イートン決算の内容:3回目の上方修正、2027年の利益率は3人に聞かれても数字が出なかった【ETN・2026年7〜9月期】

データセンターの話になると、名前が挙がるのは半導体の会社です。けれど、建物に電気が届かなければ、どのチップも1秒も動きません。

送電網から来た高い電圧を下げ、配り、止まらないように守り、最後は熱くなったチップを冷やす。その道具一式を作っている会社が、アメリカのイートンです。変圧器、開閉器、遮断器、無停電電源装置(UPS)、そして液体でチップを冷やす装置まで扱っています。

■ イートンの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
  • 「前例のない需要」が、「加速して、広がる需要」に変わりました
  • 売上は+28%、受注残は200億ドルを超えました
  • データセンターだけの会社ではなくなっています
  • 見通しは今年3回目の引き上げ。ただし幅は小さく、利益率は据え置きです
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※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7月〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——データセンターの「電気の通り道」は、何でできているのでしょう

家の電気を思い出してください。電柱の上の変圧器で電圧が下がり、玄関の近くの分電盤で部屋ごとに分けられ、使いすぎるとブレーカーが落ちます。

データセンターも、やっていることは同じです。違うのは規模と、止まったときの痛さです。使う電気の量が桁違いで、しかも1秒でも止まると困る。だから、家なら電柱の1台で済む変圧器が巨大な専用品になり、分電盤とブレーカーは建物まるごとの設備になり、停電に備えて電池で電気をつなぐ無停電電源装置が並びます。さらに最近のAI用のチップは熱が出すぎて、空気で冷やしきれず、液体を流して冷やすようになりました。

イートンは、この一続きを「送電網からチップまで」まとめて納めることを売りにしています。今回の決算で何度も出てくるBoyd(ボイド)は、その最後の区間、チップを液体で冷やす部品の会社で、イートンが買収しました。

この形が、この記事の結論に効きます。データセンター1棟が建つたびに、イートンは途中の区間をまとめて受注できる。 だから受注の伸びが、売上の伸びより先に、大きく出ます。

「前例のない需要」が、「加速して、広がる需要」に変わりました

3ヶ月前、最高経営責任者(CEO)のパウロ・ルイス氏はこう言っていました。

3ヶ月前:「前例のない需要が続いています」
今回:「事業全体で、需要は加速し、しかも裾野が広がっています」

「前例のない」は強い言葉ですが、データセンター1本の話にも聞こえます。今回はそこに「広がっている」が足されました。

それがいちばんはっきり出たのが、アメリカ以外を中心とする電気部門(Electrical Global)です。3ヶ月前、この部門の下期の見通しが控えめすぎないかと聞かれて、ルイス氏はこう答えていました。

3ヶ月前:「ええ、ここは非常に慎重に見ています。ただ、450ベーシスポイント引き上げたところです」

450ベーシスポイントは4.5ポイントのことです。同じ部門について、今回の答えは温度がまるで違います。

今回:「この部門は、私たちが『持続的な成長局面』と呼ぶ段階に入ったと、本当に考えています」
「その原動力は構造的なもので、景気の循環によるものではありません。偶然起きたことでもありません」

「慎重に」から「構造的」へ。裏づけの数字も並んでいます。この部門の有機成長率は、第1四半期の9%、第2四半期の18%、そして今回の27%と、四半期ごとに段を上がりました。

💡有機成長率=買収で増えた分や為替の影響を除いた、もともとの事業の伸び。買収で大きくなった会社は、ここを見ないと実力が分かりません。

2027年の言い方も変わりました。3ヶ月前は「2027年に勢いを伸ばしていく、非常に良い位置にいます」という、形容詞の文でした。今回は「2027年に縮むと見ている最終市場は、1つもありません」「2027年も再び2桁の市場成長です」。最終市場の成長を約11%と置いた、数字の文に変わっています。

