36%の増収に驚いて、中身を開けたら少し落ち着きました【リジェネロン(REGN)2026年7〜9月期決算】

日本でもアトピー性皮膚炎などに使われている注射薬、デュピクセント。あの薬を発明したのは、アメリカのバイオ企業リジェネロンです。売っているのは主に、提携相手のフランスの製薬会社サノフィです。

そのリジェネロンの売上が、前年同期比で36%伸びました。僕も最初は、大型の製薬会社でこの伸びかと驚きました。ただ中を開けると、伸びの中心は新しく何かが売れたことではなく、長く続いていた「返済」が終わったことでした。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月30日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「利益を分け合う薬」で、何が返し終わったのか

「提携」と聞くと、2社が仲良く一緒に売っている姿を思い浮かべると思います。デュピクセントの場合は、もう少しお金の流れが決まっています。

普通の薬は、作った会社が売って、利益も全部その会社に入ります。デュピクセントは違います。リジェネロンが発明し、サノフィが世界で売り、利益を2社で分け合う仕組みです。リジェネロンの決算では、これが「サノフィとの提携収益」という1つの行にまとまって出てきます。

ここで効いてくるのが、開発のお金です。薬が世に出るまでの開発費は、サノフィ側が先に多くを出していました。リジェネロンは、自分が持つべきだった分を、毎期の利益の取り分の中から少しずつ返してきました。友人に立て替えてもらった旅行代を、毎月の給料から少しずつ返しているのに近い形です。返している間は、手取りがその分だけ減ります。

その返済が、2026年4〜6月期に終わりました。 だから7〜9月期は、リジェネロンが利益の取り分を初めて満額で受け取った四半期になりました。財務責任者の言葉です。

「その結果、第3四半期には、提携利益の取り分を初めて満額で計上しました」

この決算を読むうえで、ここがいちばん大事なところです。返済が終わった後の水準は、この先も続きます。ただ「前年より何%伸びたか」で見ると、段差が付くのは一度きりです。 来年の今ごろには、もう比べる相手も満額になっています。しかもこの段差は、3ヶ月前の説明会で「第3四半期から、満額を計上するので増える」と会社自身が予告していました。驚きではなく、予定どおりです。

売上は+36%、一株利益は+70%でした

  • 売上 51億ドル(前年同期比 +36%)。1ドル150円で約7,650億円です
  • 調整後の一株利益 20.07ドル(前年同期比 +70%)
  • サノフィとの提携収益 27億ドルで過去最高。うち利益の取り分が26億ドルで、前年同期比 +77%

💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的だと考える項目などを除いて計算した数字。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。今回の説明会の財務の数字は、断りが無い限りこちらの基準で語られています。

製品ごとにも、記録が並びました。

  • デュピクセントの世界売上(サノフィの集計)は65億ドル、為替の影響を除いて+35%。アメリカでは四半期で初めて50億ドルを超え、+40%
  • 目の病気の注射薬アイリーアの高用量版(以下HD)は、アメリカで6億9,900万ドル、+62%
  • がんの免疫療法薬リブタヨは、世界で5億5,000万ドル、為替の影響を除いて+51%

社長は「売上と利益の両方で2桁成長が3四半期続いた」と言っています。3ヶ月前は「2四半期連続」と言っていたので、言っていることと数字は合っています。デュピクセント・アイリーアHD・リブタヨの3つがそろって四半期の売上の最高を更新したのも、2四半期続けてです。

3ヶ月前は「話し合いの初期」、今回は「拡大が決まった」

言葉の上でいちばん前に進んだのは、サノフィとの関係です。

3ヶ月前:「サノフィとは、さらなる協業の可能性を探るため、生産的な初期の話し合いを持ってきました」
今回:「最近発表した、リジェネロンとサノフィの提携の拡大を、大変うれしく思っています」

検討の段階から、決まった話に変わりました。中身も具体的です。デュピクセントと同じ仕組みを狙う次世代の抗体4本を、2社で開発費を半分ずつ出して進め、利益も半分ずつ分けます。今度は開発費をその都度折半するので、今回のような立替の残高はもう生まれません。 さらに、サノフィからの一時金10億ドル(約1,500億円)を、10〜12月期にまとめて売上に計上する予定です。

