期待していた数字が、今回だけ出てこなくて戸惑いました【KLA(KLAC)2026年7〜9月期決算】

半導体の工場に並ぶ機械の中で、回路を1本も作らないのに、工場が増えるほど出番が増える装置があります。

作るのではなく、調べる装置です。その分野の最大手が、アメリカのKLAという会社です。今回の決算説明会で、この会社は来年の市場の見立てを大きく引き上げました。そして同じ説明会で、前の回には数字で言っていたことを、ひとつ言わなくなりました。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣がアナリストや投資家に向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「調べる装置」が、なぜ売れるんでしょう

「半導体の製造装置」と聞くと、シリコンの円盤(ウェハー)に膜を重ね、削り、回路を刻んでいく機械を思い浮かべると思います。日本なら東京エレクトロンが作っている側の機械です。KLAの装置は、そのどれでもありません。刻まれた回路に傷や汚れがないか、線の幅やズレが設計どおりかを、工程の途中で何度も調べる装置です。会社はこれを「プロセス制御」と呼んでいます。

たとえるなら、料理の工程ではなく味見です。慣れた定番料理なら、味見は最後に1回で足ります。初めて作る料理を、初めての厨房で、しかも大量に作るときは、途中で何度も味を見ます。

半導体もこれと同じ形をしています。新しい世代の回路と、新しく建てた工場ほど、検査の回数が増えます。 今回の説明会でも、経営陣はDRAM(パソコンやサーバーの作業用メモリ)の新しい工場について、こう言っていました。

「製品によっては、DRAMでの検査の比率が、最先端のロジック半導体と同じくらいの水準になっています」

だからこの会社の売上は、二重に効きます。①半導体の工場への投資そのものが増える。②そのうち検査に回るお金の割合も、新しい工場ほど上がる。この記事の結論は、ほとんどこの2つの掛け算で説明できます。

来年の市場の見立てが、「他人の数字」から「自分の数字」に変わりました

KLAが毎回の説明会で示すのが、WFEと呼ばれる市場の大きさです。

💡WFE=ウェハーに回路を作る工程(前工程)で使う装置の、1年間の世界市場の合計。KLAの装置もこの中に入ります。

3ヶ月前と今回で、言い方がこう変わりました。

3ヶ月前:「市場のコンセンサスとしては、おおむね1,900億ドル前後という見方があると思います」
今回:「2027年のウェハー装置市場は、2,000億ドルを超えると現時点で見ています」

数字が1,900億から2,000億超へ上がっただけではありません。3ヶ月前は「世の中ではこう言われている」と他人の数字を引用していたのが、今回は「私たちはこう見ている」と自分の前提として言い切りました。 2,000億ドルは、1ドル150円で約30兆円です。

ほかにも、同じ方向の変化が並んでいます。

  • 2026年の市場:「1,500億ドル台前半」→「1,500億ドル台半ば」
  • 2026年の下半期の売上が上半期を上回る幅:「約20%」→「約25%」
  • 見通しの確かさ:3ヶ月前は「顧客からの前例のない見通し」、今回は「私たちの営業の見込み案件の見通しは、前例がない」

いちばん大きく変わったのは、2030年に向けた中期の目標です。3ヶ月前、経営陣は「2030年に関して、何かを見直せる立場にはまったくありません」と言っていました。今回、その据え置きの言葉が消えました。

「そのモデルの前提は、当然ながら2030年より前に超えることになります」

据え置きから、「前倒しで超える」へ。新しい目標の数字そのものは、今回も出していません。

実績も、最高を更新しました

  • 売上 41.4億ドル(前の四半期比+13%、前年同期比+29%)。前の四半期の36.6億ドルに続いて、また過去最高です。1ドル150円で約6,200億円
  • 調整後の一株利益 1.22ドル(会社の予想は1.16ドル±0.10ドル)
  • 営業利益率 46.1%。会社は「初めて46%を超えた」と言っています
  • サービス売上は8.5億ドルで前年同期比+14%

💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的だと考える項目を除いた数字。この説明会は、特に断らない限り調整後の数字で話す、と冒頭で宣言しています。

売上は会社の予想(40億ドル±2億ドル)の中央をやや上回った程度で、驚くほどの上振れではありません。ただ、2026年の下半期が上半期より伸びるという3ヶ月前の見立てが、そのとおり実績になり始めています。経営陣は「計画していた成長の加速を示すものです」と言いました。

先端パッケージ(複数のチップを1つにまとめる工程。AI向けの半導体で欠かせない)向けの売上は、2026年に約11億ドル、前年比+70%超の見通しです。3ヶ月前に出した数字を、そのまま維持しています。

次の四半期の見通しも、市場の予想より上でした

10〜12月期について、会社は売上を約47億ドル、調整後の一株利益を1.44ドル±0.11ドルと示しました。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

アナリスト21人の売上予想の平均は44.9億ドルだったので、会社の見通しはそれを約5%上回ります。一株利益は22人の予想の平均が1.36ドルで、いちばん高い予想(1.41ドル)よりも、会社の見通しの中央のほうが上でした。

3ヶ月前の「下半期は上半期より約20%増」を素直に当てはめると、10〜12月期は44〜45億ドルくらいの計算になっていました。それを今回「約25%」に上げたので、47億ドルになっています。前回の自分も、市場の予想も、両方を少しずつ上回った形です。

ただし、これは大きな跳ね上がりではありません。7〜9月期の実績は予想の中央をやや上回った程度で、来年の市場の見立ても1,900億から2,000億超、つまり5%強の引き上げです。この会社は前の四半期にも、アナリストから「今年に入ってから市場の見通しを4回引き上げている」と指摘されていました。一気に景色が変わったのではなく、同じ方向に1段ずつ積み上がっている決算です。

3ヶ月前に数字で言っていた受注残が、今回は方向だけでした

ここで、僕は手が止まりました。

3ヶ月前、財務の責任者は受注残をはっきり金額で言っていました。

3ヶ月前:「受注残は約125億ドルになります」

短い一文ですが、金額まで言い切っていました。

💡受注残=注文は受けたけれど、まだ出荷していない分の合計。この会社では、注文から出荷まで平均で約12ヶ月かかります。つまり受注残は、来年の売上のかなりの部分を先に示す数字です。

今回の説明会で、受注残についての言葉はこうでした。

「受注残は引き続き増えています」「受注残が増えるペースとスピードは、重要なシグナルです」

増えている、とは言っています。ただ、いくらなのかは言っていません。 本人たちが「重要なシグナル」と呼んでいる数字を、方向だけにしました。

消えたのは受注残だけではありません。3ヶ月前は、売上の増分に対してどれだけ利益が増えたか(59%)や、自社株買いと配当で株主に返した金額(8.76億ドル)も具体的に言っていました。今回はどちらも出てきません。

なぜ言わなくなったのかの説明は、説明会の中にはありません。理由が分からない以上、悪い意味だと決めつけることもできません。それでも、来年の売上をいちばん直接に示す数字が、市場の見立てを引き上げた同じ回に、金額から方向に変わった。この並びは覚えておきたいと思います。

経営陣が答えきれなかったこと

この決算には、強い言葉に追いついていない部分がいくつかあります。

まず、粗利率の回復時期が後ろにずれました。 7〜9月期の粗利率は62.7%で、10〜12月期の見通しは62.5%±1ポイント。会社の目標レンジは63〜64%です。3ヶ月前は「価格の面で正常化が始まり、逆風から追い風に変わっていく」と言っていました。今回は、高止まりしているメモリの部品コストを理由に挙げ、「製品構成が同じなら、2027年の下半期に入るあたりで改善の傾向が見えるかもしれない」という言い方に変わっています。粗利率の質問は2つの証券会社から続けて出ましたが、63%以上へいつ戻るかは約束しませんでした。

