最高の1年だったのに、僕は来年の話のほうが気になりました【ビザ(V)2026年7〜9月期決算】

誰の財布にも1枚は入っているカードの会社が、過去最高の年度を締めくくりました。

年間の売上は460億ドル、前の年より15%増えています。1ドル150円で計算すると、約6.9兆円です。それなのに、説明会でいちばん質問が集まったのは「なぜ来年はもっと伸びないのか」でした。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2026年度の第4四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——ビザは、お金を貸していません

「クレジットカードの会社」と聞くと、カードを発行して、利用者にお金を立て替えて、金利や手数料で稼ぐ会社を思い浮かべると思います。ビザは、それをやっていません。

カードを発行して、利用者にお金を貸しているのは銀行やカード会社です。日本なら、券面にVISAのマークが付いた銀行やカード会社のカードがそれにあたります。ビザがやっているのは、お店で払ったお金が、お店の銀行と、カードを出した銀行のあいだを通る「道」を貸すことです。道を1回通るたびに、少しずつ通行料が入ります。貸し倒れのリスクは、ビザではなく銀行の側が持っています。

高速道路にたとえると分かりやすいと思います。車を作るのも、運転するのも別の人。ビザは道路と料金所を持っていて、通った台数と距離で稼ぐ会社です。

ここで1つ、この記事の結論に効く仕組みがあります。どの道を使うかを決めるのは、カードを発行する銀行です。だからビザは、銀行と数年ごとに契約を結び直し、そのたびに「うちの道を使い続けてください」という意味の還元金を払っています。これをインセンティブと呼びます。契約の結び直しが多い年ほど、払い戻す額が増えます。来年はその「結び直しの年」にあたる、というのがこの決算のいちばん大事な話です。

「想定より良かった」が「想定どおり」になりました

7〜9月期の数字は、どれも2桁の伸びでした。

  • 売上(純収益) 121億ドル(前年同期比 +13%)
  • 調整後の一株利益 3.48ドル(前年同期比 +17%)
  • 付加価値サービスの売上 40億ドル(前年同期比 +31%・為替の影響を除いた数字)

💡調整後=会社が一時的な損益を除いて示す数字。
💡付加価値サービス=道を貸す以外の商売。不正利用の検知、銀行向けのカード処理の代行、加盟店向けのマーケティングやコンサルティングなどです。

ただ、財務責任者の言い方は3ヶ月前と変わっていました。

3ヶ月前:「第3四半期の純収益は前年同期比14%増で、私たちの想定を上回りました」
今回:「第4四半期の純収益は、名目でも為替の影響を除いても前年同期比13%増で、私たちの想定どおりでした」

一株利益も想定を上回ってはいます。ただ、上回った理由が変わりました。3ヶ月前は「主に、純収益の伸びが想定より強かったため」。今回は「主に、税率が想定より低かったため」です。

税率は18.4%でした。会社の説明では、最近の訴訟の和解に関連した税務上の効果によるものです。来年度には繰り返しません。売上で上回った四半期から、税金で上回った四半期へ。 同じ「上振れ」でも、中身の質は下がっています。

ステーブルコインは「試験」を抜けて、本番に入りました

一方で、はっきり前に進んだ言葉もあります。

💡ステーブルコイン=ドルなどの通貨と1対1で価値が連動するように作られたデジタルのお金。値動きが小さいので、送金や決済に使われ始めています。

3ヶ月前、社長兼CEOはこう言っていました。

「ステーブルコインは、世界各地で発行してきたステーブルコイン連動カードのような、いくつかの用途を除けば、まだ本当の意味で広がってはいません」

それが今回は、相手先の名前と金額つきの話に変わりました。

「Visa Directのステーブルコインによる事前資金と国境をまたぐ資金移動は、試験運用から商用の本番運用に移りました。最初の稼働パートナーは Inyo Global です」
「ステーブルコインでの決済は、年換算の取扱高が250億ドルを超え、前年の10倍になりました」

