新しい商品を次々に出しているのに、会社の数字の伸びは3ヶ月でずいぶん小さくなりました。
スマホで株を売買するアプリとして、日本でも名前を知っている人が多い会社です。アメリカの個人投資家向けの証券会社、ロビンフッドです。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——ロビンフッドは、何で稼いでいる会社でしょう
ロビンフッドは、株の売買手数料を取らないことで有名になりました。「手数料がタダなら、どこで儲けているのか」と思うのが自然です。
日本のネット証券も、国内株の手数料を無料にする流れが続いています。あれと同じで、売買1回ごとの手数料が主役ではありません。この会社の収入は大きく分けると、取引が起きるたびに入るお金、お客さんから預かったお金に付く金利、有料会員の会費、の3つです。最近はこれに、自社で立ち上げたブロックチェーン(取引の記録を多数のコンピューターで共有する仕組み)の手数料が加わりました。
ここで覚えておいてほしいのは1点だけです。取引のお金は市場が活発かどうかで上下します。金利のお金は、預かっているお金の量で決まります。 だからこの会社では、「どれだけお金が入ってきたか(純入金)」と「お金を入れたお客さんが何人増えたか」が、売上を下から支えるエンジンになります。
この記事の結論は、そのエンジンのところにあります。
商品の言葉は「検討」から「出荷」へ進みました
まず、良くなった側から書きます。3ヶ月前と比べて、新しい商品についての言い方ははっきり前に進んでいました。
1つ目は、無期限先物です。 3ヶ月前、時期を聞かれたCEOはこう答えていました。
「時期は言いませんでした。ただ、決算の場で時期を言わなかったことを、積極的にやるつもりが無いという意味には取らないでください」
今回、CEOの口から出たのは時期ではなく結果でした。
「私たちは、いわゆる本物の無期限先物を提供する、アメリカで最初の証券会社になりました」
自社のデリバティブ取引所で動かし、15分ごとに決済する仕組みだと説明しています。
💡無期限先物=満期の無い先物取引。普通の先物は決まった日に決済されますが、これは期限が無く、持ち続けられます。暗号資産の世界で広く使われている取引です。
「時期は言えない」から「もう出した」へ。言葉が1段ではなく、2段進んでいます。
2つ目は、自社のブロックチェーンです。 3ヶ月前に出ていた数字は、分散型取引所での取引額が120億ドル超でした。今回はローンチからの累計で1,000億ドル超。CEOはこう言いました。
「正直に言って、チェーンと周辺の仕組み、そしてウォレットの伸びは、私たちを驚かせました。私たちの想定より高かったのです」
経営陣が自分の想定を上回ったと認めるのは、珍しいことです。
3つ目は、AIに運用を任せる口座です。 3ヶ月前は「10万人以上が実際に連携した」と人数で語っていました。今回は、その口座に入っている残高が2億5,000万ドル超です。人数から、実際に預けられたお金へ。数え方が一歩重くなりました。
ほかにも、年換算の売上が1億ドルを超える事業は13本から14本に増えています。24時間365日の株式取引も「年内にロビンフッドに来る」と予告しました。商品を作る力については、3ヶ月前より強い言葉が並んでいます。
売上は過去最高で、伸び率は32%から12%になりました
ところが、会社全体の数字は逆の向きに動いていました。
- 売上 14億ドル(前年同期比 +12%。前の四半期は+32%)
- 調整後EBITDA 8億800万ドル(前年同期比 +9%。前の四半期は+35%)
- 一株利益 0.51ドル(前の四半期は0.62ドル)
💡一株利益(EPS)=会社の純利益を発行済みの株数で割った、1株あたりの利益。
💡調整後EBITDA=本業でどれだけ稼いだかを見るために、会社が金利や税金、減価償却などを除いて出す利益の数字(non-GAAP=会計基準どおりではない、会社独自の数字)。
売上14億ドルは、1ドル150円で約2,100億円です。
財務責任者は今期も前の四半期も「過去最高(record)」という言葉を使いました。
3ヶ月前:「売上は32%伸びて、過去最高の13億ドルになりました」
今回:「売上は12%増えて、過去最高の14億ドルでした」
「過去最高」は残りました。変わったのは、その後ろに付く伸び率です。32%が12%に、35%が9%になっています。僕が手を止めたのは、ここでした。毎年伸びている会社は、毎回が過去最高になります。だからこの会社では、「過去最高」より伸び率のほうが情報を持っています。
