僕が一番気になったのは、絶好調の裏で取り分が細ったことでした【イーベイ(EBAY)2026年7〜9月期決算】

ネットの中古品市場の老舗、イーベイの決算が、この四半期はとても強く出ました。

取引額は前年より16%増え、会社が3ヶ月前に出した見通しを、取引額・売上・利益の3つとも上限で超えました。経営陣は「長期の軌道への確信が、これほど強かったことはない」とまで言っています。

ところが、同じ決算説明会の中で、3ヶ月前には言えていたことが、いくつか言えなくなっていました。

EBAY chart_article.png

日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——イーベイは、どうやって稼いでいる会社なんでしょう

「ネット通販の会社」と聞くと、倉庫に商品を積んで、自分で売る会社を思い浮かべると思います。イーベイは違います。自分では、ほとんど何も売っていません。

売っているのは、個人や小さなお店です。イーベイはその売り買いの場所を貸して、成立した取引から手数料を受け取ります。出品を目立たせたいお店からは、広告料も受け取ります。

日本で一番近いのは、メルカリです。メルカリで1万円の古着が売れると、販売手数料として1,000円が引かれます。あの1,000円が、場所を貸す側の売上です。

この「取引額のうち、何%が会社の売上になるか」をテイクレートと呼びます。

💡テイクレート=場所を貸す会社の「取り分の率」。取引額(GMV)に対して、手数料や広告料で何%を売上にできたか。

ここを押さえると、今回の決算の読み方が1つに決まります。取引額が伸びても、取り分の率が下がれば、売上は取引額ほどには伸びません。 イーベイの今回の決算は、まさにその形をしていました。

3ヶ月前の見通しを、3つとも上限で超えました

数字から並べます。取引額の伸びが、売上の伸びより大きいことに注目してください。

  • 取引額(GMV)232億ドル(前年同期比 約+16%・為替の影響を除いた値。買収した会社の分を除くと +13%)
  • 売上 32.1億ドル(同 +13%。買収分を除くと +11%)
  • 調整後の一株利益 1.51ドル(前年同期比 約+12%)

💡GMV=その場所で売り買いされた商品の合計額。イーベイの売上ではなく、お客どうしの取引の大きさです。
💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的と考える項目などを除いた数字。会計基準どおりの数字とは別物です。

1ドル150円で計算すると、3ヶ月で約3.5兆円分の取引がこの場所を通り、そのうち約4,800億円がイーベイの売上になりました。

3ヶ月前、会社はこの四半期の見通しを、取引額220億〜224億ドル、売上30.7億〜31.2億ドル、一株利益1.36〜1.42ドルと出していました。実績は3つとも、レンジの上限を超えています。 会社自身も「主要な指標はどれも、市場の予想と、私たちの見通しの上限を上回った」と言いました。見通しの上限を超えたのは、前の四半期に続いてです。

「まだ初期段階」が「もう効果が出ている」に変わりました

数字が良かっただけではありません。経営陣の言い方が、3ヶ月で前に進んでいます。

買収した古着アプリ、Depop(デポップ)について。

3ヶ月前:「補完し合う2つの事業を1つにする作業は、まだ初期段階にあります。ただ、戦略的な相性は説得力があると考えています」
今回:「この2つの事業を一緒に持っていることの効果が、もう出始めていると思います」

中身も言っています。イーベイが運送会社と結んでいる料金をDepopにも使えるようにして、Depopの送料が下がったこと。イーベイの検索結果の横に、Depopの出品を並べる試験を始めたこと。Depopの直近12ヶ月の買い手は、3ヶ月前に言っていた900万人から1,100万人に増え、売り手も500万人に達しました。

💡Depop=古着を中心にした個人どうしの売り買いアプリ。アメリカの若い世代の利用者が多く、いまはイーベイの傘下です。

ライブ配信で売る「eBay Live」について。 3ヶ月前は「取引額が前年の約8倍」という倍率で語っていました。今回は「年換算で数十億ドル規模の取引額で、伸びは3桁%台がしっかり続いている。最近の四半期と同じように」。倍率の話から、規模の話に移りました。小さいものが何倍になったかではなく、もう大きい、と言えるところまで来たということです。

確信の言葉も強くなりました。 3ヶ月前は「私たちは戦略に自信を持っている」まででした。今回は財務責任者が、冒頭で引いたとおり「イーベイの長期の軌道への確信が、これほど強かったことはない」と言っています。