💡抗体医薬=体の中の特定の物質にくっついて、その働きを止める薬。デュピクセントもこの仲間で、注射で使います。

次世代の4本が狙っているのは、デュピクセントに近い効き目を保ったまま、注射の間隔を大きく空けることです。先頭の1本は、3〜6ヶ月に1回の投与を目標にしています。まだ人での試験が始まったばかりで、承認を目指す本格的な試験は2027年後半から2028年に始まる見込みです。

もう1つ、予告がデータに変わったものがあります。脂肪肝が進んで肝臓に炎症が起きる病気、MASHの薬の候補で、種類はsiRNAです。

💡siRNA=病気に関わるたんぱく質が、体の中で作られる前の段階で止める種類の薬。

3ヶ月前と今回で、言い方はこう変わりました。

3ヶ月前:「この秋、医学会で、MASHに対するsiRNAの有望な臨床データを発表する予定です」
今回:「単回の投与で忍容性は良好で、わずか12週間で肝臓の脂肪をベースラインから平均で約70%減らしました」

科学責任者は「本当に、ゲームを変える結果です」とまで言っています。ただし、これは初めて人に投与した段階の、40人のデータです。売上として数字に出てくるのは、早くても1年半より先の話になります。

目の注射薬では、言葉が一段弱まりました

前に進んだ話と同じ回に、後ろに下がった話も並んでいます。

1つ目は、アイリーアHDの注射器の話です。

💡プレフィルドシリンジ=薬があらかじめ詰めてある注射器。医師が瓶から薬を吸い上げる手間が省けます。

この注射器の承認について、社長の言い方が変わりました。

3ヶ月前(社長):「年末までに、あるいはそれより早く、片付く可能性があります」
今回(社長):「年内の承認について、引き続き楽観的に見ています」

「それより早く」が消えて、「楽観的に見ている」という含みのある言い方に変わりました。年内という線は残っていますが、確信は一段下がっています。

2つ目は、アイリーアHDの伸びの見通しです。

3ヶ月前:「第3・第4四半期の需要は、前期比で10%台前半から半ばの伸びを見込んでいます」
今回:「第4四半期の医師の使用数量は、前期比で約10%の伸びを見込み、続いている価格の下押しで一部が相殺されます」

7〜9月期の実績は前期比+20%で、自分の見通しを上回りました。ただ4〜6月期の+24%からは少し鈍っています。そのうえで次の四半期の見通しを10%まで下げ、3ヶ月前には無かった「価格の下押し」という言葉が加わりました。

3つ目は、目の別の病気(地図状萎縮)の試験の時期です。 3ヶ月前は「2026年10〜12月期に26週のデータを出す予定どおり」と言っていました。今回は「2027年の初め」になりました。延びた理由の説明はありません。

見通しは、2回続けて「小幅な手直し」でした

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。

通期のガイダンスについて、財務責任者の説明は短いものでした。

「年の最後の四半期に入るにあたり、2026年の業績見通しに小幅な手直しを加えました」

3ヶ月前もほぼ同じ言い方で、「下半期に入るにあたり、小幅な手直し」でした。2回続けて、大きく引き上げる話にはなっていません。説明会の中では、見通しの具体的な数字も語られていません。

市場の予想と並べてみます。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社がいくら良い数字を出しても、周りがもっと高い数字を思い描いていたら、期待外れに見えます。

2026年通期の一株利益の予想は、平均で59.10ドルです。1〜3月期から7〜9月期までの3四半期で、会社はすでに42.07ドルを積み上げています。残りは約17ドルです。7〜9月期は1四半期で20.07ドルでしたが、そこには次の四半期には繰り返さない分が混ざっています(後で書きます)。10〜12月期には、サノフィからの一時金10億ドルも乗ります。説明会では、この予想を大きく引き上げる材料は語られていません。

2027年について会社が口にしたのは、費用が増える側の話だけでした。研究開発費は10%台半ばの増加、税率は1〜2ポイントの上昇圧力。市場が予想している2027年の一株利益(平均52.07ドル)は2026年を下回っていて、今回の説明会にその見方を変える材料は出ていません。