Boydの言い方も同じ向きです。3ヶ月前は今年の売上見通し18億ドルについて「このチームが上回れなかったら、正直、驚きます」。今回は「来年は少なくとも27億ドルの事業だと見ています。前回示した18億ドルのおよそ50%増です」。1ドル150円で約4,050億円です。期待の言葉が、来年の数字になりました。

売上は+28%、受注残は200億ドルを超えました

この四半期の実績です。

  • 売上 約89億ドル(前年同期比 +28%。うち8ポイントは買収による上乗せ)
  • 有機成長率 19%、全社のセグメント利益率 25.3%
  • 調整後の一株利益 3.68ドル(会社が出していた見通しの上限を0.12ドル上回る)

💡調整後の一株利益(non-GAAP)=会社が一時的だと考える項目を除いて計算した、株1株あたりの利益。会計基準どおりの数字とは別物です。

売上より先に動くのが受注です。

  • 電気部門の受注残は200億ドル超(前年比 +46%)。1ドル150円で3兆円を超えます
  • 電気部門の直近12ヶ月の受注は +43%、受注対出荷比は1.2倍
  • 北米の電気部門(Electrical Americas)は、四半期の受注が50億ドルを超えて過去最高。受注対出荷比は1.3倍
  • データセンター向けは、直近12ヶ月で受注が倍以上(+101%)、売上が +65%

💡受注残=注文はもらったが、まだ納めていない分。受注対出荷比=入ってきた注文を、出荷した分で割った値。1倍を超えていれば、出す以上に注文が積み上がっています。

データセンター向けの売上が35%を超えて伸びたのは、これで9四半期連続です(3ヶ月前は「8四半期連続」と言っていました)。アメリカで発表されているデータセンター計画の合計は、前回の307ギガワットから366ギガワットへ増えたと会社は説明しています。

ルイス氏は今の状況を一言でこう言いました。「需要は、私たちが売上に変えられる速さを上回り続けています」。工場の増強は25件のうち18件が完了し、「立ち上げの一番きつい部分は越えた」としています。

データセンターだけの会社ではなくなっています

背骨がデータセンターだけなら、話は片肺です。今回の説明会で目立ったのは、それ以外の市場の数字でした。

データセンター以外の有機売上の伸びは、工作機械などの機械メーカー向けが30%台半ば、工場向けが2桁、電力会社・住宅・分散型IT向けが1桁台の半ばから後半。直近12ヶ月の受注は、電力会社向けが約20%、住宅向けが25%、機械メーカー向けが55%増えています。財務責任者(CFO)のデイブ・フォスター氏は、商業向けと公共施設向けについて、ともに25%を超える伸びだと補足しました。

もう一つは、建物の中身をまとめて工場で組み上げて運ぶ「モジュラー型」です。イートンが買収したFibrebond(ファイバーボンド)は、買収した最初の1年で売上が3億7,500万ドルから6億ドルに伸びました。北米のモジュラー事業は2026年に10億ドル規模になり、アーカンソー州に新工場を建てます(説明会では2029年稼働と説明)。ルイス氏の説明では、中に入る変圧器や開閉器を自社で作っているので、価格、納期、供給の確実さで差が出る、とのことでした。

部門ごとの数字も置いておきます。航空宇宙は有機成長率6%、受注残56億ドル(+33%)。自動車向けのMobilityは売上+10%(有機9%)です。

見通しは今年3回目の引き上げ。ただし幅は小さく、利益率は据え置きです

ルイス氏は「有機成長率と調整後一株利益の見通しを引き上げるのは、今年これで3回目です」と言いました。

  • 通期の調整後一株利益:13.70〜13.80ドル(中心13.75ドル)。前回の中心13.50ドルから+0.25ドル、約+1.9%
  • 通期の有機成長率:13〜15%(前回11〜13%)
  • 全社のセグメント利益率:24.1〜24.5%で据え置き

