マーケットを追っていて、気になったグローバルマクロネタを丸っとまとめました。知り合いとの投資トークのネタにもどうぞ。
もくじ
米国経済は「再加速」している?
まず押さえておきたいのは米国経済です。実はここにきて「再加速」していると言われています。これは、一度弱くなっていた景気がまた強さを取り戻している、という意味です。
例えばアトランタ連銀が出しているGDP予測(GDPNow)は急速に上向き、さらに経済指標が予想以上に強い結果を出すことが増えています。しかも秋から年末にかけては、例年データが強めに出やすい季節性があるので、今後も「予想より強い経済データ」が出る可能性が高いのです。
こうなると、「やっぱり米国経済は強い」という見方が広がり、投資の前提が大きく変わってきます。
景気の一時的な鈍りは終わった
数か月前まで「景気が弱っているかもしれない」と言われていました。これは長期的な不況ではなく、政策や外部要因によって一時的に経済活動が鈍った状態のことです。
今回の場合は、関税政策や政府の不透明な動きが原因で企業や消費者が慎重になっていたと考えられます。しかし、その影響は思ったほど深刻ではなく、すでに落ち着いたという見方が出ています。むしろ景気は持ち直しの段階に入っている、というのが最近の評価です。
FRBと「政策のねじれ」
普通なら、経済が強くなればFRB(米中央銀行)は利上げを考えます。でも今は「政府がFRBを利下げに向かわせている」と言われています。つまりデータがどうであれ利下げ方針が続く、というわけです。
このおかしな状態を「政策のねじれ」と表現できます。強いデータが出たら普通は「金利上昇=ドル高=金価格下落」なのですが、今は逆で「金価格が上がる」「債券が売られる」につながりやすいのです。
投資ネタ:債券ショートと金ロング
この環境を踏まえて「債券は売り(金利上昇)、金は買い」という戦略を考える専門家が増えています。従来の常識と違う相関が生まれているので、ここを理解しているかどうかで投資判断が変わってきます。
つまり、米国の強いデータは「債券安・金高」という動きにつながる可能性があるのです。これは今有効な投資ネタとして意識すると面白いと思います。
雇用統計(NFP)の政治リスク
もうひとつのポイントは雇用統計(NFP)です。普通なら労働市場の健全性を示す重要な指標ですが、最近は「数字の信頼性」にまで疑問が出ています。
大統領が弱い雇用統計のあとで労働統計局のトップを解任し、政治色の強い人物を任命したため、「本当に正しい数字が出るのか?」と市場が警戒しているのです。次回の雇用統計は強めに出る可能性もあり、その場合はドル高・円安の「最後の加速」につながるかもしれません。
世界の長期金利上昇と円相場
今は米国だけでなく世界的に長期金利が上がっています。日本も国債利回りが上がっていますが、それでも円は売られています。
通常なら「金利が上がる=通貨が強い」なのに、円は逆に安くなっているのです。背景には企業フローやテクニカル要因があり、ファンダメンタルズ(経済の基礎条件)では説明しきれません。円高要因は揃っているのに円安が続くのは面白い現象で、いつか反転する余地はあるものの、短期的にはイベント次第です。
関税と最高裁の話
米国では「議会を通さずに課した関税」が合法かどうかが争われています。もし最高裁が違憲と判断したら、過去に徴収した関税を返金しないといけないのでは、という議論が出ています。
ただ、実際に返金される可能性はとても低いと見られています。なぜなら、過去分を返すと財政に大打撃になるからです。それでも「返金の可能性がある」というニュースだけで、関連銘柄やインフレ見通しに影響が出る可能性はあります。
英国の財政リスクとポンド
最後に英国の話です。英国も財政不安を抱えており、国債の利回りが上がっています。普通なら金利が上がれば通貨が強くなりますが、今回は逆で「財政が危ないから国債が売られる」ことが背景にあります。
つまり「金利上昇=通貨安」という動きが出るわけです。これは新興国通貨でよく見られる現象と同じです。2022年の「トラス政権ショック」ではまさにそうなり、ポンドが急落しました。
一部では「英国が国債増発のニュースを出せばポンド売りのチャンス」という見方があります。ただ、予算発表は11月26日とまだ先なので、今すぐ狙うのは時期尚早だと考えられています。
この記事のまとめ
ここまで紹介した流れをまとめると次のようになります。
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米国経済は再加速し、景気の一時的後退は終わった
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FRBは独立性を失い、強いデータでも利下げが続く
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そのため、債券は売られやすく、金は買われやすい
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雇用統計には政治リスクがあり、数字が強めに出る可能性がある
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関税返金の可能性は低いが、ニュースとして相場を動かし得る
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英国は財政不安で金利が上がり、ポンド安につながりやすい
知り合いに話してあげると「へえ、そんな背景があるのか」と思ってもらえるネタだと思います。
投資の世界では「金利が上がる=通貨高」とは限らない、その理由を読み解くのが大事だ、という点をぜひ押さえておいてください。
それではまた!