ここに出てくるVisa Directは、買い物ではなく送金の仕組みです。

💡Visa Direct=カードで買い物をするのではなく、人や会社にお金を送るためのビザの仕組み。

「まだ広がっていない」から「本番に移った」へ。言葉としては大きな一歩です。ステーブルコイン連動のカードプログラムは225を超えて前年比70%以上増え、9月30日に始まったドル連動のコイン(OpenUSD)は、10月15日までに流通量が8億ドルを超えたとも説明しています。

ただ、これがビザ全体の中でどれくらいの大きさなのか。それについては、僕の見立てではなく、CEO本人が答えています。次の節で書きます。

「AIが買い物をする時代は来た」と言い、質問には「まだ非常に早い」と答えました

もう1つの新しい話は、AIのエージェント(利用者の代わりに買い物をするAI)による決済です。

3ヶ月前:「エージェントによる商取引は、来るかどうかではなく、いつ来るかの問題です」
今回:「エージェントによる商取引がもう来ていることは明らかで、ビザの役割も明らかです。信頼を届けることです」

用意された原稿の中では、断定が一段強くなりました。本番で稼働しているAI関連のパートナーは約50社で、最近ではShopifyの決済(Shop Pay)も加わったと言っています。

ところが質疑応答に入ると、最初の2つの質問がどちらもこの話でした。「いつ業績に効くのか」「来年度の損益に意味のある影響は出るのか」。CEOの答えはこうです。

「まだ非常に早いと思います。そして当然ながら、事業全体という大きな構図の中では、ごく小さな額です」
「この先4四半期、そして2027年度を考えても、私たちの事業の巨大さという大きな構図の中では、すべてごく小さいままです」

原稿で「もう来た」と言い、質問には「ごく小さい」と答える。どちらも嘘ではないと思います。ただ、来年度の数字を動かす材料ではないことを、会社自身が先に認めています。正直な答え方だと思いました。

3ヶ月前に名前を挙げていた2つが、今回は出てきません

前の四半期に具体的に語っていたことが、今回は出てきませんでした。

1つ目は、OpenAIです。 3ヶ月前、CEOはこう言っていました。

「エージェントによる商取引の中で安全なビザ決済を可能にするため、OpenAIと提携できることを嬉しく思います」

今回のAIの話では、名前が挙がったのはAnthropicやShopifyの決済で、OpenAIへの言及はありませんでした。提携が終わったとは、会社は一言も言っていません。分かっているのは、今回は名前が出なかったことだけです。

2つ目は、ヨーロッパでの数字です。

「今後数年で、ヨーロッパでの獲得案件だけで、3,000万枚を超えるカードが新たに加わると見込んでいます」

3ヶ月前に数字つきで語っていたこの見通しにも、今回は触れていません。

そしてもう1つ、出す数字そのものが減ります。財務責任者は「月次の主要指標は第1四半期まで決算資料で示し、その後は四半期ごとの開示に戻します」と説明しました。これまで毎月追えていた取扱高の動きが、来年の春以降は3ヶ月に1回しか見えなくなります。

来年度の見通しは、市場の予想と並ぶか、少し下でした

会社が出した2027年度(2026年10月〜2027年9月)の見通しは、こうです。

  • 調整後の純収益の伸び=「2桁の前半」(おおむね10〜12%)。四半期では1〜3月期が伸びの底
  • 調整後の一株利益の伸び=「2桁の前半から、10%台の前半」(おおむね10%強〜13%前後)
  • 付加価値サービスの伸び=「20%台の前半から半ば」(CEO)

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

市場の予想は、売上が約508億ドル(今年度比で約+10%)、調整後の一株利益が約15ドル(今年度の13.27ドル比で約+13%)あたりでした。売上の「2桁の前半」はおおむね一致しています。一株利益の「2桁の前半から10%台の前半」は、市場の+13%に対して、届けば上限、届かなければ下という位置です。

一株利益の伸びをテストにたとえるなら、「来年も80点台は取ります」と言った生徒に、周りは83点くらいを期待していた、という形です。悪い点ではありません。ただ、今年の85点からは下がる話をしています。今年度は一株利益+16%、売上+15%、付加価値サービス+30%でした。来年度は、会社自身が減速を見込んでいます。