一株利益については、会社は今回から新しく調整後の一株利益 0.60ドルを出しました。財務責任者の説明では、0.51ドルには保有している投資の時価評価によるマイナス0.07ドルが含まれています。投資先の値動きで利益がぶれるので、それを除いた数字も見せる、という理由です。
純入金は、四半期の年率を言わなくなりました
さきほどのエンジンの話に戻ります。
💡純入金=お客さんが口座に入れたお金から、引き出したお金を引いた額。証券会社にとっては、預かり資産が増えていく速さそのものです。
3ヶ月前、CEOはこう言っていました。
「過去最高の純入金220億ドル。年率にすると28%の伸びです」
今回の純入金は160億ドル(1ドル150円で約2.4兆円)。そして、四半期の年率は出てきませんでした。代わりに話は年初来の数字に移り、「年間の純入金20%増という目標を、もう超えた」と語られました。年初来の純入金は680億ドル超です。
年初来で目標を超えたのは事実です。ただ、前の四半期で自分から出していた「年率28%」という物差しを、今回は使っていません。
10月の純入金は130億ドル超で、月としては記録だと説明されました。ただし財務責任者自身が、そのうち60億ドルは、パソコンメーカー・デルの創業者夫妻の財団からトランプ口座への寄付だと添えています。
💡トランプ口座=アメリカ政府が18歳未満の子どもに用意した投資口座の制度。ロビンフッドはこの制度に深く関わっていて、純入金にもすでに効果が出ていると説明しています。会社の説明では、デル財団の寄付で2,500万人の子どもの口座に250ドルずつが入りました。
寄付は一度きりのお金です。130億ドルから60億ドルを引くと、残りは70億ドルになります。
前の四半期に「最重要の指標」と言った数字が、出てきませんでした
この決算でいちばん重い変化は、言葉が変わったことではなく、言葉が消えたことでした。
3ヶ月前、財務責任者はこう言っていました。
「入口の伸びが戻ってきたのもうれしいことです。この四半期、お金を入れたお客さんが100万人近く増えました」「これは今後、私たちの最も重要な指標の1つになります」
今回の冒頭の説明で、この「お金を入れたお客さん」の数は一度も出てきません。質疑で聞かれて、初めて財務責任者が答えました。
「お金を入れたお客さんの伸びを、もう一度加速させるために手を打ち始めています。そして第3四半期は、第1四半期と同じくらいでした」
前の四半期は相場の追い風といくつかの新規上場で押し上げられた、という説明です。最重要と宣言した指標を、3ヶ月後には自分から言わなくなった。そして聞かれたときの答えが「加速させるために手を打ち始めた」でした。僕の手がもう一度止まったのは、ここです。伸びていれば、冒頭で言ったはずだと読みます。
資金の少ない口座のデイトレードを制限する規制が、6月に撤廃されました。前の四半期にはこれを「良い追い風だった」と語っていましたが、今回は触れていません。
10月の取引の様子も、3ヶ月前より弱い言い方になりました。3ヶ月前は「7月の1日あたり取引量は、過去最高だった第2四半期と同じくらい」。今回は「非常に強かった第3四半期と比べて、約5%少ない」「スプレッドも少し狭まっている」です。伸びているのは、出来事の結果に賭けるイベント契約の「約10%増」だけでした。
💡スプレッド=買値と売値の差。この幅が狭まると、取引1回あたりで証券会社に入る分が薄くなります。
3人が同じことを聞いて、答えは「1四半期で判断しない」でした
質疑応答では、純入金とお客さんの伸びについて、別々の証券会社のアナリストが3回、角度を変えて聞きました。「20%の目標を少し下回って推移している」「どちらも今期は少し弱かった」「月間の利用者は1,300万〜1,400万人のあたりで止まっている」。
財務責任者の答えは「1ヶ月、1週間、1四半期を重視しすぎないようにしている」。月間の利用者については「正直に言うと、それを目標にはしていない」「結果として出てくる指標だ」でした。そして、話は10月の記録的な入金に移りました。60億ドルの寄付を含む、あの数字です。
3回聞かれて、伸びがいつ戻るのかも、どれだけ戻るのかも出てこなかった。ここは晴れていない論点です。
取引1回あたりの収益の弱さも、2人のアナリストが聞きました。こちらには具体的な答えがありました。暗号資産では、利回りが付くステーブルコイン(ドルと価値を揃えた暗号資産)の預け入れサービスが5億ドル超に増え、その分の収益化が普段より低い。それを除けば前の四半期並み、という説明です。
数字を良く見せていたものも、いくつかあります。
