掉尾の一振とは?本当に起きるのか、日経平均37年と約1,000銘柄で検証

掉尾の一振(とうびのいっしん)は、年末の最後に株価が上がりやすいという、少なくとも1936年(昭和11年)から言われてきた相場の言い伝えです。日経平均の37年分(1989〜2025年)と日本株約1,000銘柄で確かめると、次のことが分かりました。

  • 上げ幅で見れば「ある」。日経平均の年末最後の5営業日は平均+0.8%で、ふだんの5営業日(平均+0.1%)を大きく上回ります。上がったのは37年中24年です。
  • 効いた時期には偏りがあります。2000年代は10年中10年上がったのに、2010年代は10年中4年。毎年この5日だけ持っていたら37年で約1.3倍ですが、2014年からはほぼ横ばいです。
  • 上げは、ここ25年ほどは大納会の2日前と前日に集まりやすく、起きやすいのは大型株より中小型株でした。

数字は、2025年12月30日の大納会までの終値で計算しています。

掉尾の一振とは(読み方・意味・由来・いつから)

掉尾の一振は「とうびのいっしん」と読みます。年末の最後に相場がもうひと伸びすることを指す、株の世界の言葉です。期間にはっきりした決まりはなく、12月20日過ぎ(またはクリスマス明け)から大納会までを指すのがふつうです。大納会はその年の最後の取引日で、いまは原則12月30日です。

「掉尾」の辞書の意味は「尾を振る」こと。そこから、物事が最後になって勢いを増すことを表します。株の解説では、捕まった魚が最後の力で尾を大きく振る姿によくたとえられます。なお辞書では「ちょうび」が本来の読みで、「とうび」は慣用的な読み方ですが、株の世界では「とうびのいっしん」と読むのが一般的です。

この言葉は、かなり昔から相場の世界で使われてきました。国立国会図書館の資料をたどると、経済雑誌『ダイヤモンド』の1936年(昭和11年)12月21日号に、「掉尾の一振ありや」(掉尾の一振はあるか)という株式市場の記事があります。そのころにはもう、年末の相場を語る言葉として使われていたことが分かります。

その後も、経済誌などの年末前後(11月〜翌年2月)の号に、この言葉を使った見出しが繰り返し出てきます。たとえば「(株界展望)掉尾の一振演ずるか、但し高値つかみに警戒」(1952年『日本経済新報』)、「株価 掉尾の一振ありや否や」(1954年『経済展望』)、「大納会は掉尾の一振でダウ七一〇〇円台を回復」(1981年『證券月報』。ダウは当時の日経平均の呼び名)、「「掉尾の一振」に期待あり」(1988年『大阪経済評論』)。見つかっただけでも、1936〜1988年に12の号があります。年末が近づくと「今年は来るか」と話題にされてきた言葉だったことが、見出しだけからも読み取れます。

年末に上がる理由としてよく挙げられるのは、新しい年への期待や、運用会社が年末の成績を整えようとする動きです。どれもはっきり確かめられたものではありません。だから僕は、言い伝えをそのまま信じる前に、一度数字で見ておくことにしています。

掉尾の一振は本当に起きるのか:日経平均37年で検証

日経平均の1989〜2025年の37年分について、年末の最後の数営業日(取引のある日)の値動きを、同じ日数で区切った1年のふだんの値動きと比べました。東証では1989年1月まで土曜日にも取引があり、同じ物差しで数えられないので、1989年からにしています。言い伝えには期間の決まりが無いので、3〜10営業日を全部並べました。

年末の最後の… 平均の値動き 上がった年 ふだんの同じ日数(平均) ふだん上がる割合
3営業日 +0.63% 37年中24年(65%) +0.05% 52%
5営業日 +0.82% 37年中24年(65%) +0.08% 53%
7営業日 +0.70% 37年中25年(68%) +0.11% 53%
10営業日 +0.56% 37年中23年(62%) +0.15% 53%

年末の最後の3〜5営業日は、ふだんより上がる年が多く、平均の値動きもふだんを大きく上回っています。10営業日まで広げると、差は小さくなります。

この結果には、もうひとつ意味があります。後からデータに合わせて作った話なら、そのデータで当たって見えるのは当然です。でも掉尾の一振は、1936年にはもう相場の言葉として使われていました。今回の1989〜2025年は、それより50年以上あとのデータです。つまり確かめたのは、昔からの言い伝えが、ずっと後の37年でも当たっていたかどうかです。

ただし、昔からの言い伝えがそのまま当たっていたと言えるのは、最後の3〜5営業日についてです。言い伝えがふつう指す12月20日過ぎから(7営業日ほど)の長さでは、上げのほとんどが2001〜2013年に集まっています。

掉尾の一振は毎年効くのか:年末の5営業日だけ37年持った結果

では、この言い伝えを毎年信じて、年末の最後の5営業日だけ日経平均を持ち続けていたら、どうなっていたでしょうか。1988年の年末を100として、37年分を1本の線にしました。

