僕は正直、驚きました。値下げ続きの半導体工場が「来年は平均単価1割増」と言ったのです【ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)2026年7〜9月期決算】

AIの話になると、名前が出るのは最先端の半導体ばかりです。でも工場の世界には、何年も前の世代の技術で、毎年少しずつ安くなっていくのが当たり前の領域があります。

その「安くなるのが当たり前」の側にいる台湾の会社が、今回の決算説明会で、来年の値段の向きが逆になると言いました。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「成熟した世代の受託工場」って、何でしょう

UMCは、自分の名前の半導体を売る会社ではありません。他社が設計した半導体を、注文を受けて自分の工場で作る会社です。この業態を「ファウンドリ(受託生産)」と呼びます。

出版にたとえると分かりやすいと思います。出版社が原稿を持ち込み、印刷所が刷って納める。UMCは印刷所の側です。

そして印刷機には世代があります。UMCの主力は、22ナノや28ナノと呼ばれる、最先端から何世代も前の技術です。これを「成熟ノード」と言います。最新鋭の印刷機ではなく、何年も使い込んで、仕組みが枯れた機械だと思ってください。

💡ナノ(nm)=回路の細かさを表す世代の呼び名。数字が小さいほど新しい世代です。22/28ナノは、この会社の売上の約35%を占めています。

使い込んだ機械で刷る仕事には、ひとつ決まった流れがあります。時間がたつほど、刷り賃が下がっていくことです。機械の代金を年ごとに費用として割り振る減価償却が終わりに近づき、同じ仕事を請けられる工場も増えるからです。

だから、この会社の経営陣が今回「単価の下落が続く環境から、意味のある上昇に転じる」と言ったのは、普通の値上げの話とは重みが違います。下がるのが前提の世界で、向きが変わると言ったのです。僕が驚いたのは、上がるという話そのものより、下がるのが当たり前の世界でそれを言ったことでした。

3ヶ月前は「建設的」、今回は「1割」でした

値段についての言い方が、3ヶ月でこう変わりました。

3ヶ月前:「価格環境はより建設的になっています。年間の価格の流れは想定より良く、2027年にはさらに意味のある価格の上昇を見込んでいます」
今回:「2027年は、平均単価の軌道の転換点になると見ています。単価が下がる環境から、第1四半期から意味のある上昇に向かう。平均単価は前年比で10%の上昇を見込んでいます」

ここで言う「単価」は、少し注意して読む必要があります。

💡平均単価(blended ASP)=全部の製品をならした、ウェハ1枚あたりの売値。同じ製品の値上げだけでなく、高い製品の比率が増えた分も含みます。

「良くなりそう」という空気が、時期(来年の第1四半期から)と幅(約10%)のついた見通しに変わりました。しかもCEOは、顧客との交渉について「かなり終盤の段階にあるので、いま示した見通しにはかなりの自信がある」と付け加えています。交渉は第3四半期に始め、第4四半期にかけて詰めている、とも言いました。

AIの売上の目標も、物差しごと変わりました。

3ヶ月前:「3年後には、AI関連の売上が10億ドルを超えると見ています」
今回:「3年後を見ると、AI関連は、おそらく売上の4分の1を超えるだろうと見ています」

金額の目標から、売上全体に占める割合の目標へ。質疑で「売上全体の25%という意味か」と確認され、CEOは「今後3年間の売上のことを言っています」と答えました。ちなみに2026年のAI関連の売上は約3億ドル(1ドル150円で約450億円)と示されています。

光の半導体も、一段進みました。 3ヶ月前は「12インチの光集積回路を、初めて量産で顧客に納めた」という話でした。今回は「複数のハイパースケーラーで、1.6Tの光トランシーバー向けの基盤の認定を取った」。顧客との話し合いは「検証から、需要の計画に移った」そうです。

💡ハイパースケーラー=巨大なデータセンターを自前で運営する大手のクラウド企業。今回、社名は出ていません。
💡光トランシーバー=データセンターの中で、電気の信号を光に変えて遠くへ速く送る部品。1.6Tは1秒あたり1.6テラビットを送れる世代です。

工場は、ほぼフル稼働でした

稼働率は、3ヶ月で85%から92%に上がりました。

  • 売上 742.4億新台湾ドル(前期比 +8%)
  • 一株利益 1.32新台湾ドル(米国預託証券1株あたり0.206ドル)
  • 粗利率 34%(前期は32.5%)
  • 稼働率 92%(前期は85%)

💡稼働率=工場が作れる量のうち、実際に動かしている割合。満席率のようなものです。
💡粗利率=売上から、作るのにかかった費用を引いた残りが、売上に占める割合。
💡米国預託証券(ADR)=外国の会社の株を、米国の市場で売買できるようにした証券。UMCはニューヨーク証券取引所で取引されています。

稼働率の流れは、2026年1〜3月期が79%、4〜6月期が85%、今回が92%。3四半期続けて上がり、次の四半期も90%台前半を見込んでいます。ウェハの出荷は前期比+7.3%で、12インチ換算で120万枚を超え、過去最高でした。22ナノの売上に占める割合も17.5%から18.3%へ上がっています。

CEOは「受注が積み上がっている(the backlog PO is piling up)」と言いました。値段の話は、この満席の工場の上で出てきた話です。

値上げの交渉で署名した契約の金額も、受注残の金額も、会社は出していません。 名前が出た顧客は、光の新事業の早い採用者だという1社(HyperLight)だけで、ハイパースケーラーは「複数」としか言っていません。手元にある実数は、稼働率と出荷と、CEOの口から出た「10%」です。