💡粗利率=売ったお金のうち、製造の原価を引いて残る割合。

次に、作りたくても作れていないことです。経営陣はこう認めました。

「もっと出荷できたのは間違いありません。需要が、供給を上回っていました」

率直な答えです。ただ裏返せば、売上は需要ではなく、部品を揃えて組み立てる自社の能力で頭を押さえられています。さらに今回、前の回には無かった制約も出てきました。

「いくつかの顧客から納品を頼まれているのですが、自分たちの工場の準備を待っていて、保留になっています」

顧客の側のクリーンルーム(ほこりを極限まで減らした製造室)が間に合っていない、という話です。

そして、市場の伸び以上に自社が伸びるのかという質問には、3つの証券会社が角度を変えて聞きました。経営陣は伸びの理由(最先端の回路、DRAMの新しい工場、AI向けのメモリ、先端パッケージ)を並べ、「出したガイダンスにはかなり自信を持っています」と答えましたが、自社が来年どれだけ伸びるかの数字は出しませんでした。

7〜9月期の数字そのものにも、一時的なものが少し混ざっています。売上に占める中国の比率が9月に一時的に上がり(2026年は27〜29%、2027年は20%台前半の見通し)、上半期に供給が追いつかず出せなかった分が下半期に後ろ倒しで出ています。それを除いても、売上の伸びの大半は説明がつきます。ただ、この会社の売上はもともと、半導体メーカーが工場への投資を増やす時期と減らす時期の波の上に乗っています。今は、その波の上り坂です。

KLAの注文が、12ヶ月先まで埋まっている

まず、注文から出荷までの長さです。

経営陣によると、リードタイムは「平均で約12ヶ月前後で、少しずつ伸びている」。12ヶ月先まで注文で埋まっているということは、来年の売上の大部分は、いま手元にある注文でほぼ決まっているということです。だから経営陣は「今後数四半期は、前の四半期比で伸びていく」「より直線的に見える」と言えます。

その注文を生んでいるのは、AIです。AI向けの半導体を作るには、最先端の回路(2nm、1.4nmと呼ばれる世代)の工場と、AI向けの高速メモリ(HBM)を作るDRAMの工場と、チップをまとめる先端パッケージの工程が、同時に必要になります。経営陣は2027年について、メモリがこの会社の事業の約60%になると答えました。10〜12月期の半導体メーカー向けの装置売上も、すでにメモリ向けが約4割です。

ここで、最初の節の味見の話が効いてきます。AIのために建つ工場の多くは、新しい世代の回路を、新しい建屋で作る工場です。 投資の総額が増え、その中で検査に回る割合も上がる。今回DRAMの工場で起きていると経営陣が説明したのは、まさにそれでした。

供給の側も追いつこうとしています。経営陣は「主要な部品の生産ペースは、月ごとに上がっている」と言い、2029〜2030年の需要に向けて主要な部品メーカーと話を始めているとも答えました。

次の決算で確かめたいこと

今回の読みは「AI向けの工場投資の上り坂に乗り、その中で検査の比率も上がっている。ただ、受注残を金額で言わなくなり、粗利率と供給には宿題が残っている」です。

2027年1月下旬の次の説明会で、この読みが違っていたと分かるのは、たとえば次の形です。

  1. 2027年の市場の見立てが、2,000億ドルを下回る数字に下がる
  2. 2027年1〜3月期の売上見通しが、前の四半期より減る(「今後数四半期は前の四半期比で伸びる」が崩れる)
  3. 粗利率の見通しが、62%台からさらに下がる

逆に、受注残の金額がまた出てきて、それが125億ドルより大きく増えていれば、今回方向だけにした理由はそれほど気にしなくてよかったことになります。


ここに書いたのは、2026年10月28日の説明会までに分かっていることだけです。市場の見立ても、受注残も、次の回でまた動きます。

半導体の装置の会社は、良い時期には何四半期も続けて良い数字が出ます。だから、数字が良いこと自体より、経営陣が何を言い、何を言わなくなったかを、前の回と並べて見ていくしかないと思っています。KLAについても、次の説明会が出たら、受注残が金額で戻ってくるかどうかから読みます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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