比べる相手も用意しました。毎年、年末以外の5営業日をくじ引きで1つ選び、それを37年つないだ線を5,000通り作っています。点線はその真ん中、灰色の帯は、その年ごとに5,000通りの9割が入る範囲です。線が帯の中ほどにあれば、くじ引きで選んだ日でも珍しくない動き。帯の上の端に近いほど、くじ引きではめったに届かない動き、ということです。

毎年、年末の最後の5営業日だけ日経平均を持っていた場合の推移(1989〜2025年)と、くじ引きで選んだ5営業日との比較
37年の結果 値
いちばん良かった年 +5.5%(1991年)
いちばん悪かった年 −4.3%(1992年)
続けて下げた最長 4年(2016〜2019年)
年末の最後の5営業日 100 → 134(約1.3倍)
くじ引きで選んだ5営業日(5,000通りの真ん中) 100 → 101

1年に5日しか持っていないのに、37年で約1.3倍。くじ引きで選んだ5日間なら、ほぼ100のままです。年末の5日間と同じか、それ以上に伸びたのは、5,000通りのうち6〜7%ほどでした。手数料や税金は入れていない計算です。

ただ、線の伸び方は一本調子ではありません。

  • 1989〜2000年:12年中8年上がったものの、上げ下げが大きく、帯の中を行ったり来たりしていました。
  • 2001〜2013年:13年中12年上がり、2008年ごろには帯の上へ抜け出しました。
  • 2014〜2025年:12年中4年しか上がらず、ほぼ横ばい。線が止まっているあいだも帯は年々広がっていくので、2018年ごろには帯の上の端が線に追いつきました。いまは線が上の端の少し下にいます。

くじ引きの線でも、37年のどこかで一度帯の上に出ることは4本に1本ほどあります。ですから、途中で帯の上に出たことより、37年たった最後に、くじ引きの線100本のうち6〜7本しか届かない所にいることのほうに意味があります。

10年ごとに区切ると、こうなります。

年代 上がった年 平均の値動き
1989〜1999年 11年中7年 +0.6%
2000年代 10年中10年 +1.8%
2010年代 10年中4年 +0.1%
2020〜2025年 6年中3年 +0.9%

掉尾の一振が消えたのか、休んでいるだけなのかは、数字からは分かりません。2020年代は少し持ち直しています。言えるのは、37年で見れば確かにあった。ただし、はっきり効いていたのは2000年代を中心とした時期だった、というところまでです。

掉尾の一振はいつ起きる?2001年以降は大納会の前の2日に集まる

年末の1日ごとの値動きを、37年分平均しました。

12月は初めに少し上がり、その後は年末に向けてゆるやかに下げていきます。流れが変わるのは最後の数日です。37年の平均では、大納会の2日前と前日の2日間に上げが集まっていて、平均+0.66%、37年中25年で上がっていました。ふだんの2日間は平均+0.03%で、ほとんど動きません。大納会の当日は、平均するとわずかに下げています。

この「2日間」は昔からの言い伝えにある話ではなく、今回のデータから見つけたものです。しかも、はっきり出ているのは2001年以降です。1989〜2000年では、この2日間に上がったのは12年中6年で、平均は−0.06%でした。2014年以降の12年では8年上がっていて(平均+0.89%)、5営業日で見たときほど弱まっていません。もっとも、12年だけの数字です。

掉尾の一振が起きやすい銘柄:中小型株と業種の差

日経平均やTOPIXのような指数は、大きな会社の値動きに引っぱられます。そこで、日本の主な上場株1,002銘柄で数えてみました。いまTOPIX1000(東証で規模の大きい約1,000社)に入っている銘柄が中心です。2009〜2025年の年末最後の5営業日に、上がった銘柄の割合を年ごとに出しています。

17年の平均では、58%の銘柄が上がっていました。ふだんの5営業日に上がる割合は52%なので、6ポイントほど多い計算です。とはいえ、ふだんより多かったのは17年中10年だけで、6ポイントの差より年ごとのぶれのほうがずっと大きいのです。上がった銘柄が多い年は2013年(93%)、2023年(78%)、2020年(77%)、少ない年は2016年と2019年(35%)、2010年(38%)でした。

大型株より中小型株

いまの時価総額(会社の規模)で銘柄を大・中・小の3つに分けると、年末最後の5営業日に上がった割合はこうなりました。2013年は93%の銘柄が上がった特別な年なので、前の期間からは外して比べています。

時価総額 2009〜2025年 2009〜2012年 2014〜2025年
小さい3分の1 62% 57% 61%
中くらいの3分の1 60% 56% 59%
大きい3分の1 52% 54% 48%

小型株が大型株を上回った年は、17年中13年ありました。2014年以降に限っても12年中10年で、近年はその差が開いています。この時期の大型株は平均48%と、ふだんの5営業日(52%)をやや下回る水準です。2009〜2012年は4年しかないので比べるのは目安ですが、近年、年末に上がる銘柄が多かったのは中小型株の側でした。

