石油の世界で一番大きな「裏方」が、今回はっきり言い切りました。上昇の波は、もう始まっている、と。
社名はSLB。日本ではいまも旧社名のシュルンベルジェのほうが通じるかもしれません。油田で井戸を掘り、地下を測り、海の底に設備を沈める。石油会社から仕事を請ける側の、世界最大手です。
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※この記事で扱うのは、2026年10月23日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「油田サービス」の会社は、何を売っているのか
「石油の会社」と聞くと、原油を掘って売る会社を思い浮かべると思います。SLBは違います。この会社は油田を持っていません。原油も売っていません。
売っているのは、掘るための技術と道具と人です。たとえるなら、家を建てるときの施主とゼネコンの関係に近い。サウジアラビアの国営石油会社やエクソンモービルが施主で、SLBは「この地層に、何本、どう掘るか」を設計し、掘削の機械と人を出し、完成した井戸から油を吸い上げる設備まで納めます。
ここが記事の結論に効くところです。SLBの売上は、原油の値段そのものではなく、石油会社がいくら掘る計画を立てたかで決まります。 計画は年単位で、契約は数年単位です。だから、この会社の経営陣が「波が始まった」と言うとき、それは今日の原油価格の話ではなく、来年以降の発注の話になります。逆に言えば、言葉が先に明るくなっても、売上に出てくるのは後になります。
3ヶ月で、言い方が一段強くなりました
まず景気の波について。
3ヶ月前:「市場は、上昇局面の特徴を示し始めています」
今回:「循環は始まったと、私たちは考えています」
「示し始めている」から「始まった」へ。様子見の言い方が、断定に変わりました。
ベネズエラも同じ向きです。3ヶ月前、過去の売上の水準に戻れるかを聞かれて、経営陣は「いつその水準に届くかは、言いにくい」と答えていました。今回は、軌道の数字が出てきました。
「ベネズエラでの売上は、今年、2倍を超える軌道にあります。米国と欧州の石油開発会社からの強い勢いがあり、2027年には数倍の成長の可能性を支えています」
過去のピーク(約10億ドル)が天井になるのかと聞かれた場面では、天井だとは見ていない、という趣旨の答えでした。
海の底の設備(サブシー)の受注も、「目標」が「上回る見込み」に変わっています。
3ヶ月前:「2年間でサブシーの受注を90億ドルにするという目標を掲げました」
今回:「2年間で掲げた90億ドルの受注目標を、上回ると考えています」💡受注=お客さんから「これを作ってほしい」と正式に注文を受けた金額。売上になるのは、作って納めた後です。
90億ドルは、1ドル150円で約1兆3,500億円です。
そして2027年。3ヶ月前は「2027年についてはコメントしない」と言っていました。今回は初めて、「私たちの中核部門は、市場を目に見えて上回る」と、来年の見通しを口にしました。
一方で、すぐ手前の3ヶ月の見通しは弱くなりました
ここからが、僕がいちばん引っかかったところです。
3ヶ月前、経営陣は10〜12月期について、こう言っていました。
「第4四半期の売上は100億ドルを上回ると見込んでいます。調整後EBITDAマージンは約24%を見込みます」
今回の説明会では、同じ四半期についての言葉がこう変わっています。
「第4四半期の売上は、約100億ドルに達すると見込んでいます」「調整後EBITDAマージンは100〜150ベーシスポイント拡大すると見込んでいます」
💡調整後EBITDAマージン=売上のうち、本業で稼いだ利益(減価償却や一時的な項目を除く会社独自の計算・non-GAAP)が何%か。
「上回る」が「約」になりました。マージンのほうは、今回の7〜9月期の実績21.9%に1〜1.5ポイント足すと、およそ23〜23.4%。3ヶ月前に言っていた約24%に届きません。中東の前提も下がりました。中東の10〜12月期の売上は、前の年の同じ時期の「約95%」まで戻ると見ていたのが、「約83%」になっています。
💡ベーシスポイント=0.01%のこと。100ベーシスポイントで1%です。
遠くの話の言葉は強くなり、近くの数字は弱くなった。この決算は、その2つが同時に起きています。
7〜9月期の実績は、予告を少し上回りました
3ヶ月前に会社が予告していた売上の伸びは、前の四半期比+3〜4%でした。
- 売上 94億5,000万ドル(前の四半期比 +5%。1ドル150円で約1兆4,200億円)
- 調整後の一株利益 0.64ドル(前の四半期比 +0.09ドル、前年同期比 −0.05ドル)
- 調整後EBITDAマージン 21.9%(前の四半期比 +0.71ポイント)
- 中東の売上 19億ドル(前の四半期比 +13%)
💡調整後の一株利益=会社が一時的だと考える項目を除いた、1株あたりの利益(non-GAAP)。今回は年金の清算費用1億8,700万ドルなどが除かれています。
実績の+5%は、予告を小さく上回っています。ただし一株利益は、前年同期をまだ下回っています。
継続課金の「15%」も、リバティ・エナジーの名前も、今回は出てきませんでした
前の四半期に具体的に出していたのに、今回は出てこなかったものが3つあります。
1つ目は、継続課金の売上です。前回は「年間の継続課金売上は前年比15%増えました」と言っていました。今回、この数字は出てきません。
💡継続課金の売上=ソフトウェアの利用料のように、契約が続く限り毎年入ってくる売上。景気の波に左右されにくい部分です。
