株を買い持ちするのと移動平均線のゴールデンクロスの戦略で丁寧に売買するのとではどちらが勝てるのでしょうか?過去30年間のデータでバックテストしてみました。
もくじ
買い持ちvs移動平均線クロス
株の日足を使った移動平均線のゴールデンクロス(買いのみ)がそこそこ勝てることが分かりました。
株の移動平均線ゴールデンクロスを勝ちやすくするコツ 全銘柄でバックテスト
では、株を買い持ちした場合と比較したらどうなのか?というのを今回はバックテストで明らかにしたいと思います。
買い持ちする方が有利であれば、わざわざ移動平均線のシステムで頑張ってトレードする必要はないですからね。
どんなバックテストをするか
バックテストの対象には、個別株のデータではなく日経平均株価を使います。
日経平均株価と連動するインデックスETFを買い持ちした場合と、同じくインデックスETFを移動平均線のゴールデンクロス(買いのみ)のシステムで売買した場合の比較を行いたいと思います。
日経平均インデックス買い持ち vs 移動平均ゴールデンクロス(買いのみ)検証結果
検証には日経平均株価の1991年~2019年までの日足データを使いました。そしてバックテストにはトレードステーションを使いました。
表の「インデックス買い」は単純に1991年1月1日に日経平均を買い、ずっと買い持ちした場合のパフォーマンスです。別の言い方をすると、1991年1月1日からの日経平均株価の値動きそのものとなります。ずっと買い持ちなので取引回数は1回となっています。
「GC買い」は、日経平均株価を使って1日移動平均線と200日移動平均線のゴールデンクロスで買い(月末確定のみ)。デッドクロス(月末確定)で手じまいします。再度ゴールデンクロス(月末確定)が起きれば買いエントリーする…を繰り返します。(これは全銘柄のバックテストで一番パフォーマンスが良かった売買ルールです)
インデックス(青)が買い持ちの資産曲線です。
GC(ゴールデンクロス)(赤)が移動平均線のゴールデンクロスで買いのみの資産曲線です。
日経平均は1990年代以降低迷しています。2013年頃からはアベノミクスで上昇相場ですが、1980年代のバブルで付けた高値をいまだに抜くことができていません。
青(買い持ち)の資産曲線を見てください。1991年の初めに買って買い持ちしていた場合、まだマイナス圏ということになります。(もちろん、配当を考慮するとまた話は変わってきますが)
一方で移動平均線のゴールデンクロス(ダマし回避あり)の資産曲線をみると、2000年頃から2012年頃までの下げ相場におけるドローダウンを回避することができていています。
そして全体としては下げ相場だったといえる日経平均株価のチャートで、買いのみのストラテジーであるにもかかわらずトータルではプラスになっています。
米国株だとどうか? 買い持ちと移動平均線のゴールデンクロス
先ほどと全く同じバックテストを米国のS&P500でもやってみました。S&P500とは、米国版の日経平均みたいなものとお考え下さい。
米国株は日経平均と違い1990年以降もずっと上昇相場が続いています。(もちろん、ITバブル崩壊や金融危機などの下落はありましたが)
ですから、買い持ちのパフォーマンスが非常に良く、移動平均線クロス戦略のそれを上回っています。
しかしドローダウンの大きさに大きな差があります。ITバブルや金融危機の時のドローダウンの大きさを比較してみましょう。
2001年頃や2009年頃に買い持ち(青)では大きなドローダウンがあります。
一方移動平均線のクロス(赤)ではドローダウンがかなり小さくなっています。大暴落が起きる場合は、それよりもはるか前に移動平均線のデッドクロスが起きて買いポジションを手じまいしているので、経済危機におけるドローダウンをほぼ回避できています。
米国株のような全体的には上昇相場が続いている相場においては、買い持ち戦略のほうがトータルの利益では上回ります。しかし7、8年に1度程度起きる株価大暴落時のドローダウンは移動平均線クロス(買いのみ)の方が小さく抑えることができるということになります。
株は買い持ちと移動平均線ゴールデンクロスどっちがいい?
今回は日経平均株価とS&P500(米国株)の過去データを使い、買い持ち vs. 移動平均線クロス(買いのみ)を比較するバックテストを行いました。
全体的に下げ相場の日経平均では移動平均クロス(買いのみ)の方がパフォーマンスが優れていました。
一方全体的に上昇相場が続いているS&P500(米国株)においては、買い持ちと移動平均線クロス(買いのみ)が両者ともいい勝負といったところでした。
となると、結論としては移動平均線クロス(買いのみ)戦略のほうが買い持ち戦略よりも優れていると言えなくもなさそうです。
しかし!必ずしもそうとは言えません。というは、配当の威力というのがあるからです。
買い持ち戦略が負けていた日経平均株価に注目してみてください。日経平均株価のチャートの値動きだけを考慮するとトータルで負けています。
しかし日経平均株価に連動したETFなどを保有していると、保有している期間ずっと配当をもらい続けることができます。その配当金を加味すれば、最終的にはトータルでプラスになっていたと思われます。
移動平均線のゴールデンクロス(買いのみ)においても買いをやるわけですから、保有時期が配当のタイミングと合えば配当はもらえます。しかしずっと買い持ちする戦略よりも保有する期間が短くなるので、もらえる配当金のトータル金額はかなり少なくなります。
買い持ちの場合はポジション保有期間ずっと配当金をもらい続けることができるので、20年、30年と長期的に保有すれば、よほど値下がりしない限りはトータルでプラスになります。
上昇相場だったS&P500であれば、配当金も加味すると買い持ちの方が圧倒的にパフォーマンスが良かったと思われます。
また、ITバブル崩壊や金融危機の大暴落が起きている時期にも、配当金で再投資を続けると、株価が回復してくる過程で大きくプラスになっていくはずです。
配当も含めたらどちらが勝てるのか?というバックテストは、残念ながらトレードステーションでは行うことができませんでした。配当のデータが取得できないからです。ですので今回のバックテストでは明確な答えは出ませんでした。
今後の課題として、配当データをどこかで入手し、配当も加味したバックテストを行いたいと思います。
さいごに
今回のバックテストで分かったことは…
値動きだけを考慮するなら移動平均線のクロスが優れていた。けれど、配当金も加味する場合、おそらく買い持ちの方が有利なのではないだろうか?(←これはバックテストできていませんが)という結論になりました。
今後、更なるバックテストでその明確な答えを出したいと思います。