- ブロックチェーンの手数料は、8〜9月の混雑で押し上げられた可能性があります。アナリストにそう聞かれて、経営陣は否定しませんでした
- その手数料は四半期で約5,000万ドルですが、約半分を基盤の提供元と分け合うので、手元に残るのは約2,500万ドルです。財務責任者は、まだ「柱」とは呼ばないと言っています
- 会社の説明では、金利が0.25%動くごとに売上が約1.5%動きます。ここは会社の努力の外にあります
一方で、隠していない点もあります。10月の入金に寄付が入っていることは、聞かれる前に財務責任者が自分から言いました。投資の時価評価の影響も、自分から金額を出して分けています。悪い数字を混ぜて見せる会社ではありません。言わなくなった数字がある会社です。
見通しは経費だけで、売上は語られていません
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。
この会社は売上や利益の見通しを出していません。出しているのは経費の見通しだけで、今回は年間の調整後の経費(株式報酬を含む)を26億7,500万〜27億5,000万ドルとしました。上限を2,500万ドル下げ、中心では1,300万ドル低くなっています。小さな効率化です。
売上の側で比べられるのは、市場の予想です。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。
2026年通期の売上の市場予想は、平均で約53億3,000万ドル。1〜9月の売上を足すと、約37億8,000万ドルです。予想に届くには、10〜12月期に約15億5,000万ドル、つまり今回の14億ドルから約1割増やす必要があります。
それに対して、財務責任者が語った10月は「取引量は約5%少ない」「スプレッドは少し狭い」でした。会社が次の四半期の売上を約束したわけではありません。ただ、会社自身が語った10月の様子は、1割増の方向を向いていません。
2027年の計画は「1月と2月に戻ってきて、全体の計画を示します」として、今回は出てきませんでした。
なぜ、商品は伸びて数字は鈍るのか
商品が次々に出ているのに、会社全体の数字が鈍る。その理由は、新しい商品の多くがまだ売上に効く段階にないからです。
ブロックチェーンについて、財務責任者は「チームは、いまの時点では売上を目標にしていない」と言いました。手数料を高く取らずに、利用者を集めるほうを優先しています。24時間の株式取引は「年内」、決算の数字に賭ける予測市場は「承認待ち」。お客さんを集めるための新しい商品は、「今年のうちに作って、2027年に出す」と説明されました。
予測市場(出来事の結果に賭ける取引)では、Crypto.comと、そこから分かれた取引所OG.comの2社と提携しました。この提携では、現金を払わずに1%の出資持分を受け取り、提携の深さによって最大10%まで増やせます。これは持分であって、売上ではありません。
つまり、いま伸びている商品の多くは、利益になるのが2027年以降の設計になっています。その間、売上を支えるのは今までどおり取引量と預かり資産です。そして、その2つのエンジンのところで、会社は物差しを出さなくなりました。
商品の言葉が前に進んだのは本当です。数字の言葉が後ろに下がったのも本当です。この2つは矛盾していません。種は増えています。収穫はまだ先です。
次の決算で、お客さんの数は冒頭に戻ってくるか
今回の読みは、「商品の手応えは強いが、売上を支える入金と顧客の伸びはまだ鈍っている」です。これが外れたと分かる形を書いておきます。
- 次の決算の冒頭で、お金を入れたお客さんの数を自分から出し、それが前の四半期より加速している
- 10〜12月期の純入金が、デル財団の寄付を除いても、7〜9月期の160億ドルを上回る
逆に、読みより悪い方へ外れる形もあります。売上の伸びが1桁台に落ち、お客さんの数がまた出てこない場合です。そのときは、エンジンの鈍りは1四半期の話ではなかったことになります。
ここに書いたのは、2026年10月27日の説明会までに分かっていることだけです。10月の取引量も、寄付の入金も、まだ途中の数字です。
この会社は、商品を作る速さでは群を抜いています。それでも、売上に効いてくるのは新商品の数ではなく、お金が入ってくる速さです。今回はそこが、言葉の中から1つ抜けていました。次の回でその数字が戻ってくるのか、戻らないのか。また読んで、書きます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。