤解されやすい点があります。ウランにはニュースで見る「スポット価格」がありますが、電力会社は、ウランを主にその日の値段では買っていません。 何年も先の分を、長期契約で押さえて買います。
ガソリンと比べると分かりやすいと思います。車のガソリンは、その日のスタンドの値段で入れます。原子力発電所の燃料は、そうはいきません。燃料が切れたら発電所が止まり、しかも代わりの燃料はすぐに用意できない。だから、何年も先の分まで先に契約しておきます。カメコの例では、カナダの電力会社ブルース・パワーとの契約が2040年まで続いています。家を建てるときに、住宅ローンの金利を長く固定しておくのに近い考え方です。
その長期契約には、値段の決め方がいくつかあります。今回の説明会で何度も出てきたのは、次の2つです。
💡固定部分=契約のうち、値段をあらかじめ決めてしまう部分。物価上昇の分だけは後から上乗せされます(英語で escalated と言います)。
💡市場連動部分=その時の相場で値段が決まる部分。ただし「これより下がらない(フロア)」「これより上がらない(シーリング)」の下限と上限が付いています。
もう1つ、大事な言葉があります。「replacement rate(リプレースメント・レート)」です。世界中の原子炉が1年間に燃やすウランの量と、同じ量を電力会社が長期契約で押さえているか、という水準のことです。
ここがこの記事の結論に効きます。電力会社は、長い間この水準を下回る量しか契約してきませんでした。 過去に買いだめた在庫を少しずつ使ってきたからです。いつか在庫が尽きれば、契約を増やすしかない。カメコの経営陣は、その日がまだ来ていないと言い続けています。そして今回の決算は、その「まだ」が、言葉と数字の両方に出た回でした。
CEOは冒頭で、AIへの期待と事業の土台を切り分けました
決算説明会の冒頭、最高経営責任者(CEO)のティム・ギッツェル氏は、ここ最近の原子力関連株の大きな値動きに触れたうえで、こう言いました。
「人工知能とデータセンターは意味のある上振れ要因になりえます。ただし、原子力への投資の論拠の土台ではありませんし、私たちの戦略を支える前提でもありません」
続けて、建設中のデータセンターは新しい大型原子炉ができるより先に電気を必要とするので、当面の電力需要の伸びはガスや再生可能エネルギー、送電網の増強などでも賄われる、とも話しています。技術業界からの需要は来ると確信している、ワクワクしている、とも言っています。それでも、会社の基本の想定はAIではなく、いま動いている原子炉と、いま在る契約と、いま必要な燃料に置いている、という説明でした。
3ヶ月前の説明会で、CEOは「原子力への支持は広がっているだけでなく、より具体的になっている」と強気側で語っていました。今回は、テーマ株の値動きと事業の基礎を切り分ける話に、冒頭のまとまった時間を割いています。
AIと原子力の連想でこの株を知った方には、知っておいてほしい話です。会社自身は、AIを当てにした計画を立てていません。
数字は、予定どおり前年を下回りました
金額はすべてカナダドルです。
- 売上 6億1,900万カナダドル(前年同期は6億1,500万。1カナダドル110円で約680億円)
- 会計基準どおりの純利益 4,300万カナダドル、一株あたり0.10カナダドル(前年同期はほぼゼロ)
- 調整後の純利益は200万カナダドルの赤字、一株あたりゼロ(前年同期は3,200万の黒字、一株0.07)
- ウランの販売量 560万ポンド(前年同期は610万ポンド)、生産量 350万ポンド(同440万ポンド)
💡調整後=会社が「一時的・特殊だと考える項目」を除いた数字(non-GAAP。カナダの会社なので、正確には国際会計基準 IFRS に対する non-IFRS)。今回は、会計基準どおりでは黒字、調整後では小さな赤字と、向きが逆になっています。
💡ポンド=ウランの取引で使う重さの単位。1ポンドは約454グラムです。
CEOの最初の言葉は「この四半期と最初の9ヶ月の結果は前年を下回りました。それは想定どおりです」でした。主な理由は2つ説明されています。キーレイクという製錬所(鉱石からウランを取り出す工場)の計画停止が長引いたこと(生産が減り、原価が上がった)。そして前年に、出資先のウェスチングハウスがチェコの原発案件に関連する大きな支払いを受けていて、比較の土台が高かったこと。
ウランの平均実現価格は1ポンド65.78米ドルで、前年同期の62.12米ドルから上がっています。この数字は後で、新しい契約の値段と並べるので覚えておいてください。
言葉は、確かに一段強気になりました
数字が予定どおりの下り坂だった一方で、言葉ははっきり強くなっています。
値段について。 社長兼最高執行責任者(COO)のグラント・アイザック氏の言葉です。
3ヶ月前:「長期のウラン価格は90ドル台半ばに戻ってきていて、おそらく3桁に向かう途中にあります」