答えが先送りされたことと、数字を押し上げた一時的なもの

質疑応答では、2つの話題に質問が集まりました。MASHと、次世代のデュピクセントです。どちらも複数の証券会社が繰り返し聞いています。

答えの多くは先送りでした。MASHの薬がほかの開発品の中でどこに位置するのか、どの段階の患者を狙うのか、承認のための試験で何を測るのか。これらは「11月10日の投資家向けイベントで詳しく話す」に回されました。次世代の抗体4本が、デュピクセントの範囲を広げるのか、守るのか、置き換えるのかを聞かれた場面では、社長が「ここは戦略を明かしたい場ではないと思います」と答えを保留しています。シムジシランという新薬もあります。全身型重症筋無力症という、神経と筋肉の難病の薬で、11月に承認の判断が出る予定です。この薬についても、販売担当の責任者は「発売の戦略については、多くは話しません」と言いました。数字で答えたのは、肝臓の脂肪が約70%減ったという話の繰り返しだけです。

そして、7〜9月期の数字には、次の四半期には繰り返さないものが混ざっています。

  • 別の薬のロイヤルティ(特許使用料)で、年初からの分をまとめて計上した追いつき分が約6,000万ドル。会社自身が「第4四半期には繰り返さない」と言っています
  • アイリーアHDとアイリーアの両方が、四半期末の出荷のタイミングで「控えめに」押し上げられました
  • アイリーアとアメリカのデュピクセントでは、値引きなどを差し引く計算が有利に動きました
  • 10〜12月期には、サノフィからの一時金10億ドルが一度きりで入ります

一番大きいのは、最初に書いた返済の完了による段差です。満額の水準は続きますが、来年の今ごろ前年比で同じ伸びが出ることはありません。今回の+36%と+70%は、その段差を含んだ数字です。

デュピクセントが伸ばし、目の薬は守りに回っている

この会社の売上を支えている柱は、大きく2本あります。

1本目は、デュピクセントです。発売から10年近く経つ薬が、いまも+35%で伸びています。アメリカでは、承認されている9つの病気のうち8つで、バイオ医薬品の中で首位だと会社は説明しています。返済が終わった今、その利益の半分がまるごとリジェネロンに入るようになりました。そして次世代の4本を、同じ組み方でサノフィと進めることが決まりました。この柱を、次の世代まで延ばそうとしているわけです。

2本目は、目の注射薬です。こちらは事情が逆です。古いほうのアイリーアは、同じ成分の安い後発品(バイオシミラー)が次々に出てきて、アメリカの売上が−41%の4億ドルまで落ちました。それを高用量版のHDが+62%で埋めていて、2つを合わせると11億ドル、前年同期比−1%。ほぼ横ばいを、新しい薬への乗り換えで保っている形です。

💡バイオシミラー=特許が切れたバイオ医薬品と、同等とされる後発品。飲み薬のジェネリックのバイオ版です。

だから、この四半期の見え方はこうなります。伸びているのはデュピクセント側で、目の側は守りの戦いをしている。 次の四半期の見通しで、目の側に「価格の下押し」という言葉が加わったのは、この守りが楽ではないことを示しています。

この2本に加えて、がんの免疫療法薬リブタヨが年換算で約22億ドルまで育ってきました。3本目の柱になりかけています。

11月の2つの予定と次の決算で、何が見えるか

今回の読みは、「返済が終わって取り分が満額になった、予定どおりの段差の四半期。その上で、目の側の伸びは鈍り始めている」です。次の決算までに、この読みがずれていたかどうかが見えるのは、次のところです。

  1. アイリーアHDの10〜12月期の需要が、会社の言う約10%を大きく下回る
  2. プレフィルドシリンジの承認が、年内に出ない
  3. シムジシランについて、11月に予定されているアメリカの規制当局の判断が承認にならない

逆に、良い方向へ外れる形もあります。11月10日の投資家向けイベントで、今回先送りされたMASHの狙う患者や試験の設計が、具体的な形で示された場合です。そのときは、デュピクセントの次を担う候補が、もう1つはっきりすることになります。


11月には、シムジシランの承認の判断と、10日の投資家向けイベントが控えています。この記事は、その手前の10月30日の説明会までの話です。

デュピクセントの利益が満額で入るようになったこと自体は、この会社にとって大きな変化です。ただ、それは数字が一度跳ねる理由であって、毎年跳ね続ける理由ではありません。次の回からは、比べる相手も満額になります。そこで何%伸びるのかが、この会社のふだんの実力です。その回を待って、また前の回と突き合わせます。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。また、医薬品の効能・安全性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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