僕が一番驚いたのは、薬を初めて使う人の多さでした【イーライリリー(LLY)2026年7〜9月期決算】

アメリカの高齢者向けの公的保険が、この夏から肥満症の薬にお金を出し始めました。7月1日に始まってから、50万人を超える人がこの枠で薬を受け取っています。

その窓口で一番選ばれているのが、イーライリリーの薬です。糖尿病と肥満症の注射薬マンジャロ、ゼップバウンドを作っている、アメリカの製薬会社です。

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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年10月29日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。

💡決算説明会=決算発表のあとに経営陣が投資家やアナリストに説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「メディケアの肥満症薬ブリッジ」って、何でしょう

名前だけ聞くと、橋の工事の話のようですが、違います。「本格的な保険適用までの、つなぎ」という意味の橋です。

メディケアは、65歳以上のアメリカ人が入る公的な医療保険です。日本でいえば、後期高齢者医療制度に近い役割を持っています。ところがこの保険は、これまで「体重を減らすための薬」を原則として対象外にしてきました。糖尿病の治療としてなら出る。肥満症の治療としてなら出ない。同じ成分の薬でも、病名で扱いが分かれていたわけです。

そこで連邦政府の担当機関が、試験的な制度として、肥満症の薬を月50ドルの自己負担で使えるようにしました。これが「GLP-1ブリッジ」です。対象になりうる高齢者はおよそ2,000万人と、会社は説明しています。

💡GLP-1薬(インクレチン薬)=食後に出る体内のホルモンの働きをまねる薬のグループ。2型糖尿病と肥満症の治療に使われます。この会社のマンジャロとゼップバウンドは、同じ成分(チルゼパチド)を病名ごとに別の名前で出しているものです。

これがこの決算にどう効くかというと、今まで薬を買えなかった層が、まとめて市場に入ってきたということです。値段の高い自費の患者を奪い合うのではなく、患者の数そのものが増える。しかもその入口で、イーライリリーの薬が選ばれています。

3ヶ月で「まだ始まったばかり」が「期待以上」に変わりました

3ヶ月前の決算説明会では、ブリッジはまだ始まったばかりでした。米国事業の社長はこう言っていました。

3ヶ月前:「まだ始まったばかり(early days)です。同時に、かなり大きな曲がり角(inflection point)を目にしています」
今回:「ブリッジについては、まず、きわめて好調でした」「期待を上回っています」

そして、僕が一番驚いた数字がここです。

「ブリッジで治療を受けている人の約80%は、これまでこの種の薬を使ったことがない人です」

3ヶ月前は「60〜70%が新しく入ってきた人」と言っていました。それが8割に上がっています。最初に飛び込んでくるのは、ほかの経路で薬を使っていた人が乗り換えてくるケースだと僕は思っていました。実際は逆で、初めて薬を使う人が増えています。乗り換えなら、会社の売上は場所が変わるだけです。初めての人なら、純粋に上乗せになります。

ブリッジで新しく治療を始めた人のうち、10人に7人がイーライリリーの薬を選んでいます。注射薬を選ぶ人が約75%です。

飲み薬のほうも、言葉が変わりました。今年発売した飲み薬のFoundayo(一般名オルフォルグリプロン)について、

3ヶ月前:「7月の最終週に、曲がり角が見えています」「新しく治療を始める人の、ほぼ4人に1人がFoundayoで始めています」
今回:「新規処方のシェアは、10人に4人に近づいています」

「曲がり角が見えている」という兆しの話から、「4割」というシェアの数字に変わりました。会社によると、飲み薬の肥満症治療を始める人のおよそ4割がFoundayoを選び、この四半期の新規患者数は前の四半期の2倍になっています。

売上は前年同期比+39%、70億ドル近く増えました

  • 売上 前年同期比+39%(金額で70億ドル近くの増加)
  • マンジャロとゼップバウンドの合計売上 160億ドル超(前年同期から60億ドルの増加。1ドル150円で約2.4兆円)
  • 調整後の一株利益 7.48ドル(前年同期は7.02ドル)
  • 粗利率 84.4%(売上から製造の原価を引いて残る割合。前年同期比+0.8ポイント)

💡調整後の一株利益(non-GAAP EPS)=会社が「一時的」と考える項目を除いた、1株あたりの利益。この会社の場合、他社から買い取った開発中の薬の費用は除かずに入れたままで、今回の7.48ドルにはその費用が1株あたり4.57ドル含まれています。費用を引かれたうえでの7.48ドルです。

アメリカで肥満症向けのこの種の薬の処方は、この四半期に+82%伸びました。その処方全体の約6割、注射薬に限れば7割超がイーライリリーの薬です。アメリカの外でも、この種の薬のシェアは前の四半期から4ポイント近く上げて約58%になりました。

中国では、マンジャロが発売から最初の丸1年で売上10億ドルを超えました。会社は「中国で最初の丸1年に10億ドルを超えた初めての薬」と言っています。

会社の見通しは、年初から100億ドル近く上がっています

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。

通期の売上見通しは、こう動きました。

3ヶ月前:「通期の売上は850億〜870億ドルを見込んでいます」
今回:「通期の売上は910億〜920億ドルを見込んでいます」

中央値で55億ドルの上乗せです。910億〜920億ドルは、1ドル150円で約13.7兆〜13.8兆円になります。質疑応答では、年初からの引き上げ幅が合計でおよそ100億ドルになると指摘されていました。

市場の予想の平均は、通期売上で約887億ドルでした。新しい見通しの中央値はそれを3%ほど上回っています。

💡市場の予想(コンセンサス)=この会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が前回の自分を超えても、周りの期待に届かなければ「期待外れ」になります。今回は周りの期待も超えました。