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

アナリスト予想の平均(13.60ドル前後)と比べると、新しい中心は約1%上です。予想を超えてはいますが、差は小さい。3回目の引き上げは、どれも小幅な積み上げでした。売上の伸びの見通しは2ポイント上がったのに、利益率の見通しは1ミリも動いていません。

3人が聞いた「2027年の利益率」に、数字は出ませんでした

質疑応答でいちばん繰り返された質問は、データセンターでもBoydでもなく、2027年の利益率でした。3人のアナリストが角度を変えて聞いています。

返ってきたのは、第4四半期の利益の上積み幅(売上が1ドル増えたとき、利益が何セント増えるか)の話(第3四半期の20%台後半から、第4四半期は30%台後半〜40%近くへ)、「第4四半期を4倍して1年分だと考えないでください」という季節性の注意、新工場の立ち上げは前年より混乱が小さいという説明でした。2027年については、最終市場の成長が最低11%、それに上乗せの伸び、利益の上積み幅は2026年の約23%から改善、という枠組みまでです。ルイス氏の答えは「ガイダンスを出すのは時期尚早です。2月に出します」。3回聞かれても、2月までは数字を出さない、ということです。

答えなかったことは、ほかにもあります。

  • 前の四半期にフォスター氏が言った「2030年までに32%の利益率という目標に、引き続きコミットしています」は、今回どこにも出てきません
  • 前の四半期にルイス氏が示した、アメリカのデータセンター計画(当時307ギガワット)のうち近いうちに形になるのは約20%で、大半は2028年以降の納入になる、という説明も、今回はありません
  • Boydの第4四半期の売上が前の四半期と横ばいなのは生産能力の制約か、と聞かれた場面では、直接の答えはありませんでした

確信の度合いが下がった言葉もありました。データセンターの電気を交流から直流へ切り替える次世代の仕組みについて、3ヶ月前は「これは起きると信じています」。今回は、新しい変換装置(SST)が10月にアメリカの安全認証(UL)の試験にすべて合格し、試験導入が10件並行していると進捗を示したうえで、こう付け加えました。

「ただ、その移行の時期は、私たちがコントロールできるものではありません」

航空宇宙でも「供給網の問題が完全に過去のものになったとは、まだ慎重に見ています」という新しい留保が出ています。

数字の中身にも、性質の違うものが混ざっています。売上+28%のうち8ポイントは買収で、Electrical Globalに限るとBoydの寄与が31ポイントあります。1月2日から一般的な値上げを行い、大口顧客2社とは10月に価格の交渉を終えたと説明しています。北米の電気部門の利益率が前年より下がっている点について、会社は2四半期続けて「一時的」と説明しています(前回は価格とコストのずれ、今回は原材料コスト)。そして2027年には、自動車向け事業の切り離しで、その売上は約8億ドルに縮みます。

一方で、データセンター・工場・機械メーカー・電力会社という中核の受注が伸びている点は、買収や値上げでは説明がつきません。注文の数そのものが増えています。

次の決算で確かめること

今回の決算を短く言えば、注文の数は会社の言葉どおりに広がり、利益率の言葉だけが前より静かになった回です。

次に向きが変わったと分かるのは、たとえばこういう形です。

  1. 電気部門の直近12ヶ月の受注の伸びが+20%を割る、または受注対出荷比が1倍を下回る
  2. Boydの2027年の「少なくとも27億ドル」が引き下げられる
  3. 2月に出る2027年のガイダンスで、利益率の改善が今回の「枠組み」より小さく示される

反対に、2月の正式な見通しで利益率の数字が出て、2030年の32%がもう一度口にされれば、今回の沈黙はただの先送りだったことになります。


この記事は、2026年11月3日の説明会までに分かったことの整理です。受注残の数字も、データセンター計画の総量も、次の四半期にはまた動きます。注文が売上に変わり、売上が利益率に変わるのか。その順番を、次の回でも同じように前の回と突き合わせて確かめます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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