日経平均の年末が近年さえないのは、大型株が中心で、なかでも株価の高い一部の銘柄の比重が大きい指数だからかもしれません。

業種による差

東証のTOPIX-17業種で分けると、上がった割合が高いのは鉄鋼・非鉄(65%)、次いで機械、商社・卸売、エネルギー資源(いずれも62%)。低いのは食品(51%)、電力・ガス(52%)、医薬品(52%)、自動車・輸送機(53%)でした。エネルギー資源は銘柄数が少ないので、参考程度に見てください。

業種の差は大きくても14ポイントほどで、年による違い(35〜93%)に比べれば小さなものです。

掉尾の一振が起きる理由:「節税売りが終わるから」は本当か

年末に上がる理由として、「損の出ている株を年内に売って税金を減らす動き(節税売り)が終わり、売られていた株が戻るから」という説明をよく見かけます。

これが本当なら、その年に大きく下げた銘柄ほど、年末に強く戻るはずです。そこで、年初から年末直前までの値動きで銘柄を5つに分けて比べました。年初から大きく下げた銘柄は、年末最後の5営業日に60%が上がっていました。ところが、大きく上げた銘柄も59%。その間の3つのグループも56〜58%です。

下げた銘柄と上げた銘柄で、ほとんど差がありません。少なくともこの数字からは、節税売りが終わることだけで掉尾の一振を説明するのは難しいと考えています。

ひとつ断っておくと、株は売った数日後に受け渡し(お金と株のやり取り)が済みます。節税のための売りは、年内に受け渡しが済む最後の売買日まで出ます。いまはそれが大納会の2営業日前(2018年までは3営業日前)なので、この5営業日の前半にはまだ売りが残っています。上げが集まる「大納会の2日前と前日」は、2018年までは節税売りが終わった直後の2日間、いまは節税売りが出せる最後の日とその翌日です。関係があるかどうかは、この記事の数字では確かめていません。

2025年・2024年の掉尾の一振はどうだったか

2025年の年末最後の5営業日は、日経平均が−0.1%、TOPIXが−0.4%でした。約1,000銘柄のうち上がったのは45%で、ふだんの52%を下回っています。2025年は、掉尾の一振が起きなかった年でした。

その前の2024年は、日経平均が+1.9%、TOPIXが+2.1%、上がった銘柄は73%で、はっきり起きた年です。

2026年の結果は、年が明けたらこの節に書き足します。

よくある質問

掉尾の一振の読み方は?

「とうびのいっしん」です。「掉尾の一振り」と送り仮名をつけて検索されることもありますが、指しているものは同じで、年末に株価がもうひと伸びすることです。

掉尾の一振はいつ起きる?

言葉としては、12月20日過ぎ(またはクリスマス明け)から大納会(原則12月30日)までを指すのがふつうです。日経平均の37年で見ると、上げは最後の数日に集まり、とくに2001年以降は大納会の2日前と前日の2日間に目立っています。

年末ラリー・サンタクロースラリーとの違いは?

どれも年末に株価が上がりやすいことを指す言葉です。サンタクロースラリーはもともと米国の言葉で、年末から年明けにかけての上昇を指して使われます。掉尾の一振は、日本の相場で、その年の最後のひと伸びを指して使われてきた言葉です。サンタクロースラリーが米国株と日本株で本当に起きているかは、サンタクロースラリーは本当に起きるのか(米国株74年と日本株の検証)で確かめています。

2026年も掉尾の一振は起きる?

分かりません。日経平均の37年では37年中24年起きていますが、2010年代は10年中4年でした。過去の傾向は、今年もそうなることを約束するものではありません。

この数字の読み方と限界

平均で見れば、年末は上がりやすいと言えます。上げ幅は1%前後にすぎず、下げる年も珍しくありません。

個別株は、いまTOPIX1000に入っている銘柄で過去をさかのぼっています。途中で上場をやめた銘柄は入っていませんし、大・中・小もいまの時価総額で分けています。

僕自身は、こうした季節の傾向を「この時期はこういう動きが出やすい」という目安として持っているだけで、それだけを理由に動くことはしていません。

最後に、自分に聞いておきたいこと

掉尾の一振は、ただの迷信ではありません。でも、毎年来る前提で年末を迎えると、来なかった年に慌てることになります。37年のうち13年は来なかったし、2010年代は来なかった年のほうが多かったのですから。

年末を迎える前に、次の2つを自分に聞いておくとよいと思います。

  • いま持っている株は、過去に年末に上がる割合が高かった中小型株なのか、ふだんとあまり変わらなかった大型株なのか。それを知ったうえで、年末の数日をどう過ごすつもりか。
  • 期待したひと伸びが来ず、逆に下げて年を越したとき、どこまでなら持ち続け、どこからは考え直すのか。

これだけです。

※本記事は過去の値動きを集計したもので、特定の銘柄や時期での売買を勧めるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

銘柄ごとの「上がりやすい時期・下がりやすい時期」

この記事は市場全体の話です。季節の傾向は、銘柄ごとにかなり違います。日本株の主な銘柄について、例年いつ上がりやすく・いつ下がりやすいか、その理由の手がかりまで調べた結果を、無料のメルマガの専用サイトで公開しています。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。