FRBが利下げを決めても、米10年債利回りは4.20%を試す展開。短期金利と長期金利の歪みが広がり、投資家のドルショートは踏み上げのリスクに直面しています。ドル円150円をにらむ今、相場の構造とトレードアイデアを初心者にもわかりやすく解説します。
ドルが下がらない背景
通常であれば、米連邦準備制度(FRB)がFF金利を引き下げれば、ドル安になりやすいはずです。実際に今回は0.25%の利下げが決定されました。それに加えて、日銀(BOJ)や欧州中央銀行(ECB)はむしろタカ派姿勢を見せており、教科書的にはドル売りが優位に見えます。
しかし現実にはドルはなかなか下がりません。むしろ下落を待っていた投資家を裏切るように高止まりしています。この「悪材料でも値が崩れない」という相場は、逆に強さのサインになることがあります。売り方が積み上がっている中で価格が下がらなければ、やがて彼らが買い戻しに追い込まれ、踏み上げの力で一段高になる可能性があるのです。
短期金利と長期金利のゆがみ
ここで注目したいのが金利の動きです。FRBの利下げで短期金利は下がっていますが、長期金利は逆に上昇しています。米国10年物国債の利回りは「4.20%」という節目に迫っており、市場ではこの水準を試す展開になるのではないかという見方が広がっています。
本来なら利下げ局面で国債は買われやすいのですが、国債の需給が弱い場合は価格が下落し、利回りは上昇します。つまり「利下げなのに長期金利が上がる」という歪みが生じているのです。これはドルを支える要因になります。
多くの投資家はFOMCの決定だけを見て「利下げ=ドル安」と考えがちですが、実際には長期金利の動きがドル高を後押ししているのです。ここに短期金利と長期金利の「ゆがみ」が存在しています。
10年債利回り4.20%の意味
10年物国債利回りの「4.20%」は、過去にも何度も相場の節目として意識されてきました。こうした水準には多くの投資家がストップ注文や新規注文を置いているため、一時的にでも上抜ければ相場は一気に走る可能性があります。
今回も、入札の需給次第では利回りがこのラインを突破するシナリオが想定されます。もしそうなれば、ドル相場も巻き込んで急速にドル高が進むかもしれません。逆に跳ね返されれば「やはり上値は重い」という認識が広がるため、いずれにしても注目すべき分岐点です。
米経済の現状認識
米経済の基礎体力も無視できません。アトランタ連銀が公表しているGDPNow(リアルタイムGDP予測)は依然として3%台を維持しています。市場では「米景気は減速に向かう」との声もありますが、数値を見る限り大きな減速はまだ確認できません。民間エコノミスト(青)は0%~2%程度の予想なのに、アトランタ連銀の予想は3%台と強気なのが面白いです。
4月の地政学的なイベント以降、一時的に不確実性が高まり、7〜8月は経済指標も弱めに出ました。しかしそれは一過性の揺り戻しで、現在は再び落ち着きを取り戻しています。FRBの利下げも金融環境の緩和を後押しし、株式市場の回復を促しています。これは結果的にドル高にもつながりやすい構図です。
具体的なドルの戦略
こうした状況を踏まえると、短期的にはドルロング戦略が意識されます。特に僕が興味を持っているのは「USDCAD」と「USDJPY」のロングです。あくまで1週間から10日程度の短期トレードです。
USDCAD
カナダドルは原油価格との連動性が強い通貨ですが、現状では原油要因よりもドル需要の方が勝っているようです。米景気が底堅いことでドルに資金が集まりやすく、さらに月末に向けて企業のドル需要が高まると予想されます。1.40が一つのターゲットとして意識されています。
USDJPY
ドル円は「金利差トレード」の代表です。日銀がタカ派的な姿勢を見せても、日本の金利は依然として極端に低い水準にあります。一方で米国10年債利回りが4.20%を試す動きとなれば、ドル円は150円という心理的節目に向かって動きやすいと考えられます。
チャート的には、僕は特にUSDJPYのロングが良さそうだなと思っています。
もちろん、レンジの上限付近でのドル買いにはリスクも伴います。ただ、短期的な需給を踏まえれば、一定のリスクを取る価値があると思っています。
実は今日から、ドル円ロングのEAを多めに動かし始めています。
まとめ
今回整理したように、FRBが利下げをしてもドルが下がらないのは複数の要因が絡み合っています。「短期金利と長期金利のゆがみ」「米経済の底堅さ」「10年債利回り4.20%の節目」「投資家心理」「具体的なドル需要」などが重なり合い、結果的にドル高を支えています。
特にUSDJPYとUSDCADは金利差や需給の影響を強く受けやすく、短期的には注目すべき通貨ペアになっています。相場を見るときには、FOMCの決定だけではなく、長期金利や投資家心理といった広い視点を持つことが大切だと感じます。
免責事項:本記事は情報提供のみを目的としたものであり、特定の銘柄や通貨の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。記事内容に基づく損失について、当方は一切の責任を負いかねます。