今回:「基本の物価連動部分、つまり契約のうち私たちが固定してもいいと考える部分については、米ドル建て・物価連動で3桁のウラン価格になっています」
「3桁に向かう途中」から「3桁になっている」へ。ここだけ読めば、値段の話は一歩進みました。1ポンド100ドルを超える水準です。
確信の強さについて。 これも、アイザック氏がはっきり言葉にしています。
「私たちは最初は慎重でした。次に、慎重ながら楽観的になりました。いま皆さんに思い出してほしいのは、私たちが今は全面的に楽観的だということです」
アイザック氏は契約の話でも「慎重ながら楽観的、ではありません。全面的に楽観的です」と繰り返しました。経営陣が自分の口で、確信の段階を一つ上げたと宣言しています。
市場連動部分の下限と上限も具体的に答えています。下限は「70ドル台半ばから後半(物価連動)」、上限は「160ドル(物価連動)に届くものも出てきている」。160ドルは1ドル150円で、1ポンドあたり2万4,000円です。
ここで、さっきの数字を思い出してください。今期の売上に乗っている平均の値段は65.78ドルでした。 新しい契約で話している値段と、いま実際に売上になっている値段には、まだかなりの差があります。
ただし、3ヶ月前の「契約が増えた」が、今回は出てきません
強気の言葉の裏で、消えたものがあります。
3ヶ月前、CEOはこう言っていました。
「市場内でも市場外でも、契約の動きが増えました」「第2四半期も、契約は良い軌道を続けました」
今回、契約の量が増えたという言葉は出てきません。代わりに出てきたのは、さっきの「3桁」の発言に付いていた一言です。
「ですから私たちは、ごく小さな量で、ウラン価格のとても健全な仕切り直しを見ています」
値段は3桁。ただし、ごく小さな量で。僕が気になったのは、この一言でした。いちばん強い言葉のすぐ横に、量の小ささが並んでいたからです。そしてアイザック氏は、条件が合わない契約についてこうも言いました。
「提示されないのであれば、私たちは市場から一歩引きます。ちなみに、それは私たちの販売数量に表れています」
販売量が前年の610万ポンドから560万ポンドに減っていたのは、工場の停止だけでなく、会社が自分で売るのを控えている結果でもある、と経営陣自身が言っています。
質疑では、カメコの今後5年間の平均の契約量(年間およそ2,800万ポンド)がここ数四半期、横ばいのままだ、という指摘がアナリストから出ました。経営陣はこれを否定していません。
言い方を整理すると、こうなります。値段の言葉は「3桁に向かう」から「3桁」へ進んだ。量の言葉は「増えた」から「ごく小さな量で」に下がった。 強くなったのは値段と確信の言葉で、量の言葉だけが下を向きました。
見通しは、生産の上限が下がりました
年間の見通し(ガイダンス)も動いています。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績や生産量の見通し。
- カメコの取り分の生産量:1,950万〜2,150万ポンド → 1,950万〜2,050万ポンド(上限を100万ポンド下げた)
- 年間の納入量:2,950万〜3,050万ポンドに幅を狭めた
- 原価:管理費と、売った分の平均単価の見通しを引き上げた
- 設備投資:一部の工事が2027年以降にずれ込むため、今年の見込みを減額
配当は年0.24カナダドルで据え置きです。
3ヶ月前、会社は1,950万〜2,150万ポンドの見通しを「据え置くことが重要だ」と強調していました。今回はその上限を下げています。原価の見通しも上がりました。会社が数字で出した生産と原価の見通しのうち、良くなったものはありません。 明るいのは、長い目で見た値段についての経営陣の発言だけです。
契約の量、韓国の8基、コスト高——質疑で時期が出なかったもの
質疑応答では、同じ論点を何人もが角度を変えて聞いていました。
契約の量はいつ増えるのか。 これを2人のアナリストが、3回にわたって聞き方を変えて繰り返しました。電力会社はなぜこれほど長く、必要量より少ない契約で済ませてこられたのか、堰が切れるきっかけは何か、と。答えは方針の繰り返しでした。アイザック氏は「私たちは量を求めてこの市場を追いかけません」と言い、なぜ今規律を守るのかを説明しました。説明自体は具体的です。ただ、量が増える時期は、最後まで示されませんでした。
韓国の件。 最大8基(うち6基がAP1000、2基が韓国型のAPR1400)を想定した枠組みの合意が新しく出ました。2人のアナリストが重ねて聞きましたが、答えは「確定契約に向けて、やるべきことはまだたくさんあります」で止まっています。長納期の部品をどう前倒しで発注するかの仕組みは説明されましたが、具体的な時期と、アメリカでの建設地は答えていません。
💡AP1000=ウェスチングハウスが設計した大型の原子炉。カメコはウェスチングハウスに出資しているので、この炉が建つほど、炉の部品・燃料・保守の仕事がグループに入ります。