2つ目は、リバティ・エナジーとの提携です。前回は「最近の提携」として名前を挙げていましたが、今回は触れていません。
3つ目は、生産設備部門の調整後EBITDAマージンが20%超に戻ったという一文です。これも今回は繰り返されませんでした。
そして、まだ消えていないものもあります。財務責任者は「一部の中核部門で受けてきた値下げ圧力も、和らぐことを期待しています」と言いました。和らいだ、ではなく、期待している。値段の話は、まだ解決していません。
2027年の規模は、3度聞かれても数字になりませんでした
質疑応答では、2027年の規模と、中東がどこまで戻るかを、3人のアナリストが角度を変えて聞きました。CEOの答えは、それぞれこうです。
「2027年のガイダンスの詳細には立ち入りません」
「正確なガイダンスを出すところまでは、行きません」
マージンについても、財務責任者は「2027年のマージンについては、1月にもう少し詳しく示します」と先送りしました。3回聞かれて数字が出ないのは、まだ決まっていない、という意味だと僕は受け取っています。
数字を持ち上げている要因も、書いておきます。
- 中東の回復は、紛争で落ちた分の反動です。経営陣自身が「目先の見通しは、地政学の展開しだい」と言っています
- 10〜12月期は、年末に製品や探鉱データの販売がまとまる季節要因で、もともと持ち上がりやすい四半期です
- 利益の改善には、買収したチャンピオンXの統合効果(約2億ドルの目標を年末までに達成する見込み)が入っています。自力の成長とは別のものです
探鉱データの販売は、4〜6月期に例外的に大きく、7〜9月期は減りました。四半期ごとの振れが大きい部分です。
なぜいま、この会社に波が来ているのか
経営陣が挙げる理由は、在庫です。各国の戦略備蓄と民間の在庫が取り崩されてきたので、それを積み直す需要と、エネルギーを自国で確保したいという動きが重なっている。だから波は短期でも長期でも足が強い、という説明でした。中東を横ばいと置いても、2027年の市場は「1桁台半ば」(5%前後)の伸びで、SLBはそれを上回る、と。
その波が、具体的な契約になり始めています。
サウジアラムコは、450本を超える井戸を対象にした統合掘削の契約4件をSLBに出しました。当初の期間は3年。10〜12月期に人と機械を動かし始め、2027年にフル稼働になります。エクソンモービルの深海開発でも、SLBが過半を持つ合弁会社のOneSubseaが、第1期のサブシー生産設備に選ばれています。ただ、どちらも金額は開示されていません。
💡統合掘削の契約=設計から掘削、仕上げまでを一括で請ける契約。部品を1つずつ売るより、1件あたりの仕事が大きく、期間も長くなります。
そして、もう1本の柱が石油の外にあります。データセンターです。
SLBは、大手IT企業のデータセンター向けに、冷却や電力の設備をまとめて組み立てた「モジュール」を作っています。メタのデータセンター計画のために、カナダに新しい製造拠点も設けました。この事業の売上の勢いは、2026年末に年換算10億ドル超、2027年末に年換算20億ドル超を見込んでいて、これは前の四半期に出した目標を今回もそのまま維持したものです。
💡年換算(ランレート)=その時点の月や四半期の売上が1年続いたら、いくらになるか、という見方。実際の年間売上とは別物です。
掘削の機械を組んできた工場の力が、そのままメタの冷却設備を組んでいる。ただし、全社の年間売上は約370億ドル。データセンターの20億ドルは、その5%ほどです。会社自身も、データセンター事業はマージンを薄める側だと言っています。
アナリストの予想は、10〜12月期に0.76ドルを求めています
アナリストの予想の平均では、2026年通期の調整後一株利益は2.47ドルです。1〜9月の実績は合計1.71ドルなので、10〜12月期に約0.76ドルが要る計算になります。今回の0.64ドルから、一段上がる必要があります。会社は10〜12月期の一株利益を示していません。
💡市場の予想=その会社を調べているアナリストたちの業績予想の平均。会社の見通しは、前回の自分ではなく、この平均と比べて初めて強いか弱いかが分かります。
2027年の売上の予想は395億ドル前後で、2026年の約370億ドルから7%ほどの伸びです。経営陣が初めて口にした「1桁台半ばの市場を、目に見えて上回る」は、ちょうどこのあたりに収まる言い方です。来年の話を初めてしたこと自体は前進です。ただ、市場の予想を超える数字を出したわけではありません。
1月の説明会で、2027年のマージンが数字になるか
今回の僕の読みは、「波の言葉は本物らしい。ただ、それが売上に乗るのは2027年で、手前の四半期はまだ地政学と季節に揺れる」です。
これが外れていたと分かるのは、次のような形です。10〜12月期の売上が100億ドルに届かない。マージンの拡大が1ポイントに届かない。あるいは1月の説明会で、2027年の市場の伸びが「1桁台半ば」から引き下げられる。
反対に、1月に2027年のマージンの数字がはっきり出て、それが今年より高ければ、手前の弱さは本当に一時的だったことになります。
ここに書いたのは、2026年10月23日の説明会までに分かっていることです。中東の前提も、ベネズエラの見通しも、まだ動きます。
強い言葉と弱い数字が同じ日に出てくる決算は、読む側の気分で、どちらにも見えてしまいます。だから僕は、3ヶ月前に何と言っていたかと、毎回並べて読んでいます。1月の説明会で、今回先送りされたマージンの数字が出たら、また書きます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。