来年の値段は上がる、でも近い四半期は横ばいです

見通しの格上げは、値段とAIの比率の2つに集中しています。

次の10〜12月期の見通しは、粗利率が「前の四半期並み」、稼働率が「90%台前半」。近い四半期は、ほぼ今のままです。

そして来年について聞かれたCEOは、稼働率が90%を超えたいま、出荷は生産能力に縛られると説明しました。工場がほぼ埋まっているので、枚数はそれほど増やせません。だから来年の成長は「値段と製品構成で稼ぐ形になっていく」と答えました。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。今回の比較は、会社の前回の見通しと前回の言葉に対してで、アナリストの予想の平均とは比べていません。

粗利率については、財務責任者が一歩引いた言い方をしました。設備投資が増えて減価償却が重くなるため、粗利率は「以前の高い水準に近づく可能性は低い」。原材料のコストも、値上げで相殺しなければならない逆風だと言っています。値段が上がっても、コストも上がる。ここは見通しの中で、はっきり後ろ向きの言葉です。

「10%の中身」を、4つの証券会社が聞き続けました

この決算でいちばん大きい未解決の点は、看板の数字そのものにあります。

10%のうち、同じ製品の値上げはいくらで、高い製品が増えた分はいくらか。 これを、質疑で4つの証券会社が続けて聞きました。会社は分けませんでした。CEOは「全体をならして見るほうがずっと分かりやすい」と答え、財務責任者は「一般的な形でお伝えするのは非常に難しい。いまは10%がいちばん良い目安です」と答えています。

そのうえで、CEOは大事なことを自分から認めました。

「製品構成も一部です。そして一部は、インフレによるコスト上昇を反映したものです」

つまり10%には、コストが上がった分を顧客に転嫁した分が含まれています。値上げ=儲けが増える、とはそのまま読めません。財務責任者が粗利率に慎重だったことと、筋は合っています。

ほかにも、気になる点が3つあります。

  • 前の四半期に詳しく語っていたインテルとの12ナノの協業が、今回は一度も出てきません。 3ヶ月前は「順調に進んでいる」と言っていました
  • 先端パッケージで「10社以上の顧客、35以上の新製品を協議中」と数えていた話も、今回は繰り返されませんでした
  • パソコン向けについて、CEOは「いくらか弱さが出ている」と明言しました

光の新事業は、まだ先の話です。光関連の新しい設備は、本格的に立ち上がるのが2028年後半、フル規模になるのが2030年。2027年の光の売上の規模を聞かれたCEOは「大きくはならない」と答えています。

利益の側の一時要因も1つ。前の四半期の純利益は、本業の外の収入(保有株の評価益や配当など)で押し上げられていて、今年1〜9月の累計の純利益の大きな伸びにも、財務責任者自身が「営業外の収益の助けもあり」と言っています。今回の値段の話は、こちらとは別の、本業の話です。

なぜ今、使い込んだ機械の刷り賃が上がるのか

理屈は単純です。席が埋まった店は、値段を上げられる。

稼働率が79%から92%へ上がり、受注が積み上がり、来年も能力に縛られる。顧客から見ると、この世代の工場に頼める枠が足りなくなっています。普段なら下がっていく刷り賃が、ここで止まり、上を向く。CEOが値上げの交渉を第3四半期に始め、もう終盤だと言えたのは、この需給があるからです。

もうひとつの理由はコストです。原材料も減価償却も上がっていて、その一部を値段に乗せている。これは会社が自分で認めた部分です。

この2つは性格が違います。席が足りないから上がる分は、需給が緩めば消えます。コストを乗せた分は、利益を増やしません。成熟した世代の工場の値上げは、もともと景気の波に乗る性格のもので、今回もそこから外れてはいません。

AIの話は、その先にあります。光で信号を送る部品の基盤、AIサーバー向けのシリコンキャパシタ、光の変調器。どれも、AIのデータセンターで使われる部品です。CEOは、需要を引っ張っているのは「AI全般ではなく、光の速さや電力の統合といった技術の移り変わりだ」と言いました。ただ、その設備が売上の形になるのは2028年後半からです。今後1年半の数字を動かすのは、AIではなく値段です。

次の決算で、確かめたいこと

僕のいまの読みは「値下げが前提の工場で、満席を背景に値段の向きが変わった。ただし1割の中身はまだ見えていない」です。

次の決算説明会は、2027年1〜3月期の見通しが出る回です。CEOも、第1四半期の詳しい見通しは次回出すと言っています。そこで平均単価の上昇が10%を下回る形に直されたり、1〜3月期の単価の見通しが横ばいや低下で出てきたりすれば、今回の「転換点」は言葉が先走っていたことになります。

逆に、10%の中身を少しでも分けて話せるようになれば、それだけで今回より一歩進みます。インテルとの協業について、もう一度口を開くかどうかも見ておきます。


この記事は、2026年10月28日の説明会までに分かったことだけで書いています。値段の交渉は「終盤」でも、まだ終わってはいません。

使い込んだ機械の刷り賃が上がる局面は、長くは続かないことが多い。だからこそ、続いているかどうかは、次の回の言葉と数字で1回ずつ確かめるしかありません。この会社も、次の決算が出たらまた読みます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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