数字だけ見れば、文句のつけにくい四半期でした。
売上は前年同期比で12%伸び、一株利益は49%増えています。それなのに、決算説明会で経営陣の口から出てきたのは「少し届いていない」「望むほど速くない」「満足していない」という言葉でした。動画配信の最大手、ネットフリックスの話です。
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※この記事で扱うのは、2026年10月20日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える場。ネットフリックスは、アナリストから事前に集めた質問に経営陣が答えるインタビュー形式の動画で行っています。
その前に——ネットフリックスの「広告付きプラン」は、なぜ大事なのか
ネットフリックスの稼ぎ方は、長いあいだ1本でした。毎月の会費です。広告は流さない。それが売りでした。
いまは違います。会費を安くする代わりに、作品の前や途中に広告が入るプランがあります。日本でも選べるので、見たことがある方もいると思います。
民放のテレビを思い出すと分かりやすいです。テレビ局は視聴者からお金を取らず、広告主からお金をもらいます。ネットフリックスは、会費を取りながら、同時に広告主からもお金をもらう形を足しました。同じ視聴者から、2つの財布でお金を受け取る仕組みです。
経営陣は会社の売上を伸ばす道具を3つ挙げています。会員の数、値段、そして広告です。会員数と値上げは、すでに長く使ってきた道具です。いちばん伸びしろが大きく、いちばん新しいのが広告です。だから、この会社の次の数年を読むとき、広告の進み具合がいちばん効いてきます。
今回の決算で、いちばん言い方が変わったのが、その広告でした。
実績は、会社の予想どおりかそれ以上でした
- 売上 128億7,420万ドル(前年同期比 +12%。為替の影響を除くと+11%)。1ドル150円で約1兆9,300億円
- 一株利益 0.87ドル(前年同期は0.59ドル・+49%)
- 営業利益率 34.6%(前年同期は28.2%)
💡営業利益率=売上のうち、作品の費用や人件費など本業のコストを払った後に残る割合。
売上は会社の予想どおり、利益は予想を上回りました。会社は利益が上振れた理由を、主に費用の計上タイミングと、売上のわずかな上振れだと説明しています。
ただ、一株利益の+49%は、そのまま受け取らないほうがいい数字です。前年同期は、ブラジルの税務当局との争いで約6億1,900万ドルの費用を一度に計上していて、利益率が5ポイント以上押し下げられていました。 比べる相手が凹んでいたので、伸び率は大きく見えます。
3ヶ月前、広告は「この先数年の中心」でした
前の四半期、共同CEOのグレッグ・ピーターズは広告の改善についてこう言っていました。
3ヶ月前:「こうした改善こそが、この先数年で私たちが単価と収益化を高められる機会の、大部分です」
今回、同じ人の口から出たのは、目標に届いていないと認める言葉でした。
今回:「ただ、現時点では今年の意欲的な目標に少し届いていません」
今回:「それでも、広告事業は今年80%を超えて伸びています」
司会役の財務担当者も、広告の話題に入るところで「今年の見通しがわずかに変わったことを受けて」と前置きしました。株主向けのレターを開くと、その「わずか」の中身が書いてあります。2026年の広告売上の見通しを、約30億ドルから約27億ドルへ引き下げています。 1割ほどの下方修正です。
💡ガイダンス(見通し)=会社が自分で出す業績予想。ここが下がると、会社自身が「思っていたより進んでいない」と認めたことになります。
理由も、会社ははぐらかしませんでした。「展開の遅れと、提携先とのシステム連携の遅れ」。そして、これを「長期的により良い戦略上の位置に立つための、短期の小さな痛手」と位置づけています。
80%成長と目標未達は、矛盾しません。80%伸びても、狙っていたのはもっと上だった、ということです。
アメリカについて、経営陣が自分から「足りない」と言いました
広告の次に変わったのは、視聴時間の言い方です。
3ヶ月前:「2026年上半期の視聴時間は2%伸びました。2025年の1.5%から、わずかに加速しています」
今回:「はっきり言っておくと、視聴時間はもっと速く伸ばしたい。満足していません」
3ヶ月前の「加速」は、共同CEOのグレッグ・ピーターズが説明会で言った言葉です。今回、同じ指標について不満を口にしたのは財務責任者(CFO)でした。
もう一人の共同CEO、テッド・サランドスは、アメリカを名指ししました。
「アメリカも機能しています。ただ、伸びるはずの速さでも、私たちが望む速さでも伸びていません」
「アメリカでは、もっと良い実行が必要です」
言葉だけではありません。作品の責任者(チーフ・コンテンツ・オフィサー)が、ベラ・バハリアからピーター・ライスに交代しました。人員削減も発表しています。質問したアナリストの表現では、2022年以来の規模です。
一方で、アメリカの解約率については具体的に答えています。
💡解約率=一定期間に会員をやめた人の割合。低いほど、会員がサービスに留まっています。
経営陣の答えはこうでした。
「第3四半期の解約率は、世界全体でもアメリカでも前年より改善しました。会社の見込みより良い数字です」
やめる人は減っている。でも、見ている時間の伸びは、経営陣自身が足りないと言っている。アメリカで起きているのは、この組み合わせです。