それでも、3ヶ月前には言えたことが4つ消えていました

前に進んだ言葉の陰で、前の四半期に具体的に語っていたことが、今回は出てきませんでした。

1つ目は、取り分の率です。 3ヶ月前の財務責任者はこう言っていました。

「第2四半期のテイクレートは、前年同期比で横ばいの14%でした」

今回、同じ財務責任者の口から出たのは、横ばいではなく低下でした。

「全体のテイクレートは、前年同期比で20ベーシスポイント低下しました」

0.2ポイントと聞くと小さく見えます。ただ、この会社の取引額は3ヶ月で232億ドルです。その0.2%は、単純計算で4,600万ドル強。率が前年と同じだったら、それだけ売上が多かった計算になります。

💡ベーシスポイント=0.01%のこと。20ベーシスポイントは0.2ポイントです。

2つ目は、広告の目標です。 3ヶ月前は広告売上が23%伸びたと言い、取引額に対する広告の比率について「その3%は、あくまで中期の目標です」と語っていました。今回、広告売上は6億700万ドルで+16%。取引額に対する比率は約2.7%(Depopを除く)。そして3%という数字は、質疑で広告について聞かれた場面も含めて、一度も出てきませんでした。 伸びが鈍った理由として会社が挙げたのは、前年に広告の効果の数え方を変えた反動と、広告があまり使われていない分野の取引のほうが速く伸びたことです。

3つ目は、ドイツです。 3ヶ月前は「イギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダでも、取引額の伸びが前の四半期より改善した」と、ドイツを改善した国に並べていました。今回、経営トップはこう言っています。

「ドイツは、引き続きより厳しい消費環境に直面していると思います」

4つ目は、Depopが黒字に貢献する時期です。 3ヶ月前、財務責任者は「Depopは2028年に、連結の調整後営業利益にプラスの貢献をするようになる」と年を明示していました。今回、この年への言及はありません。

Depopについて「もう効果が出ている」と前に出た同じ説明会で、Depopがいつ利益に効くかの年が消えています。僕はこの2つを、並べて見ておくことにしました。

次の四半期は、取引額と売上の差がもっと開きます

会社が出した10〜12月期の見通しは、こうです。

  • 取引額 237億〜241億ドル(為替の影響を除いて +12〜14%、買収分を除くと +8〜10%)
  • 売上 31.9億〜32.4億ドル(同 +7〜9%、買収分を除くと +5〜7%)
  • 調整後の一株利益 1.48〜1.53ドル(前年同期比 約+5〜9%)
  • 調整後の営業利益は +6〜10%

7〜9月期は、取引額+16%に対して売上+13%でした。10〜12月期は、取引額+12〜14%に対して売上+7〜9%。取引額と売上の伸びの差が、3ポイントから5ポイント前後に開きます。 冒頭の概念の節で書いた「取り分の率が下がると、売上は取引額ほど伸びない」が、次の四半期はもっとはっきり出るということです。

会社はその理由を3つ挙げ、一部は一時的だと言いました。Depopは本体より取り分の率が低く、買収から1年経つまでは前年比で率を押し下げ続けること。イギリスで配送の売上の計上方法を変えたこと(取引額は変わらず、売上の数え方だけが変わる会計上の切り替えです)。そして、商品の種類や単価の構成が変わり続けていること。

最初の2つは時間が経てば消えます。3つ目は、消えるとは言っていません。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

年間で見ると、市場の予想は小さく超えています。1〜3月期から7〜9月期までの実績に、10〜12月期の見通しを僕が足し上げると、通期の売上は約126.2億〜126.7億ドル、調整後の一株利益は約6.25〜6.30ドル。市場の予想(売上125.3億ドル、一株利益6.14ドル)をどちらも少し上回ります。会社が年間の数字を自分で引き上げたわけではなく、足し算の結果です。

2027年については数字を出していません。言葉はこうです。

「2026年に経験した並外れた水準を一巡するにつれ、成長は自然に落ち着くことを計画の前提にしています」

その「並外れた水準」の中心にいるのが、トレーディングカードです。アメリカのコレクティブル(収集品)の取引額は、今回すでに「前年の力強い伸びを一巡して、やや減速した」と言われています。前の年に大きく伸びたぶん、その反動が出始めているということです。

経営陣が答えなかったことと、数字を押し上げたもの

この決算には、答えが出ていない問いと、一時的に数字を押し上げたものが混ざっています。

質疑の最初の質問が、いちばん痛いところを突いていました。ライブ配信、Depop、自動車の売買はどれも本体より速く伸びているが、取り分の率が低く、投資も重い。それで長い目で見た利益率はどうなるのか、という問いです。財務責任者の答えはこうでした。