直近の10〜12月期も、純収益の伸びは「2桁の前半で、第4四半期を1ポイント弱下回る」、一株利益の伸びは「10%台半ばの下の方」(14%前後)という見通しです。減速の理由として財務責任者が挙げたのは、「主に、FIFA関連の収入と価格改定の効果が無くなるため」でした。

「なぜもっと伸びないのか」に、答えは数字で出ませんでした

質疑応答で形を変えて何度も出てきたのが、冒頭の問いです。来年はなぜ一株利益がもっと伸びないのか。価格改定の効果と、銀行への還元金の増加は、どう相殺されるのか。

ここで「その前に」の節の話が効いてきます。財務責任者はこう答えました。

「来年度は取扱高の約25%が契約更新を迎えます。2026年度に見た20%に対してです」

更新が多い年は、銀行への還元金が増えます。実際、この四半期の還元金(インセンティブ)はすでに前年同期比+21%で、売上の伸び(+13%)より速く増えています。価格改定については「2026年度と同じくらいの規模とタイミングで、大半は年度の後半に効く」という説明でした。

ただ、還元金の増加と価格改定がどれだけ打ち消し合うのか、その差し引きは最後まで数字になりませんでした。「私たちは純収益の伸びで事業を運営しています」という前提が繰り返されるだけです。同じ問いが何社からも続けて出たのは、答えがそこで止まっていたからだと思います。

アメリカの取扱高が+10%と強いことについて、一時的か構造的かを聞かれたCEOの答えは「判断するのが、ただ難しすぎると思います」でした。土台は雇用だが、どれだけ強く、いつまで続くかは分からない、という答えです。

数字を飾ったものも、いくつかあります。

  • この四半期の一株利益の上振れは、訴訟和解に絡む税務上の効果によるもの
  • FIFAワールドカップ関連のマーケティング収入と旅行の消費。来年度の最初の四半期にはこれが無くなる
  • 買収(PrismaとNewPay)で、売上が約1ポイントかさ上げされている
  • アメリカの取扱高には、燃料費の上昇も効いている

加えて、事業処理やデータ処理の売上の伸びは「主に価格改定による」と説明されていて、為替の変動は来年度の逆風になると見込まれています。どれも会社が自分で開示している話です。隠しているのではなく、並べると「今年の+15%には、来年は繰り返さないものが混ざっていた」ということになります。

それでも、確かに続いているもの

悪い話ばかりではありません。

付加価値サービスは、4〜6月期の+34%(38億ドル)から、7〜9月期の+31%(40億ドル)へ。少し鈍ったとはいえ、30%台の伸びが続いています。年間では140億ドル(約2.1兆円)で、CEOによれば2023年度のほぼ2倍です。道を貸す以外の商売が、ここまで大きくなっています。

アメリカの取扱高は2四半期続けて+10%。国境をまたぐ取引(ヨーロッパ域内を除く)は+12%から+14%へ加速し、そのうち国境をまたぐネット通販は+17%でした。顧客の側でも、Navy Federal(アメリカの大手信用組合)が付加価値サービスを含めた広い範囲で契約を更新し、Wells Fargo、Marriott、Air India などの名前も挙がっています。CEOは大型の更新を前に、契約が付加価値サービスまで含めて「広く、深く」なっていると答えました。

株主への還元も続いています。この四半期の自社株買いは40億ドル、配当は16%の増額です。

次の決算で、何が見えれば読みが外れたと分かるか

今回の読みは「強い1年の後の、更新の年」です。新しい話(ステーブルコインやAIの決済)は本物の一歩ですが、来年度の数字を動かす大きさではありません。来年度を決めるのは、還元金の増加と価格改定の綱引きです。この読みが外れたと判断するのは、次の2つです。

  1. 来年の前半に、付加価値サービスの伸びが20%を下回る
  2. 純収益の伸びが「2桁の前半」を割り込み、還元金の増加が価格改定を上回ったと経営陣が言う

逆に良い方へ外れるなら、それは1〜3月期です。会社が「伸びの底」と言った四半期で、底が浅かった場合です。


契約更新の25%がどの条件で決まるのかは、まだ会社の外に出ていません。

月次の数字が出なくなる前に、10〜12月期まではまだ毎月の動きが見えます。1月の説明会で、還元金と価格改定の差し引きに初めて数字が付くかを見ます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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