最近の米国の景気を見ていて感じるのは、「まだ崩れないだろうな」ということです。理由ははっきりしていて、政府の財政赤字がとにかく大きいこと、そして雇用がまだ持ちこたえていること。この2つがある限り、景気全体は意外と粘り強い動きをするんじゃないかと思っています。
じゃどうするか?ってことなんですが、長めの時間軸で投資するなら、セクターの選択がめちゃくちゃ重要な局面ではないかな?と思ってます。
財政赤字が作る“底支え”
米国はGDP比で6〜7%、名目で2兆ドルクラスの赤字を続けています。このお金が年金や医療、国防支出、国債の利払いとして経済に流れ込み、消費や企業活動を押し上げています。住宅や製造業が弱くても、全体が落ちないのはこの赤字のおかげ、という見方がしっくりきます。
source: tradingeconomics.com
雇用は黄信号
もう一つ気になるのは雇用です。新規失業保険申請件数がここ数週間で増えてきました。3年ぶりの水準で「おや?」と感じる動き。ただしまだ30万件には届いていません。なので、赤信号というより“黄信号”。つまり「気をつけよう」というレベルで、本格的な崩れ方ではないという理解です。
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なぜ今、セクター選びが重要なのか
ここから大事なのは、「景気全体は崩れない=どの株でも上がる」という状況ではない、という点です。政府の赤字で流れ込むお金は偏っていて、受け取る側とそうでない側で明暗がはっきり分かれます。社会保障や医療、国防、利払いに重点的に流れているため、金融や防衛、医療といった分野は恩恵を受けやすいです。一方で、アパレルのように米国内売上が中心で、しかも関税の直撃を受ける業種は逆風が強まっています。
つまり「景気全体は落ちないかもしれないが、勝ち組と負け組の差は広がる局面」に入っている、と考えています。だからこそ、今はセクターを意識した投資判断が必要になってきているのです。
セクターで明暗が分かれる
金融や医療、防衛といった分野は、政府支出のお金が直接流れ込みやすくて安定的です。一方でアパレルのような消費裁量は関税の影響や若年層需要の弱さもあって、株価が厳しい動きをしています。
これはXLF(金融ETF)とXLY(一般消費財ETF)の2025年の値動きを比較したチャートです。XLF(金融ETF)の方がリードしているのが分かります。前半のトランプ関税ショックの時期にXLFは落ち込みが比較的緩やかだったことが要因です。青の線のXLFの値動きを見ると、カップウィズハンドル的な値動きで個々から上に伸びていく可能性が高いかもしれないと見ています。
2010年ぐらいからの長期的な比較を見ると、XLYの方が圧倒的にリードしてきたのが分かります。しかし昨今の情勢により、次の10年は真逆になり、XLFがリードするかもしれません。
たとえばXLYの構成銘柄の中で注目されるルルレモン(LULU)は財務体質は健全でも、需要の変化と関税負担で株価は大きく下がっています。
逆に、XLF構成銘柄の保険大手のトラベラーズ(TRV)は落ち着いた値動きを続けています。(オニール的にいかにもここから上に爆発しそうな雰囲気なので注目してます)
同じ株式市場でも、真逆の展開になっているのが面白いところです。
まとめ
米国経済は、巨額の財政赤字とまだ踏ん張っている雇用によって、大きな崩れには至っていません。ただし、「全体は崩れない=何でも買ってOK」ではないのがポイントです。むしろセクターごとの明暗ははっきりしていて、政府の赤字の恩恵を受けやすい金融や防衛・医療はプラス、一方でアパレルなど消費裁量はマイナス。今はそんな構図だと感じています。
これからも米国の財政赤字と雇用の動きを追いながら、どのセクターにチャンスがあるのかを見極めていきたいです。