「テイクレートの率を最適化しようとは、あまり考えていません。さまざまな事業に投資することが、事業全体の底堅さにつながり、売上と利益の両方を伸ばせると本当に考えているからです」

方針としては筋が通っています。ただ、利益率がどうなるかの数字は、最後まで出てきませんでした。もう1つ、AIのエージェントが外から買い物をしに来る流れについて2人から問われ、経営トップは「今はごく、ごく小さい」と答えています。こちらも規模の数字はありません。

数字を押し上げたものは、主に4つです。

  • 買収の上乗せ=Depopが、取引額の伸びに約3ポイント、売上の伸びに約2ポイントを足しています
  • 自社株買い=この四半期に約6億9,000万ドル、年間で約20億ドル。株数が減るぶん、一株利益は伸びやすくなります
  • 人員の約9%削減=説明会の前の週に発表したもので、伸びている事業へ回すお金をつくるためだと説明しています
  • トレーディングカードの好調=会社自身が、2027年は落ち着く前提を置いています

一株利益の+12%は、事業の伸びだけで出た数字ではありません。買収分を除いた売上の伸びは+11%、調整後の営業利益は+11%。そこに自社株買いの効果が乗っています。

なぜ、いまイーベイにこれが起きているのか

ここまでの話は、1つの選択にまとまります。イーベイは、取り分の率を守るより、取引の量を取りにいく道を選びました。

伸びているものは、どれも取り分の率が低いところにあります。

ライブ配信は、年換算で数十億ドルの取引額になりました。会社によると、ライブで売る売り手は、通常の出品側でもライブの約2倍の取引額を生み、ライブに参加した買い手は支出が70%多いそうです。Depopは若い世代の古着を連れてきました。イーベイとDepopを合わせたアメリカのファッションの取引額は、直近12ヶ月で約90億ドル、伸びは20%台半ばです。

そして、出品の手間をAIで減らしています。会社が「Magical Listing」と呼ぶAIの出品機能で、値段の目安も出します。オーストラリアでは、これを使った売り手の出品数が、出品を試みた1人あたりで3分の1以上増えたと言っています。個人が家の中のものを売り始めるいちばんの壁は、出品の面倒さです。そこを下げると、売り手が増え、取引が増えます。

ただ、こうした新しい取引は、本体の手数料ほど高い率では取れていません。だから取引額は伸び、売上はそれより遅れ、利益はさらにその後ろを歩く。今回の決算は、その順番がそのまま数字に出ていました。

この選択が正しかったかどうかは、取り分の率が下げ止まった後で分かります。会社は「一部は一時的」と言っています。一時的な2つが消えた後に、率がどこで止まるのか。そこで初めて、量を取りにいった分が利益として戻ってくるかが見えます。

次の決算で、何を見れば僕が間違っていたと分かるか

今回の読みは「取引の量は本当に伸びている。ただ、その量を売上と利益に変える率が、まだ下がっている途中にある」です。

これが違っていたと分かる形を書いておきます。

  1. 10〜12月期の、買収分を除いた取引額の伸びが、見通しの下限の+8%を割る
  2. Depopの伸びが、会社が言った「7〜9月期と同程度」を下回る
  3. 取り分の率の低下が、前年比0.2ポイントより大きくなる

1と2なら、量の伸びという前提そのものが崩れます。3なら、量を取りにいく代償が会社の説明より重いということです。

逆に、次の説明会で、消えた広告の3%目標や、Depopの2028年という年が、もう一度数字つきで出てきたら。そのときは、今回の沈黙は単に言わなかっただけだった、ということになります。


ここに書いたのは、2026年10月28日の説明会までに分かっていることだけです。人員削減の効果も、トレーディングカードの落ち着き方も、まだこれからです。

取引額が+16%伸びた決算で、売上は+13%、次の四半期はさらに差が開く。この差は1回の決算では良いとも悪いとも言えず、何回か続けて追って、初めて向きが分かります。

イーベイについては、取り分の率が下げ止まるかを見るために、次の回も読みます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

現在、メルマガでは

  • レラティブストレングスランキング(日本株・米国株)
  • 季節性アノマリーチャート
  • 市場のDNAに基づいた実践的な考え方

を継続的に配信しています。

▶ メルマガの詳細はこちら

この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

目次