コスト高はいつまで続くのか。 CEOは「品位や埋蔵量で何か違うことが起きているとは思いません。インフレは確かに要因です」と答えました。構造的な問題ではない、という答えです。ただ、いつまで続くかの数字は出ていません。
手元の資金の使い道。 純有利子負債がほぼゼロの状態で、増配や自社株買いはどうかと聞かれ、アイザック氏は「生産で規律を保っている限り、財務の規律も私たちの特徴であり続けます」と答え、具体策は示しませんでした。
💡純有利子負債がほぼゼロ=借金から手元の現金を引いた額がほぼゼロ。実質的に借金が無い状態です。
一時的と言える理由は、はっきりしています
- キーレイク工場の計画停止(今期の生産減と原価増の主因。会社が計画どおりと認めている)
- 前年のチェコの原発案件の支払いで、前年の比較の土台が高い
- 設備投資の減額は一部工事の先送りによるもので、節約ではない
工場の停止は計画どおりで、前年比の悪さの多くはここで説明がつきます。ここは会社の言うとおり、一時的だと僕も読みました。一方で、契約の量が増えないことは一時的な要因の説明には入っていません。会社が自分で選んでいる状態だからです。
なぜカメコは、値段が上がっても量を追わないのか
ここが、この会社のいちばんの読みどころです。経営陣の説明をつなぐと、こういう話になります。
電力会社は、昔の買いだめを食いつぶしてきました。 アイザック氏によれば、2006年にシガーレイク鉱山が浸水し、2010年には中国が大量に買い付けました。この時期に電力会社が必要以上に契約したため、その後は手元の余りで食いつなぐことができた。アイザック氏は、ウランの長期契約が2012年以来ずっと、必要量を下回っているとも言っています。その余りが尽きてきて、他から回ってくるウラン(二次供給)も尽きた、という説明です。
一方で、新しい供給はすぐには出てきません。 1ポンド90〜100ドルの値段で新しい鉱山にお金が付いて立ち上がるのか、と聞かれて、アイザック氏は「もっと上がる必要がある」と答えています。カメコ自身も、マッカーサーリバー鉱山をフル稼働させず、カザフスタンの合弁鉱山インカイを増やす計画もまだ無く、ラビットレイク鉱山と米国の鉱山は休止中。認可された生産量より約30%低いところで操業しています。他社の新しいプロジェクトも、予算と工期で苦戦していると説明していました。
だから、待つ。 必要な量を契約していない電力会社が、いずれ契約を増やすしかなくなる。そのとき供給がすぐには増えないなら、値段は売り手に有利になる。カメコは、その日のために今は量を出さず、値段の条件が合う契約だけを小さく結んでいる。CEOの冒頭の言葉で言えば「強い市場は、悪い執行や弱い規律の言い訳にはならない。規律の価値を高める」です。
電力会社が様子見を続けている理由についても、アイザック氏は具体的でした。新しい生産者たちの約束(カナダのアサバスカ地域から4,500万ポンドなど)と、ロシア産のウランが戻ってくるかもしれないという見方。そのどちらにもカメコは賭けない、と言っています。
もう一本の柱がウェスチングハウスです。新しい原子炉が1基できれば、その後何十年も燃料と保守の仕事が続きます。韓国との枠組みはその入口です。ただCEO自身が、確定契約、建設地の計画、資金、リスクの分担、長納期品の調達がこれから必要だと言っています。この柱が売上として効いてくるのは、早くても1年半より先だと僕は読んでいます。
つまり、この会社の今後1年半の売上を動かすのは、ウランの側です。市場連動の契約で、実際に受け取る値段が上がっていくこと。そして、どこかで契約の量が増えること。今回の決算では、前者は言葉として強くなりました。後者は、まだ出てきていません。
次の決算で、何が出てくれば見立てが変わるか
今回の僕の読みは、「値段の言葉は一歩進んだ。量はまだ来ていない。会社はそれを自分で選んで待っている」です。
次の決算で確かめたいのは3つです。
- 今後5年間の平均の契約量(年間およそ2,800万ポンド)が、今度こそ増えるか
- 韓国の枠組み(最大8基)が、確定した契約に進むか
- 生産の見通しが、さらに下がるか
1と2がどちらも動かず、3が下がっていたら、「待っている」は「待たされている」に変わります。逆に1が増えていれば、全面的に楽観的という言葉に、ようやく量が追いつきます。
ここに書いたのは、2026年10月30日の説明会までに分かっていることだけです。
AIと原子力を一緒に語る話は、これからも増えると思います。けれど、この会社の経営陣が見ているのは、電力会社がいつ契約のペンを取るか、という地味な一点でした。3ヶ月後に、その答えが少しでも出ているか。出ていても、出ていなくても、次の決算でまた書きます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。