前に進んだのは、フランスのテレビ局でした
後退ばかりではありません。3ヶ月前より、はっきり一段進んだ話が1つあります。
ネットフリックスは、フランスの民放テレビ局TF1の番組を、チャンネルごと自社のサービスに取り込みました。3ヶ月前の評価はこうでした。
3ヶ月前:「会員がどう反応し、どう使っているかの初期の結果は、とても有望です」
今回:「これまでの初期の分析とテストでは、TF1の視聴は、私たちのプラットフォームに上乗せになっていることが示されています」
「有望(promising)」から「上乗せ(incremental)」へ。期待の言葉が、検証の結果を述べる言葉に変わりました。
「上乗せ」の意味は大事です。TF1の番組を見ている時間が、ネットフリックスのドラマを見る時間を食っているだけなら、会社にとっては何も増えていません。そうではなく、純粋に視聴時間が足されていると、会社は初期の分析で確かめたと言っています。
ブラジルでも動きがありました。現地のテレビ局グロボと、「両社の間で過去最大の作品ライセンス契約」を結んでいます。ディズニーとの契約で配信した『アイス・エイジ』の映画については「5本すべてが私たちのトップ10に入りました」。インドでは第3四半期の視聴時間が24%伸び、売上は前年比で20%近く伸びています。
ただし、どれも金額は示されていません。年に500億ドル規模の売上がある会社で、これらが数字をどれだけ動かすのかは、まだ分かりません。
3ヶ月前に語っていて、今回は出てこなかったもの
ゲームの「11倍」と、生成AIの「約300タイトル」。 3ヶ月前に数字つきで出ていたこの2つが、今回の説明会では一度も出ませんでした。
3ヶ月前の言葉はこうです。ゲームは「クラウドゲームの月間アクティブプレーヤーは11倍に増えました」。生成AIは「生成AIを使った制作工程は、およそ300タイトルで使われています」。
消えてはいないものの、数字が言葉に置き換わった話もあります。通期の売上です。3ヶ月前の財務責任者は「通期の売上成長は13〜14%」「前年からおよそ60億ドルの上積み」と数字で語っていました。今回の説明会で出たのは「通期の見通しは達成するつもりです」という言葉だけです。レターのほうには通期売上511億ドル(+13%)と書いてあり、これは3ヶ月前の「13〜14%」の、下の端にあたります。
逆に、説明会で触れなかったからといって後退ではないものもあります。前の四半期に経営陣が「過去最大」と言っていた自社株買いは、今回の説明会では話題になりませんでした。ですがレターを見ると、この四半期も48億ドルの自社株買いを行い、四半期として過去最大を更新しています。
答えが出なかったことと、次の四半期の数字に混ざるもの
質疑応答では、アメリカの視聴と経営陣の交代について、3つの証券会社が続けて質問しました。返ってきたのは「戦略を根本から変える必要は無い。必要なのはアメリカでの実行力」という言葉と、作品ラインナップの紹介でした。何をどう変えて、いつ数字に出るのかは示されていません。
人員削減についても、2社が聞きました。そのうち1社は、どれだけ費用が浮くのかを聞いています。答えは「2027年への影響額を具体的に数字で示すつもりはありません」でした。
次の四半期の数字には、一時的なものが混ざります。
- 人員削減の費用で、第4四半期の営業利益率は約1.2ポイント押し下げられる(会社のレターに記載)
- 第4四半期に不動産の取引が完了する予定で、通期のフリーキャッシュフロー(本業で稼いだ現金から投資を引いて、手元に残る現金)の見通しが125億ドルから約120億ドルへ下がっている
1つ目は、利益率が下がって見えても本業の悪化ではない、ということです。ただ、その費用で何がどれだけ節約されるのかが言われていないので、来年の利益にどう効くかは、まだ判断できません。
2027年の見通しは「通期の見通しを出すのは時期尚早」として、来年1月に先送りされました。言ったのは「二桁の売上成長を維持したい」という目標だけです。アナリストから「来年、15か国で広告付きプランを始めるのか」と聞かれ、会社は否定しませんでした。広告の遅れを取り戻せるかどうかは、その展開とも重なります。
次の決算で、僕の読みが外れたと分かる形
今回の僕の読みは、「本業の数字は崩れていない。ただ、いちばん伸びしろのある広告と、いちばん大きな市場のアメリカで、経営陣自身が実行の遅れを認めた回」です。
これが間違っていたと分かるのは、2027年1月の決算です。
- 2027年の売上成長の見通しが10%を下回る
- 広告について、80%を超える伸びのペースが崩れたと開示される
- アメリカの視聴について、また「満足していない」側の言葉が出てくる
逆に、良いほうに外れる形もあります。広告の遅れが言葉どおり「短期の痛手」で終わり、1月に広告の見通しが再び引き上げられた場合です。そのときは、今回の「少し届いていない」は通過点だったことになります。
ここに書いたのは、2026年10月20日の説明会とその日のレターまでに分かっていることです。
「満足していない」と経営陣が自分から言う会社は、多くありません。言った以上、次の回で何が変わったかを説明する責任が生まれます。1月の説明会で、それがどんな言葉で出てくるか。今回の言葉の隣に置いて確かめます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。