今日は金(ゴールド)の値動きについて整理しておきます。ここまでの上昇の背景や、短期的な過熱感と長期的な強気要因の両面、そして銀やプラチナといったサテライト、株との相対評価、最後にエネルギーとの対比まで。自分の頭を整理するつもりで書きます。
なぜここまで上がっているのか
今年の金は年初来で40%超の上昇を記録し、3,500ドル台を超える場面もありました。背景にあるポイントをいくつか挙げると。まず、米国の財政赤字が恒常化しており、財政優位の状況が続いていること。つぎに、世界の外貨準備の構成がドル一強から徐々に多極化し、金の比率が底打ちしてきていること。あとは、40年続いた長期金利低下サイクルが終わりを迎え、金利環境が不安定になっていることです。
短期の過熱と長期の強気
確かにテクニカル的には短期で「買われすぎ」の状態です。過去の局面と比べても、チャートはかなり上方向に振れています。ただ、長期構造やグローバルマクロの要因を考えると「売り切る理由がない」というのが難しいところです。財政赤字、通貨システムの揺らぎ、インフレ耐性を求める需要など、金に資金が集まりやすい環境が続いているからです。
私自身も「短期は高すぎるけど、長期は持ち続けたい」という矛盾した感覚を持っています。実際、2021年に仕込んだロングポジションは半分以上を利食いしましたが、残りはそのままにしています。

銀とプラチナはサテライト
ここ数カ月で銀は$33から$46へ急騰、プラチナも年初来で60%以上の上昇を見せています。これは典型的に「金のラリーが後半に差し掛かったときに火がつく」動き方です。銀やプラチナは中央銀行の買いではなく投資家の動きで値段が付きやすいため、ボラティリティも大きいです。
株との比較で見えること
ドル建てではS&P500など株式指数が最高値圏にあります。
しかしこれは驚きですが、金建てで株を見直すと、まだコロナショックのころの位置にいます。つまり、表面的には「株も金も高い」ように見えても、金との相対評価では「株はたいして上げていない」という見方ができます。
株は上昇トレンドのように見えて、金建てでみると上昇トレンドではない。というのは重要なことかもしれません。
金建ての株がレンジ相場なら、そろそろ株が相対的に強くなってくるだろうし、下降トレンドなら金が上昇するか株が下がるかのどちらかが起きてさらに金建ての株が下がるでしょう。
どっちになるか?それは誰にもわからないので、両方持つのが良いのではないかと思います。
一つだけ言えるのは、現金(キャッシュ)はとんでもない一方的なダウントレンドで、グローバルマクロ的にもその流れが変わる兆しはまだたいしてないということ。
エネルギーとの対比
一方で、エネルギー価格は相対的に弱いままです。金/原油の比率はコロナショック期以来の高水準にあり、極端に「金が高く、原油が安い」状態です。供給は順調に続いていて、米シェールも横ばい。需要は二層経済(防衛・医療など強い分野と、住宅や銀行など弱い分野)の影響で伸び悩んでいます。
つまり「金が高すぎ、原油が安すぎ」という対比が浮き彫りになっています。どちらも保有しておくと、片方の逆風がもう片方の追い風になるようなバランス効果も期待できるかもしれません。
まとめ
金は短期過熱でも長期構造的には強気のままです。銀やプラチナは金ラリー後半の典型的な動きでボラは大きいが面白い存在。株との比較では、見かけの株高と違い、金建てでは株が優位とは言えません。そしてエネルギーは割安に放置されており、金とエネルギーを両方持つことでヘッジ的なバランスを作れる可能性もあります。
投資判断を勧めるものではありませんが、いまのマーケットを俯瞰すると「金=高すぎても売れない資産」「エネルギー=安すぎて見逃せない資産」という対比が印象的に感じられます。