売上のうち利益として残る割合の見通し(調整後の利益率)も、49〜50.5%から52〜52.5%に上がっています。

一方で、一株利益の見通しは35.50〜36.50ドルから35〜36ドルに、数字の上では下がりました。会社の説明では、これは悪化ではありません。この四半期に買収した開発中の薬の費用(1株あたり4.57ドル)をそのまま吸収したためで、その費用を除いた中身では、中央値で1株あたり4.07ドルの引き上げです。

経営陣が言わなくなったことと、売上に混ざっていた一時的なお金

ここからは、良い話の裏側です。

まず、売上の中に、来年は戻ってこないお金が入っています。この四半期の売上には、約9億ドルの一時的な項目が含まれていました。中身は、提携先のベーリンガーインゲルハイムとの糖尿病薬ジャディアンスの契約で受け取ったマイルストーン(開発や販売の節目で支払われる報酬)4億1,000万ドルと、リベート(保険会社などへの割戻し)の見積もりの修正です。ジャディアンスのマイルストーンは、これで最後だと会社が明言しています。通期では一時的な項目が約20億ドルあり、2027年には計上されない見込みだと財務責任者が自分から言いました。

値段も下がり続けています。アメリカでの価格は前年同期比で−7%。ただしこれはリベートの見積もり修正で良く見えている数字で、修正を除くと−10%です。前の四半期は、同じ基準で−9%でした。下げ幅が1ポイント広がっています。売上の伸びも、前の四半期の+48%から+39%に落ち着いてきました。

そして、3ヶ月前に具体的に語っていたことが、今回は出てきませんでした。

1つ目は、開発中の次の薬レタトルチドです。3ヶ月前、研究開発の責任者は「2027年の第1四半期にアメリカで申請する計画」と時期まで言い、CEOも「来年の第1四半期までの申請を楽しみにしている」と重ねていました。今回は臨床試験の結果の報告だけで、申請の時期は一言も出てきません。

2つ目は、自費で薬を買う人の比率です。3ヶ月前は「肥満症の処方の約45%、新規処方の約55%が自費」と数字で出していました。今回、この比率は開示されていません。

3つ目は、Foundayoを処方した医師の数です。3ヶ月前は「3万6,000人に増えた」と言っていましたが、今回は更新されず、「試しに処方した医師の数が2倍以上になった」という言い方に変わりました。

質疑応答でも、決着していない点が残りました。「見通しが毎回上振れするのはなぜか、驚きはいつ尽きるのか」は、冒頭の質問とその続きとして2回聞かれています。財務責任者は「年初に挙げた変数が、どれも想定以上に進んでいる」と答え、需要の前倒しではないかという見方には、まだ届いている患者は10人に1人程度だと反論しました。CEOは「予測の難しい、前例のない市場の拡大なので、下に外すより上に外すほうがいい」と言っています。ただ、驚きがいつ尽きるのかには答えていません。次の世代の、効果がより長く続く薬について聞かれた場面では、「だから、まだ何も示していないのです」と、開発の段階も明かしませんでした。

扉はアメリカの中と外で、別々に開いています

この会社に患者が流れ込んでいる背景は、2つに分かれます。

アメリカの中は、保険の扉が開いた話です。 ブリッジで高齢者の扉が開き、そこに入ってくるのは8割が初めての人でした。来年については、財務責任者が「ブリッジの効果が1年分まるごと乗ること」と「Foundayoの2型糖尿病での発売」を挙げています。糖尿病向けの発売は、規制当局の判断がこの第4四半期に出る見込みです。CEOは「この種の薬の数量の約半分は糖尿病」と言い、糖尿病向けが大きな市場の拡大になると話していました。

アメリカの外は、まだ広がりの途中です。 シェアは約58%まで上がり、中国では発売1年で10億ドルを超えました。ただし、アメリカの外のこの種の薬の市場の伸びは、前の四半期の+74%から+53%に減速しています。Foundayoは海外4ヶ国で発売済みで、さらに40を超える国で審査中です。海外部門のトップは「来年、40を超える市場で、肥満症と2型糖尿病の両方で発売する準備ができている」と言っています。

肥満症の薬以外も伸びています。がん、免疫、神経の領域の主力製品の売上は、前年同期の2倍になりました。アルツハイマー病の薬キスンラは+175%です。

ただし、来年の数字には向かい風も決まっています。財務責任者は2027年について「実際の価格は逆風になり、数量の伸びがそれを上回る」と言いました。2027年の数字は、1月の決算説明会で出すとのことです。

ブリッジが2027年の後も続くかも、まだ決まっていません。CEOは、試験的な制度から高齢者の保険の正式な薬の枠組み(パートD)へ移すのが正しいやり方だと言い、2028年に向けて保険会社と取り組むことになるだろうと話しました。楽観的な見立てですが、決めるのは会社ではなく政府です。


今回の売上には、本当に増えた患者と、来年は戻らない約20億ドルが混ざっています。値段は少しずつ下がり、それを人数で押し返している形です。

僕が次に見たいのは3つです。1月に会社が出す2027年の売上の見通しが、20億ドルの一時要因と値下がりを飲み込んでも伸びを示せるか。修正を除いたアメリカの価格の下げ幅が、−10%からさらに広がるか。そして、今回言わなかったレタトルチドの申請時期が、次の回で戻ってくるか。

この見立ては、10月29日の説明会までに分かったことだけでできています。答え合わせは、20億ドルが抜けた後の見通しが出る1月です。


※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。

※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。医薬品の効能・安全性を保証するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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